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(株)パパベル
雇用形態を問わない教育訓練でスキルアップとキャリアアップ
所在地 | 徳島県 | 業種 | 飲食料品小売業 |
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従業員数 | 約130名 | パート労働者数 | 約70名 |
ポイント |
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(1)企業概要・人員構造
同社は、徳島県内に本店を含めて3店舗、香川県内に2店舗の計5店舗を展開し、パンの製造販売を行っている企業である。材料はもとより常に焼き立てのパンを提供することにもこだわり、焼き立てパンが提供できるよう各店舗とも販売のみならず製造も行っている。
大きくは製造部門と販売部門に分かれるが、店舗ごとの人員構成は、正社員が製造分門に5~10名、販売部門に2~4名、パートタイム労働者が製造部門に1~12名、販売部門に3~13名で、製造部門は正社員の比率が高いが、販売部門はパートタイム労働者の比率が高くなっている。
製造部門において、パンの製造工程は「仕込み」、「成形」、「焼成」、「仕上げ」に分かれる。正社員は全ての工程を経験し担当するが、パートタイム労働者はその中の一部のみしか担当しない。中でも「仕込み」等一部難しい工程は正社員のみが行う。販売部門においては、「接客」、「陳列」、「ポップ作成」、「レジ」などの定形業務をパートタイム労働者が行っている。
製造部門、販売部門ともに正社員は現場業務の他、労務管理、計数管理等店舗運営を担っている。
同社のパートタイム労働者の属性として、主婦が全体の6~7割と多く、個々人の希望を考慮しながら勤務時間及び勤務日を決定している。
(2)取組の背景
販売スタッフはパートタイム労働者が主力となっていること、スタッフ間で技術のバラツキがあることから、パートタイム労働者も含めた全スタッフのスキルの底上げとさらなるスキルアップを 図る必要があった。
また、スタッフのモチベーションを維持していくため風通しの良い職場風土づくりと、意欲や能力のあるパートタイム労働者がスキルアップやキャリアアップできる機会を与え、職場の活性化につなげたいと考えていた。
(3)取組の内容
正社員と変わらない教育訓練
創業時からの同社の方針として、スタッフ間のコミュニケーションを大切にするとともに人材育成を重視している。そこで、可能な限り正社員とパートの区別なく全てのスタッフに教育訓練 の機会を与えるようにしている。
販売部門であれば、正社員、パートタイム労働者の区別なく、入社して1か月間は、店舗の責任者が中心となって入社時の教育訓練を行う。これは育成計画表に基づいた計画的なOJTで、トレーやトングの扱いから始まり、約1週間後の商品の価格テスト合格を経てレジ業務に就き、その後独り立ちする。
また、パンの製造に関する通信教育なども、パートタイム労働者を含め、希望者に受講の機会を与える。さらに、各店舗で行うミーティングや研修はパートタイム労働者にも可能な限り出席してもらっている。
接客大会
モチベーションの維持と向上のため、毎年1回、正社員、パートタイム労働者の区別なく、全ての販売部門の従業員を対象とした接客大会を開催している。これは日頃の頑張りの成果を披露する機会となっている。
まず、各店舗で予選を行い、2名の代表を選出する。その代表が本店に集まり、本選が行われる。予選では、客が来店したというシチュエーションを設定し、着眼点10項目についての評価を行う。課題は予め全員に伝えている。
本選においては、社長及び専務2名の計3名が審査委員となり、他のスタッフがお客役となる。各店舗から選ばれた代表が、それぞれ1名10分の持ち時間で「接客」、「レジ」、「包装」等の技術を競い、得点の高かった者の中からMVP1名、店舗賞5名を選出し、賞状と金一封をその場で授与する。
また、当日の様子はビデオ撮影を行うため、後で振り返ることができる。接客大会には新入社員を必ず参加させ、同社のレベルの高い接客技術に触れさせている。
能力や意欲のあるパートタイム労働者の積極登用
パートタイム労働者にも可能な限り正社員と同様の教育訓練の機会を与えるようにしているが、同社に入社してくるパートタイム労働者には主婦が多いという特徴があり、能力が高くても配偶者の扶養の範囲内で働くことを希望し、正社員となることを希望しない者がほとんどである。
しかし、何とかその能力を活かすことはできないかと考えていたところ、ディスプレイに関する感性と技術に優れたパートタイム労働者が入社した。そのパートタイム労働者に、県外で行わ れるものも含め本人の希望する研修等を受講させたところ、ますます技術に磨きがかかり、今では各店舗のディスプレイの指導を任せるまでに成長した。
同社ではこれをモデルケースとして、教育研修や面談を通じて本人の能力を見極め、パートタイム労働者であっても重要なポジションに登用していきたいと考えている。
定期個人面談
同社では、教育訓練や人材育成に力を入れているが、その大前提として、会社と同じベクトルで想いを共有しなければならないということから、ミーティングや個人面談を重視している。
月に1回は店長が正社員もパートタイム労働者も含め全てのスタッフと個人面談を行っている。また、本人から希望がある場合や必要がある場合は不定期に行うこともある。
面談の内容は、それぞれが設定した個人目標の達成状況や目標達成に向けての課題の確認、評価結果のフィードバック、その他意見を聴くなどである。個人目標は、簡単なことでも良いので、全スタッフに期ごとに提出してもらっている。
個人面談を定期的に行いコミュニケーションを取ることによって、会社や店舗の方針を十分理解してもらうとともに、スタッフの不満を解消し、風通しの良い職場風土形成を心がけている。
(4)成果と課題
同社では、積極的な教育訓練が着実に現場に活かされている。
また、接客大会を行うことで、日頃の教育訓練が身に付いているか自他ともに確認することができる。これは、パートタイム労働者だけではなく全スタッフのモチベーションアップにつながり、 活気ある職場環境づくりに役立っている。
月1回の個人面談は、評価や人材育成という側面だけではなく、スタッフ個々人の思いや環境の変化を店長が知ることができ、シフト管理においても有効である。何よりもパートを含め全スタッフが意見を言いやすい職場環境形成に役立っている。
元々「パンが好き」な人で、同社と想いを共有してくれる人を採用しているが、上記のような教育訓練や職場風土づくりが功を奏しており、パートの平均勤続年数は6~7年と比較的長い。
今後の課題として、パートタイム労働者のキャリアアップという点で、現在1名いるディスプレイ担当者のような、短時間勤務でも重要な業務を任せられるようなパートタイム労働者を増やしていきたいと考えている。