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(株)新生メディカル

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

スキルアップのための社内研修や実践発表会を実施するとともに、短時間巡回訪問サービス推進によりパート職員の固定給化を実現

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
8.職場のコミュニケーション等
所在地 岐阜県 業種 訪問介護事業等
従業員数 336名 パート労働者数 170名
ポイント
  • 就業規則その他規則の改訂に当たり、代表取締役がその趣旨や思いを明文化。
  • 短時間巡回訪問介護サービス推進によるサ-ビス効率化により、週所定労働時間20時間以上のパ-ト職員 の賃金を固定給化。
  • 時間と距離を自己申告することによって、正確な移動時間等を把握し手当を支払う。
  • パート職員をチームリーダ-、サービス提供責任者へ登用し、手当を支給。
  • パート職員を含む全職員を対象に社内研修を体系的に実施。人材育成施策の一環として社内実践発表会も毎 年実施。
  • 職員個々が次のステップへ進むための目標と課題を明らかにする職員評価表を導入。

(1)企業概要・人員構造

昭和52年に創業し、訪問介護を中心に展開している中部地区の事業所である。直営で7訪問介護事業所、その他福祉用具貸与 / 販売、認知症対応型通所介護、訪問入浴介護と保育所を運営する。

職員の構成は、図表1の通り。週所定労働時間が20時間未満の者が半数以上を占める。離職率(退職者数 / 期首職員数)は平成24年度で正職員が10%、パート職員が19%、全体の平均は17%である。

近年、パート職員の賃金は時給制の他に固定給制(日給月給制)を導入している。固定給者は時給者に比べ、利用者のサービス提供時間以外に事務補助等も行い、勤務時間が固定され自由度は減少するが安定する。入社の際に働き方の違いを説明し、会社と本人の双方の合意で時給制又は固定給制が決まる。また、年に1~2回上長との面談で本人から働き方の希望などを聞く機会もある。契約更新時に時給制から固定給制、場合によっては固定給制から時給制に変わることもある。

図表1 雇用管理区分別の職員構成と勤務状況

時給制は、滞在型(1時間単位賃金)、30分の巡回型(1回当たり賃金)、20分未満の短時間(1回当たり賃金)の別で、 平日、土日祝日の単価を雇用契約書で交わしている。

(2)取組の背景

介護保険法施行を境に、職員数と営業所数も増加していき、社内制度の整備を行う必要があった。その際に心がけたことは、これまでと変わらず信頼関係を大切にし、創業当初からの事業の目的である専門職としての技術・知識・職業理念をもとに職員一人ひとりの自立を重視し、自分達の会社を自分達で育てようという考え方を重視することであった。企業としては現状に満足することなくモデル事業等にもチャレンジしながら、現場の声をもとに前に進む努力を惜しまず、職員に対しては自立を支える様々な施策を取り入れながら経営を進めてきた。

また、施設にいるように朝から夜までの24時間在宅で必要なサービス提供が受けられる「短時間巡回訪問介護サービス(岐阜県モデル事業)」を受託し、新しいサービス提供スタイルにいち早く取り組んできたことが、利用者満足のためのサービス向上や、パート職員の固定給化などヘルパーの雇用の安定を追求するきっかけとなった。

(3)取組の内容

就業規則その他規程の改訂に当たり代表取締役がその趣旨や考えを明文化

平成18年の就業規則その他規程の大幅な改訂の際に、規則・規程の改訂趣旨、会社として今後も大切にしていきたい職員との関係性、また会社の姿勢についての考えを代表取締役が整理し、就業規則の前文という形で明文化して職員全員に伝えた。

図表2 就業規則改訂に際しての代表取締役による前文(抜粋)

(前略)大切なことは、これまでと変わらず信頼関係に基づき、事業の目的である自立支援の考え方を約束事の中においても実践していく姿勢を持ち続けていくことです。それは「誰かが創り、誰かから言われたから守る」のではなく、「自分達の会社を自分たちで育て、約束事を守る」ことです。(後略)

短時間巡回訪問サービスの推進によりサ-ビス効率化を図り、週所定労働時間20時間以上の パ-ト職員の固定給化を実現

岐阜県モデル事業受託をきっかけに、サービス提供時間の区分を細かくし、複数職員でシフトを組んでサービスを提供する「短時間巡回訪問介護サービス」(以下、「短時間巡回サービス」という)を4~5年前より本格的に実践している。

滞在型によるサービス提供は、一度の訪問でいくつかのサービスを提供できるが、反面、話が上手い、気が利く等、介護技術以外の部分によって利用者とヘルパーのマッチングが左右され、非効率になる側面がある。特に生活支援の場合、利用者の望んでいる掃除の仕方や料理の味付けを若い職員が行うことは難しいこともある。個々のヘルパーの持ち味を活かし、滞在型と短時間巡回サービスを効果的に組み合わせたマッチングを考えている。

平成24年度の介護保険制度の改正に伴い、新たにサービスメニューとして20分未満の身体介護の位置づけが明確になったことで、サービス提供責任者が無駄のないコース作りに努め、職員の稼動を安定化することで、週20時間以上のパート職員の賃金形態に固定給制を導入することができた。

自己申告による正確な移動時間等の把握と手当の支払い

移動時間や待機時間等については、実際に業務を行ったヘルパー本人が詳細に時間や移動距離を出勤表で自己申告し、その実態に基づく手当を支払うことで納得感を得られるようにしている。中でも利用者~利用者、利用者~ステーションの間の移動については、時間と距離の両方を記入できるようになっている。時間と距離が必要な理由は、山間など公共交通機関の使えない地域に住んでいる利用者が多い営業所や、距離はなくとも信号待ちで時間がかかる市街地の利用者が多い営業所など、どちらの事情も考慮して対応できるようにするためである。待機時間についても補償している。

パート職員のチームリーダ-、サービス提供責任者への登用

利用者一人を複数名(チーム)の介護職員で対応するチーム制を導入している。入社後6か月~1年でチームリーダーとして担当ケースを持ち、1ケースにつき月1,000円のリーダー手当が支給される。中にはいくつかのチームリーダーになっている職員もおり、チームリーダー128名のうちパート職員が95名を占める。チームリーダーの役割は各職員の報告をまとめ、サービス提供責任者に報告することと、担当ケースのカンファレンスの準備である。登用条件は、管理職である営業所長とステーション責任者が、アセスメント力の向上を期待する職員を指名する。

サービス提供責任者は、介護福祉士の資格保有者で、かつチームリーダーの経験者が任命される。経験等により手当の金額は決定され、1か月7,000円以上の手当が支給される。サービス提供責任者35名のうちパート職員は3名で、手当はパート職員も正職員と同様に支給される。

パート職員を含む全職員を対象に社内研修を体系的に実施

社内教育は各所長(管理者)がその役割を担っている。研修は正職員・パート職員全員が対象で、3か月新人指導、新人研修、ステップアップ研修(Ⅰ~Ⅱ)、レベルアップ研修(Ⅰ~Ⅲ、マスター)、サ-ビス提供責任者(以下、「サ責」という。)研修(Ⅰ~Ⅲ、マスター)の対象者、開催時期、目的と内容が毎年度、一覧で明示される。

全職員は毎年、何らかの研修に参加する必要があり、個々に配布される研修計画用紙にその年に参加する研修と当年度の目標を上長との面接で共に確認して設定し、目標に対しての振り返りも上長との面接にて確認する。

図表3 社内研修体系概要

人材育成施策の一環として行う「社内実践発表会」

平成13年から開催している「社内実践発表会」は、年1回各現場での実践について発表するものであり、訪問介護だけでなく全社各部門の職員が発表を通じて改めて自分達の日々の業務を振り返り、それぞれの役割を再確認して今後に活かしていく良い機会となっている。これにはパート職員も参加する。

発表する職員は大勢の前で決められた時間内に話すことや発表のための資料作成をすることで成長でき、発表を聴く人は発表の内容から気づきを得る等の効果があることから、人材育成施策の一つと位置づけている。

当初は会社主導で行われた発表会も、現在では“全職員で作る”ことを心掛け、テーマ等の企画、準備、当日の運営まで実行委員会(各営業所より1名ずつ選出)により行われている。平成24年度は全職員の約半数に当たる約170名が参加した。

職員個々が次のステップへ進むための目標と課題を明らかにする職員評価表

職員が事業理念や職業倫理、ヘルパーとしての基本的態度・役割認識などを意識して業務に当たるように、職員個々が自己を振り返り、さらなるステップアップに向けた目標を設定して取り組むための「職員評価表」を導入・運用している。「職員評価表」には入社3か月目まで用と3か月以上用の2種類があり、パート職員を含む全職員が同じものを用いている。

3か月目まで用には上司の評価はなく、自己評価し、自己の課題を明らかにすることで3か月以降のステップにつなげている。3か月以上用では、自己評価に加え、主任、サービス提供責任者の評価もあり、評価を確認し合い、次のステップに進むための目標と課題を明らかにしている。3か月以上用には、自分の心掛けや気持ちを上司に伝える事項を設けており、面接時にコミュニケーションを深められるようにしている。

正職員登用制度

平成21年に正職員登用制度を導入した。就業規則に明示し、ヘルパー会議で周知し、書面を各職場で掲示した。年に1回(職場によっては2回)の上長との面談で、正職員への転換を希望しているか等本人に働き方を確認する。

勤続1年以上でパート職員本人が希望する場合、①フルタイム勤務ができること、②意欲があること、③時間外勤務ができること、④所属長の推薦があること、⑤面接試験に合格すること、という基準を満たすことを条件として正職員に登用している。平成23年度、24年度には各年4名の実績があった。

(4)成果と課題

短時間巡回サービスの導入で、サービス提供が身体介護中心の明確なミッション一つ二つに絞られるため、そのことがきちんと遂行できれば、利用者を担当することができ、今まで一人前の担当利用者数を持つまでに1年かかっていたところが3~4か月で可能になり、人材育成のスピードアップが図られている。利用者にとっても1日の中で幾度か訪問があることで、安心が得られている。

短時間巡回サービスにより、パート職員の給与形態が時給制から固定給制となり、安定した収入に繋がっている。一方で、週20時間未満で働くパート職員が半数いる。ライフスタイルの変化に応じ、正職員への転換や社会保険加入となるよう労働時間を延長することができる仕組みを設けることで、パート職員の定着率向上を目指している。正職員とパート職員とを区別せず、専門職としての技術、知識、職業理念を基盤とする人材育成を続けるための研修や評価表を実施しているが、今後はキャリア段位制度などを参考に、パート職員の昇給制度、キャリアパスや職務評価表の結果を賃金に反映させる等も検討していきたい。

また、それぞれ営業所が離れていても、企業理念を意識できる行事や仕組みを続けたい。中でも社内実践発表会は、今年度第13回を迎え、年々、発表内容や資料作成も中味が濃いものとなり、時には協会など外部で発表することもある。今後は、同様の発表会を行う他企業と交換発表の場を設けることも検討している。

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