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(福)杏樹会・杏樹苑

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

職員のニーズに合わせて働きやすい就業形態と労働環境を構築、質の高い施設運営とサービス提供につながり、自治体・利用者からも高い評価

1.労働条件の明示、説明
2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 埼玉県 業種 訪問介護事業等
従業員数 187名 パート労働者数 92名
事業概要 職員のニーズに合わせて働きやすい就業形態と労働環境を構築、質の高い施設運営とサービス提供につながり、自治体・利用者からも高い評価
ポイント
  • ヘルパー自身の就業日時ニーズを尊重した雇用契約と勤務日時設定。
  • ヘルパーの要望を汲んだ働きやすい労働環境作り。
  • 福利厚生制度や能力開発機会は正職員と同一に提供。
  • 働き甲斐につながる工夫を込めた評価システムと賞与支給の実施。

(1)企業概要・人員構造

同会は、埼玉県内7か所の施設で高齢者福祉事業と保育事業を行っており、このうち入間市にある杏樹苑では、訪問介護事業のほか介護老人福祉施設、通所介護、居宅介護支援などの高齢者福祉事業を複合的に運営している。

正職員は施設ごとに採用されるものの、施設間の人事異動は経営の必要に応じて実施されている。正職員の給与は、基本給に加え資格手当、勤務形態手当、家族手当等が支給されている。

一方、準職員(パートタイム労働者)は、施設ごとに職種と勤務場所を約して採用され、本人の希望を踏まえて雇用契約の変更を行うケースを除き人事異動や職種転換はない。時間給は職種ごとの地域賃金相場を基準に施設ごとに決定されている。

杏樹苑では、正職員95名に対して準職員92名の職員構成で、週所定労働時間では、30時間未満が88名(95.7%)、30~35時間が4名(4.3%)となっている。訪問介護の職員構成は、正職員1名(サービス提供責任者)、準職員13名(内1名がサービス提供責任者)で、準職員のほとんどが週30時間未満の契約である。

(2)取組の背景

同会は、平成11年の法人設立以降10年余の間に、杏樹苑を初めとして7か所もの高齢・保育の施設を入間市内とその隣接地域に開設してきた。その中には地域包括支援センターなど地域自治体からの受託事業も複数含まれており、次年度にも公設保育所を受託運営することが予定されている。

このように、同会がその施設運営に関して自治体や地域利用者から高い支持を得ているのは、旗艦施設としての杏樹苑が法人の運営方針にも掲げている質の高いサービスを提供し続けてきた成果であり、その大きな要因は、就業環境を整備し能力開発機会を積極的に設けるなど、介護職員の能力発揮につながる諸施策を進めてきたことにあると考えられる。

(3)取組の内容

ヘルパー自身の就業日時ニーズを尊重した雇用契約と勤務日時設定

ヘルパー用に設計された「就労可能申告書兼雇用契約書」に、就労可能曜日と時間帯、週当たり勤務日数を記載し、これを雇用契約期間における勤務日と勤務時間数設定の目安として労使で確認している。

毎月作成する「月間勤務予定表」は、訪問サービス予定をもとに上記の「就労可能申告書」に記載した勤務目標に近づくように作成している。またこの「月間勤務予定表」は、1か月ごとに自動更新される「雇用契約書」の添付書類として位置づけられ、雇用契約における勤務日及び勤務時間とされている。

契約書類における勤務日時の取り扱い

書類の種別 作成時期等 勤務日時の扱い
就労可能申告書
兼雇用契約書
  • 入職時に作成
  • 契約期間は「月間勤務予定表」によると記載
  • 毎年4月に同書式で書き換え
就労可能な曜日、時間帯及び週当たり勤務日数を記入
雇入通知書
  • 入職時に作成
  • 契約期間は1か月(「月間勤務予定表」の期間)
勤務日数及び勤務期間は別添「月間勤務予定表」に記載と表示
月間勤務予定表
  • 毎月作成し、雇用契約書の別紙として位置づけ
「就労可能申告書兼雇用契約書」に記載した、勤務可能な曜日、時間帯及び週当たり勤務日数に極力一致するように予定を作成

就労可能申告書の書式(抜粋)

可能曜日に○ 就労可能な時間に○
  AM8    9    10    11    12    PM1    2    3    4    5    6    7    8時
  AM8    9    10    11    12    PM1    2    3    4    5    6    7    8時
  AM8    9    10    11    12    PM1    2    3    4    5    6    7    8時
  AM8    9    10    11    12    PM1    2    3    4    5    6    7    8時
  AM8    9    10    11    12    PM1    2    3    4    5    6    7    8時
  AM8    9    10    11    12    PM1    2    3    4    5    6    7    8時
1週間の
勤務予定日数
概ね週    回    また    1回    時間    不定期

また、社会保険加入について本人の希望に沿えるように考慮し、週30時間を見据えた勤務実績となるように管理者が調整している。

ヘルパーの要望を汲んだ働きやすい労働環境作り

登録型ヘルパーとして訪問サービス提供予定に従って勤務予定表を作成しているが、1日の訪問サービス開始前及び終了時刻後の各30分を労働時間に組み入れて、出勤時と退勤前には施設内のヘルパーステーションで情報確認と資料整理の業務に当たらせている(文末写真参照)。ただし、訪問先が施設から遠距離にある場合には直行又は直帰としている。

また、訪問予定がキャンセルされた場合は、勤務予定時間をそのまま記録整理など他の業務に当てることを原則にしているが、代替業務がない場合には6割の休業補償を支払っている。

さらに、訪問には施設の車両(乗用車・自転車)を使用させており、ガソリン、保険加入、事故対応なども全て施設持ちとしている。

加えて、通勤手当を支給しているほか、マイカーを使用しての訪問、直行直帰、個人の携帯電話使用などについては、回数に応じた手当を支給している。これらの手当はヘルパーからの要望に応じて順次導入をしてきたものである。

ホームヘルパー手当基準

危険手当(訪問等に対する危険手当):訪問1回につき100円

マイカー使用料(個人の車で利用者宅を訪問した場合):1㎞につき12.5円

携帯電話使用料(個人の携帯電話で事業所等へ連絡した場合):1回につき50円

福利厚生制度や能力開発機会は正職員と同一に提供

年次有給休暇付与、社会保険適用は法定基準で運用しているが、ワーク・ライフ・バランス支援については子どもの対象年齢を高くするなど、法定以上の基準を持つほか、孫の出生や育児支援のための休職(無給)やシフト編成上の便宜を認めるなど、制度適用外の事情に対しても配慮が行われている。

また、定期健康診断は所定労働時間に関わらず準職員全員を対象にしており、休憩室やロッカー設備の利用についても正職員との差はない。

能力開発機会については、毎月内外の専門家を講師に招いて開催される法人内研修(自主参加)にも必ず準職員が参加しており、入所介護部門で行われる介護技術研修に自主参加する者も多い。また、資格取得希望者を対象に開催される法人内勉強会へも準職員が参加可能である。

働きがいにつながる工夫を込めた評価システムと賞与支給

評価と自己申告が一体化された書式による評価を年1回行い、評価結果は冬の賞与に、自己申告は4月の契約更新に反映させている。書式には全職種共通の33の評価項目があるが、準職員自身が該当すると考える項目を選んで自己評価を記入し、上司は総合評価のみを行うので、準職員にとっては記入しやすい評価表であり、自己申告と合わせて自身の仕事ぶりを見直す良い機会になっている。

自己評価の項目(抜粋)と評価基準

自己評価項目
(33項目から抜粋)
出勤時や退勤時、又は利用者・家族・来客・上司・同輩とすれ違った時は、明るく相手より先に挨拶をしている
毎朝出勤時にはその日の仕事内容を確認し、直ぐに仕事に移れるよう準備している
組織で仕事をしていることを常に意識し、休暇の取り方などに配慮をしている
自主研修・資格取得などの自己啓発に積極的に取り組んでいる
評価基準 ほぼ9割方実行し、自信がある
7から8割方できている
どちらかといえば、できていることが多い
どちらかといえば、できていないことが多い
ほとんど実行できていない

賞与は所定労働時間と勤続を基準に評価結果を反映させて、1回1万円~10万円程度を支給しており、賞与明細書は施設長が個別に面談を行いながら手渡しをしているので、意見聴収や動機づけを直接行う良い機会になっている。

契約更新時の昇給には、毎年10円ほどを経験給的に一律加算しているが、評価が良好であるなど貢献度の大きい一部の者には増額をしている。

(4)成果

ヘルパーにとって働きやすい環境となるような諸施策を進めたことは、平均勤続が8年という高い定着率に結び付いている。また、朝夕にヘルパーステーションで直接コミュニケーションを行うことができる就業形態をとることで、訪問介護にとって重要な利用者情報の共有が容易になり、前項と併せて介護サービスの質を高めることに寄与している。

また、福利厚生制度や能力開発機会を準職員にも積極的に提供してきたことが職場の一体感につながっており、忘年会など職場親交のイベントに多くの準職員が参加するほか、夏祭りなど施設の催事にもボランティアとして多数が参加協力をしている。

さらに、WLBに対する積極的な取組は、平成21年度少子化社会白書に少子化社会対策に関する先進的取組事例として取り上げられるとともに、平成24年度さいたま輝き荻野吟子賞(いきいき職場部門)も受賞した。

杏樹苑ヘルパーステーション

ステーション内のミーティングデスク

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