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あいおいニッセイ同和損害保険(株)
正社員と同等の人事評価・教育訓練制度の適用、正社員登用により、短時間労働者の戦力化・長期雇用化・能力発揮をめざす
正社員転換推進措置
所在地 | 東京都 | 業種 | 保険業 |
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従業員数 | 約18,000名 | パート労働者数 | 約2,800名 |
ポイント |
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(1)企業概要・人員構造
同社は、国内外への保険・金融サービスを展開している。国内の拠点数(平成26年10月時点)は、本社に加え、課支社(営業部門)480、サービスセンター(損害サービス部門)211、関連の保険代理店約5万であり、海外の主要都市にも34の拠点を持つ。「誰もがいきいきと活躍できる会社」を目指して女性を中心としたダイバーシティ推進に積極的に取り組んでおり、平成25年度には、経済産業省主催の「ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれた。
同社の主要な雇用区分には、①正社員、②職務限定社員(1 年更新・フルタイム勤務)、③契約社員(1年更新、パートタイム労働者)の3種類がある。契約社員を正社員と比べると、次のような特徴がある。
正社員・契約社員(パートタイム労働者)比較
項目 | 正社員 | 契約社員(パートタイム労働者) |
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雇用期間 | 期間の定め無し | 1年間(4月1日から3月31日まで(年度途中に採用された者は採用日~3月31日まで) |
労働時間 | 9:00~17:00 | 9:00~16:00 |
所定労働時間 | 7時間 | 6時間 |
賃金体系 | 月給制 | 時給制 |
賞与等 | あり | 賞与という名称での支給は無い。ただし、勤続年数に応じて精勤手当を支給。 |
面談・人事評価 | あり | あり(年3回、正社員と同様に実施) |
業務の範囲 | 契約社員と比して、決裁の範囲が広く、お客様との示談等の業務も行う。 |
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契約社員は、基本的に週30時間の勤務となるため、雇用保険及び社会保険に加入している。
(2)取組の背景
社員一人ひとりがチャレンジ精神をもち、会社とともに成長できる企業風土を目指しており、雇用形態や性別にかかわらず、自身の持つ能力や可能性を広げてほしいと考えている。その一環として、契約社員についても、正社員と同等の人事評価制度、OJT、休暇制度等を実施し、正社員登用制度により積極的に正社員への転換を行っている。
(3)取組の内容
面談及び人事評価により契約社員の戦力化を図る
契約社員に対して、正社員と同様の面談及び目標管理による人事評価を実施している。面談は、年度末に適正な評価を行うため、年に3回実施(目標面談・中間面談・総括面談)しており、初回に期待する役割・取組を明確にしたうえで年間目標や課題を設定し、2回目の中間時点では進捗度合いを評価し(必要に応じて目標を修正する)、3回目に最終評価を行う。評価では、当初に決めた目標に対する達成度合いを確認している(評価者は支社長など各職場のトップ)。
具体的には、インプットの件数、仕事の正確性、迅速性など業務に即した項目について、6段階で評価する(よりメリハリのある評価運営を行うため、平成 26年10月に人事制度を改定)。
なお、3回目の面談では、契約更新の希望の有無も確認している。
人事評価と連動した給与体系
契約社員の給与の支給項目及び内容は、以下のとおり。(通勤手当は別途支給)
支給項目 | 内容 |
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①地域給 (勤務地域により異なる) |
勤務する地域ごとの時間給。同一地域に勤務する者はすべて同額。金額は、地域ごとの物価等を勘案して、6段階に設定。 |
②能力給 (全国共通) |
担当領域の幅や業務遂行能力を評価して、個々に決定。毎年度の人事評価に基づき、+60円~-20円の幅で増減。(採用時は1時間当たり400円を支給。上限なし。) |
③資格給 (全国共通) |
会社が奨励する損害保険・生命保険等の資格を取得した者に対し、資格の種類や難易度に応じ10円~100円を時給に加算。複数の資格を取得した場合には、合計200円を上限に加算。 |
能力給には賃金テーブルを設けており、人事評価により賃金テーブルの等級が上下する仕組みである。また、資格取得が資格給として給与に反映されるため、前出の面談時にも、自己研鑽のために資格を取得することを勧め、目標管理の1項目とするように促している(なお、業務に必要な資格に合格した場合には、試験会場までの交通費を補助)。
給与明細書には、①~③それぞれの金額を記載し、評価された結果が給与明細書で明確に分かるようになっている。
正社員登用制度により正社員化を促進
正社員登用制度(試験制度)により、優秀な契約社員を積極的に正社員に登用している。登用は、①契約社員本人が希望、②所属長・部支店長が面談後、推薦、③筆記試験を実施、④これまでの勤務実績等も勘案し人事で最終判断、という流れで行われる。直近1年の実績では、契約社員2,800名のうち約500名から正社員登用の希望があり、そのうち約3割に当たる163名を正社員に登用した。正社員登用試験の申し込みには、回数制限を設けておらず、何度でもチャレンジすることができる。
正社員登用後は、月給制となり、原則として正社員の資格等級の下限のランクからのスタートとなるが、登用前の給与の方が高い場合はそれを下回ることのないように月給を決定している。
契約社員を正社員登用した場合は、地域型社員となる(転居を伴う転勤がなく、通勤可能な範囲での異動のみ)。
職場全体の協力体制によるOJTを実施
入社後1年から3年目までの正社員・契約社員は、ともにOJTを実施し、年3回OJT担当者が到達度・成長度を確認し、評価する(前出の人事評価の面談と近い時期に行うが、人事評価の面談とは別に実施)。トレーニング項目や到達すべき時期等について詳細に書かれた計画書が準備されており、その項目に従ってトレーニングを行うことで、入社3年目までに習得すべき業務が身につくようになっている。
この仕組みは、職場の先輩社員がそれぞれの得意分野などを指導することで効果的な育成が期待でき、かつ、職場の皆で教えあう風土の醸成を目的として導入された。
なお、職場の上司は、イントラネットにより、管下社員の訓練状況が把握できるようになっている。
資格取得者を表彰し、能力向上への意欲を高める
社員表彰制度の一つとして、高い目標に向けた自己研鑽活動を表彰する観点から、高度資格取得者に対する表彰も行っている。難易度の高い資格取得者には本社で社長表彰を行い、2013年は、契約社員の中からも、社会保険労務士、CFP(ファイナンシャルプランナーの上級資格)、企業年金総合プランナーの資格を取得した3名が社長から表彰された。
表彰というインセンティブにより、本人の能力向上への意欲を高め、取得した資格を業務に活かすこともできるので、本人にとっても会社にとってもメリットがある
休暇制度の充実
正社員に準じ、契約社員にも法定休暇に加えて複数の特別休暇制度(夏季休暇、連続特別休暇、長期勤続休暇等)を適用している。
年次有給休暇については、法律上の時効である2年を経過した後も、その間に消化しなかった年次有給休暇を積立できる同社独自の制度がある。契約社員の場合、未消化の年次有給休暇を最大20日まで積立できる(正社員は60日)。傷病等で長期間欠勤せざるを得ないときに、時効消滅前の有給休暇に加え、積み立てた有給休暇を使うことができる。
また、介護休業は、法律上は93日までであるが、社員区分にかかわらず最長で1年の取得が可能である。
(4)成果と課題
契約社員への各種制度については、成熟していると認識している。今後の課題を挙げるとするならば、優秀な人材の確保を一層進めるため、「より積極的な正社員登用」、「正社員も含めた職場全体の環境改善」等である。
今後は、有期雇用者を無期雇用に転換する等の法改正へ対応できるように社内規程等の整備を行っていく予定である。