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イケア・ジャパン株式会社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(小売業)より

明確な理念のもと、均等・均衡施策を多面的に展開

3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 関東地方 業種 その他の小売業
従業員数 約3,300名 パート労働者数 約2,100名
ポイント
  • キャリアディベロップメントプログラムによるキャリアビジョン実現への支援
  • マネージャーも含めた社内公募制度と候補者研修制度の適用
  • 多様なトレーニングプログラムの実施
  • 専任のシフトプランナーによるワーク・ライフ・バランスを考慮した勤務シフト設定

(1)企業概要・人員構造

同社は、1943年にスウェーデンで創業した家具の製造・販売を行うグローバル企業イケアの日本法人として、2006年に設立された。デザイン性の高い家具やインテリア類を低価格で提供している。現在、国内店舗数は7店舗で、今後も続々と出店計画が進行中である。

同社では、従業員を「コワーカー」と呼び、お互いをファーストネームで呼び合うことが定着している。「より快適な毎日を、より多くの方々に提供する」という世界共通のビジョンを支える人間的な価値観が業務の基盤とされ、誰でも受け入れ、共感できるオープンな組織が形成されている。平成25年度ダイバーシティ経営企業100選の選定企業にもなっている。

従業員の約6割(店舗では7割以上)を占めるパートタイマー(パートタイム労働者)には、週所定労働時間により①30時間〜39時間、②20時間〜29時間、③19時間以下、の3種類がある。労働時間以外の労働条件については、契約期間(6か月契約・更新有)、賃金体系(時給)、異動の有無(店舗限定)等に違いがあるものの、正社員との均衡処遇を図っている。採用時の時給は最低賃金及び地域相場よりやや高く設定されている。労働慣行は異なるものの、全世界のイケアにて共通の方針が取られている。

パートタイマーの採用時には2回の面接を実施し、価値観を共有できる人材を厳選している。主婦、学生、外国人、フリーター等、多様な人材を受け入れ、それぞれが持つ生活者の視点やアイデアが、日々の業務や商品デザイン・開発、顧客への対応など店舗運営に生かされている。

(2)取組の背景

「人は誰でも他人に与えることのできる価値ある何かを持っていると信じており、誰もが同じ価値観のもとで働くことを目指している」、「ビジネスを成功させるには夢が必要で、夢を実現するには人の力が必要」とした、イケアの価値観(イケアバリュー)を通して、すべての社員の成長がイケアの発展につながるとの理念のもと、人材育成や処遇の均衡に取り組んでいる。

(3)取組の内容

正社員との均衡処遇

(1)退職金

勤続5年以上のパートタイマーには、正社員と同一基準による退職金が支給される。毎月の給与に6.5%を乗じた金額が積み立てられ、退職時にその累計額が支給される。

(2)インセンティブ賞与

パートタイマーを含む全社員が業績連動型賞与の支給対象とされている1

(3)産前産後休暇手当

給料の3か月分相当が産前産後休暇手当として支給される。支給時期は、産前産後休暇開始時と、子の出産時の2回に分けて支給される。

(4)慶弔休暇制度

正社員同様の慶弔休暇付与制度が整備されている。

1 過去2年連続で支給実績がある。

キャリアディベロップメントプログラム

パートタイマーを含む全社員に、春と秋の年2回、部門マネージャーとの面談を通じて自分の成長プランを作成する機会が与えられている。これはキャリアディベロップメントプログラムと呼ばれ、キャリアビジョンを広く支援することが目的である。設定された成長目標に対して、評価(パフォーマンスエバリエーション)を実施し、さらに成長するためには、今どのような行動をとることが必要か、どのような経験を積むことが必要かなど、フィードバックと丁寧なフォローを行って、さらなる成長機会の付与につなげている。“個々が持つ良さを引きだし、自信を与えてくれる制度”とパートタイマーからも高い支持を得ている。

社内公募制度

正社員の欠員やポストの新設がある場合は、募集要項が掲示板で周知され、パートタイマーを含む全ての社員に応募の機会が与えられている。過去には、パートタイマーからマネージャーに転換した実績もある。マネージャーとなるには、広域配転等の労働条件の変更が伴うため、この時点で正社員に転換している。

特に、新店舗のオープンに際しては、多くのマネージャーポストが生まれ、そこに適材を配置することが必要になる。このような場合には、マネージャー養成プログラム(アスピラントプログラム)が用意されている。このプログラムは、マネージャー登用候補者を公募し、関東と関西の2ブロックに分けて集合教育を実施するものであり、パートタイマーも応募可能で、実際に対象となった者もいる。研修時間は勤務時間として扱われ、参加のための旅費も支給している。

充実した教育訓練制度

(1)入社時研修

パートタイマーの入社時には、2日間の導入研修を実施し、その中で企業理念や社内ルール、労働条件等を説明している。特に、同社の重視するバリュー、ヒストリー、カルチャー、人事理念等については、2~3時間をかけて丁寧に説明している。

(2)バディ制度(1対1教育)

各部門へ配属後のOJTは、バディ制度と呼ばれる先輩パートタイマーによる1対1教育により行われている。先に業務についているパートタイマーが、自らが手本になり後進を育てていくことは、互いの成長につながっている。

(3)eラーニング等

商品知識をはじめ、新しいことを学び成長したい社員のために、グローバルなカリキュラムとして、e ラーニングの多彩なプログラムが用意されている。パートタイマーにも個別に ID が付与されており、商品知識をはじめ職務に関係するプログラムは誰でも受講できるようになっている。また、接客や職場のコミュニケーションには語学が役立つこともあり、英語のレッスンに関しては、会社補助がある。

働きやすいシフトの確保

来店客数の多い休日は、多くの社員の稼働を必要とするが、個々の希望にも配慮し、生活との調和を支援している。休日の取りやすさは、社員の満足度につながっている。

勤務日と時間は、シフトにより決定される。毎月のシフト作成は、店舗全体のシフト作成を職務とする専門のシフトプランナーが行っている。各社員から月3日までの希望休日を記載したシフト申告書を受け付けたり、シフト決定後の変更に柔軟に対応したりできるのも、シフトプランナーが一括管理を行っていることが大きく、店舗全体の人員管理や業務遂行の効率化につながっている。

ほぼ100%の有給取得率の達成

年次有給休暇の100%取得が推奨されており、実際にパートタイマーに関しては、ほぼ100%の取得率が達成されている。会社全体として年次有給休暇を取得しやすい風土と業務遂行体制が構築されており、社員満足度の向上につながっている。

企業内託児所

現時点では船橋店だけであるが、パートタイマーを含めたすべての社員が利用できる企業内託児所が整備されている。育児との両立を希望する多くの利用希望者がおり、時には入所待ちの状態になることもある。子供を安心して預けられることができる施設があることは、子育て中の女性の就労意欲を高め、定着率の向上にもつながっている。

コミュニケーション

同社では、すべての社員に発言権があり、それはパートタイマーも同様である。パートタイマーも、販売戦略策定のプロジェクトチームのメンバーに入ることもある。また、会社全体の戦略・方針は、勤務時間がそれぞれ異なるパートタイマーに配慮して、何回かに分けたミーティングで全パートタイマーに徹底するようにしている。

(4)成果と課題

「誰でも受け入れ、共感できる、オープンで正直な企業文化」は、ポジティブなチームスピリットを形成し、風通しの良い企業風土につながっている。これまで推進してきたワーク・ライフ・バランスの社内浸透や、ダイバーシティに基づいた多様な働き方をより一層進め、平等な機会創出のための仕組み作りを進める。パートタイマーやフルタイマーという考え方を原則廃止し、同一労働・同一賃金の実現や、統一した福利厚生の付与などの新制度の導入を予定している。パートタイマーにおける有期雇用を原則廃止し、給与形態の見直しにも着手する予定である。また、新たに全社員共通の年金制度の開始も予定している。

現在、企業内託児所の整備は1か所にとどまっているが、社員からのニーズが高いこともあり、全店舗への企業内託児所制度を検討課題としている。

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