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リコーロジスティクス(株)
社内ホットラインを設置し職場環境の改善を図る
正社員転換推進措置
所在地 | 東京都 | 業種 | 運輸・倉庫業 |
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従業員数 |
約1,870名 (単体) |
パート労働者数 | 約480名 |
ポイント |
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(1)企業概要・人員構造
同社は、精密機器メーカーの物流子会社として動脈物流(調達・生産・販売)はもちろん、静脈物流(使用済機器等の回収リサイクル)や国際物流など様々な物流サービスを提供している。国内に100箇所以上、また海外にも拠点を持つが、数名程度の拠点から数百名が勤務する拠点まで規模は様々である。
従業員1,870名のうち、社員が約840名、契約社員が約520名、「フリースタイル社員(以下FS社員)」と呼ばれるパートタイム労働者が約480名、定年後再雇用者である嘱託社員が約30名の構成である。なお、FS社員は1日当たり6~7時間程度の就業を標準として想定しているが、フルタイムで勤務する者もおり、社会保険の加入対象となっている者が多い。各雇用区分の概要は次表の通り。
呼称 | 仕事内容 | 就業時間 | 雇用契約期間 | 給与形態 | 転勤 |
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社員 | 管理部門を担当 | フルタイム | 無期 | 月給制+諸手当 | あり |
契約社員 | ピッキング、仕分け、梱包、検品 | フルタイム | 有期(1年) | 月給制+諸手当 | なし |
FS社員 | 同上 | 6~7時間/日 | 有期(3か月) | 時給制 | なし |
同社には、「雇用開発センター」という社内組織があり、各拠点におけるFS社員の雇用管理サポートを主に担っている。具体的には、募集条件の相談、採用時の面接、雇入れ時の研修・教育、そしてFS社員からの苦情・相談への対応を行っている。なお、苦情等については、雇用開発センターに加えて本社の人事部も対応している。現在は、関東圏の拠点のみに対応しているが、将来的には、全拠点への展開を考えている。
(2)取組の背景
FS社員が行う業務は、ピッキング、仕分け、梱包、検品である。扱う商品は多品種に渡り、かつ、ピッキングから出荷までの時間が非常に短いため、スピードと正確性が要求される。また立ち仕事が多いために、仕事に慣れるまでに離職する者も多く、FS社員の定着率向上が課題となっている。
なお、雇用形態に限らず全従業員が会社の方針を理解して行動することが求められており、行動指針等の研修を重視している。
(3)取組の内容
職能資格等級に基づく賃金設定
同社では「○○の作業ができれば◎等級」といった職務遂行能力に基づいた等級制度及び賃金テーブルを設定している。この賃金テーブルは拠点ごとに作成するが、本社に報告することが義務付けられている。
雇用契約の更新時に等級の評価がなされ、次の契約期間の時給が決定される。更新時の面談ではこの賃金テーブルについて説明を行い、次の目標を具体化することで、FS社員のモチベーションを引き出している。なお、評価は本社が作成している評価基準に準拠した評価基準にて各職場で実施している。
多彩な研修方法
同社では、段階や目的に応じて多彩な研修を行っている。
まず雇入れ時には、会社のルールや社員の行動指針、社員証の取扱方法等をまとめた冊子を配布し、基本的なルールについて周知を図っている。また、マナー研修等の全社共通の研修を行った後、拠点ごとに福利厚生施設等の説明を行う。
実際の現場作業においては、OJTによる研修が中心となる。拠点によって扱う商品や顧客が異なるため、拠点ごとに作業の段取りを定めてマニュアル等の教材を作成し、社員が FS 社員に対してOJTで指導する。
その他、個人情報保護等に関する全社共通の研修については、パソコンを使用できる環境であればe―ラーニングで、パソコンが使用できなければ印刷した教材を用いて研修を行っている。
契約社員への転換制度
同社には、FS社員から契約社員へ転換できる制度がある。転換候補となるための条件は、フルタイム勤務ができること、作業が正確で勤務態度に問題がないこと、向上心があることなどで、等級や勤続年数の制限はない。実際の転換は、本人の希望や会社からの働きかけをきっかけに随時行われており、各拠点の判断で転換の可否を決定する。転換実績は年間10名前後である。
なお、契約社員から正社員への転換制度もあり、各拠点において人事考課に基づく一定の基準を満たした者が推薦され、面接試験・筆記試験が行われる。契約社員から正社員への転換は4月、10月と年に2回実施され、年に10名程度が正社員に転換する。
安全衛生への取組
同社には年齢の高いFS社員も多い。中高年者であっても作業がしやすいように新しい施設では照明に配慮を行っている。
その他、物流業における安全衛生マネジメントの導入、定期的な安全衛生委員会の開催、過重労働セルフチェックリストの活用など、安全衛生への取組を積極的に行い、安全への意識を高めている。安全衛生委員会の主な構成委員は各拠点によるが、リーダー格の FS 社員も委員となり、積極的に安全衛生活動を行っている。過重労働とならないよう体調管理等のセルフチェックを実施している。なお、長時間労働者への面接指導は、月時間外80時間超の労働者に義務付けており、月時間外60時間超の労働者は要注意対象として長時間労働にならないよう業務上の配慮を行っている。
正社員に準じた福利厚生
無給ではあるがFS社員も慶弔休暇を利用できる。また、各拠点に設置されている休憩室、社内食堂、会社の送迎バス等は、雇用形態に関わらずFS社員でも利用が可能である。
ワーク・ライフ・バランス促進のための取組
年に2回、6~7月と11月を有給休暇奨励月間としている。この期間は、雇用形態に関わらず全従業員に対して会社から呼びかけを行い、有給休暇取得率の向上を図っている。
また、育児等を理由にFS社員であっても1年を期限として長期休業することができ、休業期間中に雇用契約が終了する場合は、同条件で契約を更新することができる。さらに、家庭の事情など本人の状況に応じて就業時間等の労働条件をフレキシブルに変更できるよう、1回の雇用契約期間を3か月と短く設定している。
苦情や相談を受ける「ホットライン」の設置
FS社員の場合、拠点内の人間関係のトラブル等が離職につながることも多い。これを防いで定着率向上を図るため、本社人事部に「ホットライン」を設け、FS社員が直接悩みを相談できる体制を取っている。なお、ホットラインについて周知を図るため、相談窓口の電話番号等を記したポスターを事務所内に掲示し周知を図っている。また、入社時に相談窓口の電話番号を記載した冊子を配布している。中には、相談窓口の電話番号を記載した「ホットラインカード」を作成し配布する事業所があるなど所長の裁量によって行われている。
なお、ホットラインは、本社につながる回線とグループの相談窓口につながる回線の2本が用意されている。
(4)成果と課題
人員不足の中、FS社員の定着が課題となっている。同社では長期間にわたって勤続するFS社員がいる一方で、立ち仕事等を理由に入社後まもなく離職するFS社員もおり、後者への対策として、今後も従業員が働きやすい環境を整備したいと考えている。