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三井住友海上火災保険(株)

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(金融・保険業)より

多種多様な教育研修制度を導入し、職員相互にやる気を高め合う仕組みを作り、個人の能力向上と企業の発展をめざす

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 保険業
従業員数 約19,000名 パート労働者数 約4,100名
ポイント
  • 多種多様な教育研修により能力開発を促進。
  • モチベーションを高めるための目標管理制度。
  • 職種・職責・経験・貢献度を時給に反映。
  • 社員区分転換制度により、正社員転換を実施。
  • 休暇制度の充実。
  • 社内の広報活動を通じて、社員間で意欲を高め合う仕組みを作る。

(1)企業概要・人員構造

同社は、グローバルに保険・金融サービス事業を展開しており、現在国内に約700の拠点を持つ。社内の行動指針として「お互いの個性と意見を尊重し、知識とアイディアを共有して、ともに成長する」を掲げている。

社員区分は、正社員(全国型、地域限定型、職種限定型)、スタッフ社員(原則1年更新。フルタイム及びパートタイム)と幅広い。スタッフ社員のうち、パートタイムは1日5時間、週4日勤務が標準的な勤務時間である(平成26年10月時点で、フルタイム約700名、パートタイム約4,100名)。スタッフ社員の職種は、概ね次の3つである。

スタッフ社員の職種区分と主な職務内容

職種区分 主な職務内容
キャリアスタッフ 下記の3部門あり。
  1. 営業部門:保険契約申込書のチェック、PCへのデータ入力など、保険契約申込み関連業務。代理店等への電話・来店対応あり。
  2. 損害サポート部門:交通事故等発生時の保険金支払等に関する業務。お客さま等への電話・来店対応あり。
  3. 本社管理部門:営業部門、損害サポート部門を支える部門。
    関係部署からの照会対応、営業推進ツールの作成、社内制度やキャンペーンの企画などの資料作成やホームページの運用業務あり。
MCスタッフ
(MC:モーターチャネルの略)
自動車整備工場、代理店を訪問し、自賠責保険料の集金・保険申込書の回収や代理店の指導等を行う。
コミュニケーター いわゆるカスタマーセンター業務。お客さまとの電話を通じて保険契約の照会対応、契約条件の変更等を行う。

(2)取組の背景

企業が競争力を高めていくためには、個々の社員がチャレンジ精神を持って業務に取り組むことやプロフェッショナルであろうという姿勢は欠かせない。そのために、教育研修に工夫を凝らし、社員間でやる気を高め合う仕組みを作っている。

同社は、2011年に社内で「役割イノベーション」という取組をスタートした。これは、役割・働き方を変革し、業務の効率化を図ることで、より生産性の高い働き方を目指すための取組みである。

3年間の取組期間中、正社員だけでなく、スタッフ社員を含むすべての社員がこれまで以上にレベルの高い目標にチャレンジしたことで、正社員の担当していた業務の一部をスタッフ社員が担当し、正社員は新たな創造的な業務に取り組めるようになった。この結果、社員一名当たりの収入保険料が約25%増加、事業費率が2%低下する等、社員一人ひとりの成長と、会社全体の生産性と競争力の向上を実現することができた。

2014年度からは、さらなる役割変革の推進によって、社員一人ひとりが成長し、「最強の職場」を創造するために、「Beプロフェッショナルforall(略称:Beプロ)」の取組をスタートした。この推進名称には、「職場のみんなのため」「すべてのステークホルダーのため」に、すべての社員が自らを磨き続け、常に品質の高いサービスを提供することのできる「真のプロフェッショナルになろう」という想いが込められている。「Beプロ」では、人財育成のキーワードを「学ぶ責任」「育てる責任」と表現し、スタッフ社員を含む全社員がこれを強く意識しながら、さらなる役割変革に取り組んでいる。

(3)取組の内容

多種多様な教育研修により能力開発を促進

同社は、社員区分に関わらず、個々の社員が能力を高めていくことが重要だと考えている。そのため、多種多様な教育手法・研修内容を取り入れ、社員の能力開発を積極的に支援している。

スタッフ社員が受講できる教育研修制度

研修時期
及び教育手法
内容 メリット
(1)採用時研修
・オンデマンド型(社内のイントラネット上での研修。資料のダウンロード、動画の閲覧も可能。)
・研修内容は、会社の成り立ち、情報管理の方法、コンプライアンス、文書作成のルール、会社の基幹業務である営業及び損害サポートの紹介。
・所要時間の合計は概ね2日程度。入社後1か月程度で修了するように通知。
・修了後、eラーニングシステムでの確認テストあり。
・全国一律の内容を受講できる。
・受講時間の融通が利く(仕事の合間に受講可能)。
・集合研修に参加するための移動時間が節約できる。
(2)OJT ・入社後1年程度、スタッフ社員1名に対し、1名の指導担当者がつく。
・入社初日に指導担当者が新規採用者を出迎え、職場メンバーの紹介や、社内の建物設備の案内なども行う。
・スタッフ社員と指導担当者の座席を近い場所にする等の配慮をしている(全部門にて実施。指導担当者向けのマニュアル・テキストも整備)。
・採用時点で指導担当者を決め、入社初日からのOJTが可能。
・スタッフ社員が早く職場になじむことができる。
(3)継続研修
・申し込み制
・集合研修
・営業部門を対象とした基礎的な内容
 -損保一般基礎コース
 -代理店実務コース
 -当社商品知識コース
・損害サポート部門による電話応対マナー研修。
・システムインストラクターによるITスキルアップ研修
・継続的に実務、業務スキルを学ぶことができる。
(4)リーダー研修
・ウェブ会議又は集合研修
・スタッフ社員のリーダー職が受講。
・近い拠点に集合し、グループ討論、情報交換等を行う。
(ウェブ会議とは、ウェブ上で参加者同士がコミュニケーションを取れるシステムを利用したもの。拠点が離れているため、集合研修が難しい場合等に活用している。)
・勤務時間が10時~16時の人も出席できるように、11時~15時の間で実施。
・リーダー職ならではの悩みを相談しあえる。
(5)テーマ別オープン研修
・希望者が受講(上司の承認が必要)
・集合研修
・ロジカルシンキング、アサーティブコミュニケーションなどビジネスパーソンとして高い成果を出すための思考等を学ぶ。
・受講料の自己負担あり。
・個人で申し込んだ場合は高額となるセミナーを社内で安価な費用(3,000円)で受講できる。
(6)社外の通信教育
・希望者が受講(上司の承認が必要)
・エクセル、ワード、語学、簿記、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士受験講座等様々な講座あり。 ・受講料は自己負担だが、講座を修了した場合、一講座につき受講料の30%、最大5万円を会社から補助。
(7)社内のオンデマンド学習
・全社員対象
・講座は自由に選択
・商品知識、自動車保険、エクセル、プレゼン実例、提案力強化、社員紹介、社長メッセージなど内容は多岐にわたる。講師は主に社員が担当。人事部、広報部、商品部などで多数のコンテンツを制作。
・掲載されている全講座が閲覧できる(閲覧に制限はない)。平成27年1月時点において約200講座あり。
新講座が随時掲載されているため、掲載数は常に増加。
・「Beプロフェッショナルforall」の取組の一環として実施。
・時間、場所の制約を受けず、自由に受講できる。
・隙間時間を活用できる。
・スマートフォンでも閲覧可能。
・視聴する方法であるため紙のテキストを読み込むより学習が手軽である。

(2)のOJTについて、スタッフ社員ごとに指導担当者がつく制度は、社内アンケートにおいてもスタッフ社員より「質問しやすい」との回答が複数あった。

(6)の社外の通信教育については、受講者の感想をイントラネットに掲載し、講座を選ぶ際の参考にしてもらっている。また、受講できる講座の種類や通信教育の提携先も増やしており、選択肢の幅を広げている。

学習意欲が高まるように、難易度の高い資格を取得し、実務に活かして活躍している社員は、衛星放送やイントラネットに掲載する業務連絡で紹介している。

モチベーションを高めるための目標管理制度を実施

業務への自主性を高めるために、スタッフ社員自らが目標を立て実行する目標管理制度(社内では「目標チャレンジ制度」としている)を実施している。なお、正社員に準じた制度であり、制度の特徴は次のとおりである。

  1. 年度初に組織におけるミッションに沿って、3つから5つ程度の目標を立てる。目標は極力定量的なものとし、また期限を設定することで、達成度が明確になるようにする。上司のアドバイスも得た上で年間目標を決定する。
  2. 目標を立てる際の参考となるように、人事部で目標の標準的な事例を提示している。
  3. 年度初、中間時点、年度末に上司と面接を行う。年度末には、年間目標に対する結果に対して、上司が5段階で評価を行う。

職種・職責・経験・貢献度を時給に反映

スタッフ社員の給与は時給制であり、時給の基本部分は全国を5つの地域に区分して設定している。また、それに加えて「職種、職責、経験、貢献度(人事評価)」を反映した処遇体系としている。

これらについては、就業規則にも具体的に定めている。

職種・職責・経験・貢献度(人事評価)を反映した時給設定

勘案する
項目
概要 具体的な内容
(1)職種 職種を勘案した時給設定 職種の仕事内容を勘案して、それぞれの職種ごとに時給を設定している。
(2)職責 リーダー職への加算 スタッフ社員の指導的な役割となるリーダー職に昇進した者について時給 に100円を加算。
(3)経験 OB・OG加算 自社・他社を問わず損害保険会社に正社員として2年以上勤務し、かつ、退職から5年を経過していない者について、採用時の時給に30円を加算。
(4)貢献度 人事考課加算 毎年の人事考課により時給に加算。人事考課は、目標管理制度による結果を踏まえて、行動(マインド面)と成果の2つの視点で評価する。考課別に最大40円加算する。採用時時給より最大360円までの昇給が可能。人事考課について本人へのフィードバックあり。
(2)の「リーダー職」は、仕事のスキル・ノウハウを積んだ勤続2年以上であるスタッフ社員であって、リーダーの資質があると部支店長が認めた者の中から任命する(フルタイム・パートタイムともに対象)。リーダー職は職場のスタッフ社員の指導的役割を担うが、現在、全スタッフ社員のうち、5%程度がリーダーに昇進している。

社員区分転換制度により、正社員転換を実施

社員区分の転換制度で雇用形態や職種の転換を認めており、毎年スタッフ社員から地域限定型の正社員(転居を伴う転勤なし)への転換を実施している。転換制度への応募に際し、勤続年数は問わない。地域限定型の正社員となった場合は、転居を伴わない範囲での店舗の異動や職種の異動を行うことがある。

地域限定型社員への転換は、個人の意思で応募し、上司の推薦を経た上で選考する。前年は、スタッフ社員のうち42名が転換を希望し、7名が転換した。転換により、給与(月給制、賞与)、休暇制度・退職金制度・年金制度(企業年金、確定拠出年金)等が正社員の待遇に変わる。月給の賃金テーブルについては、新入社員より上の位置からスタートすることがほとんどであり、正社員転換後の処遇については、社内規定で明確にしている。

休暇制度の充実

働きやすい職場環境を作るため、法定の年次有給休暇に加え、各種の休暇制度を設けている。なお、年次有給休暇は、勤続6か月後ではなく、入社当日から付与している。

  1. 半日単位で取得できる有給休暇制度:法定の有給休暇について、12日分まで半日休暇を取得できる(従って半日休暇を24日まで取得できる)。育児、保育園の送迎などに利用する者もいる。
  2. フレッシュアップ休暇:週5日勤務の者は連続5日、週4日以下の者は連続3日の休暇を1年に1回、有給で取得できる。
  3. 年末年始休暇:1月4日が営業日の場合は、年末年始の12月30日又は1月4日のいずれか1日を有給で休むことができる。
  4. 忌引休暇・交通途絶休暇:所定の忌引き休暇や電車が動かず出勤できない場合に有給での休暇を認めている。

社内の広報活動を通じて、社員間で意欲を高め合う仕組みを作る

人材育成の一環として、社内で活躍する社員、積極的に学ぶ社員をイントラネットで紹介している。あらゆる社員にやる気を出してもらえるように、様々な職種、世代、社員区分から幅広く紹介している。コンテンツは「私を変えた一言」、「中小企業診断士を取ろうと思った理由」などもあり、社員のやる気を刺激するものであれば、何でも作ろうという方針である。

なお、社内で広報を行う場合、スタッフ社員も積極的に紹介しており、掲載人数や頻度という点において、1割程度はスタッフ社員を紹介している。フルタイム・パートタイムの別なく掲載していることから、パートタイムのスタッフ社員が紹介されることも多い。また、社内の広報誌や衛星放送でも、スタッフ社員の特集を組んだことがある。

(4)成果と課題

スタッフ社員(フルタイム・パートタイムとも)の人事諸制度、教育・研修制度を改善していくことにより、スタッフ社員の役割の変革がなされ、能力が向上した。そして、スタッフ社員が正社員の業務の一部を担い、正社員が新たな業務にチャレンジできるようになった結果、社員1名あたりの生産性が向上し、収益が拡大した。

また、社員意識調査でもスタッフ社員のやりがい・働きがいや自身の成長に関する満足度が向上したという結果が出ている。(設問:「私は、今の仕事に誇りと働きがいを持っている」「私は自らを磨き続け、常に高い品質のサービスを提供している」)。そして、スタッフ社員の頑張りが社風の変革にもつながっている。

課題は労働契約法改正に伴う無期労働契約への転換申込への対応である。無期労働契約への転換の申込が可能となる2018年4月以降、5年超更新の要件を満たしているスタッフ社員は多く在籍していると想定される。スタッフ社員のやりがい・働きがいを向上させ、会社全体の生産性と競争力の向上につなげるために、無期労働契約への転換を希望するスタッフ社員に対し、転換後の仕事の内容、処遇等について、どのような受け皿や制度を作り、示していくかということが直近の課題である。

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