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協栄流通(株)

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(運輸業、卸売業)より

安心して働ける職場環境を目指し、人事制度の整備、福利厚生の充実を図る

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 埼玉県 業種 運輸・倉庫業
従業員数 3068名 パート労働者数 2192名
ポイント
  • リーダー職を設け、パート社員のやる気を引き出す。
  • 明確な評価基準と給与反映により納得性を高める。
  • 充実した研修で能力開発を支援。
  • 手厚い福利厚生制度により安心して働ける環境をつくる。

(1)企業概要・人員構造

同社は、コープネット事業連合の子会社として、宅配物流事業、店舗物流事業及び会員生協のコープデリ宅配事業を行っている。宅配物流事業は関東信越に12センターを有し、コープデリ宅配商品の入荷、検収、集品、宅配センターへの出荷を行っている。店舗物流事業では、生協店舗商品の野菜・果物の仕分け作業を行い、宅配事業は関東信越の35事業所において、コープデリ会員宅への宅配を行っている。

従業員は正社員、契約社員、パート社員(パートタイム労働者)、アルバイト社員で構成されている。正社員は管理業務や企画立案業務に従事し、転居を伴う転勤がある。契約社員は、正社員の試用期間的な位置付けであり、フルタイム勤務で1年後に正社員に転換する。パート社員は事業所ごとに採用され、仕分けや集品、宅配等の現場業務やリーダー業務に従事している。アルバイト社員は、週12時間未満の契約で現場作業を行う。

パート社員は、週所定労働時間が12時間以上、2か月以上最長1年の有期契約である。所定労働時間は、事業所により入荷、出荷量に違いがあるため、事業所ごとに実態に合わせて決定している。定年は65歳であり、定年まで勤めて退職するパート社員も増えてきている。なお、現在労使協議中であるが、65歳の定年後も勤務を希望するパート社員については、アルバイト社員として6か月更新で最長70歳まで勤務できる仕組みを導入する予定である。

(2)取組の背景

コープが掲げる「誰もが安心して働ける職場環境づくり」「職員の研修・教育の実施による、組合員・消費者に信頼される職員育成」などの行動規範に則り、パート社員の働く環境の整備や人材育成など様々な取組を行っている。

また、ユニオンショップではないもののパート社員も労働組合の構成員となっているため、組合からの要請を受けて、随時待遇の改善を図っている。

(3)取組の内容

役割・責任に対応した等級制度

パート社員は、担当する職種や役割・責任に応じて、階層・等級に格付けされている。リーダーは、担当ラインの作業の進捗管理やシフト管理、新入パートの教育等を担当している。現在、全社で52名がL階層1等級(リーダー)に格付けされている。

区分 階層 等級 職位 位置付け 人数
男性 女性
管理
監督
L 1等級 リーダー 管理監督者としての役割と責任を担う 12名 40名
一般 J 2等級 サブ
リーダー
初期管理や専門職の役割を担う。
L階層補佐
26名 72名
1等級 担当 定型業務を担う 481名 1,561名

明確化された昇級・昇格の仕組み

等級が変更すること(1等級→2等級)を昇級といい、階層が変更すること(J階層→L階層)を昇格という。

昇級・昇格ともにポスト任用で、事業所・職種ごとに定数制限を設定して運用している。リーダーである1等級への任用も、契約更改と同じく1年ごとに行い、継続任用に当たっての面接を本人と行っている。

昇級・昇格 前提条件 事前
研修
試験 面接 備考
J1等級
→J2等級
原則、J階層
1等級在籍
1年以上
公募を含む選任の上、所属長の推薦と担当部
次長・営業所長面接で判断
J2等級
→L1等級
原則、J階層
2等級在籍
1年以上
公募を含む選任の上、担当部次長・営業所長
の推薦及び人事教育部長面接・試験で判断

職種や役割に応じたきめ細かな給与設定

給与は、基本時給に職種や役割に応じた時給が加算され、作業内容や勤務時間帯によって手当も支給されている。こうした内容は、給与規程に明記されている。

区分 項目 内容
基本給与 基本時給 全事業所、全職種統一で設定
地域修正時給 地域性を考慮し、事業所ごとに設定
職種時給 事業所、職種ごとに設定 (※職種例:倉庫係、夕食宅配)
責任時給 L階層1等級及びJ階層2等級に適用
評価時給 評価制度の結果に基づき設定
手当 フォークリフト手当 通常業務でフォークリフトに乗務する場合に適用
冷凍庫手当 常時冷凍庫内作業に従事する場合に適用
指定時間帯手当 ①5:00~8:00に勤務する者
②16:00~22:00に契約上始業する者に対して適用
日祝日手当 日曜、祝日に勤務する場合に適用
通勤手当 通勤手段ごとに基準を設定して支給
その他 研修・会議等による長時間通勤加算 自宅から研修・会議場所への通勤時間が往復3時間超の場合、超えた時間に対して0.5時間を単位に契約時給を加算(例:往復3時間5分=30分加給、往復3時間35分=60分加給)

チェックリストを活用した評価と給与への反映

1年間の出勤率と業務態度、及び担当職務達成度基準を評価し、評価時給に反映している。評価は評価確認表(チェックリスト)に基づき、目標通りできていれば「○」、未達成の場合は「×」とし、自己評価と上司評価により決定する。評価者となる上司は、正社員又は後述のマネジメント研修(上級)を修了したL階層1等級のパート社員である。

階層 等級 出勤率 職務達成基準 評価時給
算定期間 算定期間 評価 金額
前年 3/11 ~
当年 3/10
前年 3/21 ~
当年 3/20
L階層 1等級 95%以上 90%以上 A 20円
95%未満 90%未満 B 0円
J階層 2等級 95%以上 90%以上 A 20円
95%未満 90%未満 B 0円
1等級 95%以上 90%以上 A 20円
95%未満 90%未満 B 0円

評価確認表(例)

評価により賞与・慰労金を支給

L階層1等級(リーダー)のパート社員には年2回賞与が支給される。算定期間の業績目標達成率(個人別目標+事業所目標)を、A(110%以上達成)・B(100%以上110%未満達成)・C(100%未満)の3段階で評価する。

J階層1等級及び2等級のパート社員には年2回慰労金が支給される。算定期間の出勤率が95%以上で勤続1年以上の者が対象で、勤続年数の区分に応じて金額が決定される。

節目ごとの研修による能力開発支援

①採用時研修

入社時は、「就業の手引き」や労働安全衛生パンフ、交通安全パンフ等を用いて、各事業所の採用担当者が2時間程度研修を行っている。「就業の手引き」は20ページ超ある冊子で、会社理念、人事制度、服務規律、福利厚生等の仕組みが詳しく記載されている。

②試採用期間OJT

入社後1か月間は試採用期間となり、OJTチェックリストに基づきL階層1等級(リーダー)やJ階層2等級(サブリーダー)が指導とチェックを行っている。OJTチェックリストは、社会人としての常識、職場のマナー・ルール、習得すべき作業を中心に構成され、日々本人と直属上司が項目ごとに○×を付け、週1回相互確認を行っていく。チェックリストの出勤率・習得率を80%以上満たした者について、試採用期間中の職務適性や業務態度を勘案して本採用を決定する。

③1か月フォロー研修

本採用から1か月後に、各事業所において採用担当の正社員がフォロー研修を実施している。採用時に配布した「就業の手引き」、安全衛生パンフ等の内容の再確認や、「1か月フォロー研修資料」を用い1.5時間を目安に実施している。

④マネジメント研修

L階層1等級(リーダー)に任用されたパート社員に対し、外部講師によるマネジメント研修を3年間実施(年4回×3年間=12回)している。初年度は初級、2年目は中級、3年目は上級とレベルが上がり、上級では実際にJ階層に対する評価ができるよう、目標管理等についてトレーニングを行っている。

J階層2等級(サブリーダー)に任用されたパート社員に対しても、基礎コース研修(L階層1等級に対する初級研修の簡略版)を年3回実施している。

⑤宅配担当のパート社員への教育研修

宅配を担当するパート社員に対しては、以下の教育研修が行われている。

まず、入社時は、東京営業所と千葉営業所の2か所で半日の集合研修を行っている。前記①の内容の他に、扱う商品や宅配時の注意事項についての説明も行う。また、高齢者や認知症の会員への宅配を行うこともあるため、認知症サポーター養成講座を受講した正社員による認知症サポーター教育を実施して、認知症についての知識を付与している。

入社後実質12日間は、先輩のパート社員の宅配に同行する等のOJTを行っている。前記②のOJTチェックリストを用い、本人と上司が達成度を確認している。

また、半日の安全運転初動教育では、正社員の指導担当者が1~3名のパート社員を担当し、座学と併せ実車を使っての教育も行っている。

その他、夕食宅配時に前日商品の取り残しがあった場合は会員の体調不良等が考えられるため、対処法についての手順書を作成し、パート社員に周知徹底している。

正社員登用によるキャリアアップ

L階層1等級(リーダー)を1年以上経験し正社員への転換を希望するパート社員は登用試験を受けることができる。1次試験は一般常識等の筆記試験とテーマに沿った小論文の作成が行われる。1次試験に合格すると、人事部と各業態の部長、役員による面接へと進む。2014年度は1名が登用され、2012年の制度導入以降5名が登用されている。

会議を活用した全社情報の共有化

半期に一度、パート社員を含めた全社員が参加する全体会議を開催し、経営方針など会社情報を還元している。

また、3か月に一度、宅配物流事業のL階層1等級(リーダー)のパート社員が集まる機会を設け、意見交換を行いながら情報の共有化を図っている。

その他、毎月社内報を発行して全社員に配布し、経営情報から各事業所やメンバーの紹介など、タイムリーに情報を提供している。

全体会議での表彰によるモチベーションアップ

宅配事業部では、半期に一度全社員が参加する社員全体会議を開催し、その中で目標達成をした事業所や個人に対して表彰を行い、賞金や記念品を授与している。

具体的には、安全運転無事故記録を達成した事業所や配達効率(一日一車当たりの配達件数)の高かった事業所、弁当以外のサブ商品(惣菜)の利用人数が多かった事業所等、様々な項目で表彰が行われている。

また、コープの行動指針にあてはまる行動を行ったパート社員に対しては、正社員の推薦、所長の投票を経て個人表彰が行われている。直近の事例として、宅配先の会員が倒れているのを発見し、救急車を呼ぶ等迅速な対応をとったパート社員が表彰の対象となっている。

パート社員に対して目標のノルマはないが、表彰を行うことにより自発的に目標に取り組むケースが増えているなどモチベーションアップに繋がっている。

法定を上回る手厚い福利厚生制度

法定の休暇制度以外に、私傷病や自己都合による休職制度が設けられている。私傷病休職は勤続1年以上の者が対象で、最長1年間休職することができる。取得期間中は無給であるが、在籍のまま療養に専念できる安心感もあり、2011年からの累計で、私傷病休職取得者313名、自己都合休職取得者381名と取得者が多数にのぼっている。

育児休職・介護休職ともに勤続2か月以上あれば取得できるなど、対象者を法定の勤続1年以上を上回る範囲に広げており、育児休職は2011年以降18名、介護休職は2009年以降55名が取得している。対象者が休職中は派遣社員が職務を代行しており、復職時に現職に復帰できることもあって、取得者のほとんどが退職せずに復職している。

健康診断については、契約時間に関わらずパート社員、アルバイト社員全員の受診を義務付けており、法定を上回る措置が取られている。

また共済互助会(コープネットウェルクラブ)に加入すると、社員と共通の福利厚生制度が適用される。具体的には、自宅療養見舞金や出産祝金、宿泊補助金の支給や、団体保険への加入が可能となっている。

その他、事業所によっては無料の給茶器の設置や、通勤時の無料送迎バスの手配などの措置があり、パート社員も利用できるようになっている。

安全運転に向けた計画的な教育体制

宅配事業部では、宅配を担当する正社員とパート社員を対象に、安全運転に関する年間計画に基づく教育を毎月各事業所で実施し、安全運転の徹底を行っている。

各月の教育項目として「飲酒運転防止」「運転者の運転適性に応じた安全運転」「健康管理の重要性」などがあり、手順書やDVDを使った説明と、テストも適宜実施している。なお、パート社員が運転するのは男女ともに軽自動車に限定しており、トラックは運転させていない。

パワハラ・セクハラ講習会の実施による働きやすい環境の整備

正社員及びパート社員を対象に、定期的にパワハラとセクハラの講習会を実施して、意識改革を促している。講師は正社員が務めている。また、社内・親会社に電話相談窓口を設け、ポスターで連絡先を周知している。

社会保険加入の厳正な対応

社会保険の加入条件については、就業の手引きに「週の就労契約時間30時間以上が対象」「契約時間が30時間未満であっても、月の実働時間が2か月以上130時間以上となった場合は対象となる」と明記して周知を行っている。加入対象となった後も3か月ごとにチェックを行い、厳正に対応している。

(4)成果と課題

パート社員の定年は65歳であるが、近年定年まで勤務する者が増えてきており、更に定年後の勤務を希望する者もいる。また、一度退職し他社で勤務したパート社員が再度応募してくる事例も多く、様々な取組を行っていることで、パート社員が働きやすい環境が整備された結果ではないかと考えている。

一方で、パート社員を募集してもなかなか人が集まらない実態がある。募集時給のみが注目されがちであるが、整備された評価制度や手厚い福利厚生制度等にも目を向け、総合的に見て働きやすい会社であることを認知してもらえるよう、何らかの働きかけを行っていく必要があると考えている。

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