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(株)ニックス

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

ポイント制度で福利厚生の充実と就業への意欲向上を図り、充実した研修体制でパート社員のスキルアップを支援

3.教育訓練等の能力開発
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 広島県 業種 訪問介護事業等
従業員数 約340名 パート労働者数 約210名
ポイント
  • 充実した研修体制と研修開催時間帯の工夫等により、パート社員のスキルアップを支援。併せて地域の介護 人材育成にも寄与。
  • 正社員転換制度をパートタイマー就業規則に明示し、周知。 •稼働時間や優良な勤務姿勢等によりポイントを付与し還元する制度をパート社員対象に導入し、稼働や仕事 に対する取組姿勢の向上を図る。
  • 介護キャリア段位制度のアセッサー(評価者)講習に参加予定。

(1)企業概要・人員構造

介護事業を中心として、総合ビルメンテナンス業、電気通信事業、トラベル事業、自動車販売事業を展開している。介護事業は、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、グループホーム等の形態で広島市を中心に県内に5拠点を運営している。今後、サービス付高齢者向け住宅を含む2拠点が新たにオープンする。付帯事業として、配食サービス、介護タクシー等も運営している。

訪問介護に従事するパート社員は、登録型ヘルパーではなく、週単位でシフトを組んで働く就労形態である。週の稼働時間数はパート社員の要望により様々であるが、週30時間未満が多い。雇用契約において、初回契約は採用年度末までの有期雇用契約であるが、著しく社員としての適性を欠く者を除き、次年度からの契約は無期雇用契約に移行する。

1事業所当たり、1日に150名程度の利用者が見込まれ、実働30名程のパート社員をサービス提供責任者が管理・指導し、サービスを提供している。サービス提供責任者は主に正社員であるが、産休・育休等により休業中の正社員に替わり、資格及び経験要件を満たしたパート社員がサービス提供責任者として従事することもある。

パート社員の賃金は身体介護、生活援助、予防訪問介護といった業務内容毎に区分けして稼働時間単位ごとに設定し、雇用契約書により文書にて通知している。移動時間は概ね20分と見込んで移動手当を設定し、同行見習い、研修参加、代替事務等についても、それぞれ介護業務とは異なる水準であるが賃金を設定して明示している。移動時間が20分を超える場合には、別途申請により超過時間1分につき設定した移動手当1分当たりの手当を支給することとしている。

(2)取組の背景

介護事業を安定継続・拡大展開していくためには、人材の確保・定着とともに介護技術の向上やサービスの質の向上は当然継続的に図られなければならない。都度、必要に応じて社内研修を行ってきたが、さらに積極的な研修制度が求められる状況であった。また、介護事業を多角展開し、営業拠点の新規開設を続けている中で、例えばこれから新規開設するサービス付高齢者住宅に訪問介護を併設するなどの動向があり、ヘルパーの需要が増え続けている。このような中、 パート社員について、良質な人材を確保し、定着率を高めることがきわめて大きな課題となっていた。

また、5年前までは昇給制度があり、勤続年数が増えるにつれパート社員の時間給はアップしていた。しかしながら、経営上、大幅な昇給は困難であり、小幅な昇給では社員にとって大きな魅力になっているとは言えない状況であった。扶養の範囲内で働きたいと考えるパート社員にとっては、時給アップをすると就業調整のため稼動が減ってしまうジレンマもあった。そのため、労働力の確保・定着を図るための昇給制度に代わる施策を講じる必要があった。

(3)取組の内容

充実した研修体制でパート社員のスキルアップを支援

他社の研修機関が広島を撤退する際に、当該研修機関の講師陣と契約し、介護技術や介護資格取得に係る独自の養成講座をスタートさせた。また、これまで社内のスペースを利用していた研修場所についても、新たに研修センターを開設し、専用研修スペースを確保した。養成講座は広く一般に受講者を募っているが、社員はより安価な社内研修価格にて受講ができる。

なお、一般の講座受講生に対しては、同社も含めた求人情報を提供し、介護人材の育成にも寄与している。

図表1 研修メニュー(一例)

講座名 概要
介護職員初任者研修講座 週2回(曜日の組み合わせは複数のコースを用意)、通学14日 + 通信6回
ガイドヘルパー養成講座 3日間
介護支援専門員受験対策 全7回

さらに社員には、パート社員も含めて入社時研修や各部署にて毎月1.5時間~2時間の定期研修を当該研修センターを利用するなどして実施している。研修内容は、介護技術や認知症対応に関する知識など、社員のスキルアップを意図したものとしている。定期研修の受講は義務ではないが、研修時間に対しては賃金を支払っている。働く時間がまちまちであるパート社員に対して、昼と夜など、複数の研修時間を設定するなどの工夫をしている。受講率60%を目標としており、それが達成できていない事業所については社長自らが原因を確認し、実施方法やパート社員への働きかけの工夫を求めるなどして、目標を達成するよう努めている。

正社員転換制度を整備・周知

正社員への転換を希望する社員について、図表2の要件を満たす者は正社員として採用している。当該正社員転換制度はパートタイマー就業規則に規定し、各事業所に当該就業規則を備え付けて周知するほか、意欲があり、優秀な働きぶりのパート社員へ声掛けしている。

優良なパート社員にはできるだけフルタイム勤務してもらいたい会社側の意向と、段階を踏みつつ多くの収入を得ていきたい、又はキャリアアップしたいパート社員の意向がマッチングし、過去に6名の転換実績があり、パート社員から正社員のサービス提供責任者の職責に就いた者もいる。

図表2 正社員への転換要件

要件
①就業規則に定める所定労働時間に勤務できること
②所属長の推薦があること
③各施設への転勤や他の職種への配置換え等人事異動に応じられること
④人事担当部長の行う面接に合格したこと

福利厚生の向上を目的にポイント制度導入

昇給制度に代わる事務処理上の負担が少ない施策として、福利厚生の向上を目指し、ポイント制度を導入した。これは、稼働時間数、ヘルパーや利用者等の紹介により各人にポイントが貯まり(図表3)、貯まった一定数のポイントはキャッシュバックや、旅行券に還元できる制度である。家族や社員間で食事する際の原資にすることもでき、働くことの一つの動機づけになればと考え制度化した。

このポイント制は、有資格者の場合については、ポイントを加算することで社員の資格取得へのインセンティブを高める一つの仕掛けにもなっている。また、別途社内で運用している社員間のコミュニケーションツールであるグッドジョブカード、サンクスカードの仕組みと連動させることで、各自の日々の仕事への取組姿勢が報われる仕組みとなっている。

図表2 正社員への転換要件

付与基準 付与数 備考
1時間勤務毎 1ポイント 有資格者ポイント加重有
ヘルパー紹介 5ポイント 1か月以上勤務の場合
利用者紹介 5ポイント 訪問介護に限らない
グッドジョブカードやサンクスカード1枚毎 5ポイント グッドジョブカード・サンクスカード*1

*1:「良い仕事をした」、「仕事上で助かった」等、業務上で社員が感じた他社員の行動に対し、社員間で授受されるカード。事業所間・地位の垣根を超えてコミュニケーションを活性化し、顧客満足を向上するためのツール。ポイント加算はパート社員が対象で、正社員は賞与に反映される。

ISO手順を参考にした、接客トラブル・クレーム対応管理

接客トラブルやクレームが生じた場合は、ISO手順を参考にし、端緒、解決手段、再発予防・是正措置、再発防止確認といった事項を書面管理・共有することで、接客態度・サービスの質向上を図っている。これは、正社員のみならず、パート社員も行う業務上の責務として徹底している。

(4)成果と課題

ポイント制度は、職場のコミュニケーション構築や福利厚生向上に寄与しており、パート社員からも概ね好評であり、制度施行前よりも定着率は改善されている。また、養成講座の開設や社内研修の整備により個々の介護技術向上に寄与することはもちろん、キャリアアップを目指すパート社員が、必要な資格を取得後、正社員転換制度により正社員のサービス提供責任者となれる等、上位職位への道筋としても機能している。

しかしながら、介護業界は慢性的な人材不足であり、人材確保・定着率向上のための更なる施策を講じる必要があると考えている。その一環として、国の進める介護キャリア段位制度*2を取り入れるべく、アセッサー(評価者)講習にパート社員も含め20名が受講予定である。この制度の活用により、一層の社員の労働力確保・定着に取り組むところである。

*2:介護キャリア段位制度とは、新しい職業能力を評価する仕組みであり、企業や事務所ごとにバラバラでない共通のものさしをつくり、これに基づいて人材育成を目指すもの。講習を受講したアセッサーが事業所内で評価を行う。

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