ここから本文です
(株)グリーンケア
顧客重視の姿勢から現場主義を徹底し、パートの育成と処遇改善を図る
正社員転換推進措置
所在地 | 福岡県 | 業種 | 訪問介護事業等 |
---|---|---|---|
従業員数 | 120名 | パート労働者数 | 62名 |
ポイント |
---|
|
(1)企業概要・人員構造
同社は、地域密着型の総合介護事業者として、ケアプランの作成及び訪問介護と通所介護を実施してきた。全社のパートを含む従業員は、訪問介護・通所介護・在宅介護を含む全事業所・全部門で計120名となっている。
訪問介護部門におけるパートとは、登録ヘルパー(社会保険未加入)を指しており、計62名が在籍している。この他常勤ヘルパー(社会保険加入者)が4名いる。利用者は1月400名程度である。パートの平均年齢は50歳前後であり、中には80歳近くの高年齢者もいる。
パートの活用理由は、コストの削減と、繁閑に対応するためである。パートにとって働きやすい職場を目指しており、近隣に住む主婦が中心で、勤務日、時間帯については本人の希望に沿って柔軟に対応している。
(2)取組の背景
同社は、尊敬・敬愛・愛情・謙虚の4つを経営理念とするとともに、なによりも人の“こころ”を大事にしてきた。これを受けて、お客様重視の姿勢のもとにヘルパーが同社の商品であると捉え、一人が良ければ会社全体も良くなっていくという考え方のもとに、皆が会社の看板を背負っているという意識を常に持ってもらうようにしてきた。ビジョン経営の下、活気があり、モチベーションが高く、チームとして頑張ろうという意識を持つことでより働きやすい職場になると捉えている。
このために徹底してきたのが、「現場主義」経営である。この方針の下、マニュアルを強化する一方で、パートに対する採用面接については現場の目線が大事という考えから現場責任者に任すなどのことを行ってきた。
(3)取組の内容
昇給・昇格に反映させる評価制度
独自の評価制度があり、パートに対しても昇給や昇格の際に反映させている。
評価の項目としては、接遇・苦情・代行・休暇・サークルミーティング・書類提出・技術力(家事援助)・技術力(身体介護)・資格となっており、20点満点で実施している。項目ごとの基準に基づき、サービス提供責任者10名がミーティングを行った上で、評価査定を総合的に決定している。また、評価制度の一環として、パートも含めて定期的にフィードバックしている。
評価査定に基づく賞与支給と表彰制度
年に1回の賞与(寸志)を支給しており、これは、毎年12月に評価査定の上で、翌1月に支給している。また、表彰制度を設けており、最長時間勤務者・功労賞・勤続5年以上などの表彰対象となった者に対しては、賞与時に金一封を支給している。
2種類の業務マニュアルに基づく教育訓練
ヘルパーマニュアルとサービス提供責任者用マニュアルの2つの業務マニュアルを持っている。うちへルパーマニュアルは、平成12年4月に策定し、法改正時などを中心にこれまで計17回改定してきた。全部で72頁にもなり、全てのパートに配布している。マニュアルは、基本的な心得から始まり、訪問に関しての注意点、接遇、プライバシーの保護、活動時の携行品、苦情対応、災害時対応、生活援助の基本、身体介護の基本、感染症対策、食中毒の予防、自己評価のためのチェックシート等多岐にわたっている。
これらのマニュアルは同社の宝であると捉え、先々は社会の役に立てるよう、出版するなど公的に発表する機会についても考えている。
教育訓練については、採用後の新人研修を重視しており、この時は、管理者、主任クラスが講師となり、ヘルパーマニュアルを用いて丸1日をかけて事業概要や就業規則等に関する説明を行い、十分に理解してもらえるように心がけている。
また、未熟練のヘルパーの育成に当たっては、観察力を養うとともに、心のケアも含めた総合的な介護力をアップすることを心がけている。
なお、介護福祉士資格取得時には、対象者に対して社内で実務研修を実施している。
正社員等への段階的な転換制度
転換(登用)制度があり、重視している。これには、「登録ヘルパー」→「常勤ヘルパー」→「正社員」のそれぞれの段階で実施している。
転換にあたっては、現場の視点を重視する方針から、課長以下のサービス提供責任者が審査を行い、さらに経営幹部が同社の理念をよく理解できているかの総合的評価を行って決定する方式としている。
転換の基準は、勤続1年以上の者から、本人の希望と利用者の評価等を考慮した上で判断している。なお、特に仕事に向き合う姿勢を重視している。
この1年間では登録ヘルパーから常勤ヘルパーへ2名、さらに常勤ヘルパーから正社員へ5名転換した。
「プレイズ報告」制度
プレイズ報告とは、利用者からのプラス評価を取り上げて、これを社員にフィードバックするものである。3年ほど前から掲示ボードに記載し、これをミーティング時にその都度発表することで、皆で共有し、社員のモチベーションアップにも役立っている。
「グループサークルミーティング」
月に1回、1.5時間程度、サービス提供責任者が職場で主催するミーティングを実施している。パートも含めて全員が参加することを重視しており、この時間も賃金支払い対象としている。また、これを受けて、年に2回の合同ミーティングも併せて開催している。
(4)成果と課題
現場の目線で働きやすい職場ということが社員、パートに浸透してきた結果、勤続5年以上のヘルパーが24名となり、定着率は業界の中でも高くなってきた。
また、アンケートなどをみても、利用者からの評価が向上してきたといえる。同社がこれまで、サービス提供責任者を重視し人数も多く設定していることが、利用者に手厚い姿勢と評価されているようである。今後も同社に頼んで心から良かったと言われるように全社一丸となって心がけていきたいと考えている。
近年、ヘルパーの高齢化が進んできており、会社の将来のことを考えて若返りを図り、若い人にも生き生きとして長く働ける魅力的な職場づくりを進めていきたいと考えている。
また、特に3K職場とも言われる中で、人材確保が大きな課題となっている。これまで資格を持っていなければ採用はしない方針としてきたが、ヘルパーの試験制度が変更され、研修時間が長くなったことも影響して、募集をかけても応募者が減少し、人材確保がいっそう困難であることから、将来的には資格を持たない者を通所介護職などで採用し、人材を育成することも検討したい。
また、同社のサービス提供責任者の役割を重視した業務の進め方が成果でもある一方で、課題ともなっている。例えば、計画書の交付時には責任者自ら訪問し説明して渡すなど、日常的な業務に追われてますます負担が重くなってきていることが、懸念されている。