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(株)フレスタ

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(小売業)より

職業能力評価基準を参考にした能力評価・フィードバックによる能力開発を推進、有期実習型訓練を採用した正社員転換制度による転換者をフォロー

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
所在地 広島県 業種 飲食料品小売業
従業員数 約4,100名 パート労働者数 約3,500名
ポイント
  • 職業能力評価基準を参考に能力評価項目を策定し、職務等級制度を構築。
  • OJTコミュニケーションシートを活用したフィードバックと育成支援。
  • 有期実習型訓練によるフォローで正社員転換制度を推進。
  • 各種研修や試験の充実、eラーニングの活用。

(1)企業概要・人員構造

同社は明治20年(1887年)に菓子・煙草小売店として創業、現在では食料品・日用雑貨品を扱ったスーパーマーケットを、広島県を中心に岡山県、山口県に54店舗展開している。創業の精神「正直な商売」を引き継ぎつつ、顧客満足にこだわり、「食」を中心に快適な「暮らし」の創造提案企業を目指すことを企業理念として掲げ、お客様への喜びを創りだし、自らの仕事に誇りの持てる「人財」を育てることを目的としている。

全社員の8割強を占めるパート・アルバイト社員(パートタイム労働者)は、笑顔で働き、その笑顔をお客様へ提供できるようにと、「スマイル社員」と呼称している。スマイル社員は主に7つの部門(食肉・水産・青果・惣菜・レジ・ドライ・日配)に配置され、基本的に配置転換や転勤はない。

スマイル社員は6か月の有期雇用契約で、配偶者の扶養範囲内での働き方から、趣味などと両立できる働き方、責任のある仕事に就いてできるだけ収入を得たい働き方まで、多様なタイプの働き方が用意されている。

スマイル社員の働き方
スマイル社員の働き方

(2)取組の背景

従来もスマイル社員の能力評価を実施していたが、制度として十分に機能しておらず、働きぶりと処遇が合っていない等、ベテランを中心にモチベーションの低下がうかがえた。特に、評価方法が全社的に統一されておらず、評価基準に客観性が欠如していることが大きな原因であると考えられた。

また、評価や面談・フィードバックのスキームも存在していたが、契約更新時、賞与査定時、ISO等の社内ルール時にそれぞれ半期に1回ずつ、年間では計6回も面談を実施しており、非効率な面があった。

スマイル社員の基幹労働化が重要となっている中で、働きに応じた処遇を提示しモチベーションの向上につなげるとともに、顧客満足を向上させるべく、制度改革に着手することとした。

(3)取組の内容

職業能力評価基準を参考とした能力評価項目の策定

中央職業能力開発協会が公開している職業能力評価基準(スーパーマーケット業)を参考として、スマイル社員について能力評価(同社では「職務能力評価」と呼んでいる。)の項目を策定した。

策定に当たっては、当時各部門を担当していたトレーナーの協力を仰いだ。結果的には、職業能力評価基準の内容の半分以上を自社に合うよう変更した。

能力評価項目は、スマイル社員が配置される7つの部門別に、上司の指示を受けて業務を行う「レベルI」、部下に対して指示・支援のできる「レベルII」のレベル階層別に設定している。レベルI、レベルIIとも全部門共通となる「共通項目」と、部門ごとに求められる職務遂行を問う「選択項目」の2つのカテゴリーから構成され、共通項目は12項目、選択項目は部門により異なるが平均30項目程度でまとめられている。レベルIの項目には基本的就業姿勢や各職務の遂行能力を問うものが多く、レベルIIの項目にはコンプライアンスやマネジメント能力を問うものが多い。

部門・階層により評価項目数は異なるが、最終的には全て100点満点に換算し、共通数値化している。

能力評価項目と対応させた職務等級制度の構築

スマイル社員に初級職、中級職、上級職の3つの等級を設定し、能力評価基準のレベルIは初級職及び中級職に、レベルIIは上級職と位置づけた。初級から中級への昇格要件は、レベルIの評価得点が中級職への昇格点数に達することである。一方、中級から上級への昇格には、レベルIの評価得点が上級職への昇格点数に達することに加え、必要な社内研修を受講していること、上級職を遂行するために必要な時間の勤務が可能であること、及び社内試験にパスし面接に合格することが求められる。

2011年より職務能力評価制度を導入しているが、導入当初はまずスマイル社員のスキルチェックとして活用・運用し、2013年4月より評価結果を賃金に反映させる制度として運用を開始した。

評価は、本人の自己評価の後、チーフの1次評価、店長の2次評価と順に行われる。1次評価及び2次評価は、イントラネット上の社内専用システムで実施され、評価結果は全てデータ管理されている。

スマイル社員の等級と役割及びレベル階層

等級 職位呼称 役割 レベル
上級 リーダー・スマイル 部門管理補佐・育成指導 II
中級 パートナー・スマイル 自立した定型業務 I
初級 フレンド・スマイル 定型業務(フォローが必要) I

給与については、各等級内が10号俸に分けられており、号俸も評価得点に応じて決定される。半期に1度、年2回の評価結果は、半期ごとの契約更新に反映され、昇給・昇格が行われる。

なお、新規に入社したスマイル社員は、入社から約2か月間を「スマイル研修職」の位置づけとし、その間の評価により2か月後に初級職か中級職として再契約することになる。

OJTコミュニケーションシートを活用したフィードバックと育成支援

スマイル社員に対する職務能力評価結果のフィードバックには、OJTコミュニケーションシートが活用される。同シートには、各人の評価結果が今回分、過去分とも表示され、店長等とスマイル社員との面談に利用されている。

また、シートにはスマイル社員が掲げた自己目標についての項目もあり、その達成度合いや問題点を双方で整理・確認しつつ、今後の目標達成プランを練っていく。

OJTコミュニケーションシートを活用することで、評価に対するスマイル社員の納得性を向上するとともに、強み・弱みをお互い確認し実践的な育成支援プランを策定することができている。また、スマイル社員は昇給・昇格するための必要な取組を具体的に知ることができる。

なお、従来は半期に3回あった面談は、フィードバック面談に集約され、スマイル社員や考課者の負担が軽減された。

有期実習型訓練によるフォローで正社員転換制度を推進

スマイル社員の正社員転換は従来からあったが、転換時のフォロー不足によりスムーズな転換が行われにくいことが問題とされてきた。その解決を図るため、2010年よりジョブカードを利用した「有期実習型訓練」を採用し、正社員転換制度を改定・運用している。

具体的には、毎年10月に転換選考、翌4月に転換するスケジュールに合わせ、内定期間6か月間(10月~3月)と転換後2か月間(4月~5月)の計8か月間に441時間の実習型訓練を行う。実習型訓練のうち、8割程度を店舗でのOJTとして、2割程度をOff-JTへ割り振っている。

なお、(1)勤続2年以上、(2)レベルIの評価得点が転換点数に達している、(3)店長推薦がある、が転換候補者となる要件である。その後、面接・転換試験を経て、評価得点上位者より転換計画に沿った人数を転換している。正社員への転換者は、意欲や能力が高く、その後に活躍してる者も多い。

各種研修や試験制度を充実させ、e-ラーニングも活用した検定によりスキルやモラルを向上

各種の研修や社内試験制度は、スマイル社員にも同等に適用されている。「コミュニケーション研修」や「タイムマネジメント研修」等の自己啓発を目的とする自由参加の研修に加え、コンプライアンス、セクハラ、SNS(ブログやツイッター等のソーシャル・ネットワーク・サービス)の扱い等、働き方やモラルに関する必須の研修・試験等も実施している。

前者の自己啓発を目的とする「オープン研修」は、毎月1~2本のテーマで開催している。社員は誰でも参加でき、実際に参加者の約半数はスマイル社員で占められている。研修は3時間程度のものから7時間程度のものまで様々で、外部講師によるものも社内講師によるものもある。

後者の必須の研修・試験については、自社の事業特性に合わせて社内でコンテンツを作成し、eラーニングも活用している。スマイル社員も各店舗のパソコンで受講・受験し、満点を取るまで受験することが求められる。このため、全スマイル社員には入社と同時にIDが付与されており、受験状況や学習データは本部で一括してデータ管理されている。

職務等級ごとに必須、推奨している研修や試験は体系化され、スキルアップを支援し、上位等級を目指す意欲を後押しするものとなっている。

なお、自由参加型の自己啓発研修等は賃金支給対象とならないが、職場で受講を指示された研修・試験の時間に対しては、賃金が支給されている。

研修・試験の体系図
研修・試験の体系図

(4)成果と課題

職務能力評価制度の導入により、客観的な指標で各人の力量が数値化できるようになった。スマイル社員の評価に対する納得性が高まり、努力や成果が処遇に反映されることで、モチベーションの向上に寄与している。ただし、一部の評価項目については、まだ考課者によるバラツキが見られるため、その改善が今後の課題となっている。

評価項目については、現場の意見を聴取しながら、見直し・充実を継続的に図っていくこととしている。また、スマイル社員に対しては、制度が十分に浸透し理解されるよう、周知活動を行っていくことが重要である。

今も「パートなのに」、「正社員なのだから」といった声が、ときどき聞こえてくる場面がある。公正・公平な評価基準の下、スマイル社員も正社員も雇用形態は違っても、それぞれが担う役割をより良く果たすべく、さらに意識改革を進めていくことが必要であると考えている。

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