ここから本文です

(株)イーストン

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(飲食サービス業)より

徹底した経営理念の共有に基づく人財育成

3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 北海道 業種 飲食店
従業員数 662名 パート労働者数 519名
ポイント
  • クレドに基づいた経営理念の共有と推薦シート制度、改善運動の実施。
  • 透明性、納得性の高い人事考課の実施。
  • 人財育成のための丁寧なOJT、計画的な研修の実施。

(1)企業概要・人員構造

同社は、昭和46年に創業した母体企業の外食事業部の拡大に伴い、平成2年に設立された。北海道エリア、東北エリア、関東エリアを中心に、8つの業態を地域の特性ごとに出店、直営で 36店舗展開している。現在は北海道発の企業の強みを活かして、関東・首都圏への出店に力を入れている。

従業員は、正社員、契約社員、パート・アルバイトの3つの雇用区分から構成されている。契約社員(パートタイム労働者。一部、パートタイム労働者でない者を含む)とパート・アルバイト(パートタイム労働者)は社会保険の適用の有無で区分される。パート・アルバイトは「スタッフ」と呼ばれている(以下、パート・アルバイトと契約社員をあわせて「スタッフ等」という)。人員構成は、学生4割、主婦3割、その他3割であり、週4~5日、1日4~5時間勤務の者が多数を占める。

正社員は、店舗展開エリア内での転勤がある。契約社員は雇用期間が6か月の有期雇用契約(更新有)で、エリアをまたいでの異動はない。パート・アルバイトは無期雇用契約であり、原則として採用店舗での勤務である。契約社員の契約更新時には、面談の実施による労働条件の確認、説明、書面の交付を丁寧に行っている。賃金はいずれも時給制で、交通費(通勤手当)の支給がある(上限1万円/月(札幌の場合)、エリアにより異なる)。

雇用区分

呼称 雇用区分 雇用契約 社会保険の適用の
有無
異動の有無 賃金 通勤手当
契約社員 契約社員 有期(6 か月)、 更新有 時給制 支給
スタッフ パート・ アルバイト 無期 時給制 支給

業態や店舗規模により異なるが、1店舗には、正社員2名にスタッフ等10~12名程度、正社員5~6名にスタッフ等20~25名程度といった人員配置が一般的である。店舗勤務の正社員が店舗マネジメント等に従事するのに対し、スタッフ等は接客や調理のオペレーションに従事している。

福利厚生として、正社員同様の食事補助や1年以上勤務しているスタッフ等は社員割引の適用がある。

(2)取組の背景

同社には、全従業員が携帯する独自のクレド「VOE」(VALUE OF EASTONE)があり(後述)、その中には4つの「従業員への約束」が掲げられている。約束の1つには、「働く仲間全員が最も大切な人財であると考えます。同社の価値観を理解し、実践した人財を認め、報償します」という内容がある。全従業員の7割を占めるスタッフ等の戦力化を重要なテーマと考え、計画的な人材育成を推進している。

(3)取組の内容

全従業員でクレドの共有

従業員(スタッフ等を含む)全員が「VOEカード」を常に携帯し、行動指針としている。同カードは、経営理念をはじめ、顧客へのサービスの重要ポイント「サービスの3ステップ」、“一生勉強”や“仲間を好きになる”など14項目からなる「BASIC(行動基準)」、従業員への約束(前述)など6項目の内容で構成されている。売上や利益の増大だけでなく、方向性の統一を重視し、毎日のミーティング時に必ず全員でテーマを決めてスピーチすることを徹底している。行動に迷った時にはこのカードを見る習慣が浸透し、壁にぶつかったときにも従業員の支えとなっている。

クレドに基づき、他の従業員を賞賛する「推薦シート」制度を導入し、四半期ごとに表彰(VOE賞)を行っている。VOE賞の受賞者には、3回の受賞でバッチが付与され、賞金などが贈られる。直近のVOE賞受賞者10名のうち、スタッフ等が9名(契約社員1名、パート・アルバイト8名)を占める。過去には、外国人スタッフの受賞者もいた。受賞者は、推薦者の氏名と推薦の理由とともに、顔社員入りの受賞コメントが社内報紙面で紹介される。受賞コメントには、「自信」や「励み」という言葉とともに仲間への感謝の言葉が多く語られており、モチベーションの向上とコミュニケーションの円滑化につながっている。

透明性、納得性の高い人事考課の実施

スタッフ等には、年2回の人事考課を実施している。接客と調理のそれぞれに用意された人事考課シートには、スタート時の時給から各レベル(トレーニー、クルー A・B・C、スタートレーナー)別の時給金額が記載されており、どのレベルになれば時給がいくらになるか分かるようになっている。

共通項目として、“シフトは守っているか”、“身だしなみのルールを守っているか”など7項目が定められており、基準を満たしていなければ昇給の対象とならないことが明記されている。レベル別には、入社直後のトレーニーからクルーA~クルーCまでは24 項目で、スタートレーナー(トレーナー資格試験(筆記・実技)に合格していることが条件)は11項目が追加された35項目で、それぞれ評価される。

トレーニー、クルーA~クルーCの評価は、必要な業務レベルについて、スタートレーナーと店長がそれぞれ行う。習熟度が基準に達しない場合は復習ができるように、項目ごとに業務マニュアルの参照ページが記載されている。人事考課シートは、被評価者1名につき1セットずつあり、管理は店長(責任者)が行っている。

丁寧なOJT、計画的な研修の実施

スタッフ等を対象としたOJTは、入社後7日間のカリキュラムが決められており、試用期間終了テスト、メニューテスト、商品知識テストもあり、丁寧に実施されている。

Off-JTとしては、入社時研修、トレーナー研修が行われている。

入社時研修

スタッフ等は個々に入社時期が異なるため、OJTの他に本社で月1回の集合研修を実施している。入社から3か月以内のできるだけ早い時期の受講を推奨している。研修では、経営理念や業務に取り組む心構えなどを中心に、約3時間かけた丁寧な教育を実施している。

トレーナー研修

トレーナーに任命された者には、人材育成、顧客管理、業績管理等のマネジメントの基礎など幅広い知識を習得するための研修が実施される。トレーナーは、金銭管理も行う(店舗内に限る)。店舗マネジメントの一部を行えるスタッフ等を育成することで、正社員が店舗オペレーションに入らなければ店舗が回らないという事態は少なくなり、担うべき本来の職務に注力することが可能となっている。

店舗外研修(産地研究会)

北海道の食材を使った多彩なメニューの提供を強みとする同社は、スタッフ等を含めた全従業員を対象に店舗外研修を実施している。スタッフ等にも、店舗で提供される食材の産地見学やチーズ作りの体験、飲料メーカーが実施する研修等への参加機会が与えられている。接客の最前線にいるスタッフ等は、顧客から食材や産地について質問されることもあるため、こうした店舗外研修が、商品説明等のサービス向上に活かされている。さらに、自ら学ぼうとするスタッフ等の意欲の向上にもつながっている。

改善活動の実施

スタッフ等を中心とした改善活動(HERB活動)を行っている。これは、店舗ごとに1年間の改善目標を立て、目標達成に向けたミーティングを定期的に行うというものである。改善目標は、サービスの向上、売上の向上、ムリ・ムダ・ムラを排除した作業時間短縮への取組、労働時間の削減を目標にしたシフトの改善など、多岐にわたる。

改善過程を支援するため、会社は、月に1回の研修(HERB研修)を実施している。また、1年に1回、成果発表会というイベントを開催しており、各店の成功事例を共有している。優れた取組には、報償が与えられている。

正社員転換推進制度

本人が希望し、店長推薦があることを条件に、幅広く正社員転換を推進している。店長からの推薦があった者については、人事部でヒアリングを行い、正社員転換への本人の意思を確認する。その後は、筆記試験(調理担当者は実技試験も有り)が行われ、営業責任者面接、社長面接が行われる。直近1年間では、10名程度のパート・アルバイトが正社員に転換した。また、パート・アルバイトから契約社員へは、同期間に20名程度が転換している。

なお、正社員への転換は、パート・アルバイトから直接チャレンジすることが可能である。正社員転換へのニーズの把握は、人事考課実施時にもきめ細かく聞いている。また、社内報でも転換を推進している。

事例集(VOE)の発行

日々の感動、驚き、勉強になったこと等のエピソードが事例集としてまとめられ、全店舗・全従業員で共有されている。各店舗の取組や顧客からのお礼の手紙の掲載など、経営理念に沿ったさまざまな成功体験を知ることで、従業員のさまざまな気づきにつながっている。

メンタルヘルスへの取組

外部機関との契約により、スタッフ等を含む全従業員が利用できる電話やメールによるメンタルヘルス相談窓口がある。携帯用のカードや店舗内の掲示により利用の周知を図っている。会社としての対応が必要な場合には、店舗・人事部等が連携して、迅速かつ丁寧に対応を行っている。

(4)成果と課題

全従業員の戦力化に向けた計画的な教育訓練や改善運動等を通じて、店舗を超えて会社全体の方向性が統一され、円滑なコミュニケーションが図られている。従業員の努力が会社の成長に実を結び、現在、関東エリア・首都圏への出店も順調に進んでいる。しかし、本社と店舗の距離的な問題もあり、全社的な取組をどのように一体感を持って実施していくかが今後の課題とされている。

また、スタッフ等には若い世代が多いため、20代にキャリアを積み上げてきた者が、結婚や出産などを理由に離職するケースがある。これは会社にとって大きな損失であり、ライフイベントを経ても継続して勤務できる職場づくりが重要だと認識している。現在も労働時間の上限を決めており、会社全体で労働時間の削減と生産性の向上を目指し、働きやすい職場づくりに取り組んでいるが、さらに育児休業制度の充実などワーク・ライフ・バランスの推進にも取り組んでいきたいと考えている。

一覧へ戻る