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(株)キュービタス

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(金融・保険業)より

明確な昇給昇格制度ときめこまやかな職場コミュニケーション支援

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
9.その他
所在地 東京都 業種 クレジットカード
プロセシング
業務委託
従業員数 1836名 パート労働者数 646名
ポイント
  • 年1回又は2回の考課による昇給昇格。
  • ほめる文化で社内のコミュニケーション力をUP。
  • 社員登用(ルートチェンジパス)制度の積極的運用実績。

(1)企業概要・人員構造

大手カード会社(UC及びセゾン)2社の顧客電話応対、クレジットカードに関わる審査業務、事務処理などを集約して受託する事業者である。オペレーションセンター(ユビキタス)を東京都内と大阪市内の2か所に設置している。今回ヒアリングを実施したユビキタス東京では、受付登録、審査、請求事務と電話での顧客対応を行っている。女性比率の高い職場であるため、「働きやすく女性に優しいオフィス空間」を目指した職場環境を会社設立当初から整備している。

派遣社員(約1,000名)を除く全従業員1,836名のうち、パートタイム労働者は、646名(男性35名、女性611名)で「メイト社員」と呼ばれている。その他に嘱託社員(62名)、アルバイト社員(176名)が在籍している(2014年4月時点)。

メイト社員の職種は、コールセンター業務となる電話応対職(以下「電話職」という)と、審査業務、事務処理を主に行う事務サービス職(以下「事務職」という)に分かれている。正社員は、組織マネジメント業務・コーポレートスタッフ業務・高度なマネジメント業務を中心に行う。また、会社は近年、複数のオペレーション業務に精通し、将来的にチームリーダーの役割を担うよう位置付けた専門職社員(以下「オペレーション専門職」という)を積極的に新卒で採用する要員体制を作り上げている。なお、有期雇用対象となるメイト社員の契約期間は1年で、採用時期に関わらず2回目となる契約更新の始期を9月16日からに統一している。

従業員区分とその概要

雇用区分 職種等 契約期間・労働時間 賃金
正社員 3コースあり
基本は全職種
フルタイム(7時間45分)・
期間の定めなし
月給・賞与
退職金あり
専門職社員 専門職・
職種限定もあり
フルタイム・期間の定めなし 月給・賞与
退職金なし
メイト社員 電話応対職 短時間パート
(7時間又は7時間30分)・
有期雇用
時給・
一部賞与あり・
退職金なし
事務サービス職

(2)取組の背景

会社設立時から、オペレーション業務を主に担っていたのはメイト社員であり、電話職、事務職のいずれにも明確な昇給昇格制度を導入している。これは、勤務を継続してもらうために必要なモチベーションを高めることを目的としており、結果としてメイト社員の定着率の高さ(平均勤続年数6.5年以上)に繋がっているほか、業務の質の安定にも貢献している。

また、会社が目指す中期的な雇用ポートフォリオでは、正社員をより高度なマネジメント業務にシフトし、今後は採用を厳選することを決定している。メイト社員から、正社員、専門職社員へのルートチェンジ制度(詳細は後述)を確立することで、より優秀な人材の確保に繋がる可能性が高いと考えている。

(3)取組の内容

職種別による明確な給与体系及び昇給昇格制度

  1. 電話職は、関与する業務により職種給が一律で決まっている。業務には顧客からの電話照会に対応する「インバウンド業務」、電話発信により顧客へのセールスプロモーションなどを行う「アウトバウンド業務」があり、ユビキタス東京では主にインバウンド業務が中心となっている。この職種給に、職務等級(I~V等級。I等級は5号俸まで、II~IV等級は10号俸まで、Ⅴ等級は15号俸まで)毎に定めた職務給を合わせた額が最低基本時給となる。
    採用時は、初任時給(I-1号俸)からスタートする。電話職が始業前時間帯(午前8時45分以前)又は終業後時間帯(午後6時以降)に働く場合は、時間帯ごとに区分された加給額が10円単位(20円から100円)で加算される(時間帯加給)。また電話応対の業務について、職務等級IV以上で所属長の推薦する者について、人事部が承認できるレベルにあると認められるスーパーバイザー職(以下、SV職という)に任命された者にはさらに役職給が加給される。 算定式{(職務給+職能給)×支給係数×在籍月数×評価係数+役職加算}に基づく賞与の支給もあり、SV職に関しては役職の部分の賞与も加算される。
    昇給及び昇格は、定められた年度人事考課に基づいて行われる。職務等級別水準(I~V)及び評価基準(成績考課・プロセス考課)における点数化をした絶対評価に加え、能力の発揮度合い、さらに専門的知識やスキルの習得・スキルの発揮度合いについて7段階((S=90~100点、A=80~89点、BA=70~79点、B=60~69点、BC=50~59点、C=40~49点、D=40点未満))で行う総合評価を組み合わせ、評価BC以下の場合には昇給・昇格はしない仕組みを採用している。
  2. 事務職の初任時給は、一律の職務給からスタートし、人事考課によって昇給がある。1年間の契約期間のうち、人事考課は2回実施されている。電話職とは異なる別体系の昇給考課(成績考課・プロセス考課)による絶対評価の点数と、評価期間の貢献度合いについて7段階(S・A・BA・B・BC・C・D)で行う総合評価を組み合わせた方式で、評価BC以下の場合は考課期間に対応する期間に昇給がない仕組みを採用している。なお、昇給対象は職務給のみであるが、電話職と同様に、始業時間に応じた10円単位(20円から100円)での時間帯給の加算と、チームリーダー(以下、CL職)に係る役職加給がある。また日曜日、祝祭日に出勤した場合に特定出勤加給が同じく時間給に加算される。なお、事務職に賞与の支給はない。
  3. 電話職及び事務職において、昇給昇格制度を早くから整備した理由の1つには、職場におけるコミュニケーションを活性化させる目的があった。そのために考課後に考課者と被考課者の面接を実施し、被考課者に対し「評価の内容」と「今後に期待する役割」を伝え、お互いの意識を共有することで業務の円滑化及び被考課者の育成を図っている。

採用時及び採用後の研修

メイト社員に対し、ルールブックに基づいて入社時の基本を学ぶNAP研修(NEWASSOCIATEPROGRAMの略称)と、入社半年後に行われるクレジット業務全体のフロー理解を含むフォローアップ研修を行っている。なお、メイト社員のうち、SV職及びCL職に対しては新任時に、社員が受講するものと同様の数日にわたる「新任マネージャー」研修も行われている。

再雇用制度の充実

在職中に蓄積した知識や経験を有効に活用してもらうため、結婚、出産、育児、介護及び定年等の事由により退職した従業員が再入社できる制度(リワークエントリー制度・定年再雇用制度)があり、メイト社員にもそれらの適用が認められている。リワークエントリー制度では、一定期間(3年間以内)業務から離れていても、メイト社員での退職時と同格付け、時給額からスタートできる。

専門職、正社員へのルートチェンジ

メイト社員から専門職、正社員への登用としてルートチェンジパス制度がある。年に2回、春と秋に募集をかけ、メイト社員からの申出を受ける。応募条件は、同じ雇用区分に2年以上在籍していること、直近の人事考課がB(標準)以上であること、所属長の推薦があることである。条件をクリアした上で、毎回異なるテーマについての論文と能力・適性検査による評価を受け、面接試験に合格した者が専門職又は正社員として登用されている。難関ではあるが毎年平均して10名程度の登用実績がある。

表彰制度

正社員、メイト社員、派遣社員に関わらず、全従業員が対象となる表彰制度がある。毎年異なるテーマに基づき、個人もしくはグループ毎での取組みを表彰する「クリエイティブ表彰」のほか、日頃の感謝を伝える「Thanksカード」制度(見本参照)が現在浸透していることから、その獲得枚数に応じ個人や部門に対して表彰も行っている。表彰式は毎年開催し、日々働く上でのモチベーションアップに繋げている。表彰式終了後は、役員、幹部も参加する懇親会が行われ、日頃接点のない者同士でも表彰式をきっかけに社内で部署を超えたコミュニケーションが行えるよう配慮されている。

「Thanksカード」見本
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さらに、顧客からお褒めの言葉をいただいた従業員を表彰する「ASKA表彰」(A:安心S:信頼K:感謝Award)もある。この年間受賞数の上位者は、前述の表彰制度の中でも表彰される。またそれぞれのお褒めの言葉は、社内に向けてその内容を共有するために冊子にして全従業員に配布している。その冊子は、従業員が自宅に持ち帰ることができるため、メイト社員たちの仕事ぶりを家族に伝えるツールとして一役買っている。

福利厚生・ワークバランス

メイト社員は、社会保険に加入している。またメイト社員のうち育児・介護を理由とする短時間勤務を希望する者は、申し出により1時間、1.5時間、2時間の時間短縮の勤務が認められており、2014年4月時点における利用者は電話職及び事務職合わせて25名に上っている。

働きやすい職場としてユニークな取組みほか

ユビキタス東京内で働く者の女性比率は9割を超える。そのため、社内で活躍しているワーキングマザーや短時間勤務者などの生の声を取材して、多様な人材が働く場であること広報誌として伝えたり、女性向けのセミナーを開催したり、夏休み期間に従業員の子どもたちがお父さん、お母さんの職場を訪ね、職場体験をしてもらう「ファミリーディ」を企画開催しており、いずれもメイト社員の参加が可能となっている。

また各種相談窓口(セクハラ・健康管理・コンプライアンス等)は、全て正社員、専門職と共通でメイト社員も利用ができる。

さらに、社内の食堂をカフェテリア形式にして、昼食時間のみならず休憩時間も過ごしやすいスペースやレイアウトを確保している。また、職場内の空調システムは女性を意識した冷え予防対策を施している。

その他、立地上周囲に買い物ができる施設が少ないことから、社内の共有スペースを利用して、様々な業者とタイアップした物産展等を開催、中には震災後の復興支援に繋がる企画もあり、女性の共感が得られやすく、職場環境のマンネリ化も防ぐ施策として人気を得ている。

(4)成果と課題

メイト社員から専門職や正社員へのルートチェンジパス制度については、公平性を確保し、着実に機能しており、また導入している各種制度及び環境整備が働きやすい職場環境をもたらし、毎年一定以上の人材確保に繋げることができている。今後考えなければならない最も大きな課題としては、有期雇用者の5年超え無期雇用に係る制度設計において、多くの考慮すべき点(業務のマンネリ化、個人毎の能力の硬直化など)について対応を行う必要があることである。

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