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(株)流通サービス

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(運輸業、卸売業)より

人事考課、育成、充実した福利厚生や賞与がパート社員の高い定着率に寄与

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 埼玉県 業種 運輸・倉庫業
従業員数 5010名 パート労働者数 2278名
ポイント
  • 定時社員にも賞与・退職金を支給。
  • 正社員と同水準の福利厚生制度を整備。
  • 業務改善発表会、表彰制度等でコミュニケーションを活発化。

(1)企業概要・人員構造

同社は、1974年に日本生活協同組合連合会の委託物流会社として発足し、1994年に生協の個別配送を受託したことにより生協個別宅配事業と流通加工事業が飛躍的に発展した。現在は、生協を顧客とした売り上げが75%、生協以外(通販化粧品等)を顧客とした売り上げが25%程度となっている。

従業員は5,010名で、パートタイム労働者が2,278名(うち、女性が 71%)である。正社員は2,396名で、うち2,000名程度が運送トラックのドライバーである。その他従業員は、3361名である。

同社のパートタイム労働者は「定時社員」と呼ばれており、主に流通加工作業や倉庫内でのピッキング作業を担う。定時社員は、労働時間が週30時間以上(社会保険加入)の「フル勤務者」、週20時間以上30時間未満の「ハーフ勤務者」、週20時間未満の「ショート勤務者」に分かれている。また、賞与・退職金の支給有無が異なる「定時社員A」、「定時社員B」という分類もあり、本人の希望により選択できる(後述)。1回の雇用契約期間は1年であるが、本人が希望すれば更新しており、平均勤続年数は長い。正社員及び定時社員の定年は65歳で、本人が希望すれば65歳まで働き続けることが可能である。

雇用契約は更新の都度本人と取り交わしており、労働条件を双方で確認することにより労務トラブルの解消にも貢献している。

(2)取組の背景

同社は流通加工から事業をスタートさせたため、創立初期は定時社員が従業員の大半を占めていたが、生協個別宅配の進展に伴い、正社員であるドライバーが増加した。

「創立初期の苦しい時代は定時社員が支えてきたのだから、会社は定時社員を大事にしなければならない」という先代社長の想いを受け継ぎ、賞与の支給や正社員と同等の福利厚生、定時社員とのコミュニケーションの活発化施策等、充実した取組を行ってきた。

  • アルバイト197名、嘱託社員117名、契約社員12名、役員10名

(3)取組の内容

役割・資格に応じた手当制度

時給は、事業所単位で地域相場に合わせて設定している。そのほか、「チーフ(もしくはグループ長)」には、役職手当が時給30~120円程度、フォークリフトの免許を有しフォークリフトを使った作業を行う者には「フォークリフト手当」が時給50円程度、基本給に上乗せされる。後述の人事評価結果は、賞与水準には影響するが、基本給の昇給には大きく影響しない。

人事評価と本人の希望に基づく賞与・退職金の支給

同社では、定時社員に対しても賞与・退職金を支給している。

賞与は年に2回、所定労働時間、勤続年数、勤怠の状況、人事評価の結果に応じて支給されており、フルタイム勤務者であれば、1回当たり15万円程度となることが多い。人事評価は、10項目(職務評価6項目、意欲態度評価4項目)から成るパート社員独自の人事考課表を用いて拠点ごとに実施しており、結果は5 段階(S・A・B・C・D)評価で本人にフィードバックされる。

退職金は、勤続7年以上の定時社員に支給される。なお、支給水準は会社都合退職の場合と自己都合退職の場合とで異なり、生協の拠点統廃合により事業所が消滅した場合等は、会社都合の退職扱いとしている。

なお、同社の定時社員は、「定時社員A」(全体に占める比率30%程度)、「定時社員B」(全体に占める比率16%程度)に分類される。定時社員Aには賞与・退職金が支給され、定時社員Bは賞与・退職金が支給されない代わりに、時給水準を定時社員Aより高く設定している。本人の希望によって、いずれかを自由に選択することができる。

マニュアルやDVD教材を用いた教育訓練

パート社員に対しては、入社時教育、OJT、コンプライアンス等の研修を行っている。

入社時教育では、事業所ごとにマニュアル(事業所によっては、DVDを用いている)を用意して、デジタルピッキングのやり方の説明、ピッキングミスにつながりやすい類似商品の見分け方等、その事業所で扱う商品に合わせた内容の研修となっている。

現場に配属されてからは、OJTを中心に指導を行う。OJTの指導役は「チーフ」・「グループ長」等の先輩定時社員が担い、慣れるまでは1名で担当する仕事を先輩定時社員と2名で行う等、配慮しつつ作業手順を研修していく。

また、個人情報管理やコンプライアンス関連の研修については、本社一括でDVD教材等を用意し、各事業所でそれらを用いた研修を行っている。

なお、本人が希望し、事業所でも必要とされる場合には、フォークリフトの免許を会社負担で取得させている。

「チーフ」・「グループ長」職の設定

「チーフ」あるいは「グループ長」と呼ばれるパート社員のまとめ役は、20~30名のパート社員から成るラインごとに1名配置され、ライン内のパート社員の配置や、日々の仕事の割り振り等を担う。定時社員のシフト管理等は正社員の業務であるが、各拠点に配置される正社員数は少ないため、日々の作業については「チーフ」あるいは「グループ長」に裁量を持たせることで、円滑に業務を進めている。なお、「チーフ」あるいは「グループ長」の任用は、所属長の推薦、人事評価(A以上)、出勤率、勤怠等で決定している。

正社員転換制度

就業規則に定めた正式な制度として、定時社員から正社員への転換を行っている。転換の要件(ただし、全てクリアしなければ転換できないというものではない)には、一定の勤続年数、人事評価の結果が「A」であること、勤務態度が良いこと等があり、さらに所属長の推薦があれば、面接試験を受けることができる。

面接試験は1次、2次、役員面接の3回があり、1次面接は、正社員の仕事とはどういうものかをじっくり説明する機会ともなっている。

定時社員には事業所間の異動がないのに対し、正社員は全国的な異動が前提となるため、正社員転換者は例年2~3名程度である。毎年、各事業所は予算計画に基づき、定時社員からの転換も含めた人員計画を定めている。

正社員と同等の福利厚生

前述の通り、「定時社員を大事にする」という考えの下、同社では正社員と定時社員に福利厚生面での差を設けていない。

慶弔関係では、死亡弔慰金、結婚・出産祝い金を正社員と同水準で支給している(勤務年数により金額が異なる)。また、同社の提携金融機関で定期積立をする場合、12か月分のうち1か月分の積立額を会社が負担している(上限3万円)。その他には、ディズニーランドの入場割引券を配布している。抽選制だが、年4回の機会があるため、結果的には希望者全員に配布されている。また、インフルエンザ予防接種の補助も行っている。

業務改善発表会、表彰制度等でコミュニケーションを活発化

2000年から毎年、作業チーム単位で、どのような工夫で業務を改善してきたかを競う「業務改善発表会」を行っている。物流部門と運送部門に分けて実施するが、各営業所2~3チームのエントリーがある。TV 会議システムでの予選を勝ち抜いたチームは、大きな会場を借りて開催する本選に出場し、優勝チームには賞金が授与される。この施策は業務改善と同時に従業員の育成もねらいとしているため、予選や本選でのプレゼンテーションは定時社員が担うことが多い。中には、「チーフ」や「グループ長」ではない定時社員が発表することもある。

また、同社では毎年、永年勤続(10年、20年、30年)、無事故、営業成績優秀者の表彰を行っており、新年祝賀会の際に表彰者の代表を本社に招き、表彰状、現金又は贈り物のカタログを手渡している。定時社員も永年勤続表彰の対象であり、これまでに表彰された者もいる。

(4)成果と課題

従業員の半数が定時社員である同社は、「定時社員を大事にする」という方針に基づいて、様々な取組を行ってきた。これが奏功し、定時社員の定着率は非常に高い。会社の創立初期から働く、勤続20年を超える定時社員もいる。しかし最近は、近隣企業で人手不足からの時給の引き上げが顕著なため、同社でも時給・賞与の分配見直しによる時給の引き上げが課題となっている。

また、全国的な人手不足の中、ドライバーの確保には苦慮している。同社では原則としてドライバーは正社員として雇用してきたが、近年少しずつはじまってきた生協の夕食宅配等では、軽車両で小さいエリアを周るため、一部では定時社員(主に定時社員Bが多い)のドライバーを活用しはじめている。事業展開に応じて、定時社員の職務についても検討していくことを予定している。

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