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(株)アクタガワ

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

スキルアップの支援、教育訓練の充実により、自らの成長を実感できる定着率の高い職場を実現

3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
9.その他
所在地 静岡県 業種 訪問介護事業等
従業員数 453名 パート労働者数 108名
ポイント
  • 働く方の希望を考慮した勤務形態。
  • マンツーマンによる自己の成長が実感できる教育訓練。
  • キャリアパス制度で正社員へのステップアップ支援。
  • 所属施設内の複合サービスを利用した計画的なキャリア開発。
  • 改善提案アンケートによる職員ニーズの把握。
  • 正社員に準じた各種制度の適用。

(1)企業概要・人員構造

(1)事業内容

平成12年の介護保険制度施行に先駆け平成11年に設立。訪問入浴サービスからスタートし、現在は、施設系から在宅系まで多角的に、「人間の生きがいを尊重し、福祉による地域コミュニティを創造する」という理念に基づき、県内で地域に密着した介護サービス事業を展開している。介護関連サービス事業は、要介護高齢者向けの居住施設を運営する事業と、在宅介護の複合拠点としての事業がある。

これらのサービスを各施設に複合的に集約し、県内それぞれの地区に密着した多様な介護ニーズに応えている。現在15施設69事業所、職員数453名だが、今後も施設の増設が予定されており、職員の増加が見込まれている。

(2)主な職種別勤務状況

正社員は、実働8時間(24時間4交代制勤務)、月22日以上、月176時間以上勤務し、部署によっては週1回程度夜勤も担当することになっている。

正社員の職種は、施設長、ホーム長、サービス責任者、運営責任者である。正社員は、従業員のスケジュール管理の他、各施設それぞれのサービスが円滑に運営されるよう管理する。

正社員以外は、下記の2通りの時間給者がいる。同社の「フルタイム」とは、基本の日勤帯に勤務することを指し、勤務日数が正社員より少ない職員(パートタイム労働者)も含まれる。

  • 基本の日勤帯8:30〜17:30に労働する「フルタイムの時間給者」
  • 基本の日勤帯8:30〜17:30以外の「フルタイムではない時間給者」

同社は、利用者への対応を考え、パートタイム労働者についても、なるべくまとまった時間で働くことを求めており、1日の勤務時間の下限は、送迎車の運転業務が3時間、施設系業務では少なくとも3〜4時間としている。ただし、訪問系業務のパートタイム労働者は、訪問件数に応じて1時間から個別に設定されている。

(2)取組の背景

介護業界では一般的に顧客を「利用者」と呼び、介護事業は福祉事業であると捉えていたが、ビジネスとして顧客満足度を高めていくためには、顧客を「お客様」と呼ぶサービス業として職員の意識を転換する必要性を感じていた。また、介護事業は離職率の高い業種とされ、定着率を高めるためには、職員自身が職務の成果を実感でき、働きがいを見出せる職場にする必要があった。

同社では、「地域の人が働いて地域の人が介護する」という考え方に基づき、地域で働くことに生きがいを持ち、介護を受ける人に接することが重要であり、職員が気持良く仕事ができなければ顧客に対し気持ち良いサービスは提供できないという考え方に至った。

(3)取組の内容

働き方のニーズを考慮した勤務形態

訪問介護ヘルパー(以下「ヘルパー」という。)は約60名で、勤務時間は1か月平均80時間未満が7〜8割を占め、出勤日数は個別に定めている。一部の時間帯で勤務するより、日数が少なくても日勤帯(8:30〜17:30、8時間)で勤務できる人を優先採用しているが、週1日1時間勤務の職員もおり、個々の生活の事情を考慮しながら個別対応している。

ヘルパーの出退勤管理は、携帯メールから報告を受けている。子育て中のヘルパーは日中の時間を利用して勤務するなど、生活時間帯を有効に使っている。子どもの手が離れてきて勤務時間を増やせるときは、訪問介護とデイサービスを兼務することも可能である。

1日に複数の訪問先があり、移動時間が30分以上を要するときは手当を支給している。時給は、実施するサービス内容により定めているため、勤続等による昇給はないが、勤務時間数が一定以上で社内の認定資格に合格した者には、資格手当が月額で支給される。

自己の成長が実感できる教育訓練

介護サービスの特性上、職員のスキルがサービスの質に直結するという考えから、職員一人ひとりのスキルアップが必須と考えており、教育訓練は「一企業人として良識ある人材」を育成することにあり、介護という一つの業界に限られた知識や技術だけではなく、社会人として求められる常識、ビジネスマナーや行動力等を身につけることも含まれると考えている。

このため、正社員のみならず、パートタイム労働者に対してもキャリアプログラムによる体系的な教育訓練を実施し、研修に要した時間は有給としている。主な研修には次のものが挙げられる。

①マンツーマンスキル研修

介護職のスキルアップを目的に、各施設の教育チームが毎月マンツーマンで技術指導をしている。介護サービスといっても、食事、入浴、排泄、車いすの取扱い、ベッド周りのケア等様々な技術がある。採用の1か月後に面談が行われ、職員は習得状況のチェックを受けながらスキルアップを図っている。

訪問介護の場合は、まずは「名前を覚えましょう」からスタートし、介護職の未経験者は採用後1か月間、経験者は1〜2回、教育チームが訪問先に同行して研修が行われ、1週間単位の課題を達成しながら実施していく。その後も、習得状況に応じて月に1回程度指導が行われ、半年程度かけて全般的な業務に必要な基本スキルを習得できる。

ヘルパーのスキルを評価するためのスキルシートは、ステップ1(教えてもらえば1人でできる)、ステップ2(1人でできる)、ステップ3(人に教えることができる)の3段階あり、月単位でチェックするようになっており、教育チームと本人が控えを持つ。訪問介護は、顧客の住まいに訪問して業務を行うため、きめ細かな配慮を要求されることから、パートタイム労働者も、正社員と区別なく受講することができるようにしている。

②チーム研修

各施設において、職員全員参加の介護に関する知識技術、接遇マナー、法令、介護に関する社会動向等について毎月テーマを決めて実施している。

③資格取得支援講習

介護福祉士、ケアマネジャー等の試験対策のための講習で、本社専属の教育チーム(3名)を中心に実施している。マンツーマン研修と合わせて筆記試験の研修もあり、資格取得後は資格手当が支給される。

④その他の研修

介護職員としてだけではなく、社会人としての幅広い教養も含めた人材を育成することを目的に、介護技術、医療の知識から茶道やそば打ち等の文化活動までをテーマに外部講師により実施している。

キャリアパス制度で正社員へのステップアップ

パートタイム労働者に対しては、正社員登用制度を入社の際に説明している。登用の要件は、へルパー2級以上、普通自動車免許、月22日以上の出勤、月176時間以上勤務できる4交替勤務可能者であり、かつ勤務態度や常識等を評価し、センター長の推薦を必要としている。推薦された者に対し本社担当者が面接を行い、正社員としての具体的な勤務内容を説明し、本人の意思確認を行っている。

能力があれば積極的に登用する方針で、希望者のうち登用されている割合は約4割であるが最近は増えている。正社員は、ケアマネジャー等の有資格者で採用された者以外は、ほとんどが時間給者で採用された後に登用された者となっている。

なお、正社員を希望するが登用基準を満たすことが難しい職員には、改善点等を明確に示し、指導している。パートタイム労働者からスタートしたホーム長も多数おり、公正に評価して門戸を開いている。

所属施設内での計画的なキャリア開発

同社は、各施設に施設系サービス、在宅系サービスを複合的に展開している点を活かし、施設内で配置転換をしながら、各サービスを体験して技能の幅を広げ、スキルに偏りなく介護全般の業務ができるような仕組みを設けている。施設系の職員は訪問系サービスを苦手としたり、訪問系の職員は施設系サービスを苦手としたりすることがあるが、複合型の施設では、普段見慣れていることもあり、施設系、在宅系双方の交流が自然に行われている。これにより、正社員登用も行われやすくなっている。

同社独自のスーパー技能士制度の創設

スーパー技能士は、介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級養成研修)を修了した者で、その上位資格として、3年の実務経験を必要とする介護福祉士までの中間的な資格として導入された会社独自の資格で、センター長の推薦に基づき会社が実施する検定に合格した者に対し付与される。資格取得後は、本社に氏名と顔写真が掲示され、資格手当が支給される。

困ったときの「おたすけ本」の配布

「おたすけ本」(名刺大)には、会社理念、顧客からのQ&A、ビジネスマナー(身だしなみ、言葉遣いに注意しましょう、など)が記載されている。職員は業務中携帯しており、指導教育にも利用されている。

正社員に準じた各種制度

福利厚生制度については、正社員との区別はない。慶弔見舞金の支給、ユニフォームの貸与又は支給、サークル活動への参加などがある。インフルエンザ予防接種、スケジュール手帳の配布は、パートタイム労働者にも正社員と同様の取扱いをしている。インフルエンザ等の感染警報があった時は、50枚入りケースのマスクを全員に配布する体制にしている。対人サービスであることからメンタルヘルスケアも大事にしている。

改善提案アンケートによる職員ニーズの把握

毎月の給与明細書に「改善提案書」用紙を同封している。職員からの改善提案書に記載された内容は本社で検討し、本人の納得がいくまで回答して対応している。優秀な提案は表彰することもあり、職員のモチベーションがアップするなど従業員の満足度の向上がうかがえる。

(4)成果と課題

同社は、教育訓練制度と正社員登用制度にしっかりとした筋道ができている。マンツーマンスキル研修の毎月の実施については、会社の規模の拡大に伴い、本社の教育チームの負担が大きくなっているが、指導を受ける職員側は、毎月自分のために時間を取ってくれる、自分を見てくれているという気持ちが生まれ、愛社精神につながっている。また、職員の悩みを聞く場にもなっており、問題の早期解決にもつながっている。

勤務態度(勤怠、現場、言葉遣い)等に改善が必要な職員には個別にマナー研修をしている。訪問介護職員の場合、時間厳守が絶対的であるので特に重点的に指導している。

研修制度を充実させたことにより、職員自身が成長を実感することができ、やりがいや定着率の向上につながり、家庭の事情で退職した人でも戻ってくることが多くなった。離職を留まらせることも重要と考えており、職員自身がいかに期待されているかを認識してもらえるかが重要だと考えている。

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