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(株)蓬莱
ステップアップ制度の実施によりキャリアアップを支援
正社員転換推進措置
所在地 | 大阪府 | 業種 | 飲食料品小売業 |
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従業員数 | 約1,171名 | パート労働者数 | 438名 |
ポイント |
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(1)企業概要・人員構造
創業69年を迎える同社は、創業当時男性5名・女性10名でスタートした。知名度の高い主力商品を持つフードサービス会社として、食品の製造・販売、及びチャイニーズレストランの経営を行っている。ターミナル駅や空港、商業施設などを中心に約60店舗を展開している。主力商品の具材や生地などは工場で製造され、一日数回各店舗へ送られる。店舗では、最終製造工程(成形や加熱等)が行われる。社員の平均年齢は30代前半と若く、エネルギッシュな人材が活躍している。若者応援企業宣言企業1でもある。
正社員のほかに、アルバイトとパート社員の雇用区分があり、パートタイム労働者に当たるのはアルバイトである。パート社員は準社員としての位置づけであり、フルタイム勤務である。店舗人員の構成は、店舗の規模等により異なるが、標準的な店舗は、店舗責任者である店長の他、正社員10名程とパート社員及びアルバイトとなっている。
アルバイトは、シフト制勤務であり、本人の希望をもとに店舗責任者(正社員・店長)が決定している。採用時の雇用契約は、6か月契約で、週20時間以内の条件で雇用している。その後の契約更新時に、本人の希望を考慮し、個別に労働条件を決定している。フルタイムで勤務することも可能であり、社会保険が適用されるアルバイトもいる。社会保険の適用が初めてとなるアルバイトもいるため、保険料の負担や保障の内容等も丁寧に説明し、認識の違いが生じないように努めている。また、諸手当に奨励金がある。奨励金は、店舗ごとの目標売上高の達成度に応じて、毎月優秀店舗の社員に支給される。アルバイトにも月ごとの出勤日数に応じて支給されており、表彰式で表彰状と奨励金が社長から授与される。この施策は、店舗の一体感の醸成と社員のモチベーション向上に寄与している。精勤手当は、月の勤務日数が一定以上の者に支給されている。
(2)取組の背景
地域で根強い人気のある同社は、純粋に“同社の商品が好き”という人も多く、「従業員は家族である」という会社理念のもとに、人と人とのつながりを大切にしている。従来から、主力商品の製造は、熟練を要する仕事であったため、正社員比率が高い人員構成であったが、入社を希望する者の勤務時間や勤務地など、障壁となっている事情に対して、柔軟に対応してきた。また、時間帯による繁閑のある店舗運営には、アルバイトの存在は欠かせないこともあり、研修の充実やモチベーション向上のための取組を継続的に行ってきた。
記名を条件に、誰でも社長に相談メールを送ることができる。相談に対して真摯に対応し、守秘義務が守られることが徹底されていることで、信頼関係が築かれ、風通しの良い組織風土の醸成につながっている。
(3)取組の内容
ステップアップ制度の実施により、キャリアアップを支援
アルバイトからパート社員、パート社員から正社員にそれぞれステップアップする仕組みが用意されている。
アルバイトには、上司の推薦があること等、パート社員の正社員登用制度に準じたステップアップ制度がある。以前は、ステップアップ制度応募の要件には、一定の勤続年数が必要であったが、現在は撤廃され、本人の意欲と能力に応じて、応募が可能となっている。応募時には、パート社員となる意欲や仕事に対する抱負等をまとめた「パート社員昇格用レポート」を人事課に提出する。直近では、5名前後がパート社員に転換している。
また、パート社員の正社員登用制度は、年1回実施される。周知は、本人の採用時と正社員の年2回ある採用2のうち、秋期採用の募集時期に合わせて告知している。毎年、正社員転換をする社員を一定数輩出しており、直近の実績では、15名前後の応募に対して、9名が正社員へ転換している。正社員登用制度への応募は、(1)上司(店長)の推薦があること、(2)エリアマエージャーの推薦があること、が条件として応募資格が与えられる。選考はまず、人事課との面談が行われ、正社員に転換するための心構えの確認と2次、3次試験を突破するためのアドバイスを行っている。並行して、「正社員昇格用レポート」3を人事課に提出し、役員面接を経て、合否が決定される。
技能・能力向上のための計画的な教育訓練の実施
アルバイトには、正社員に準じた技能向上や安全教育等の教育訓練が実施されている。アルバイトの教育訓練も、入社時研修、その後の定期研修等、個人のスキルや店舗間での品質や安全衛生への取組に差が生じないように、本社が主導して計画的に行っている。
スピードと高い技術が求められる主力商品の最終製造工程は店舗で行い、商品を提供しているが、作業の様子はガラス越しに顧客から見える設計になっている。日々顧客に見られることで緊張感と使命感が生まれ、安全・安心・信頼につながっている。また、接客スキルや技術の高さを競い合う社内キャンペーンを定期的に実施している。アルバイトには、接客スキルの優秀な者が多数おり、優秀者には表彰状と記念品が贈られ、モチベーションアップにつながっている。
モチベーション向上のための公正な人事評価制度の実施
アルバイトの評価は、契約更新の際に「アルバイト社員用評価シート」により、店舗責任者が実施している。評価項目は、40項目4に及ぶ。共通の評価項目(7項目)は、勤務態度や安全衛生を重視している。例えば、「食品衛生の三原則を正しく理解し、職場で確実に実践できているか」という評価項目では、異物混入を防ぐためのルール順守や積極的行動が求められているかに着眼し、最高評価の「秀」から最低評価の「不可」の5段階で評価される。評価シートの結果は、評価者より本人にフィードバックし、改善点について話し合う機会を設け、能力向上につなげている。また、評価の結果をもとに、本人の時給に反映させている。
社内報の発行や社内サークル活動により風通しのよい組織風土の醸成
月1回、社内報を発行し、会社の方針やステップアップ制度の仕組み、社内キャンペーンの周知、社内行事の様子などを全社員に伝えている。社内報は各店舗に送られ、休憩時や勤務前後の社員同士のコミュニケーションにも活用されている。
「仕事の他にも楽しみを持とう」という方針から、社内サークル活動への参加を奨励している。各サークルとも、正社員やパート社員、アルバイトの垣根を超えて、職場の仲間同士がつながりを深めている。
(4)成果と課題
「できたてあつあつの商品を提供する」というモットーは、工場、店舗、社員区分に関係なく、全社員で共有されている。アルバイトからパート社員へ、パート社員から正社員へと、ステップアップを支援する取組は、意欲と能力のある社員のやる気を引き出し、定着率を高め、会社の活性化につながっている。
さらに、努力が評価される人事制度は、社員のモチベーションアップにつながり、会社にとっては安全で安心した商品を提供することにつながっている。
課題としては、評価制度の精度を高めることである。評価は店長が行っているが、正社員である店長は異動があり、評価者が変わると、評価結果が変わってしまう難しさを感じている。今後は、評価者研修に重点的に取り組んでいく必要性があると認識している。
- 一定の労務管理の体制が整備されており、若者(35歳未満)を採用・育成のためハローワークに求人を提出し、通常の求人情報よりも詳細な企業情報・採用情報を公表する中小・中堅企業を「若者応援企業」として、積極的にマッチングやPR等を行う事業のこと。若者応援企業は都道府県のホームページに公表される。
- 正社員の春期新卒採用と秋期中途採用のこと。
- 正社員になるための意気込みやより良い店舗づくりのための抱負等を記入する。
- 担当していない業務、まだ習得していない業務の評価は行わない。