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みやぎ生活協同組合

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(小売業)より

全員正職員という考えの下での労働条件、雇用管理改善の取組

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
所在地 宮城県 業種 各種商品小売業
従業員数 約6,650名 パート労働者数 約5,750名
ポイント
  • 正規職員と同一の役割等級制の適用と等級に応じた時給設定。
  • 均衡を考慮した賞与、退職金、福利厚生。
  • スキルマップを活用したパートの評価。
  • 教育訓練の充実。

(1)企業概要・人員構造

同生協は、宮城県学校生協(1952年設立)と宮城県民生協(1970年設立)が合併して1982年に誕生した。現在、宮城県内に46店舗、10(共同購入部)センター、6(学校部)支所を有し、事業高は1,000億円を超える。メンバー数も66万名余と県内世帯数の70.4%が加入しており、全国の生協で最も高い加入率を誇っている。

職員のうちレギュラー職員(正職員)は、本部採用で、転勤がある。レギュラー職員は、店長、センター長、統括、部長等のマネジメント系職位のほか、バイヤー、スーパーバイザー、店舗運営統括、管理部門スタッフへのキャリアを展開することが期待されている。

パート職員(パートタイム労働者)は、地域、職種が限定されており、店舗別に、販売員、キャッシャー、店内加工、共同購入センターの配送、生産工場やセットセンターの仕分け、本部の事務等の職務を約して採用されている。雇用期間の定めはない。

パート職員は、週所定労働時間が30時間以上のAパート、20時間以上30時間未満のBパート、20時間未満のCパートの3つに分かれているが、職務の内容は同じである。時給には職種や地域による違いはなく、早朝、夜間等の時間帯に対して別途に手当が支給されている。

10年ほど前から毎年1回、パート職員からレギュラー職員に採用する内部公募を実施してきたが、2013年度からはパート職員から勤務地限定型の正職員(エリア職員)への登用制度が開始され、店舗等の部門チーフとして配置されている。

なお、標準的な店舗は、店長、副店長、各部門チーフと担当者等のレギュラー職員・エリア職員が10名前後と、各職種のパート職員約100名の体制である。

(2)取組の背景

同組合は「経済が拡大すれば、しあわせも拡大する」という考えを見直し、みんなで幸せを共有する「共助社会」の実現をめざしている。また、メンバー(組合員)の共通の願いやニーズを満たすための助け合い(相互扶助)の組織でもある。そうした考えから、従業員全員が正規職員という考えの下に、労働組合(全員が労働組合員)とも協議を重ね、性別、雇用形態に関わらず能力が発揮でき評価される組織、また家庭責任を負う職員が働き続けられる職場の整備を目指して、労働条件、雇用管理の改善に取り組んできた。

また、生協の事業を進めるうえで、全職員の75%を占める女性が大きな役割を果たしており、女性の能力発揮が特に重要と考えて、取組を行ってきた。

(3)取組の内容

同一の役割等級制の適用と等級に応じた時給設定

今般、これまでの職能資格制度を廃止して、仕事を基準にしたレギュラー職員・エリア職員、パート職員共通の役割等級制に移行することになっている(2014年4月から実施予定)。全職員がみやぎ生協の正規の職員であることを意識づけるために、パート職員の呼称も「パートナー職員」となる(制度変更前のため、以降も「パート職員」と記載する。)。

新しい役割等級制では、レギュラー職員については役割に応じ、全体で10段階(一般I~III、中級管理I~III、上級管理I~III、経営管理)のグレードが定められている。エリア職員はこのうちの6段階(一般I~III、中級管理I~III)が適用される。今回から、これまでグレードのなかったパート職員にも、一般I~IIIが適用されることになった。

パート職員にはグレードに応じた時給が設定され、人事考課に基づく新たな昇給制度も導入される。今までは最大で50円までしか昇給できなかったところ、新制度では、最大で120円まで昇給が可能になっている。

また、役割の考え方に従い人事考課も変更する。これまでの業績に偏重しがちだった人事考課から、「その役割にふさわしい行動をとっているか」、「結果を出すためにどのように行動したか」といったプロセスを重視したものとなる。役割基準の人事制度とプロセス重視の人事考課の導入により、一人ひとりの職員がそのステージで考えて発揮する力が、処遇、事業とのバランスをもたらし、みやぎ生協の次の成長につなげることを狙っている。

均衡を考慮した賞与、退職金、福利厚生

賞与については、数年前から優先的に改善を図ってきた。経営状況が苦しい時でも、パート職員の賞与はできるだけ下げず、上げる時はパート職員の賞与を先に上げてきた。その結果、現在ではレギュラー職員の半分程度の月数が支給されている。

退職金も、2006年からパート職員に導入されている。退職金額の算定は、時給を基礎として行うので、役割等級の導入に際し退職金規程は変えていないものの、時給の昇給額が大きくなる結果、実質的には退職金額の増加が見込まれている。

福利厚生は、すでにレギュラー職員・エリア職員とパート職員が同等になっている。勤務時間の差を考えると、パート職員の方が有利になっている部分もあり、モチベーションアップにつながっている。育児休暇、介護休暇、慶弔見舞金、永年勤続表彰、労災上積、契約スポーツ施設利用等が一通り整備されている中で、特徴的な制度として保育所延長保育の費用補助がある。これは、生協内の勤務により延長保育をせざるを得ない場合にかかった費用の半額(1か月1万円を上限)を補助するものである。

スキルマップ(ガイドブック)を活用した評価

2001年から各部門の現場の協力を得て、部門別のスキルマップ(ガイドブック)を作成してきた。パート職員に評価制度を導入するための前提として作成し始めたものである。スキルが上がれば時給が上がるという考えの下に、ガイドブックを活用して年2回面接を実施している。

評価制度の見直しに当たり、ガイドブックにある50項目のうち、今年は10項目と情意(仕事の姿勢、職業人としての基礎能力)の2つの視点をシート化した。ウエイトは半々として100点満点で評価し、S、A、B、C、Dの5段階の絶対評価を行う。一方、レギュラー職員・エリア職員の評価は、コンピテンシー、成果、プロセスの3つの視点から行われており、パート職員とは少し異なっている。

教育訓練の充実

新規採用のパート職員に対しては、採用直後から教育店舗で3か月の実務研修を行っている。

店舗では「パートナー制度」を設け、OJT担当者とは別に、新人に積極的に関わってくれる「パートナー」を指名して職場定着を図っている。その後、試用期間(3か月)終了後に1日、パート職員を対象にした新採用者研修を実施している。これは、全パート職員を対象としており、必ず参加させている。

内容、目的は、(1)パート職員同士の交流を深め、職場で元気に働いていただく、(2)みやぎ生協の目指すもの、生協や産直についての学習、(3)就業規則の説明等である。

また、自己啓発支援としては、通信教育の受講を推奨しており、パート職員にもレギュラー職員・エリア職員と同様の支援を行っている。補助率は、教育コースによって異なる。

内部公募によるレギュラー職員・エリア職員への採用

10年ほど前から、6か月以上勤務しているパート職員等(嘱託やアルバイトも含む)からレギュラー職員への内部公募を実施している。2012年度は25名の応募に対し7名、2013年度は30人の応募に対し8名が採用された。

また、2013年度にエリア職員の雇用区分を設けたのと同時に、1年以上勤務しているパート職員等を対象として、エリア職員の内部公募も開始した。この1年間にすでに17名の応募から11名のパート職員がエリア職員に採用され、次年度初めに向けても10数名の新たな公募を行っているところである。

いずれの公募においても、募集内容は全職員に対し公示され、複数回の選考を経て採用が決められる。エリア職員の公募の場合、生協や服務等に関する知識、応募部署に業務上必要な知識、実技(応募部署が店舗の場合)の試験からなる一次選考、適性検査と部長面接による二次選考が行われている。

(4)成果と課題

新しい人事評価制度はすでに完成しているが、実際の導入は、2014年の4月からの予定である。当面は、この新制度の運用と定着化に努めていく。新制度により、全員が正職員という考え方が定着するとともに、女性の管理監督者が増加することが期待される。

その他の制度は、以前から実施しているが、パート職員のモチベーションアップ等の効果も出ているので、今後も均等・均衡処遇の観点から続けていく予定である。

今後の課題としては、賃金水準の問題が大きい。宮城県の最低賃金が毎年10円前後上昇し、時給で優位性を訴求するのが困難になっている。採用難が続いているが、単なる時給改善では効果はあまり期待できないため、人材確保に向け、幅広く雇用管理改善に取り組んでいきたい。

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