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C社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(飲食サービス業)より

自発的にスキルアップを目指す評価制度を導入し、正社員転換への条件となる契約社員への転換を図る

3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 飲食店
従業員数 約2,900名 パート労働者数 約2,670名
ポイント
  • 自らスキルアップを目指せる仕組みにより、モチベーションの向上を図る。
  • 契約社員(契約社員へ転換後は正社員)への転換を推奨している。
  • 雇用形態別ではなく、職責別に基づいて行う教育研修制度がある。
  • 福利厚生の充実により、パートタイム労働者の採用を促進し、定着を図る。

(1)企業概要・人員構造

同社は大手飲料メーカーの100%子会社として1977年に設立され、全国で直営店舗を約120店舗、フランチャイズ店舗を約10店舗展開する飲食チェーン企業である。本事例では、直営店舗について明記する。

同社の業態は、ハンバーガー店の1業態であり、店舗に供給する食材を加工する工場は有さず全て食品メーカーに製造を委託している。

同社は、駅前の路面店舗又はショッピングセンターのフードコート内(以下、SC店舗という。)に出店しており、その比率は路面店舗が約45%である。営業時間は立地により異なるが、路面店舗は7時~22時、SC店舗は10時~21時を基本の時間帯としている。東京都内の繁華街にある7~8店舗では深夜営業も行っている。

人員構成として、約2,900名の従業員のうち、正社員50名強、契約社員と嘱託社員それぞれ若干名ずつが本社に勤務しており、その他は店舗に配属されている。

雇用区分は、正社員、契約社員、アルバイト(パートタイム労働者及びアルバイト)の3区分により構成されている。契約社員は1年契約かつフルタイム勤務、アルバイトは6か月契約かつ短時間勤務であり、従業員約2,900名のうち92.2%がアルバイトである。正社員及び契約社員は本社が採否の判断を行い、アルバイトは各店舗の店長の裁量により募集し、採用している。

店舗の管理はエリア別に行っている。路面店舗は1店舗に正社員1名を店長として配置し、SC店舗は1名の正社員が2~3店舗の店長を兼務している。12~13店舗を管理するスーパーバイザーが配置され、営業部長がスーパーバイザーを管理している。なお、店長以上は正社員又は契約社員である。

正社員とアルバイトの職務内容や異動の仕組みは異なるが、同社の正社員はまず現場を知るべきであるという考え方があるため、正社員は入社後数か月間、一部の管理部門の専門職を除いて店舗業務を経験することから、一時的に正社員とアルバイトの職務内容が同じになることがある。また、経験を積んだアルバイトは、開店業務や閉店業務、現金管理や発注業務を行い、店長の不在時には時間帯限定で店舗責任者としての任務を任されるため、正社員の業務内容と重複することがある。

アルバイトの属性は、学生65%、主婦15%、フリーター15%、その他5%である。アルバイトの年齢層は、10代が約半数を占めており20代まで含めると80%に達する。勤続年数は、3年以上勤続している割合は25%、1年以上3年未満が30%である。また、アルバイトの約半数が1日4~6時間、週3日~4日勤務している。

アルバイトは6か月間の契約期間を定めて時給制で雇用され、随時昇給がある。時給は各店舗の店長が、本社が用意している昇給プランから選択するため、仮に同じ業務を担当していても店舗ごとに異なることがある。このプランの額の差は、最低賃金が影響している。

賞与と退職金は制度上、正社員のみ支給対象である。社会保険に関しては、各店舗ではもちろんのこと、本社でも各月の労働時間を管理しており、法定要件を満たした場合は加入している。

(2)取組の背景

同社は設立当初、開店業務や閉店業務、現金管理、発注業務を正社員のみで行っていたため、営業時間の全ての時間帯に正社員を1名以上配置するために必然的に1日につき少なくとも3名の正社員が必要であった。約20年前に人件費の効率化を目指し、契約社員やアルバイトの採用を開始し、活用している。

同社は、契約社員やアルバイトを正社員の補助ではなく正社員の代替人材と定義し、契約社員やアルバイトへの権限移譲を進め、少数の正社員での店舗運営を可能にしている。また、優秀な人材を正社員に転換させたい意向があるため、スキルアップと定着を重視し、教育と福利厚生の充実に注力していることから、契約社員やアルバイトのモチベーションの向上にも繋がっている。

(3)取組の内容

ランク別に求めるスキルを明確化した評価制度各店舗に下表(イメージ)のような「グレードボード」を設置している。

ランク メンバー 求めるスキル
ストアマネージャー(店長) A氏 詳細非開示
マネージャー B氏
アルバイトマネージャー C氏
アルバイトA D氏
アルバイトB E氏,F氏
アルバイトC G氏,H氏,I氏
アルバイトトレーニー(見習いレベル) J氏

表はあくまでイメージであり、実際に設置しているものは、マネージャー以上のランクはより詳細に分けられている。また、各ランクに必ず1名以上配置しているということではなく、例えばマネージャーとアルバイトマネージャーのどちらか1名の配置となっている店舗もある。

このボードを設置することにより、アルバイト自身が今どのランクにあり、次のランクにステップアップするために、何をすべきか、誰をお手本にすべきかが一目瞭然となる。店舗ごとに勤務ルールに関するマニュアルがあり、ランクに連動する時給が公開されていることから、ステップアップすることを動機付ける仕組みがある。ランクは店長による能力評価が反映され、店長の判断により随時昇格昇給が行われている。

同社は、契約社員(契約社員への転換後は正社員への転換)を希望するアルバイトを増やしたいという考えがあり、その施策としても役立っている。

更なる店舗改善を実現する研修制度

同社では、アルバイトを正社員の代替人材に育てるべく、毎年7月~8月頃、アルバイトマネージャーに対し研修を行っている。具体的には現場で起こり得ることを題材にした事前課題を提示している。例えば「○○というクレームが発生したとき、あなたの店舗では誰がどのように解決しますか」など、設問に具体性と現実味を持たせ、各人が集合研修の場で発表し、参加者がお互いに知恵を出したり、過去の好事例を共有する。その他、ロールプレイングも重視しており、インプットした知識を早期にアウトプットできるよう工夫されたカリキュラムとなっている。研修での学びを実践に活かし、店舗運営に貢献していると認められれば評価に反映される。

この研修の対象は主にアルバイトマネージャーとしているものの、現場の業務を習得している過程にある正社員も対象となる。

帰属意識を高める役割制度

同社では、店舗ごとに「安全なオペレーションの実現」という役割を担う人材を決めている。店長が指名したアルバイトトレーニー以外のアルバイトがその役割を担い“SS(Safety & Security)リーダー”と呼んでいる。そのリーダーが中心になり、店舗改善のためのディスカッションを行ったり、店舗での優良事例を他のメンバーに共有したりすることにより、安全衛生の維持、向上に役立て、同社の使命である「安全な商品と環境の提供」を実現している。

マニュアルと店長のサポートによる昇進の仕組み

アルバイトは複数のランクに分けられている。アルバイトトレーニー(入社時の研修生)→アルバイトC→アルバイトB→アルバイトAと昇進した後、18歳以上の者はアルバイトマネージャーへの道が開かれている。アルバイトマネージャーは、勤務時間が正社員や契約社員より短いという違いがあるものの、業務内容は正社員と同様に、開店や閉店業務、入出金管理、発注業務を担っている。アルバイトマネージャーを望まない者は、カスタマーズキャストという接客に重点を置いた役職に就くこともできる。

アルバイトマネージャーになるためには、本人から店長に対しその旨を申し出て、店長がその能力や適性を見極めた上でスーパーバイザーに報告し、スーパーバイザーが本社に通知する。

その後、本社から本人に約200ページに及ぶマニュアルが配布される。マニュアルには衛生管理や安全管理、災害対応、在庫管理、クレーム対応、CSR等についての考え方や対応の仕方が詳細に記載されており、OJTを通じて店長の教育を受けながら、前述の事項のチェック項目をクリアしていく。全てクリアするまで個人差によって1か月~6か月、平均2~3か月の期間を要する。店長が全てクリアしたと判断した場合に、スーパーバイザーによる技能テスト及び面接に合格すると、アルバイトマネージャーに昇進することができる。

日頃の勤務成績や能力評価を活かしたスムースな契約社員への転換制度

アルバイトマネージャーは契約社員へ転換することが可能である。具体的には、本人から店長に対し契約社員への転換を希望する旨を申し出て、店長が契約社員に足る能力や適性を認めた上でスーパーバイザーに申請書を提出し、スーパーバイザーの判断によって契約社員に転換することができる。スーパーバイザーは店舗を巡回する際にスタッフの働きぶりも確認しているので、申請があった者はほぼ全員が契約社員に転換できている。

なお、契約社員への転換が認められた者は、アルバイトマネージャーとしての契約期間の途中であっても、契約社員としての契約に切り替えることとなる。

契約社員となった者は、正社員への転換制度を利用することができる。平成26年までは年1回、平成27年以降は年2回、正社員登用試験の受付があり、面接により店舗責任者としての能力や物の見方、考え方が備わっているか判断される他、SPIや一般常識テストを行い、合格した者は正社員に転換することができる。

月に1度のフォローアップ面談の実施

店長とアルバイトは月に1度、店舗にて面談を実施している。この面談では、ランクアップを目指すためのフィードバックや、勤務上の悩みや相談を行っている。この面談によってアルバイトが目指す方向が明確になり、モチベーションの維持向上に役立っている。

商品知識を深めるための食事補助制度

同社は、アルバイトに対しても、「主食(ハンバーガーやパスタ等)を1食購入すると、同社指定のドリンク1杯無料」とする食事補助制度を実施している。

(4)成果と課題

同社は、少数の正社員と多数の非正規社員で構成される人員体制を維持するため、特にアルバイトを多数雇用し活用したい考えがある。そのため、アルバイトの採用や定着、スキルアップのための育成に力を入れている。

上述の評価制度は、求めるスキルや行動を明確にしていることから、アルバイト自身が何をすれば良いか明確に理解することができ、自発的なスキルアップを促すことができている。アルバイトマネージャーから契約社員への転換を希望する者は毎年一定数以上あり、直近2~3年の実績では、年約15名の転換実績がある。今年以降はさらに転換人数を増やしていきたい考えがある。なお、契約社員から正社員への転換実績は年1~2名である。

研修制度や役割を与える制度は、アルバイトの自発的に考える力や取り組む力の醸成に影響を与えている。例えば、SSリーダーに任命された者は、自身が店舗や会社にとってなくてはならない存在であるという意識が生まれ、帰属意識が高まり、より良い取組ができるよう積極的かつ自発的に同じ店舗のメンバーに働きかけている。

定着の観点では、月に1度のフォロー面談が機能しており、アルバイトの不安や悩みが大きくなる前にその解消に努めることが可能になっていることと、アルバイトの育成に繋がっていることが成果と言える。

同社の課題の1つに、正社員や契約社員への転換の促進を更に図ることが挙げられる。転換を希望する意欲の高いアルバイトが数多く存在する一方、正社員や契約社員の責任の重さを懸念し、転換の申出をしない者も存在するため、転換希望者を増やすための施策を検討する必要がある。

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