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B社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(金融・保険業)より

明確な時給体系、表彰制度等を通じた動機付け

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 貸金業、クレジットカード業等非預金信用機関
従業員数 約250名 パート労働者数 約100名
ポイント
  • 職種別、地域別に時給を設定。
  • 人事考課と明確に連動させて昇給を実施。
  • 職種別の育成型の人事考課表を用意し丁寧に運用。
  • 全従業員参加のイベントにて表彰を実施、毎年多くのパートタイム労働者を表彰。

(1)企業概要・人員構造

同社は、1986年に親会社のクレジットカード部門が独立して発足した。以前から行っていたSS(サービスステーション)やLPガスの顧客向け給油専用カード事業を発展させ、業界で唯一のクレジットカード会社として、特徴ある事業を展開している。

派遣労働者を除く全従業員250名のうち約100名を「メイト」と呼ばれるパートタイム労働者が占め、その他にフルタイムの契約社員が約40名在籍している。

メイトの職種は大きく次の2つに分かれており、これらはいずれもメイト固有の職務である。一方、正社員は、地区全体の数値責任・コスト責任を負うほか、企画業務、本社や関係会社との調整、メイトの育成・管理等を行っている。

メイトの主な職種

職種 人数 概要
ラウンダー 約40名 営業促進職として地域のSS等を巡回し、カードの募集、発券に係る提案営業を行う。都道府県等のエリア単位で雇用されている。
オペレーター 約60名 コールセンターにおいて、顧客からの照会対応、顧客への各種案内等を行う。新潟センター1箇所で雇用されている。

メイトの所定労働時間は7時間又は7時間半で、正社員より30分から1時間短い。雇用期間は6か月で、採用時期に関わらず2回目の契約からは、4月1日及び10月1日を統一の契約開始日にしている。契約の更新は、その日以前に新しい労働契約書を提示して行われる。

なお、正社員は全国異動を前提としているのに対し、メイトは地域を限定して雇用されている。

(2)取組の背景

ラウンダーは同社の営業第一線の重要な戦力であり、高いコミュニケーション能力を有する地域の人材を、以前から比較的高い処遇で雇用してきた。

一方、新潟のコールセンターは、かつて派遣労働者を中心に運営されていたのを最近、直接雇用に切り替えたものである。その際に、賃金体系等を見直すこととなり、それが全社のメイトに適用され、現在の諸制度となっている。

(2)取組の内容

職種別・地域別の時給

メイトの時給は、基本給、地域手当、シフト手当(コールセンターのみ)から構成される。

基本給は、ラウンダー、オペレーターの職種別に決められている。いずれも、高度なスキルを求められる職種であるため、千円前後からと比較的高額である。

地域手当は、全国の地域をA、B、Cの3区分に分け、基本給に対しA地域では10%、B地域では5%が支給されている。新潟センターはC地域のため、実際には地域手当の適用はない。

その他に、コールセンターではシフト勤務に準ずる人と準じない人とがいるため、シフトに準ずる人に限り、月額のシフト手当が支給されている。

人事考課に基づく合理的な昇給システム

メイトの基本給は、賃金表によらず、職種別の範囲給となっている。賃金改定は、現基本給額と人事考課結果に応じた昇給率テーブルに基づいて、年1回4月に行われる。

具体的には、現基本給額の段階と考課の段階とを組み合わせたマトリクスにより、最高10%~最低-4%の間で昇給率が決まる。ただし、実際にはマイナスとなるケースは少ない。

昇給率を現基本給額に乗じ、10円単位に切り上げた額が昇給額となる。新しい基本給が決まると、それに連動して地域手当も昇給する。

人事考課に基づく昇給率決定のイメージ

区分 人事考課の段階
現基本給額の段階 -4%

10%

育成型の人事考課

メイトの人事考課表は「ランクシート」と呼ばれ、ラウンダー用、オペレーター用等、職種別に整備されている。各メイトの実力がどのランクにあるのかを測定することを重視した育成型の仕組みである。

考課の領域は大きく「業務・業績考課」と「プロセス考課」に分かれている。それぞれに5個の考課要素が設けられ、全10個の考課要素で評価する。この考課要素は両職種に共通であるが、考課要素の着眼点、考課基準及び考課ウエイトは、職種ごとに異なっている。

特徴的なのは、経験年数等に応じた期待レベルが、考課要素ごとにステップ1からステップ5まで定められている点である。これを考課基準として、各メイトがどのレベルにあるのかを評価することで、メイトの人材育成につなげている。

実際の考課に当たっては、各要素のステップ(1~5)にウエイトを乗じた値の合計が評価点となり、評価点によってA~Eの考課ランクが決まる。経験年数によって期待ステップが異なるため、評価点と考課ランクとの対応も経験年数によって差をつけている。ベテランは新人に比べかなり高評価点でないとAやBにはならない仕組みである。

最終的な考課ランクを決定する前には、考課者である課長、センター長等と本社の総務部長との間で考課調整会議を開催し、公正を期している。また、考課結果については、直後の契約更新の前に、新しい給与条件と併せて本人にフィードバックを行っている。

「ランクシート」のイメージ(ラウンダー)

定期的なOFF-JTの実施

採用後の教育訓練は、職種別に行われている。

ラウンダーの教育訓練は、エリアマネジャー等のフォローの下で行う、業務マニュアルに基づくOJTが中心である。他には、毎月1回、地域ブロック別に開催されるラウンダー・ミーティングが、重要なOFF-JTの場になっている。そこでは、地域ブロック統括者、エリアマネジャー等により、業績の進捗確認、好事例の共有化、新商品の紹介、社内諸制度の説明等が行われている。

オペレーターの場合は、最終顧客との接点ということもあり、マニュアルに基づく丁寧な採用時教育が、スーパーバイザー又はアシスタント・スーパーバイザーにより、最長2週間かけて行われる(個々人のスキル及び理解度により異なる)。その後には、「ナレッジスクール」という名称で、月1回のペースでのOFF-JTが用意されている。ナレッジスクールでは、社会人としてのマナー、社内他部署や関係会社の知識、社内規程の知識等の教育のほか、クレディター1、個人情報取扱主任者2の資格取得に向けた指導も行われている。業務上、就業時間に全員が集まることはできないため、3組に分けて実施することで、全オペレーターが参加できるようにしている。

表彰

同社では近年、決算終了後にメイトも含む全従業員参加のパーティを開催している。このパーティは、旧年度の慰労、新年度のキックオフ、全国に分散している社員のコミュニケーションを目的としているほか、顕著な成果をあげた従業員の表彰式という意味合いも大きい。

表彰式では、優れた販促活動で目標を大きく上回る取引を獲得したラウンダーや、受発信件数が特に多いオペレーターが表彰対象となっており、毎年20名ほど度のメイトが表彰される。表彰では、全従業員が見守る中で、社長から表彰状と金一封を手渡しされ、メイトのモチベーションにつながっている。

契約社員、正社員へのステップアップ

メイトから契約社員への登用は、4月に行われる。本人の希望のほか、基本的には上司が推薦すること、人事考課が良好であること、8時間勤務ができることが必要である。契約社員になると、現場のスーパーバイザー又はアシスタント・スーパーバイザー的な業務が期待されるため、実務的なスキルだけでなく、管理監督者としての資質があるかどうかが強く問われる。制度開始初年度は10名ほどが登用されたが、今後は数名程度を登用していくことが想定されている。

契約社員から正社員への登用も、毎年4月に行われている。こちらは完全な公募制で、まず自薦・他薦を募り、書類選考で一次審査を通過した者の中から、適性検査と社長以下全部長の前でのプレゼンを通じて最終決定される。毎年数名が、正社員に登用されている。

こうした登用の結果、メイトから契約社員を経て正社員へとステップアップした者が、これまでに10名程度いる。

(4)成果と課題

高いスキルを有する人材の確保・定着に、給与の充実や表彰制度は一定の成果をあげていると認 識している。人事考課制度はまだ導入されて日が浅く、もう少し様子を見ないと正確な評価はでき ないと考えているが、今後とも適切に運用していく予定である。

業種柄、業務のマニュアルが整備されているので、OJTは比較的うまくいっている。一方、 OFF-JTについては、必要のつど行ってはいるものの、まだ手探り状態であるため、今後充実させ ていくことも課題のひとつと考えている。

  1. 審査業務に携わる担当者が、初期及び途上与信の基礎知識と関係法令を修得し、多重・多額債務者の発生防止に努めるとともに、プライバシー保護の重要性などを学ぶことを目的とした検定。
  2. 日常業務で個人情報を直接取り扱う最前線の人のための認定資格。

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