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多摩信用金庫

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(金融・保険業)より

一体感のある人事運営でパートタイム労働者の能力・意欲を喚起

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 協同組織金融業
従業員数 約2,400名 パート労働者数 約250名
ポイント
  • 職種別考課ランク別に時給を決定。
  • パートタイム労働者から嘱託、嘱託から正職員へキャリアアップすることが可能。
  • 教育訓練、福利厚生についても正社員との均等・均衡に配慮。
  • 部店別表彰も正職員と区別なし。

(1)企業概要・人員構造

同金庫は、信用組合時代も含め80年余の業歴を誇る、地域の中核金融機関である。東京都下を中心に約80の営業拠点を構えている。

パートタイマー(パートタイム労働者)の雇用期間は1年で、多くのパートタイマーが契約を更新して長く勤務している。定年(契約更新の上限年齢)は60歳と定めているものの、正職員同様に65歳までの再雇用制度がある。

パートタイマーの職種及び雇用数は下表のとおりである。基本的に、金融業務に関する一定の知識を有する人を採用している。職種については正職員と大きな違いはなく、職種及び勤務場所を限って採用している点で、人材活用の仕組みが正職員と異なっている。業種柄、不正防止の観点から原則4年で行う人事異動はパートタイマーも対象であるが、本人の同意をとりながら行われている。

パートタイマーの主要な職種及び雇用数

窓口業務(テラー) 17名
後方事務 112名
シニアアドバイザー(SA) 27名
ロビー業務 69名
その他 23名

業務を時間で細かく分けることはしていないため、パートタイマーの所定労働時間は、1日6~7時間が一般的であり、全員が社会保険適用者である。給与は時給のほか、時間外手当、通勤手当が支給される。賞与及び退職金の制度はない。

パートタイマーとは別に、嘱託という雇用期間が1年のフルタイム職員がいる。これは、後述の正職員登用のためのステップ的な雇用形態であり、約100名が雇用されている。嘱託は月給制で賞与、退職金もあり、1年契約である以外は正職員とほぼ変わらない給与体系である。

(2)取組の背景

パートタイマーの雇用区分は、もともと30年以上前の、まだ結婚・出産を契機に退職する女性が多かった時代に、一旦退職した女性職員を再雇用するための受け皿として設けられた。その後、他の金融機関出身者であっても、スキルを活かして地域で短時間だけ働きたい人を採用するようになり、現在は200名以上に至っている。

パートタイマーといえども、職種別に要求されるスキルは正職員と異なるものではないため、必要な知識や情報の共有をはじめ、能力に応じた処遇など、基本的には正職員と区別なく対応している。

(3)取組の内容

職種別ランク別時給体系

パートタイマーの時給は、業績責任、専門知識の必要度合い等に応じて、一般事務は970円~1,290円、SAと呼ばれる渉外業務では1,520円~1,810円など職種別に時給の範囲が設定されている。また、下図のとおり、人事考課の結果によって時給の範囲がS、A、Bの3つに区分され、考課結果で時給が異なる仕組みとなっている。

採用時は全員Bランクに位置付けられ、それぞれの職種の最低時給からスタートする(採用当初3か月間は別)。その後、人事考課でB評価をとると、Bランクの上限まで毎年20円ずつ昇給していくことになる。また、B評価だった人が能力を発揮しA評価をとればAランクの時給に、S評価をとれば職種の最高額が適用されることになる。

考課ランク別時給のイメージ
考課ランク別時給のイメージ

なお、年1回実施される人事考課の内容は、正職員に準じ仕事の成果とプロセスから構成されている。仕事の成果では仕事の量と質、プロセスでは勤務態度等が評価される一般的な内容である。考課段階は、S、A、BのほかにC、Dも含めた5段階で、Cは警告的な評価、Dは懲戒相当の例外的な評価(過去に実績なし)とされている。

嘱託、正職員へのキャリアアップ

パートタイマーから嘱託、嘱託から正職員への登用制度が明確に定められており、能力・意欲のあるパートタイマーにとって大きなキャリア上の目標になっている。

まず、パートタイマーから嘱託への登用は、経験年数、直近考課、所属長推薦の3要件を満たし、筆記試験と面接を経て決定される。必要な経験年数は職種別に異なり、SAで1年、窓口業務やロビー業務は2年、事務等は3年とされている。考課は直近2年(SAは1年)がA以上であることが条件である。筆記試験で経営理念の理解や金融知識を試された上で、人事担当役員と人事部長による面接を経て合否が決定される。最近の実績では、毎年50名程度が受験しており、15名程度が合格している。

嘱託から正職員への登用は、嘱託として2年以上の経験があり、直近2年の考課がA以上で所属長推薦があることを条件として、筆記試験と面接を経て決定される。嘱託の考課は、S、AA、AB、B、BC、C、Dの7段階であり、パートタイマーよりも高評価を得るのは難しい。また、筆記試験も嘱託登用時に比べかなり高度な金融知識を問われる。面接は、嘱託登用時と同じく人事担当役員と人事部長が行っている。毎年50名程度が受験し、合格者は10名程度である。

このようにしてパートタイマーから嘱託になり、嘱託から正職員に登用された人は100名を超えており、正職員の採用ルートとして確立している。

正職員と同等の教育研修

職階別研修のように対象者が限定されるものは別として、職種別研修は正職員、パートタイマーの区別なく行われている。職種別の会議等も同様にパートタイマーも含めて参加し、必要な情報が共有化されている。

通信教育についても、費用補助条件等に差はない。支店等でパートタイマーに証券外務員、生命保険募集人、損害保険募集人等の資格を取らせたい場合には、そのための講習費用、受験料を金庫が負担している(1回に限る)。

補助の有無に関わらず、パートタイマーの学習意欲は高く、特に嘱託から正職員を目指しているパートタイマーは、登用時のアピールポイントにもなるため、積極的に各種検定や資格取得に取り組んでいる。

組織の一員としての一体感を大切にした福利厚生

慶弔休暇については、慶弔を事由として取得できる日数と、そのうちの有給日数が就業規則に明確に規定されている。また、慶弔見舞金も、正職員に準じて支給されている。さらに、永年勤続者に対しては、正職員と同様に勤続10年、20年、30年の節目に、金一封とともに表彰が行われている。

職場での懇親等のために本部から支店等に配賦される厚生雑費も、パートタイマーの人数も含めて計算されている。働く仲間として全く区別なく取り扱われている。同様に、上期、下期、年間の3回行われている支店等の業績表彰の表彰金も、パートタイマーも含めた人数分が支給される。

職員食堂の利用についても、正職員と全く同じ補助を受けられる。

(4)成果と課題

パートタイマーは、制度としても職場の働き手としてもすっかり定着しており、今後も引き続き活用していきたいと考えている。

しかし、最近は金融に一定の知識を有する人材の採用が困難になりつつあることから、状況をみながら待遇の見直しを図っていく必要性を感じている。

また、OJTは指導者による差が出やすいため、OFF-JTを含む教育訓練の一段の充実も課題であると認識している。

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