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(株)千葉興業銀行

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(金融・保険業)より

戦力化を図るため、計画的な能力開発の仕組み、人事評価結果に基づくランクアップ制度を導入

1.労働条件の明示、説明
2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
8.職場のコミュニケーション等
所在地 千葉県 業種 銀行業
従業員数 2264名 パート労働者数 896名
ポイント
  • 正社員と同じ評価項目を用いた人事評価の結果により、ランクアップ・昇給が可能。
  • 育成プログラムに基づき、能力開発を実施。
  • リーダースタッフから正社員への登用制度を運用。
  • モチベーション向上を目指した表彰・報奨金制度あり。

(1)企業概要・人員構造

同社は、千葉県内に約70店舗、県外に1店舗を構える地方銀行である。

雇用区分は大きく「行員(正社員)」「嘱託社員」「スタッフ社員」の3つに分かれている。行員(1368名)には、総合職や一般職といったコースは設けていない。また、嘱託社員(45名)には、定年後の再雇用者と、1年間の有期労働契約である特定の職務従事者が含まれている。

スタッフ社員はパートタイム労働者であり、一日の労働時間が5.5時間以上で社会保険適用の「ロング」、同5.5時間未満で社会保険未適用の「ショート」の2種類の区分がある。

スタッフ社員の募集はショートのみを対象としており、同社のホームページならびにハローワークにて店舗別・職種別に行う。支店ごとに定員の目安は定められているが、定員の範囲内であれば、ショートからロングになるためには、本人が申告し、支店長の承認が必要であり、その他の条件は課されない。

採用時には、労働時間・勤務店舗・職種等を明示した「ご案内状」を本人に手渡す。入社後3か月間の試用期間を経て1年契約を締結し、その後も1年ごとの契約更新となる。また、リスク管理の観点から、店舗勤続年数10年を目安に、本人の同意に基づき、転居を伴わない地域内での店舗異動の可能性がある。

スタッフ社員の主な職種・在籍者数

職種 従事する業務 在籍者数
ショート ロング
事務スタッフ 内部事務 315名 76名
ロビースタッフ 受付・案内 73名 0名
テラースタッフ 窓口業務 185名 12名
外訪スタッフ 渉外業務 15名 2名
渉外スタッフ <外訪スタッフのうち、「証券外務員(二種)」資格取得者)>
投資等資産運用商品の単独販売
個人取引を中心とした顧客管理業務(預金管理・預金獲得・基盤獲得・情報収集等)
40名 15名
事務リーダー 業務担当職務全般及び付随する業務 54名
渉外リーダー 投信等資産運用商品の単独販売
個人取引を中心とした顧客管理業務(預金管理・預金獲得・基盤獲得・情報収集等)
法人既取引先の定例集金業務
27名
その他 集金、清掃等 82名
合計 896名

(2)取組の背景

同社では平成12年度に公的資金の注入を受けたことにより、人件費について再考する必要があった。この結果、判断業務、イレギュラー対応やトラブル対応は行員が対応しなければならないが、その他のルーティンワークはスタッフ社員で遂行することができるよう、スタッフ社員の戦力化ならびに事務の効率化を図ることとした。

戦力化に当たっては、スタッフ社員の能力開発を行うこと、また、働きやすい環境を整備することが不可欠であり、これを実現すべく各種取組を充実させることが決定された。

(3)取組の内容

行員(正社員)と同じ評価項目を用いて人事評価を実施

契約更新時期の2か月程度前に、「総合評価表」を用いた人事評価を行う。総合評価表には、ショート及びロングのスタッフ社員を対象とした「レギュラースタッフ用」と、リーダーのスタッフ社員(後述)を対象とした「リーダースタッフ用」の2種類があり、前者では入社3年目までの行員の評価項目と、後者では入社4年目程度の行員の評価項目と同じ評価項目を設定している。

評価項目には、職務行動評価に関わる能力(知識、理解力、意思疎通力、適応力、判断力等の7~8項目)と執務態度(規律性、責任感、積極性等の6項目)があり、可能な限り計数化した実績についても評価される。

評価者は、一次評価が課長、二次評価が副支店長、最終評価が支店長であり、能力及び実績は各5段階、執務態度は各3段階の評点が用いられ、総合評価として「S・A・B・C」が付けられる。自己評価は行っていない。

評価結果は、契約更新の可否ならびに昇給の有無に反映されるとともに、契約更新時の面談で本人にフィードバックされる。C評価の場合には契約期間を半年に変更するなどし、本人に改善を促す。

また、一定の業務スキルを身につけている(後述の「業務習得進度表」に記載の項目の8割以上)と判断され、総合評価結果がA以上のレギュラースタッフは、リーダースタッフへ登用されることとなる。

なお、リーダースタッフはロングのみであり、その人数は計81名である(図表参照)。

人事評価結果によりランクアップ・昇給が可能

レギュラースタッフには各職種それぞれに5段階の、リーダースタッフには両職種それぞれに7段階のランク(等級)を設けている。

人事評価の結果により、入社1年目は総合評価がB以上であれば1ランク、2年目以降はSであれば1年で1ランク、Aであれば2年連続Aで1ランク、ランクアップすることとなる。

都市部と郡部で若干の違いはあるものの、時給額は職種・ランクごとに定めている(リーダーはスタッフより1ランク上の時給額)ため、高評価を得ることができれば昇給する仕組みとなっている。

なお、前述のようにスタッフ社員は入社3~4年目程度の行員と同じ評価項目を設定しているが、これはほぼ同じ仕事を担当しているからであり、同じ仕事を担当している行員の時給換算賃金とショート及びロングの時給額はほぼ等しい。

育成プログラムに基づき、業務習得進度表を用いてOJT、Off-JTを実施

能力開発として、「事務スタッフ」「ロビースタッフ」「テラースタッフ」ごとに定めた育成プログラムを展開している。具体的には、同プログラムに基づく入社後3年間で身につけるべきスキル をまとめた「業務習得進度表(行員と同一)」を指標としながら、OJTリーダーとなる中堅レベルの行員とスタッフ社員本人が、例えば入社1年目ではどこまで習得するか等を話し合いながら能力開発を進めていく。

OJTはもちろんのこと、本部ではコンプライアンス研修や業務関連研修、資格取得支援に関わる研修をはじめとする各種研修を実施している。これらは行員のみならず、スタッフ社員も希望して受講することが可能なため、業務習得進度表を参照し「次はこの研修を受講しよう」といったOffJTの計画も立てることができる。

なお、スタッフ社員の中には出産・育児を理由として他の銀行をはじめとする金融機関を退職し、同社に就職した者も少なくない。このようなスタッフ社員は銀行の専門用語に慣れてはいるものの、業務内容はここ数年で大きく変遷してきているため、新たな知識を吸収するための能力開発は必要となる。

リーダースタッフから行員(正社員)への登用制度

平成18年度に、リーダースタッフから行員への登用制度を開始した。年に1回の頻度で登用者を募集しており、現在までの登用者総数は12名である。

登用候補者になるためには、リーダースタッフとしての勤続年数が1年以上、人事評価結果がA以上、支店長による推薦があることに加え、「証券外務員(一種)」「生命保険募集人(一般課程)」「生命保険募集人(専門課程)」「生命保険募集人(変額)」「損害保険募集人」の5つの資格を保有していることが求められる。

その後、人事部による2回の面接を経て、登用の可否が決定される。筆記試験は課されない。

なお、行員登用後1年目は、役職者の一歩手前の等級に位置付けられ、年収はリーダースタッフ時と比較して150万円程度増額となる。また、登用者の中には、課長まで昇進している者もいる。

モチベーション向上を目指した表彰・報奨金制度

半年ごとに、各部門(投資信託、定期預金、年金等)ごとに優秀な業績を上げた行員・スタッフ社員を表彰する制度を設けている。表彰者には頭取から表彰状が贈られるとともに、頭取との食事会に招待される。「毎回絶対に食事会に行く」という強い意志のスタッフ社員や、行員以上の成績を上げるスタッフ社員が出てくるなど、モチベーションの向上に寄与している。

事務スタッフ・ロビースタッフ・テラースタッフには、各期終了時に支店ごとにファンドを分配し、支店長が成果を上げたスタッフに対して報奨金を支給することでモチベーションの維持・向上 を図っている。

その他、1年に1回、人事部の臨店担当者が全スタッフ社員の面接を行い、仕事の状況や困っている点はないか等を把握するようにしている。

(4)成果と課題

平成12年度以降は、行員数を減少、スタッフ社員を増加させる方針で人材を採用してきた。実際、従業員50名程度の店舗であれば、そのうちスタッフ社員は15名程度であり、全国の地方銀行の中でもパート比率はトップレベルにある。

これは、スタッフ社員の戦力化が進んだ証拠でもある。また、スタッフ社員の平均勤続年数は7年10か月と長く、これまでの各種取組が功を奏し、優秀なスタッフ社員の定着にも寄与していると言える。

平成25年度に公的資金は完済したが、ここで行員数を増加、スタッフ社員を減少させることは考えていない。店舗では勤続年数5年以上のスタッフ社員が頼りであり、戦力化されたスタッフ社員が「気持ちよく、長く働き続けることができる環境」をさらに整備する予定である。

この際には、併せて改正労働契約法への対応についても検討しなければならない。無期転換による長期勤続を前提とし、さらなる活躍を期待する制度づくりを目指している。

優秀なスタッフ社員は地域でも評判になり、他社から転職のオファーがあることも少なくないが、それを断るスタッフ社員も多くみられる。同社で働き続ける「時給以外の魅力」をここから探り、対応策を検討するにあたりそのヒントとして活用していきたいと考えている。

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