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F社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

正社員転換制度や資格取得支援により、働きがいのある会社作りを目指す

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
所在地 神奈川県 業種 訪問介護事業等
従業員数 約260名 パート労働者数 約190名
ポイント
  • 正社員転換制度を就業規則に明示し転換を推進。
  • 介護関連資格取得費用の全額を会社が負担し、パートの資格取得を支援。
  • ヘルパーの個人評価を行い、評価に応じた賞与を支給。

(1)企業概要・人員構造

同社は2007年に横浜市で創業し、訪問介護を主体として介護事業を行っている。事業所は市内に8か所ある。その他、横浜市に福祉関連の学校である福祉カレッジと訪問看護ステーションがある。現在、訪問介護の利用者数において地域内で上位に入る事業規模に成長した。

訪問介護事業所の人員構成は、正社員17名、事務パート3名、登録ヘルパー約100名である。なお、登録ヘルパーの中には同社の複数の事業所に重複登録している者もいる。サービス提供責任者は原則として正社員が行っている。

(2)取組の背景

訪問介護事業はサービスニーズに時間帯による偏りが大きいが、登録ヘルパーが主体となってサービス提供を行うことにより、対応することができる。登録ヘルパーの働きなしには会社の存続・事業拡大はできないと考え、正社員に対しては登録ヘルパーを「お客様」と同様に丁重に接するよう指導している。

登録ヘルパーに対する丁重な接遇とともに、「登録ヘルパーを含む従業員が気持ち良く働くことができ、働きがいのある会社にしていかなければならない。」と考え、従来からパートタイム労働者の雇用管理面での各種取組の充実を行ってきた。

(3)取組の内容

パートタイム労働者の正社員転換の推進

登録ヘルパーの中で、1日8時間、1週40時間の勤務ができ、所属長の推薦を得て面接試験に合格すれば、正社員に転換できる。正社員転換制度については、準社員等就業規則で明示している。

同社の準社員等とは、正社員以外の準社員、臨時従業員である訪問介護員・事務パートタイム労働者、嘱託社員、契約社員をいう。

パートの正社員転換制度を就業規則に明示し、積極的に推進してきた結果、過去5年間に6名のパートが正社員となった。内訳は登録ヘルパーが5名、事務パートが1名である。正社員となった登録ヘルパーには、初心者や若手のヘルパーへの教育・指導的業務という重要な役割を担ってもらっている。

図表1 準社員等就業規則(抜粋)

(正社員への転換)
第×条 6ヶ月以上勤続し、正社員への転換を希望する準社員、臨時従業員及び契約社員については、次の要件を満たす場合、正社員として採用し、労働契約を締結するものとする。
 1. 1日8時間、1週40時間の勤務ができること
 2. 所属長の推薦があること
 3. 面接試験に合格したこと
② 前項の場合において、会社は当該準社員、臨時社員及び契約社員に対して必要な教育訓練を行う。

登録ヘルパーの賃金構成の明示

登録ヘルパーの賃金は、基本賃金と諸手当の合計となっている。基本賃金は、時給に労働時間を掛けた金額である。基本賃金(時給)は身体介護と生活介護の2区分で異なり、下記のとおりで、日祝割増・深夜割増がある。

  平日 日曜・祝日
身体介護 1,800円 1,900円
生活介護 1,200円 1,300円

諸手当は、事務作業手当、交通手当、移動手当の3つの手当があり、雇用契約書に明示されている。事務作業手当(時給900円)は、登録ヘルパーが利用者のキャンセル等により代替業務として事務関連業務を行った場合に支給される。交通手当は、訪問介護サービスを1件行うと100円が支給され、時給とは別に支給される。移動手当(移動時間1分につき15円)は、利用者宅間の移動時間に対して支給される。

事務作業手当と移動費は、利用者によるキャンセルや利用者宅間の移動といった訪問介護に特有な状況に対応するために規定した。交通手当は訪問介護サービスに対する時給以外のプラスアルファの手当である。

諸手当の他に、訪問介護サービスの提供場所に行ったにも関わらず、サービスがキャンセルになった場合には、1回につき900円(30分のサービスだった場合には450円)が支給されることも雇用契約書に明示されている。

図表2 訪問ヘルパー雇用契約書(抜粋)

①事務作業手当 時間額900円(事務作業に従事した場合)
②交通手当   サービス1件の稼働につき100円(連続サービス時は複数で100円)
③移動費    前後のサービスの移動時間1分につき15円
        ※移動時間は、利用者宅間の距離に応じて会社が算出します。
備考 サービスの提供場所に行ったにも関わらず、サービスがキャンセルになった場合には、1回につき900円(30分のサービスだった場合450円)

充実した資格取得支援

同社での勤務年数が長いなど、業務上、貢献している登録ヘルパーに対しては実務者研修の受講を働きかけ、費用の全額を会社が負担して介護福祉士の資格取得を推進している。また、介護福祉士を志す事務パートについては、受験要件の一つとなっている必要な介護現場従事日数を充足できるように、介護現場業務に従事させる等の配慮も行っている。パートタイム労働者の資格取得推進を通じて利用者へのサービス提供力を向上させることは、競合他社との差別化を図り事業拡大につながるものと考えている。

個人評価による賞与支給

継続して勤務をしており、且つ賞与支給日に在籍しているパートタイム労働者に対しては、労働時間に応じた賞与が年に2回(3月と9月)支給される。サービス提供責任者が1次評価を行い、最終的に会社が3段階ある評価のランクを決定し、賞与金額が決定されるプロセスとなっている。

(4)成果と課題

パートタイム労働者の正社員転換制度を積極的に推進してきた結果、過去5年間に6名が正社員となったが、正社員転換要件を満たすパートの中には、パートのままが良いとして正社員にならない者もいることが同社の課題となっている。

登録ヘルパーに対しては、時給以外に、事務作業手当、交通手当、移動費の手当を支給しており、ヘルパーの理解と納得を得ている。また、利用者によるキャンセルや利用者宅間の移動時間に対して会社が賃金を保障していることは、ヘルパーのモチベーション向上や雇用継続に役立っている。

実務者研修の費用を全額会社負担として、パートタイム労働者の介護福祉士の資格取得を推進しており、ヘルパーの中にはこの制度を活用して積極的にチャレンジして資格を取得する者もいる。一方で、現状で良しとして、資格取得支援制度を活用しないヘルパーもおり、制度の活用推進が課題となっている。

登録ヘルパーは、訪問介護業務において必要不可欠な人材であるが、ヘルパーの資格を有する人材が常に不足気味のため、介護事業所間でのヘルパーの争奪戦となっており採用が難しい。ヘルパーを採用できたとしても、配偶者控除を満額行うことができる収入上限103万円という税制問題があるためか、正社員転換制度があるにも関わらず正社員に積極的にチャレンジしようとする登録ヘルパーが少なく、登録ヘルパーの正社員転換の推進が課題となっている。

現在、国においては、医療、介護、生活支援等を一体的に提供する地域包括ケアシステムについて、検討と整備が推進されている。同社としても、このまま訪問介護事業を軸としていくのか、訪問介護以外の事業を行う必要があるのか、今後の事業展開について模索中である。

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