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(有)江東ヘルパーステーション

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

企業理念を浸透させたマネジメント力と社内新聞等を活用した効果的な情報共有により、スキルアップと定着化を図る

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 訪問介護事業等
従業員数 約110名 パート労働者数 約100名
ポイント
  • 社内イントラネットを充実、社内新聞の定期発行により介護に係る様々な情報を共有化して、社員のマネジ メント力を培い、登録型ヘルパーとのコミュニケーション力をUPした結果、ヘルパーの介護技術と定着率 を高める。
  • 永年勤続表彰を正社員と同様に行う。

(1)企業概要・人員構造

同社は昭和55年から看護婦家政婦紹介所をしていたが、介護保険制度の開始と同時に、居宅介護支援事業及び訪問介護事業を開始した。事業所は、本社を兼ねて1か所であり、事業所では介護に係る実務研修ができるようになっている。

人員構成は、正社員12名は全員介護福祉士の有資格者であり、うち9名がサービス提供責任者で、ケアマネージャーを兼務している者もいる。主たる事業である訪問介護を行うヘルパーは、正社員を除けば全員登録型ヘルパーで、約100名の登録者がいる。現在稼働しているのは約70名程度であり、うち90%以上が50歳から60歳代の女性である(平均年齢59歳・勤続年数約7年・最少年齢24歳・最高年齢80歳)。訪問介護を1日1時間から1時間半程度利用する者が多いことから、登録型ヘルパーの稼働時間は平均月約32時間となっている。

正社員は、本社である事業所において社是である「誠実で、思いやりを持ち、前向きで行動する」ことを基本として、主に登録型ヘルパーのマネジメントを担当している。正社員の平均年齢は48歳で、勤続年数の平均は約9年、登録型ヘルパーに対しては「思いやりを持って接し、話しやすい雰囲気作りに努め、進んで悩み等の相談に乗る」という行動指針の下、教育指導等を任されている。

(2)取組の背景

同社は看護婦家政婦紹介所から介護事業へ移行したものの、会社組織としての体制がほとんどできていなかったのが実態であった。看護婦家政婦紹介所からの先代社長の跡を継いだ現社長が、まずは社内の組織づくりと広範な介護業務に係るマニュアル等の整備を進めないと、ほぼ事業所外で稼働する登録型ヘルパーの管理ができないことを痛感したため、会社組織の基本を築くことを手掛けた。まず、企業理念及び運営方針を手始めに、どうすれば事業を円滑に進めることができるか、統一的な教育を浸透させるにはどのような手法が良いか、働く側をどれだけ大切にできるか等の視点から、段階を経て1つずつ検討を進めて行った。

登録型ヘルパーは、会社に魅力がないとすぐに他の事業所へ移動してしまう傾向があるので、「安心」して長期にわたり登録を続け、スキルアップしながら働き続けられることを常に意識した対応を心がけた。

(3)取組の内容

社内イントラネットや社内新聞による情報共有、マネジメント強化

登録ヘルパ-の管理や教育、サービス水準向上等を含む社内マネジメントの強化を意図して、社内イントラネットを独自に作成し、 運用している。同イントラネットには、企業理念(公明正大な事業活動を通じて社会へ貢献・質の高い心にふれるサービス・社員の豊かな人生の実現)、当該年度の事業計画、会社が目指すサービス、作業分担一覧、ヘルパー一覧、各種規定及び基準、各種マニュアル、苦情処理対応、各種行政資料、介護関係法令等あらゆる情報が網羅されており、全ての社員がいつでも学ぶ機会があり、基本的には誰でもが確認できる状態としている。また、会社は、登録型ヘルパーを含む社員全員に渡るものとして、社内新聞の「クローバー通信」(図表1)を毎月発行している。この新聞では、会社から登録ヘルパ-等へのお知らせだけでなく、最新の介護知識や介護技術に関する情報を分かりやすく解説するコ-ナ-等を設けており、新しい情報等の周知とともに正社員、登録型ヘルパー、利用者との間に一体感を持たせる仕組みを創りだしている。このような社内情報共有化を推進する仕組みを整備した結果、サービス提供責任者でもある正社員が、登録型ヘルパーに対する細かな対応を常にできる環境ができるため、良好な人間関係が構築されており、結果として登録型ヘルパーの定着率の高さに繋げている。

図表1 社内新聞「クローバー通信」

事前の給与シミュレ-ションによる働くイメ-ジづくり

登録ヘルパーに対しては、実際勤務した場合にどの程度の収入になるか、勤務する前に稼働時間に基づく給与のシュミレーションをヘルパー各人に提示し、安心して働くイメージを事前に持たせている。

賞与の支給

登録型ヘルパーに対して、1か月1万円以上、かつ過去12か月で12万円以上の稼働勤務実績がある者に対し、年2回5,000円から6万円程度の範囲で、 サービス提供責任者が行った評価(3段階評価)に応じて賞与を支給している。

介護資格取得支援制度

ヘルパーの資格がないが、介護業務に従事したいと登録を希望する者に対しては、2級ヘルパー資格取得の講座を受講させ、修了書をもらった時点で半額の補助を行っている。ただし、最低2年間は同社で訪問介護に従事してもらうことを要件としている。

正社員と同じ表彰制度

定着率が高いこともあり、勤続10年以上(その後5年毎に)の登録型ヘルパーに対し、正社員と同様に表彰を行っている。表彰方法は、表彰状・記念品授与・賞金がセットで正社員と同時期に行っており、登録型ヘルパーを続けていくモチベーションの向上に繋がっている。

全額会社負担での健康診断の実施

健康診断は、労働時間に関わらず、全額会社負担としており、受診を精励している。

(4)成果と課題

登録型ヘルパーからは、これまで5名が正社員になり、サービス提供責任者となって、事業の中心を担っている。サービス提供責任者のマネジメント能力が高いこともあるが、登録型ヘルパーとはフランクな信頼関係が結ばれており、稼働の仕方も現場で柔軟性のある対応を可能な限り行っていることから、この会社であれば安心して働くことができる、として定着率の高さに繋がっている。実際、登録型ヘルパーに対し、「ヘルパーさんアンケ-ト」を年1回実施しているが、現状に対する不満や要望はあまり出てこない。

一方で、賞与の支給額については、担当するサービス提供責任者が3段階程度の評価をした結果に基づいているものの、評価に明確な基準があるわけではないことが課題である。

会社としては現状の質を維持していくためにも、賃金の引上げや常勤で働く仕組みを検討したいが、それらは介護保険法の改正次第で大きく対応が変わるものであり、長期的な計画を立てられない現状では予算的にも難しい。

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