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D社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(運輸業、卸売業)より

入社時に転換制度を文書で説明し、契約社員、さらには正社員への転換を図る

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 神奈川県 業種 運輸・倉庫業
従業員数 約130名 パート労働者数 8名
ポイント
  • 労働条件通知書に正社員転換制度を記載し、転換意欲を喚起する。
  • 事故の未然防止や業務改善のための教育研修の実施。
  • ペア制によるOJTとマニュアル整備。
  • 飲酒運転の未然防止によってコンプライアンスの遵守徹底。

(1)企業概要・人員構造

同社は昭和47年に倉庫会社の100%子会社として設立され、横浜、埼玉、千葉、大阪に営業所を構える運輸業の会社である。主な取り扱い種目は、配送、オフィス移転、産業廃棄物収集運搬、医薬品配送等である。

人員構成は、正社員約100名(男性約90名、女性約10名)、契約社員等約20名(男性約20名、女性若干名)、パートタイム労働者(以下、「パート」と略記する)8名(男性 8名)である。

組織は、主に運送業、引越業、本部に分かれており、運送業は約100名、引越業は約8名、本部は約20名である。

パートの多くは、運送業のドライバー職に従事している。1週間の所定労働日数はパートによって違い、3日又は4日、1日当たりの所定労働時間を8時間としている者と、1週間の所定労働日数は5日、1日当たりの所定労働時間を7時間としている者が半数ずつとなっている。社会保険は全員が加入要件を満たしており、全員加入している。

同社は宅配業でなく、かつ、重点サービスエリアを東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、栃木県、茨城県、群馬県としていることから比較的近距離の運送であり、所定外労働時間が発生しにくい。また、運行管理表に基づき休憩をしっかり取るよう各拠点の拠点長が指導している。

パートは、増員を目的として採用している。横浜拠点以外では各拠点の拠点長が採用面接を行い、通過した場合は本部に稟議書類が提出され、決裁、採用に至る。横浜拠点は本部が採用面接を行う。

契約期間は基本的には6か月としているが、本人の経験に応じて3か月とすることもある。契約の更新は個人ごとに行っており、契約満了日の1か月前までに拠点長が個別人面談を実施して結果を本部に報告し、更新する者は新たな雇用契約書を手交している。

ドライバー職のパートの仕事内容は、事務職に従事する正社員が作成した工程管理表に基づき荷物を運送する他、倉庫内の荷物整理や資材の片付け業務を主とする。正社員の仕事内容は、運送業務や倉庫内の整理整頓に加え、工程管理表を作成し、パートに対し業務指示を行う。事務職のパートの仕事内容は、基本的に正社員の指揮命令の下に業務を行い、正社員はこれを管理する。

パートの賃金は、時給制基本給、通勤手当、残業代で構成されている。時給は1,300 円~1,800円であり、精密機械の知識を習得している者には比較的高い時給が提示される。時給は、賞与の支給を検討する際や、正社員の昇格昇給を検討する際に、全体のバランスと拠点長の要望を考慮して見直しを行う。賞与は 1年以上勤続している者に支給され(職種別に一律の金額としており考課や勤続年数は反映されない。)、退職金は無い。賞与は月例賃金の手取り額の5分の1程度の額が支給されている。

パートの平均勤続年数は3年程度であり、10年程度勤続している者もいる。

(2)取組の背景

同社が属する業界全体として人員不足の傾向があるため、パートとして雇い入れた者で、優秀な人材は確保しておきたいという意向があり、長期雇用となるよう契約社員や正社員への転換の提案を行っている。

(3)取組の内容

労働条件通知書に正社員転換制度を記載し、転換意欲を喚起する

初回の労働条件を通知する際に、正社員の募集要項と、正社員への転換制度を説明し、正社員への転換意欲を喚起している。なお、転換制度については雇用契約書に記載されている。また、ドライバー職として雇用する者については、事務職への異動があることも説明し、雇用契約書に記載している。

パートが正社員に転換するためには、まず契約社員に転換する必要がある。勤続1年以上で本人が希望し、勤務態度や仕事への順応性の観点から拠点長の推薦があった場合、担当役員、社長の決裁により契約社員へ転換する。本人の申出はいつでもすることができるが、検討するタイミングは同社の予算の都合上、四半期に1度程度実施している。契約社員に転換すると、基本給が月給制に変わり、時間単価で換算すると約1割上がる。職務内容も、毎日同じルートでの運送でなく、その日ごとに異なるルートでの運送となり、業務の難易度が変わる。

正社員への転換は、契約社員として原則2年以上勤続している者を対象に、毎年1月頃に検討がはじまる。本人が希望し、拠点長の推薦があった場合、担当役員、社長、親会社の決裁により、4月1日付けで転換する。正社員への転換後は、担当する業務内容が大幅に広がり責任も重くなる。また、退職金の支給対象となる。

パートから契約社員への転換も、契約社員から正社員への転換も、ともに毎年2~3名程度の実績がある。

事故の未然防止や業務改善のための教育研修の実施

ドライバー職の事故防止のために、外部の講習会への出席をパートにも命じている。費用は全額会社負担としており、当該時間に対する時給も支給している。

社内では、安全講習として社内外の事故の事例をもとに未然防止策を検討する場を設けており、その議事録を社内で共有している。社内での講習は時間外での実施となるため、法定通り割増賃金を支給している。同社では人身事故は起きていないが、預かった荷物の破損や、書類の不備等があったときは都度本人から会社へ報告し、連絡を受けた事務職員が報告書を作成し、本人とその事務職員が一緒に所管部署へ提出し全体朝礼にて共有するなど、次の事故を防止するための対策を講じている。

ペア制によるOJTとマニュアルの整備

入社後、事務職に就いたパートは先輩社員とペアを組んで仕事を覚え、ドライバー職に就いたパートは、先輩パートや正社員と一緒に乗車し、道や顧客を覚えながら独り立ちする。

精密機器の管理、運送を行う部署は特殊な知識を必要とするため、業務マニュアルも用意されている。

飲酒運転の未然防止によってコンプライアンスを遵守する

全員、業務開始前にアルコールチェッカーによって基準未満かどうかを確認している。

稀に基準値を超えることがあり、その場合は倉庫内の業務等に就かせている。このとき、仕事の内容が変わっても時給は変更していない。

(4)成果と課題

パートとして入社した時点では、契約社員や正社員への転換に対する意欲を持っている人は少ないが、仕事のやりがいや上長の期待によって転換に至っている。

一方、契約社員や正社員への転換を拒む者もいる。主な理由は、時間の概念をもって仕事をしたい、責任の範囲を変える意向がない、土日休みを希望したいということが挙げられる。同社は契約社員と正社員は1年単位の変形労働時間制を採用しているため(年間所定労働日数260日)、1か月に1〜2日程度、土曜日に出勤する必要が生じる。その他に、正社員になると給与から控除される額が増えるという思い込みがあるケースもあり、この点については、事前の詳細な説明をしていく必要があると認識している。

同社の年齢構成をみると、30代前半から40代前半の層が少なく、若い層の採用を進めることも課題とされている。

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