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C社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(金融・保険業)より

スタッフ職員から準職員を経て正職員への転換可能

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 協同組織金融業
従業員数 1564名 パート労働者数 258名
ポイント
  • 多種多様な研修メニューを用意した教育訓練体制。
  • 人事考課を実施し、契約更新の可否を判断するとともに賃金額を改定。
  • スタッフ職員から準職員を経て、正職員への転換が可能。
  • 正職員水準並みの手厚い福利厚生制度の適用。

(1)企業概要・人員構造

同社は都内を中心に首都圏を営業地区としており、預金残高が全国の信用金庫の中で上位に入る大手信用金庫である。

従業員の雇用区分は、大きく分けて「正職員」、「準職員」、「スタッフ職員」の3つである。スタッフ職員は、所定労働日数・時間によってさらに「フルスタッフ職員」と「リリーフスタッフ職員」に分けられる。

各雇用区分の雇用管理の概況は、次の通りである。同社においては、準職員とスタッフ職員がパートタイム労働者に該当する。

各雇用区分の雇用管理の概況

正職員 準職員 スタッフ職員
フルスタッフ職員 リリーフスタッフ職員
雇用契約 無期契約 有期契約
(1年更新)
有期契約
(1年更新)
有期契約
(1年更新)
勤務場所・人数 合計:1,212名 本部:16名
営業店:66名
合計:82名
本部:51名
営業店:70名
合計:121名
本部:25名
営業店:30名
合計:55名
所定労働日数 週5日 週5日 週5日 原則週 4 日
所定労働時間 7時間45分(8:30~17:15、休憩1時間を含む) 7時間(9:00~17:00、休憩1時間を含む) 7時間 6時間未満
賃金形態 月給制 日給月給制 時給制 時給制
昇給の有無 あり あり あり あり
賞与の有無 あり あり(年間に月給の1.5か月分程度) 寸志支給あり(年に2回・2~6万円程度) 寸志支給あり(年に2回・2~6万円程度)
退職金の有無 あり あり
(5万円×勤続年数)
あり
(勤続年数3年以上で、3万円×勤続年数)
なし
社会保険加入 対象 対象 対象 対象外

※有期雇用である定年後再雇用のOBスタッフ(83名)及び用務員(11名)は、本表から除外している。

準職員は、スタッフ職員として 3 年以上勤務し、各種要件を満たした上で転換試験に合格した者であり(詳細は後述)、スタッフ職員をフォローしながら各業務を担当している。

また、スタッフ職員は、主として本部の事務、営業店での預金・融資や為替等の事務処理関連の業務を担当する。営業店には「年金アドバイザー」としてお客様の年金相談や受給手続き、年金受取口座獲得等の業務を行う者もいる。

なお、準職員・スタッフ職員ともに等級制度は設けていない。

(2)取組の背景

金融機関では 5 日・10 日など 5 の倍数の日と月末はその他の日に比べて事務取扱量が極めて多いなど繁閑の差が大きいため、同社においてはスタッフ職員を活用することによりこれに対応している。また、同社は正職員の新卒者採用のみで中途採用は行っておらず、人員が不足した場合にはスタッフ職員を採用することで補完している。

これらの背景から、スタッフ職員は同社にとって必要不可欠な人材であり、「優秀な人材には長く働いてもらいたい、そのために少しでも待遇を良くしたい」と考え、従来から各種取組を行ってきた。

(3)取組の内容

多種多様な研修メニューを用意した教育訓練体制

雇用契約締結時には、「企業文化の冊子」、「就業規則」や「福利厚生のパンフレット」を準職員・スタッフ職員本人宛てに配布し、説明している。

また、採用時には、1週間程度の本部研修がある。この研修では、企業文化、労働条件、ビジネスマナー、各種社内手続や信用金庫業務の基礎知識を説明するとともに、最終日には事務処理に使用する端末機の操作練習が行われる。本研修終了後は、赴任部店でOJTにより業務を習得していく。

OJTの指導者は主として正職員であるが、時にはベテランのスタッフ職員のケースもある。

入社後は、準職員・スタッフ職員が希望し、支店長の推薦があれば担当業務の変更は可能であり、また、金融業務に関する外部の各種検定試験対策時等に実施される正職員向けの研修も受けることができる。準職員・スタッフ職員がこれら外部検定試験に合格したときには、難易度に応じた報奨金を支給している。

さらに、正社員向けの研修以外にも、「準職員・スタッフ向け研修」を毎年開催している。同研修には、現在の担当業務の知識・能力向上を図りたいと考える準職員・スタッフ職員や、今後担当したい仕事の業務内容を学びたいと考えるチャレンジ意欲を持つ準職員・スタッフ職員が積極的に参加している。

なお、本年の同研修の内容は、①預金者保護法、②為替、③個人情報保護法、④出資、⑤庶務、⑥預金保険制度、⑦諸届基礎、⑧犯罪収益移転防止法、⑨個人ローン商品など、多岐にわたっている。

人事考課を実施し、契約更新の可否を判断するとともに賃金額を改定

契約更新期日の約2か月前となる2月頃を目安に、「人事考課表」が準職員・スタッフ職員本人に渡される。求められる人材像は雇用区分によって異なるため、人事考課表には「準職員用」や「スタッフ職員用」等の種類がある。人事考課表の評価項目は、『取組姿勢』として「積極性」や「協調性」等の全5項目、『企業文化』として「挨拶」や「マナー」等の全3項目、『業務遂行』として「理解力」や「仕事の量・質」の2項目、の合計10項目である。

人事考課に当たっては、まず、職員本人が自己評価(各項目とも5点を最高点とする1~5点制)を行い、人事考課表に記入する。次に、上長と部店長が評価し、最終的な総合評価を決定する。総合評価は、各項目の点数を足し上げた総合点を基に、S(45~50点)、A+(37~44点)、A(28~36点)、A-(20~27点)、B(10~19点)の5段階である。

評価結果は、上長(あるいは部店長)から本人宛てに説明・フィードバックされる。評価結果説明後に本人は人事考課表に署名押印し、来期の目標や改善点を上司と話し合う。

なお、総合評価結果は、契約更新の可否の判断材料になるとともに、次期の賃金額に反映される。

例えば、スタッフ職員であれば、S=40円、A+=30円、A=20円、A=-0円、B=-20円などの昇給基準が定められている。

スタッフ職員から準職員を経て、正職員への転換が可能

同社では、スタッフ職員から準職員への転換、準職員から正職員への転換制度を設けている。スタッフ職員から準職員への転換資格要件は、次の通りである。

スタッフ職員から準職員への転換資格要件

①人事考課の総合評価結果が連続して2年以上A+以上であること
②スタッフ職員としての勤続年数が3年以上あること
③長期に働く意思があること
④部店長の推薦があること
⑤筆記試験(作文、事務のコンプライアンス関係)及び面接(人事部副部長、人事部長(役員)の2段階)に合格すること

毎年1月に希望者を募り、3月までに筆記試験ならびに面接を行う。人事部長(役員)が合否を決定し、経営会議の承認を得る。

毎年5~10名程度のスタッフ職員が準職員に転換しているが、応募者数は合格者の2~3倍程度みられるなど、スタッフ職員のチャレンジ意欲は大変高い。なお、スタッフ職員は上記①~④の

転換資格を満たしていれば、何度でもこれにチャレンジできる。

次に、準職員から正職員への転換資格要件は、次の通りである。

準職員から正職員への転換資格要件

①正職員の勤務条件(就業時間・休日)で就業することが可能であること
②人事考課の総合評価結果が連続して2年以上A+以上であること
③準職員としての勤続年数が2年以上あること
④長期に働く意思があること
⑤部店長の推薦があること
⑥筆記試験(作文、事務関係)及び面接(人事部副部長、人事部長(役員)の2段階)に合格すること
⑦生命保険・損害保険・証券外務員の資格を取得すること

同転換についても、スタッフ職員から準職員への転換と同様の時期に行い、人事部長(役員)が合否を決定し、経営会議の承認を得る。毎年2~3名程度の準職員が正職員に転換している。

このように、スタッフ職員は2つの転換制度を活用することにより準職員を経て正社員になることが可能である。実際、現在までに10名弱のスタッフ職員が正職員に転換している。

正職員水準並みの手厚い福利厚生制度の適用

慶弔休暇、子の看護休暇、介護休暇等の特別休暇は、準職員・スタッフ職員に対しても正職員と同じ日数が与えられる。また、同社保有の保養所等の施設については、正職員と比較して適用となる家族の範囲は若干異なるものの、準職員・スタッフ職員も利用することができる。

その他、書籍購入費用支給制度も正職員と同様に準職員・スタッフ職員にも適用される。これは、業務関連の書籍はもとより、人間性を豊かにするものやハウツー本等まで自己啓発に必要な書籍の購入費用を会社が支給する制度である。

職場のコミュニケーション

同社には、全職員が「私はこういう応対をすることでお客様に喜ばれた」、「あの職員はこういう応対でお客様に喜ばれていた」という内容を書き込むことができる「ブログ」がある。毎年5月に開催する表彰式は、全職員を参加・表彰対象としており、業績といった業務推進表彰以外にホスピタリティ表彰も行われるが、そこではスタッフ職員が表彰されたこともある。

これに加え、自分が嬉しかった対応をとってくれた職員に「サンキューカード」を手渡す全社的運動も行っており、職場のコミュニケーションの活性化を図っている。

女性が相談しやすい苦情相談窓口の設置

相談担当者に女性を配置し、女性が相談しやすい苦情相談窓口を設けている。

具体的には、人事部の女性担当者が専用の携帯電話を持ち、直接話すことができる仕組みであるが、これは準職員・スタッフ職員も利用することができる。

(4)成果と課題

準職員・スタッフ職員は同社にとって貴重な戦力と考え、以前から前述のような各種取組を行ってきた結果、各自のモチベーションが向上し、スタッフ職員から準職員への登用、準職員から正職員への登用が進み、定着化が図られている。

しかしながら、賃金面や処遇等の理由で他の企業に転職してしまった優秀なスタッフ職員もみられた。優秀な人材のさらなる定着を進めるためには、処遇をダイナミックに変更できるかが課題になると考えている。

例えば、勤続年数が10年を超える準職員・スタッフ職員は、新卒者の正職員より高い業務遂行能力を持つ者も多い。このため、時給換算した賃金額が新卒正職員より準職員・スタッフ職員の方が高くなることに問題はないが、正職員が経験を積みながら顧客折衝を含めた幅広い業務能力を身に付け、日々成長していくのに対し、事務処理を主要業務としつづける準職員・スタッフ職員の処遇をどのように設定するかが今後の課題である。

同社で働く全職員がさらに能力を発揮し、それに見合う処遇をされて「勤めて良かった」と思える企業づくりを行うことがより一層求められる。

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