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G社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

キャリアアップ制度により、日々の仕事を進めながらの高度なスキルの獲得、提供サービスの質の向上・均一化が実現

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
7.ワーク・ライフ・バランス
所在地 東京都 業種 訪問介護事業等
従業員数 非公開 パート労働者数 非公開
ポイント
  • キャリアアップ制度(4段階のステップ級による評価制度)の導入。
  • 非常勤ヘルパー→有期雇用の常勤ヘルパー→無期雇用の常勤ヘルパーへの転換。
  • 業務関連知識習得のための自己啓発費用の補助。
  • 「特別休暇」の付与。

(1)企業概要・人員構造

同社は医療・福祉に関連する様々な事業を展開しており、主要事業の1つに訪問介護事業がある。また、全国の支店ごとにいくつかの拠点を構えており、その7割で訪問介護事業を実施している。

訪問介護事業の各拠点には、無期雇用の常勤職員(正職員)である拠点長・サービス管理者・サービス提供責任者、有期雇用の常勤ヘルパー、非常勤ヘルパーを配置している。利用者数によっても異なるため一概には言えないが、各拠点のおおよそのヘルパー数は計10~30名程度である。

有期雇用のヘルパーは、月間平均労働時間が 170時間・月給制の「常勤ヘルパー」、同170時間未満・時給制の「非常勤ヘルパー」に分かれており、原則としてまずは非常勤ヘルパーとして採用する。なお、非常勤ヘルパーの実際の月間平均労働時間はおおよそ75時間となっている。

仕事内容でみると、常勤ヘルパーは通常のヘルパー業務に加え「非常勤ヘルパーの育成・指導」、「拠点内の事務作業」、「非常勤ヘルパーが休んだ場合の代替要員としての対応」、「土日・祝日など、非常勤ヘルパーが少ない場合の対応」なども担当するところが、非常勤ヘルパーとは異なる点である。

(2)取組の背景

訪問介護事業において、ヘルパーが果たす役割は非常に大きい。利用者に対して直接的にサービスを提供する者はヘルパーであり、ヘルパーのスキルはサービス利用者の満足度に直結するためである。

他方、ヘルパーは40歳代~50歳代の主婦層が多いためパートタイム勤務を希望する比率が高く、全ヘルパーに占める非常勤ヘルパーの比率は85%程度である。しかしながら、労働時間は利用者の意向や状況(たとえば「突然の入院に伴い介護が不要になる」等)により左右されるなど、ヘルパーの「働きたい時間」と拠点側の「働いてほしい時間」にはすり合わせが必要となる。

また、体力が必要とされる厳しい仕事であることなどを理由として、退職者も少なくない。このような状況を踏まえると、ヘルパーのスキル強化を行うことはもちろん、働きやすくやりがいのある職場を整備することでモチベーションを向上させ、定着率を高める取組は不可欠であり、同社では特に「介護技術」の向上に着目してきた。

(3)取組の内容

キャリアアップ制度(4段階のステップ級による評価制度)の導入

同社では非常勤ヘルパーのみを対象とした「キャリアアップ制度」を導入している。この制度の大きな特徴は、「人事考課と昇給制度」が一体化している点にある。

キャリアアップ制度では、ステップ級を1~4までの4段階に区分しており、各々のステップ級に「目指す人物像」と「介護スキルの達成基準」を設けている。具体的には、介護職員初任者研修資格(旧ホームヘルパー2級課程以上)を保有する段階の「ステップ1」から、介護福祉士と同等レベルのスキルを保有する段階の「ステップ4」までである。

「介護スキル」については、同社にて作成している「介護スキル基準一覧表」がベースとなっている。

この一覧表は、ステップごとに各介護サービスに求められるスキルを整理したものであり、入社時はステップ1として位置付けられる。各ステップとも上位のステップ級に上がるためには、介護サービスに一定の時間従事することが求められる。

同社の場合、介護サービスの時間をポイントに置き換えており、1時間につき1ポイントとして、500時間を獲得した場合に受験資格が与えられる。

受験資格が付与された後は面接と筆記試験に合格する必要があり、この際には日頃の勤務態度も勘案される。

面接は拠点長が「介護スキル基準一覧表」を用い、ヘルパー本人のスキルが上位のステップに求められるスキルに足りているかどうか、また、目指す人物像に達成しているかどうかを判断していく。

面接に合格すると知識面の確認として筆記試験を受験する。

面接・筆記試験を受験する機会は、ステップ2~ステップ3は毎月、ステップ4は半年ごとに設けている。ただし、新規入社したヘルパーがステップ2を受験するためには「入社後、6ヶ月以上経過していること」が条件となる。

なお、各ステップ級に合格すると、一定金額昇給することになる。

非常勤ヘルパー→有期雇用の常勤ヘルパー→無期雇用の常勤ヘルパーへの転換

入社時は原則として全員を非常勤ヘルパーとして採用するが、拠点内の有期雇用の常勤ヘルパーが不足しており、かつ「入社後6か月以上経過し、月間平均170時間以上の勤務が可能であり、本人が希望する」場合には、拠点長との簡単な面接を経て有期雇用の常勤ヘルパーに移行することができる制度を実施している。

また、有期雇用の常勤ヘルパーには、無期雇用の常勤ヘルパーへの転換制度が適用される。転換候補者になるための条件は「サービス提供責任者であること」または「勤続年数1年以上であること、早朝・深夜・土日祝の勤務が可能であること」、「他サービスへの異動が可能なこと」であり、自己申告に基づき転換できる。

これまでの転換者数は「非常勤ヘルパー → 有期雇用の常勤ヘルパー」、「有期雇用の常勤ヘルパー → 無期雇用の常勤ヘルパー」ともに、何千人にも上っている。

業務関連知識習得のための自己啓発費用の補助

訪問介護という事業の特性上、能力開発はOJTにより行っている。具体的には、ヘルパーが利用者宅を訪問する際にサービス提供責任者やベテランのヘルパーが同行し、直接指導している。

なお、無期雇用・有期雇用、常勤・非常勤を問わず、介護福祉士やケアマネジャーといった業務関連資格を取得するための通学講座や通信教育等をサポートする制度がある。

「特別休暇」の付与

無期雇用・有期雇用、常勤・非常勤を問わず、通常の年次有給休暇に加えて「学校行事休暇」等を付与している。

「学校行事休暇」制度は、小学生の子どもを持つ家族を対象としており、年間3日間の休暇(無給)を取得できる。

(4)成果と課題

「介護スキル基準一覧表」では、同社独自のサービス提供のスタイルを加味しながら求められるスキルを整理しており、ステップ4では介護福祉士と同等レベルのスキルを設定している。このため、ヘルパーは日々の仕事を進めながら、より高度なスキルを身につけることができるようになったとともに、同社の提供サービスの質の向上並びに均一化を図ることができた。

また、ヘルパーはタイムカードを届けたり、定例ミーティングに参加する時を除くと、利用者宅と自宅の直行直帰型勤務であるが、キャリアアップ制度によりステップアップのための技能試験や面接を受験するためにヘルパーが拠点を訪れる回数が増えた。このことにより、拠点長やサービス提供責任者とヘルパーのコミュニケーションが活発化し、仕事ぶり等について話をする機会が増え、業務をスムーズに運用できるようになった。

一方で、ステップアップを望まず、技能試験と面接を受験しないヘルパーも見受けられる。拠点長側からも「業務が忙しく、面接の時間を確保することが難しい」との声も聞こえてくる。キャリアアップ制度は「ヘルパー本人のスキルアップ、これに伴う提供サービスの質の向上」を目指して設定している制度であることから、同社では同制度のさらなる浸透が課題であると認識している。

その他、直行直帰型の勤務形態の中で管理者が労働時間をすべて把握することは難しいが、現状の自己申告に基づいた移動時間の把握方法について今後の対応策を考えていきたい。

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