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ヤマト運輸(株)

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(運輸業、卸売業)より

基本的な雇用管理の仕組みを本社で定めつつ、拠点の裁量も尊重

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 運輸・倉庫業
従業員数 約16万名 パート労働者数 約9万名
ポイント
  • 半年ごとに人事考課を実施。
  • 職種別マニュアルを整備し、OJTに活用。
  • 社員へのキャリアアップ。
  • 働きやすさ、働きがいに配慮した施策の実施。

(1)企業概要・人員構造

同社は、「宅急便」「クロネコメール便」を中心とした一般消費者・企業向け小口貨物輸送サービス事業を行っている。地域ブロック別の支社、都道府県等の地域別の支店の下に、約70箇所の物流ターミナル、約 6000 箇所のセンターを有する。

従業員は、約16万名のうち9万名近くが、パートと呼ばれる短時間労働者である。残りの多くはいわゆる正社員である「社員」である(この他に、一部に「キャリア」と呼ばれるフルタイムの期間従業員がいる)。パートの過半は近隣の主婦層であるが、フリーターと呼ばれる層も相当数いる。

パートの主要な職域は、大きく次の4つに分かれ、それぞれ1万5千~2万名が働いている。

  • センター周辺における集配
  • センターにおける荷受、照会対応、事務等
  • センターにおける仕分け、荷積み
  • 物流ターミナルにおける仕分け

パートは最長6か月の期間を定めた雇用契約であり、各拠点において職務を限定して採用している。また、所定労働時間は、週 30 時間未満の人が圧倒的に多い。

社員もパートと類似の業務を行う場合もあるが、例えば集配であれば、パートは、短時間勤務において、センターの近隣や自身の居住地の近くのエリアを台車や新スリーター(リヤカー付電動自転車)で集配するのに対し、社員はより広いエリアを、パートのマネジメントや営業などを行いながら、主に自動車で集配するといった違いがある。

(2)取組の背景

時間帯によって変動する業務量波動への対応や業務品質の向上をねらいとして、積極的にパートを活用している。

全国にあるセンター等の拠点ごとに、労働市場の状況は異なっており、地域の実情に合った雇用管理を機動的に行う必要がある。このため、パートの雇用管理についての全社ルールは基本的な事項に限定され、詳細はセンター等で柔軟に決定している。

(3)取組の内容

人事考課の実施

すべてのパートに対し、半年に1度、人事考課を実施している。

考課内容は、「社員評価」と「目標達成評価」から構成されている。この構成は、社員の人事考課と基本的に同じである。社員評価は、協調性、規律性といった基本的な仕事ぶりの評価であり、目標達成評価は個々に設定した目標の達成度の評価である。

考課表は職種別に用意されている。同じ職種であれば、一般パートも後述のリーダーも同じ考課表を使うが、役割の違いは目標設定の中に反映されるので、役割に応じた評価がなされるようになっている。

人事考課は、時給の昇給等に直結はしないが、契約更新に当たっての参考情報として活用し、目標設定や評価においては面談も行い、本人へフィードバックを行うようにしている。

人事考課表

人事考課表

職種別マニュアルの整備等

職種別にマニュアルが整備されている。全職種共通の「基本編」の他に、集配業務固有の「集配編」がある。新たに採用されたパートに対しては、このマニュアルに基づいて OJT が行われる。

また、会社の自動車に乗って業務を行う場合は、まず「社内免許」を取得しなければならない。社内免許は、マニュアルに基づく知識や運転技能の学習に加え、特別な社内資格をもつ社員による添乗指導を受け、その指導社員が認めて初めて得ることができる。標準的なケースで約45日間を要する。

職種別マニュアル

職種別マニュアル

リーダーへの登用

パートの中には、リーダーに任じられる人がいる。リーダーは、新人パートの教育、パートのとりまとめ、連絡、シフトの起案等を行う(調整・承認は社員が行う)。全社で約5千名がリーダーに任じられている。

リーダーの選任は、本人の意志も考慮しながら拠点長が個別に判断して行っている。勤続年数等の条件はないが、業務経験や知識、リーダーとしての素養があるかないか等を判断し、選任している。リーダーになると、通常の時給に加え、月定額で数千円(所定労働時間による違いがある)のリーダー手当が支給される。

社員へのキャリアアップ

社員登用制度といったものは特にないが、社員の募集時には、パートに周知している。結果として、平成25年度に社員として新たに採用された約5千名のうち約2千名が、パート経験者である。

朝礼時等のヤマト体操

各職場では、毎朝定時に、パートも参加して朝礼を行っている。朝礼では、業務上の伝達事項の連絡のほか、「ヤマト体操」という独自の体操や安全喚呼を行い、安全に対する意識付けや意思統一を図っている。

働きやすく働きがいのある環境づくり

育児短時間勤務は、社員・パートいずれも、子が小学 5 年生になった直後の4月15日まで行うことができる(パートは週 3 日以上勤務者のみ)。

また、社員とは多少の額の違いはあるものの、パートにも慶弔見舞金制度が整備されている。

さらに、お客様等からお褒めをいただいた人に送られる「ヤマトファン賞」では、パートも含め表彰対象となっており、表彰された人はイントラネット上に掲示される。同様に、社員同士が褒め合い、そのポイントによって名誉的なバッジを付与される「満足 BANK」も、パートを含めた全員が対象となっている。

ヤマトファン賞の掲示

ヤマトファン賞の掲示

満足BANK

満足BANK

多様な相談窓口としての「目安箱」

健全な職場環境を醸成するため、社員(パート社員含む)は、会社や社員の法令違反、上司の理不尽な行動や業務処理、事業所ぐるみの不正などに関する申立てや、労働条件に関する質問などを行うことができるようにしている。その窓口が「目安箱」である。

「目安箱」は、手紙、Eメール、電話など様々な手段で投書ができ、その連絡先は社内イントラネットや社員手帳などに掲載されている。投書されたものは、直接社長へ送付された後、地域ごとの担当責任者が調査、解決を行う。投書者は、投書をしたことによる不利益な取扱いをされないが、虚偽の申立てや他人の誹謗中傷などを行った場合、懲戒処分の対象となる。

(4)成果と課題

コンプライアンスに関わる重要な点等は本社でルール化するものの、その他の点については現場の裁量に任せることで、実情にあった雇用管理ができている。

しかしながら、多くの人を雇用する企業の責任として、今後はもう少し全社統一の基準づくりを行っていく必要があるのではないかと考えている。例えば、働く人がより自己成長を実感できるような施策等を検討課題としている。

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