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(株)ソラスト

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

入職後の介護資格取得支援制度を充実させ、稼働時間や資格等に応じた処遇制度の導入により定着率の向上を図る

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 福祉・医療(介護事業)
従業員数 約2,080名 パート労働者数 約1,390名
ポイント
  • 資格を持っていない介護職就業希望者向けに、資格取得支援金(初任者研修講座及び事前研修の時間分給与 相当額を支給)付きの研修を実施。
  • ヘルパーについては稼働実績、保有資格などで査定し、加算ポイント制度を取り入れて時給額に反映。
  • 6か月間の勤務実績に応じた一時金(活動奨励金)を支給。
  • ESアンケートの実施、福利厚生、自己啓発支援等は正社員とほぼ同等。

(1)企業概要・人員構造

同社は、医療関連受託事業・教育事業・福祉事業を手がけており、福祉事業として、訪問介護・居宅介護・通所介護・小規模多機能型居宅支援介護等の事業を行っている。

福祉事業の中でも中心は訪問介護であり、訪問介護事業所は、現在1都2府5県に44事業所を運営している。訪問介護事業所には、正社員の他に非常勤ヘルパーなどがいる。正社員は、転勤があり、主に事業所の管理者、サービス提供責任者となるほか、ヘルパー業務も併せて行う。

非常勤ヘルパーは地域に密着する形で勤務しており、事業所間の異動はほとんどない。非常勤ヘルパーは、介護保険の利用者宅へ訪問し、家事援助や身体介護を担う業務のため、子育てが一段落した40代、50代の主婦層が主体であり、女性が約96%を占めている。非常勤ヘルパーの月の平均稼働時間数は45時間で、週10時間程度の勤務となる。非常勤ヘルパー約800名のうち、週20時間以上30時間未満が約8%、社会保険加入となる週30時間以上が約6.5%となっており、月30時間から50時間の稼働勤務の者が多い。

ヘルパー資格を有する正社員に対しては、介護福祉士・介護支援専門員を目指すことができるキャリアパス制度を導入し、同時に教育制度の充実を図り、人事制度への評価も取り入れている。一方、非常勤ヘルパーは、地元での勤務が多く、利用者からも信頼される事業所のエース級的存在となる者も多いが、異動のある正社員への転換を望まない者もいる。しかし、上記教育制度が正社員と同様に利用できることについての周知は現場事業所で常に行い、制度利用への働きかけをしている。なお、非常勤ヘルパー約800名のうち、介護福祉士を取得した者はすでに200名ほどいるが、今後同社としては現在の施策をさらに充実させて取得率50%を目指している。

(2)取組の背景

介護保険給付としてサービスを提供するためには、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)以上の資格取得者によるサービス提供が前提となるため、ヘルパーの採用については有資格者を前提としていたが、募集をかけても応募者が集まらず、採用しても定着率が低かった。

サービス提供体制を安定させるためには、まずは「介護職を希望する」との職員の想いが重要であると考えている。 この考えの下、採用に係る発想も変え、 採用時に資格を有していなくても介護職への想いがあれば採用し、入職後に安心して介護職の資格が取れるようにした。具体的には、資格を持たない状態で採用した者に対して、 初任者研修講座と事前研修に通い、介護職の資格を取得し同社に勤務した場合に、研修時間分の賃金相当額を一時金として支払う形の資格取得支援制度を設けた。

処遇に関して、ヘルパーの時給は従来は一律であったが、定着率を高めることを目的に、稼働した時間数や各種研修に参加した意欲、資格のスキルアップへの努力などを処遇に反映することが働く上でモチベーションにつながると考え、それらが昇給につながる仕組みの導入を検討した。加算項目のみでなく、自己都合による突然の業務キャンセルなどの減算項目も入れ公平性のある制度とした。また、2009年に導入された介護処遇改善交付金をきっかけに、勤務年数に応じ非常勤ヘルパーに対し、年2回のミニボーナス制度を導入した。

なお、ヘルパーは稼働時間数が賃金に直結している。時給自体はヘルパー業務対価額となっているため、正社員がパートヘルパー稼働時間分勤務した場合に、正社員との時間当たりの賃金を比較すると、ヘルパーの時間給が高い場合もある。

正社員と非常勤ヘルパーは、それぞれ別に就業規則が定められているが、福利厚生面、教育面、従業員の満足度を検証するためのESアンケート実施等はほぼ同等である。また、ユニオンショップ協定であるため、非常勤ヘルパーも試用期間後、労働組合に加入する。

(3)取組の内容

介護職就業希望の無資格者の募集と資格取得支援制度

資格を持たないで入職した訪問介護ヘルパー、施設ケアワーカーとして勤務を希望する者は、会社が定める15日間及び事前研修分(102.5時間)の講座(ファーストステップ研修)を受講することができる。この制度を利用して介護職初任者研修課程を修了し、会社に勤務を開始する条件を満たした場合に、前記102.5時間分相当の一時金(資格取得支援金)が支給される。

実際の現場に配属後も、月に1回介護技術に係るフォローアップ研修を行っており、この研修は、有資格者ではあるが実務経験のない者や、介護業務に関してブランクのある者も受講できるようにして、有資格者の採用にもつなげている。スキルアップ講座を受講する機会は正社員と同様に用意している。

非常勤ヘルパーの昇給は稼働時間数及び資格等を反映

非常勤ヘルパーの基本給は、訪問介護サービス内容に応じて、大きく生活援助及び身体介護の2種類があるが、この2つの基本給に対し、会社はヘルパーとしての経験や知識、能力等を測るため、基本給の昇給決定基準になるポイント制度を導入した。例えば、上位資格(ヘルパー1級、介護職員基礎研修修了、介護福祉士)を取得している場合には資格に対するポイントを加算する。また、実際にサービス提供した時間数や休日等に稼働した時間数を積み上げて、ヘルパーの活動意欲度や経験をポイントとして加算するなど、それぞれ決められた加算ポイント数に応じて、スキルレベル(S1~S5・S6及びSS)が上がる仕組みを設定し、生活介護と身体介護のそれぞれの基本給を昇給させている。具体的には、介護職初任者研修が終了している者で、新たに採用されたときにはポイントは0から出発して、最も下位のS1からのスタートとなるが、上記加算ポイントが500に達したときの翌月からS2へと移行し、昇給する仕組みである。S1からS5までは、それぞれの決められた基準値ポイント(500~2,500:図表1参照)に達すれば、自動的に翌月から時給が上がる仕組みであるが、S6及びSSへ上がるには、3,000ポイント達成者で、半期ごとに1回行われるスキルアップテスト(介護福祉士国家試験出題基準に準ずる試験範囲及び同社介護スタッフ基準に係る記述式試験)に合格しなければならず、同社が求める非常勤ヘルパーの質の高さを保ち、かつ能力を反映させる制度としている。なお、非常勤ヘルパーが当日(前日の17:30分以降)に自己都合で業務をキャンセルした場合などは、ポイントは減算させている。

図表 訪問介護員向け目標設定達成支援プログラム

6か月間の勤務実績で評価、年2回活動奨励金を支給

できるだけ長く勤務してもらうことをねらいとして、6か月間の勤務活動時間数及び各人の入社日(勤続年数別)に応じて、活動奨励金を支給している。

正社員に準じた各種制度

パートタイム労働者用の就業規則を整備しているが、慶弔見舞金制度、社員割引制度、教育支援制度(接遇に係る研修等)、安全衛生教育(腰痛予防指導等)については正社員と同様の取扱いとしている。また、同社では介護保険サービスを提供する時には、専門的な技術だけでなく、高いホスピタリティー(心のこもったおもてなし)が重要であると考えているため、「接遇力」や「コミュニケーション能力」を伸ばすための独自のカリキュラムを作り、正社員のみならず非常勤社員にもその受講を広げ、人材育成を行っている。

能力行動評価表及びESアンケートの実施

正社員と同様に、個人ごとに年間目標及び個人研修計画を設定、上期下期に分け、能力遂行のための基準(11項目)について、自己評価及び上司評価を行っている。評価の目的は、介護サービスに対する認識をお互い共有化することができると同時に、各人のキャリア志向を確認して、事業所における適材適所を図ることができるためであり、定着率を上げることにも寄与している。

毎年従業員満足度を検証するためのESアンケートを非常勤社員に対しても行っており、会社の今後の取組に係る検討事項の参考にしている。

正社員へのステップアップの仕組み

全ての非常勤社員に対し、正社員への転換制度について、採用面接時に口頭で説明し、周知している。正社員への転換に当たっては、勤続年数や評価の条件は定めていないが、訪問介護ではサービス提供責任者(常勤)になることが正社員転換の条件としているため、結果的にはS6以上の者が対象となっている。転換希望者に対しては面接試験を行っている。なお、非常勤ヘルパーからサービス提供者など正社員転換(常勤)した数は訪問介護事業の開始から延べ約270名である。

(4)成果と課題

ファーストステップ研修制度の導入で、採用後の定着率が上がった。介護事業では圧倒的に女性比率(全体の約82%)が高いが、この制度を利用して資格を得たい、介護業務に従事したいとする男性が増えており、この制度を利用した4人に1人が男性となっている。

もともと正社員と非常勤社員との処遇に違いを設けることはしておらず、新たな事業所設置に係る人員配置の必要性から、正社員への転換を推進してきたところである。しかし、非常勤ヘルパーは、本人のライフプランや働ける時間帯に勤務できるという、勤務形態の自由度が重視されるため、正社員への登用制度が必ずしも積極的に利用されていない。利用者側からの信頼もあって現在勤務している事業所でリーダー的存在となっている者は、事業所間の異動がある正社員を希望しないのが実態である。

まずは非常勤ヘルパーの意識改革が必要であると感じている。スキルの高い非常勤ヘルパーに対しては、稼働時間を増やすことや、正社員登用への声掛けを行っているが、常勤となればマネジメント力が求められるサービス提供責任者となることも多いので、非常勤に係るキャリアパス制度についてキャリア段位制度等を利用するなど、今後整理して検討していく予定である。

現在の「サービス提供責任者」は、介護保険法上はヘルパー業務での評価しかされず、ヘルパー業務に加え、非常勤ヘルパーに対する業務指導力や高度なマネジメント能力が求められるが、マネジメントに対する報酬の加算がない。能力のある非常勤ヘルパーが「サービス提供責任者」を目指す何らかの施策が今後行われることが望ましいと考えている。

ヘルパーの時給をポイント加算制で決定することにより、モチベーションが向上し、長く勤務してもらえるようになった。正社員の勤続年数は平均4.8年、非常勤ヘルパーは同4.0年であり、双方であまり差はない。能力行動評価は実施しているが、評価結果を賃金等の処遇と連動させていない点については、今後の検討課題と捉えている。ワーク・ライフ・バランス面では、育児・介護休業等、非常勤ヘルパーにも法的な制度の整備はしているが、予定される休業については、事前に稼働日数を減らすなどで、自分で調整もできる両立しやすい働き方でもあるので、実際の利用者はいないのが現実である。

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