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A社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(運輸業、卸売業)より

全社共通要素と拠点別要素を組み合わせた評価制度により、実情に即した評価・処遇を実現し、パート社員のモチベーション向上を図る

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 愛知県 業種 運輸・倉庫業
従業員数 約1,000名 パート労働者数 約900名
ポイント
  • 評価表に拠点別の特別評価枠を設定。
  • 意欲、能力のあるパートはリーダー、さらに正社員へとキャリアアップ可能。
  • 全従業員参加型の提案制度及び表彰制度。
  • パートにも支給される慶弔見舞金制度

(1)企業概要・人員構造

同社は2002年に設立された物流企画や物流センター運営などを行うアウトソーシングカンパニーである。全国に15の自営物流拠点を構え、医薬品、食品、日用品、機械部品等の幅広い取引先から、物流業務を請け負っている。

従業員は、正社員と期間従業員(パート(パートタイム労働者)、嘱託社員、定年後再雇用者)に区分されている。パートは拠点別に採用され、荷受・検品・ピッキング等の現場業務及びそのリーダー業務に従事している。

パートの雇用期間は、3か月又は6か月を基本に、事業所ごとに定めている。更新時には必ず面談を行い、労働条件を確認、提示しており、これまでの働きぶりの評価も本人に直接伝えることでモチベーション維持を図っている。

パートは時給制で、賞与・退職金はない。週の所定労働時間は、20時間~35時間の範囲の者が多い。シフトは拠点運営の必要性に応じ、本人の希望を聴取した上で前月末までに調整し、個別に決定している。扶養の範囲内で働くことを希望する近隣主婦層が多く、各人のライフスタイルに合わせて働くことができるようにしている。家庭の事情で一旦退職したパートが再び戻ってくるケースもある。

(2)取組の背景

拠点ごとに取扱う商品も多岐にわたり、労働市場の状況は大きく異なっている。このため、採用活動も拠点の特徴や地域の実情に合わせて行う必要がある。雇用管理の基本ルールは本社が取りまとめているが、拠点裁量を尊重した雇用管理を行っている。

同社のパートは勤続年数が長く、10年以上勤務する者もいる。意欲のある有能なパートには、正社員としてどんどん活躍してもらいたい意向もあり、現在、正社員登用制度の規定化を進めている。

(3)取組の内容

地域相場に応じた職種別時給の設定

パートの時給は、地域相場と職種別(ピッキング、フォークリフト操作、事務等)の相場に基づき、拠点ごとに設定している。パートの中に階層等の区分は設定していないが、熟練度により時給は異なる。また、リーダー(後述)に登用された場合には、「リーダー手当」が月額で数千円支給される。

人員確保のため「土日手当」や「早朝・深夜手当」を支給している拠点もある。それぞれの手当額は時給の15%~35%の範囲である。

熟練度・多能度の評価と見える化

全社共通のパートの教育体系のようなものはなく、拠点の実情に合わせた OJT が中心となっている。

工程数の多いある拠点では、習得したスキルを個人別にチェックする星取り表を職場に掲示している。併せて、各人のネームプレートに、熟練度・多能度に応じた色別シールを貼って他の人にも分かるようにしている。これらにより、スキルアップとともにモチベーション向上を図っている。

拠点の裁量余地を残した業務評価

パートには年1度の定期昇給のような制度はないが、「パート社員業務評価表」に基づき、拠点の実情に応じ随時に昇給が実施されている。

パート社員業務評価表は、「勤務」、「能力」、「実績」、「意欲」の4項目合計14要素の全社共通部分と、拠点の裁量で評価できる「特別評価」から構成されている。かつては各拠点が独自ルールで評価していたのを、共通化できる部分を本社でとりまとめて、今の業務評価表を策定した。基本的な評価表の管理等については、本社が統一的に管理している。

特別評価は、拠点ごとに異なる業務内容に即した評価も必要との考えから、設定したものである。その点数配分は、50点満点中全体の4割と大きい。特別評価の方法は拠点長に任されているが、評価の根拠を記述することが求められている。工程数の多いある拠点では、独自のルールを設定し、工程ごとの細かい評価を行った上で特別評価に反映している。

なお、評価結果は最終的に5段階に分類され、段階ごとの昇給額が定められている。

業務評価表のイメージ

〈一般評価〉(持ち点30点)

評価項目 評価内容
勤続 勤続年数が1年以上である
週当たり勤続時間が30H以上である
能力 習熟度 習熟度が向上している
多能工 多(他)工程の作業ができる
上位者の業務を代行できる
異常時の処置・対応ができる
教育指導 他の人を教えることができる
実績 品質 品質が満足できるレベルである
生産性 生産性が満足できるレベルである
安全過去 1年間災害・事故を起こしていない
提案 改善提案を3件/6か月以上提出している
意欲 会社の指示に素直に従い協力的である
残業要請、勤務シフトの変更に協力的である
業務に前向きで、積極的である

〈特別評価〉(持ち点20点)

評価項目 評価内容(レベル)
   
   

リーダーへの登用

本人の意欲、適性を見極めた上でリーダー登用を行っている。リーダーの主な役割は、担当する現場内のパートの取りまとめ、現場監督、シフト管理等である。

リーダー登用は、原則として週の労働時間が30時間以上であること、勤続年数が1年以上であること、との基準を設けている。上記の業務評価の結果も、1つの判断材料としている。

積極的な正社員登用

正社員登用は、原則としてリーダーに登用されているパートのうち、正社員への登用を希望する者で管理能力に優れた者を拠点長が推薦し、人事部長クラスの面接を経て合否を決定している。登用する時期は特に定めておらず、更新時の面談にて意思を確認することも多い。

正社員登用制度は「労務情報」という社内報により全従業員に周知し、イントラネット上のみならず、事業所の掲示板も使用し展開している。

直近1年間では、5名が正社員に登用されている。登用者の中には55歳のパートもいる。今後も、能力と意欲があり基幹的戦力となれる人材は積極的に登用していく方針であり、より明確な制度とするため「正従業員転換措置に関する基準」を策定し明文化したところである。

提案活動への参加

パートを含めた全員参加の提案活動が、毎月行われている。所定の書式に基づき業務に関する改善提案を行うと、1件当たり数百円のインセンティブが給与とは別に現金で与えられる。

さらに、改善提案の効果が顕著な場合は、拠点から本社人材開発部に報告され、審査の上、特別表彰の対象となる。工程上の危険防止改善案を提案したパートが特別表彰を受賞した例などがある。特別表彰には、副賞としてクオカードが授与される。

正社員に準じた福利厚生等

正社員に準じて、パートにも慶弔見舞金規程がある。これに基づき、結婚、出産、災害、弔慰、公傷病、死亡等の事由に応じて、数千円~数万円の慶弔見舞金が支給されている。

その他、これまでにパートの育児休業の実績もあり、男性パート1名、女性パート1名の計2名が取得している。

(4)成果と課題

各人の能力を適正に評価して処遇を行ってきたこと、拠点の裁量を尊重しながら本社が基本的なルールを定めて雇用管理を行ってきたことで、パート人材の確保と定着化につながっている。実際に、パートの大半が契約更新を希望しており、勤続年数も長くなっている。

今後については、これまで取り組んできた施策を維持しつつ、必要な改善を図っていく予定である。具体的には、上述の正社員登用制度の規定化、業務評価要素の見直し等を考えている。

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