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B社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(運輸業、卸売業)より

パート社員とのコミュニケーションを重要視、契約更新時の面談や相談体制の充実で職場環境改善に寄与

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 広島県 業種 運輸・倉庫業
従業員数 約4,100名 パート労働者数 約2,800名
ポイント
  • 年次有給休暇取得促進により定着率向上を目指す。
  • 契約更新毎に面談を実施。
  • 職場コミュニケーションや相談体制の充実。

(1)企業概要・人員構造

同社は昭和30年設立、荷主の物流業務を一括で請け負う 3PL(サードパーティロジスティクス)物流サービス、同社の運航路線を複数の荷主のために効率活用する共同配送などの事業を展開している。西日本を中心に関東エリアまで41の物流センターを持ち、「食品物流」を得意分野として外食チェーンやスーパー、コンビニといった荷主を主要取引先としている。

拠点である物流センターにはいくつかの「営業所」が置かれ、パート社員(パートタイム労働者)は物流センター内の各営業所でドライバー、庫内作業、事務作業に従事する。

各営業所は独立採算制を採り、単数又は複数の物流センターの管理監督者である統括と営業所長により立案される年度計画と予算に沿って運営される。パート社員の採用、賃金等は、年度計画内の採用計画及び予算の範囲内で営業所長が決定する。

パート社員は週所定労働時間により、保険適用のない20時間未満の「アルバイト」、雇用保険適用の20時間以上30時間未満の「パート」、雇用保険、社会保険とも適用の30時間以上の「準社員」の3つに区分される。パート社員の希望する労働時間に対応する区分であり、役割分担や職務の違いは設けていない。区分比率は、「アルバイト」約35%、「パート」約45%、「準社員」約20%といった構成である。

ドライバーはほとんどが正社員だが、少数のパート社員には「準社員」が多く、またフルタイム勤務の者が多い。フルタイム以外の者は、遠距離のシフト及び配送ルートには加わらず、近距離の簡易な配送を担当する。庫内作業のパート社員は、検品やピッキング作業に従事し、データ入力等の事務作業を兼任する者が多い。庫内作業、事務作業ともに、「アルバイト」「パート」が多く、正社員の監督・指示の下に業務を行っている。パート社員に占めるドライバーの割合は約10%程度であり、ほとんどが庫内作業者と事務作業者及びその兼任者で占められる。

パート社員の構成は、女性は30歳代から40歳代の主婦層が目立ち、男性はフリーターが多いが、学生やWワークの者などもおり、構成や年齢層も様々である。

また、賃金は時給制で、賞与、退職金はない。

パート区分

パート区分 週所定労働時間 保険適用 構成比
アルバイト 20時間未満 なし 約35%
パート 20時間~30時間未満 雇用保険 約45%
準社員 30時間~フルタイム 雇用・社会保険 約20%

(2)取組の背景

物流センターは24時間稼働する拠点も多く、季節による人員需要の波が大きい業種であることから、幅広い時間帯と時期をカバーするマンパワーが必要である。そのため、パート社員の労働力確保は大変重要となっている。

しかしながら、肉体的負荷のかかる作業や、食品を扱うため、常温以外にも冷凍やチルド温度帯での作業もあり、近年の採用難もあって、パート社員の新規確保は難しくなってきている。

そこで、パート社員の職場環境を向上し、働きやすい環境づくりを目指すことで、定着化を図ることが大きな課題となってきた。

(3)取組の内容

年次有給休暇取得促進により定着率向上を目指す

慢性的な人手不足の状況下において、これまでパート社員の年次有給休暇取得は進んでいなかった。働き続けやすい環境を構築するための一環として、パート社員の年次有給休暇取得促進を、一般事業主行動計画4の目標として定め取り組んでいる。各人の取得状況を把握する有休カードを作成し、チェックとフィードバックを繰り返しながら、積極的な声掛けにより取得促進を支援している。

現場においては人手不足に拍車が掛かることも懸念されるが、長期的には働きやすい魅力的な職場づくりにより定着化が進み、労働力の確保がなされると認識し、実施している。

契約更新時に面談を実施、職場環境を聴取

パート社員は6か月間の期間雇用であり、契約更新の1か月前までには更新手続きを完了するよう本社より各営業所へ通達している。更新に当たっては、営業所長や副所長などパート社員の労務管理者が各パート社員と面談を実施し、継続就業の意思確認の上、労働契約書の交付のほか、勤務内容を顧みて注意点があれば指導し、加えて職場環境において抱える悩みや不平、不満を聴取する。パート社員の働きやすい環境づくりのため、聴取した内容は最大限対応している。

また、勤務成績が優良と判断された者は、各営業所長の裁量により次契約期間から昇給がなされ、面談時にその旨の説明も行う。

  • 次世代育成支援対策推進法に基づき、事業主が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たって定めた計画

職場コミュニケーションや相談体制の充実

パート社員が長く働き続けやすい職場づくりのためには、パート社員の声を聴く機会を増やすことが重要との認識から、いくつかの取組を実施している。

職場単位での、正社員、パート社員を含めた懇親会の開催を推奨し、会費の一定額を会社が負担することとした。現場では繁忙期を避けて不定期に開催され、親睦を深めながら本音の声を聴く良い機会となっている。

また、正社員である管理職が、パート社員を含めた部下とのコミュニケーション力や聴く力を高めるため、外部講師を招いての研修や勉強会を行っている。管理職はこれまでの対話姿勢を見直す機会となり、パート社員からの相談対応の改善や気構え等を身に付けることで、十分な対話のある職場構築を目指している。

さらに、ハラスメント対策と併せホットラインを開設、各営業所内にポスターを貼るなどして周知している。直属の上司や営業所長に言えないようなことを本社の人事教育部窓口に直通電話で相談できる。月に1件程度の相談件数ではあるが、職場以外に相談窓口を設けることで、多方面から職場の人間関係や環境改善に役立てるため取り組んでいる。

職場コミュニケーションや相談体制

対象単位 取組内容 目的・期待する成果
職場 職場で懇親会を推奨
会費の一定額を会社が補助
職場内の親睦を深める
管理職 部下に対するコミュニケーション力
向上の研修会等に参加
パート社員の相談対応改善、十分に対話のとれた職場構築
会社 本社に相談窓口を設置・周知 職場以外に相談先を設置することで多様な相談に対応

柔軟なシフト構築

幅広い時間帯で繁忙期にも対応できるシフトを構築するために、できるだけ多くのパート社員を確保し、柔軟にシフト編成するよう工夫している。週1日3時間からの勤務でも可とし、勤務人員が薄くなる時間帯に対応できる候補者を多くする。シフト編成作業は煩雑になるが、パート社員の勤務希望を受け入れつつ、業務遂行できるシフト構築を行っている。

積極的な正社員転換

意欲のあるパート社員は、積極的に正社員登用を行っている。

毎年4月に、勤続1年以上で、本人が希望し、所属長の推薦、面談選考等の要件を満たしたパート社員を正社員へ登用する仕組みを制度化し、就業規則により周知している。

積極的に正社員転換を進めるため、制度は柔軟に運用しており、営業所長推薦による随時登用も実施されている。なお、昨年の正社員登用人数は約250名であり、多くがフルタイム勤務のドライバーである。

ドライバーに対する教育研修と報奨金制度

ドライバー職に就くと顧客や取引先との対応があるため、入社時に14日間の挨拶やマナーに関する研修を正社員同様に受講する。また、安全運転教育も正社員同様に機会が与えられており、本社に設置されている安全教育部が月1回各営業所を回り、講習会などの安全教育を実施している。

さらに1年間無事故であった場合は、報奨金が支払われる制度もあり、安全運転を推進している。

(4)成果と課題

近年の人材確保難を受けての取組であるが、職場に浸透しつつあり、今後、一定の成果が出てくるものと期待している。これからも人員の確保と定着に向けた施策を講じ、長期的視点に立って、パート社員が働きやすい職場環境づくりを行っていくことが肝要と考えている。

今後は、現場におけるOJTをマニュアル化するなど教育訓練をより充実させていくこと、作業の効率化・標準化を進め、パート社員の職務を遂行しやすくすること、能力・成果主義の考え方に立った処遇の制度も整備することにより、働き続けやすい環境構築を行っていきたい。

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