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A社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(飲食サービス業)より

職務給制度を実施

3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 北海道 業種 飲食店
従業員数 約7,100名 パート労働者数 約6,400名
ポイント
  • 平成24年度より「パートナー職務給制度」を導入し、1年に数度の評価により等級・時給を決定。
  • ゆとりのある人員配置により、良好な労働環境を整備。
  • 学生アルバイトに対しエリアごとに就職セミナーを実施することにより継続的に正社員として新卒採用。
  • パートナー→シニアパートナー→正社員、又はパートナー→正社員といったキャリアを踏むことにより、正社員への転換が可能。

(1)企業概要・人員構造

同社は、昭和43年に創業し、全国で直営店舗を128店舗、フランチャイズ店舗を192展開する飲食チェーン企業である。店舗に供給する食材を加工等する工場も全国に7か所ある。

同社は、安全・安心の食材を新鮮なまま顧客に楽しんでもらうため、同社基準の栽培仕様、循環型管理放牧等を実施することにより、健康的な食材の調達を図っている。さらに、店舗への生ごみ処理機導入、天然ガス車による配送、廃食用油の燃料化等、環境にも配慮した経営を行っている。

店舗管理は業態・エリア別に行っている。標準的な店舗には店長、SSC(シニアストアチーフ:店長代行)、SC(ストアチーフ:店長代理)、ホールチーフ/キッチンチーフ等、数名の正社員を配置し、飲食サービス業として、労働環境を改善し、従業員が余裕を持ったサービスを提供できるようにと、同業他社より2~3割ほど多いパートナー(以下PNと略:すべてパートタイム労働者)を平均40名程度配置して、フルサービスを行っている。30~60の店舗を管理するゾーンマネジャーが配置され、さらに12~24の店舗を管理するエリアマネジャー、6店舗を管理するブロックリーダー、2~5店舗を管理するスーパーインテンデントが配置されている。PNは、評価基準表上、最も高い資格であっても「ホールPNリーダー②」までであり、チーフ以上は正社員とシニアPNのみとしている。

PN約6,400名のうち工場勤務が約650名、残りの約5,750名は店舗勤務である。契約は1年、時給制である。労働時間は個別に決定している。他にフルタイムで働くシニアPNがいるが、ごく少数である。PNの正社員転換推進措置は、PN→シニアPN→正社員、又はPN→正社員の順を踏むこととしている。

PNのうち社会保険に加入しているのは約600名である。賞与、退職金はないが、シニアPNには賞与を支給している。

(2)取組の背景

店舗運営において、全社員数の9割を超えるPNは重要な位置付けにあるため、その戦力化と人材確保・定着促進等を図るため、「パートナー職務給制度」、学生アルバイト紹介制度、早朝時の店舗の鍵あけ、金庫あけ、つり銭準備、店長代理業務を担当するPNに対する付加給制度(キーパー制度)、食事補助制度等を導入している。

今後の経営環境を考えた場合、飲食業における人材確保は最大の課題である。そのため労働環境の向上、キャリア形成の見える化、研修の充実、正社員転換推進措置等の施策を実施している。来年度に向け地域限定正社員制度、短時間正社員制度の導入を検討しているところである。

付加給制度

  付加給 主な業務内容
Sキーパー 80 円 下段全業務+トラブル(苦情、欠品等)対応、一般社員の代行
Aキーパー 60 円 下段全業務+ピーク時間帯のオペレーションコントロール
Bキーパー 40 円 下段全業務+中間レジ締め、食材資材の検収
Cキーパー 20 円 開店チェック、レジセット(つり銭準備)、PN勤怠チェック

(3)取組の内容

評価・時給と連動したパートナー職務給制度導入

平成24年度より「パートナー職務給制度」を導入し、評価に基づいて職務等級を決め、時給の設定にも連動させている。職務評価等級は6つある。入社時は全員がホールトレーニー①(見習いレベル)に位置し、評価によってホールPNリーダー②(ホールチーフ)まで昇格することができる。入社時のホールトレーニー①から最高位のホールPNリーダーまで上がると、時給ベースで1.15倍の差が生じるよう設定している。このような仕組みはPNに配布される手引や規定で明示されている。

評価は、チーフ職以上の正社員が行うことになっており、各職務(ホール及びキッチン)の時間給の上がる段階は2つのステップに分かれている。各職務のステップを基準通りに満たし、職務の習熟項目が全て評価点5に達した時点で昇給の起案を行っている。なお、評価点は、1:教えられていない、3:教わった、5:実施できる、である。

評価点をつける際には、本人とチーフ職以上の正社員が漏れなくチェック表を完全記入している。1か所でも漏れれば評価対象から外され、また、評価点に満たない場合は、本人と話し合いを設け、不足する知識と経験を補うためのトレーニングを行うことになる。

昇給、昇格の申請は、店舗運営責任者(店長、スーパーインテンデント又はストアチーフ)が評価基準表の評価点を確認し、職務基準の充足度合いで判断している。

昇給を起案したチーフ職以上の正社員は、評価履歴を社内共有ネットワーク内の決められたフォルダにデータ保管し、「パートナー個人別育成計画」に役立てている。

昇給、昇格のチャンスは、1年目は3か月毎に年4回の評価機会を設けることを目安とし、最低年2回は評価を実施している。2年目以降は、6か月毎に年2回の評価機会を設けることを目安とし、最低年1回は評価を実施している。なお、毎年10月1日を基準として、入社3年未満のPNに限り最低時給の変更額分を見直ししている。

PNの評価に基づく時給表(ホール担当者)

ホールPNリーダー①の評価基準表(抜粋)

理念修得能力 本人 店長
①経営理念を理解し共有する(みんなで目指す目的を共有し、心を一つにする)
(1)お店のスローガンを暗唱できる    
(2)お客様を第一優先に考え、お客様から感謝される行動を心がけている    
②職場のモラルを維持・向上させる(お店の中の人間関係を良くして気持ちよく働ける職場を作る)
(1)気持ち良い挨拶を交わして明るく、元気に、楽しく仕事をしている    
(2)信頼される言葉、信頼される行動、明るい職場、良いチームワークができている    
(3)・・・・・・    
③勤務のルールを遵守する(みんなの努力が実る、明るく働きやすい職場を作る)
(1)遅刻になりそうなときは、勤務開始時刻の 30 分前までに電話で連絡している    
(2)・・・・・・    
④安全に作業をする(安全を優先してケガや火傷のない職場を作る)
(1)正しい手順で、「いそがず」、「あわてず」、「あせらず」に安全作業をしている    
(2)・・・・・・    
⑤個人衛生を良い状態に保つ(人から起因する食品の汚染をゼロにする)
(1)作業に入る前とトイレに入った後は必ず丁寧に手を洗う    
(2)・・・・・・    
⑥職務上の責任と義務を果たす(チームワークを良くして楽しく働ける職場の雰囲気を作る)
(1)常にお客様を意識し、率先してお客様へ対応することができる    
(2)・・・・・・    

社内講師による就職セミナーの実施

同社は、現在、正社員の中途採用は行っていないため、毎年の新卒採用に際し、同社で勤務する学生(大学・短大・専門学校)PNに対し、社内講師による就職セミナーをエリアごとに実施している。その結果、受講した学生PNのうち、毎年5名〜6名の学生PNを正社員として新規採用している。

誰でもチャレンジできる正社員転換制度

同社の正社員転換制度は、本人の意欲を最も重視しているため、正社員への登用要件を別段定めてはいない。ただし、キャリア形成としてPN→シニアPN→正社員、又はPN→正社員へといった進路があるところから、シニアPN及びPNのうち、申込みがあれば毎年実施している正社員採用試験にチャレンジできることとしている。なお、学生PNについては、毎年新規学卒者を対象とした採用試験を行っているところから、希望者はそちらの方の試験を受けることになる。

正社員への転換希望者の把握方法としては、各店舗に正社員登用試験に関するポスター等を掲示し、その周知を図っている。過去3年間の正社員転換実績は、PN11名、シニアPN4名、合計15名が正社員に転換している。

採用時の研修については、オリエンテーション、店内ツアー、エチケット・ルール冊子による説明を行っている。また、マニュアルも7分冊用意されており、社内研修や毎月開催されている会議等で随時説明・研修等を実施している。なお、マニュアルは年1回定期的に改訂している。

(4)成果と課題

昨今の人手不足を解消するため、同社は、PNの正社員転換推進、学生PNの紹介制度や正社員に準じた慶弔金の支給、高校生以外の全PNを対象とした組合共済制度への加入といった福利厚生の充実を図っている。さらに、PNについては、個々のキャリア形成を明確に表す養成・教育計画を策定し、実行している。その結果、PNのモチベーション維持による人材確保、他社への人材流失を防いでいる。

「パートナー職務給制度」の導入により、時給の設定、能力開発の流れが明確になり、目標に沿った日々の業務遂行により、PNのモチベーション維持が図られている。

正社員転換推進制度については、学生PNから正社員として採用となったケースもあり、即戦力となる人材を獲得することが可能となっている。また、正社員として採用後も、「幹部養成・配転教育計画」によりキャリア形成の可視化を図っており、社員の定着率向上につながっている。

今後の課題としては、優秀な人材確保を図るため、短時間正社員を含めた限定正社員制度の導入、育児休業の取得状況を男性社員1名以上、女性社員90%以上にすること、年次有給休暇の取得推進を図ること、所定外労働時間削減のための施策を実施すること等、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けての取組推進、育児休業中の社員に対しての復帰支援プログラムの充実等々を検討している。

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