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(株)髙島屋

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(小売業)より

能力・志向に応じた処遇と手厚い福利厚生で戦力化

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
所在地 大阪府 業種 各種商品小売業
従業員数 約11,000名 パート労働者数 約3,200名
ポイント
  • パートの中に上位級を設け、やる気を醸成。
  • 契約社員、正社員への転換制度によりモチベーションアップ。
  • 能力開発支援、福利厚生も正社員に準じて適用。
  • ワーク・ライフ・バランスを図りやすい両立支援制度。

(1)企業概要・人員構造

同社は、直営店14店舗を全国に持つ百貨店で、従業員数は10,000名超、そのうち約30%近くがパートタイム労働者となっている。

正社員である「フルキャスト」は、職務を限定せずに、様々な職務を経験しながら、キャリアを形成していく。全国転勤もあるが、自宅から通勤可能な範囲で異動することが多い。一方、契約社員である「セールスキャスト」、「スタッフキャスト・サービスキャスト」やパート社員である「クルー」は、限定された店舗で販売や事務、サービスの業務を行い、マネジメントには携わらない。

従業員数と雇用区分

区分 人数 特徴
フルキャスト 約5,600名
男 約2,600名
女 約3,000名
職務限定無。全国転勤もありうるが、通勤可能範囲で異動することが多い。
総合職のみ。
キャリアキャスト・
シェアードキャスト
約550名
男 約460名
女 約90名
60歳定年後再雇用の1年契約社員。キャリアキャストはフルタイム勤務。
シェアードキャストはフルタイムの8割相当勤務。
シェアードクルー 約940名
男 約140名
女 約800名
60歳定年後再雇用の1年契約短時間勤務社員。週22.5時間勤務。
セールスキャスト 約800名
男 約20名
女 約780名
販売専門の1年契約社員。フルタイム勤務。
スタッフキャスト・
サービスキャスト
約850名
男 約20名
女 約830名
事務・サービス専門の1年契約社員。フルタイム勤務。
クルー 約2,330名
男 約10名
女 約2,320名
1年契約短時間勤務社員。勤務時間は、1日8時間、1週30時間を超えない範囲で個別に設定。

(2)取組の背景

徐々にクルー(パートタイム労働者)やスタッフキャスト・サービスキャスト(契約社員)の割合が高まり、とりわけ店頭での割合が高くなってきたことを踏まえ、この層にモチベーション高く 働いてもらうために対策を検討した。

全社員が一体となって同じ方向性を目指すことを目的に、賃金面や働き方、仕事の幅などについて多様なニーズに応えられる施策を導入した。従来であればクルーで入社すれば退職までクルーであったが、今はクルーでしか働けないが、あるタイミングでフルタイムで働きたいと考えた時に、転換の道が用意されており、モチベーションアップにつながっていると考えている。

(3)取組の内容

パートタイム労働者である「クルー」を対象に、以下のような取組を行っている。

人事考課を反映した能力給の設定

時間給は、基礎時間給と能力給によって構成され、その他に一定の職種に支給される職種加算、過去に同社で職員としての勤務経験がある者に支給される職歴加算などがある。

能力給は、職務遂行能力を測る人事考課の評定(SS、S、A、B、C、Dの6段階)をもとに、前年度能力給のゾーン(2~3段階)及びランク1を基準として昇降することで決定する。新規採用時の能力給は、最初のゾーンの1ランクに格付けされ金額は0円となり、2ランクは5円、3ランクは10円となっている。標準的な評定(B)の場合、1年に1ランク昇給し、3年後は4ランクに格付けされ、能力給は15円となる。5円ピッチでランクを設定することにより、評価結果をより給与に反映しやすいようにしている。なお、評価によってはランクが下がり減給になる場合もある。

  1. 販売職のクルー:C、Bの2ゾーン。Cゾーンはランク1~6の6段階、Bゾーンはランク7~17の11段階に分かれている。事務職のクルー、サービス職のクルー:C、B、Aの3ゾーン。Cゾーンはランク1~6の6段階、Bゾーンはランク7~17の11段階、aゾーンはランク18~49の32段階に分かれている。

販売職種の中に選抜制の上位級を設定

「販売職種」のクルー及びセールスキャストにのみ上位級として「S級」を設定している。「S級」の者は、よりレベルの高い接客、販売に加えて、後輩の指導などの役割も担う。「S級」は、人事考課(直近2回がA1回、S1回以上)、販売経験年数(2年以上)を満たし、面接試験に合格した者であり、現在49名が在籍している。

また、S級の中で極めて優れた能力を保有する人材を「シニアクルー」に任用し、販売指揮や販売員の指導などの正社員の職務を補佐するような役割を任せている。「シニアクルー」は、S級での人事考課基準(2年連続SS)を満たし、面接試験に合格した者であり、「シニアクルー」に任用されると、時給が50円加算される。平成20年以降2名を任用し、現在は1名が在籍している。

60才までの有期雇用社員の雇用管理区分

短時間勤務からフル勤務の雇用形態への優先採用制度

「クルー」の中で更なる能力発揮を目指す人に対して、契約社員である「キャスト」への優先採用制度がある。希望者には契約更新時に総務部門が希望ジャンルを確認しておき、契約社員の採用計画がある場合に、希望者がいる部門長に対して採用情報を開示し、部門長から本人に伝える。

所定の条件(直近の人事考課がB(標準的な評価)以上)を満たしていれば、各店舗での面接を経て採用が決定する。なお、直近1回の評価がB(標準的な評価)以上であれば、勤続1年未満でも優先採用の資格を得ることができる。これまでに約300名が優先採用制度を利用している。

また、契約社員である「キャスト」から正社員「フルキャスト」への優先採用の制度もあり、段階を経てではあるが、パートタイム労働者から正社員への転換への道が設けられている。

能力開発支援

希望者が受講できる実務研修や、能力及び知識の習得と動機づけを行う研修として、S級進級時及びシニアクルー任用時ガイダンス、販売職種スキルアップ研修などを実施している。また、自己啓発メニューとして、正社員と同様に販売士やカラーコーディネーター、ソムリエなど職務に役立つ約80の資格取得をサポートし、現職務に必要な資格取得に関する費用は、全額会社が負担している。

正社員に準じた福利厚生

福利厚生制度については、一部慶弔金の金額や慶弔休暇の日数に差はあるものの、正社員と同様に利用できる。結婚休暇や忌引き休暇は有給で取得が可能となっている。また、社内での買物の際は割引制度を利用することができる。

その他、勤続1年以上のパートが病気や事故で入院した際に入院医療給付金が支給される仕組みもあり、充実した福利厚生の内容となっている。

両立支援制度の均等化

育児や介護に関する制度は、正社員と同等に整備されている。育児休業は子が3歳に達するまで、育児勤務(いわゆる育児短時間勤務の措置)は子が小学校4学年に達するまで、介護休業は対象家族1名につき通算1年までと、それぞれ法定を上回る手厚い内容となっている。その他、看護休暇は子に限らず二親等以内の親族が対象と幅広く設定されていたり、ボランティア休暇(有給)やスクールイベント休暇(有給)など、ワーク・ライフ・バランスを図りやすい制度が整備されている。スクールイベント休暇は、幼稚園や保育園、小学校に通う子又は孫の学校行事に参加する場合に年間2日まで取得でき、年間で約1,000名、約1,600日の取得実績があるなど好評な制度となっている。

(4)成果と課題

パートタイム労働者である「クルー」から契約社員である「キャスト」への転換は、本人のモチベーションアップにつながっている。これまでに約300名が「クルー」から「キャスト」に転換している。また、クルー時代にS級に進級している者で、セールスキャストのS級に優先採用され、その後正社員である「フルキャスト」へ優先採用された者も1名いる。

採用面では、人手が必要な夕方の時間帯にクルーが集まりにくい実態がある。競合他社もあり厳しい状況だが、他社に比べて福利厚生が充実しているため、その点を周知することで、募集に繋がるのではないかと考えている。

今後は改正労働契約法との関係もあり、無期労働契約への転換方法について、単純に現状の雇用区分のまま無期化に移行するのか、地域や職種を限定した準社員的な区分を新たに設けるのかなど、全体的な雇用区分の整理について検討していく必要があると認識している。

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