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C社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

等級制度が処遇や正社員登用制度に連動、働きがいのある会社作りを目指す

2.賃金・労働時間
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
所在地 東京都 業種 訪問介護事業等
従業員数 244名 パート労働者数 151名
ポイント
  • 3区分の職務等級制度を実施し、評価結果が処遇や正社員登用制度と連動。
  • 登録ヘルパーについて利用者キャンセル時の対応を就業規則に具体的に明記。
  • 正社員登用制度を整備・周知し、正社員転換を積極的に推進。
  • 人事考課・業績評価を実施し賃金改定・賞与に反映。

(1)企業概要・人員構造

同社は、福祉用具販売、居宅介護支援、デイサービス、訪問介護やグループホーム等の介護事業全般の事業を首都圏中心に行っている。訪問介護事業は売上の5%程度を占めている。

訪問介護事業所は千葉県に2か所、東京都に1か所の合計3か所である。千葉県の1つの事業所の人員構成は、正社員3名、登録ヘルパー14名となっており、正社員は1名が管理者(会社組織では課長)、残りの2名はサービス提供責任者である。全体では30名の登録ヘルパーがおり、その全員がパ-トタイム労働者である。なお、サービス提供責任者は原則として正社員が担っている。

(2)取組の背景

訪問介護事業においては登録ヘルパーが主体となって利用者に対するサービス提供を行っている。ヘルパーの中には、自分の希望する日程・時間だけ仕事ができるという自由なワークスタイルを理由として登録制のへルパーになっている者もいれば、将来的には正社員になる目標を持っている登録ヘルパーもいる。

会社としては、訪問介護事業の拡大を図っていく方針である。そのためには、「ヘルパーが働きやすく働きがいのある会社にしていかねばならない。」と考え、従来から各種取組を行ってきた。

(3)取組の内容

3区分の等級制度

登録ヘルパーを含む正社員以外の社員(以下、「準社員」という。)の職務等級をジュニア・ミドル・エキスパートの3区分とし、それらの職務等級者に必要とされる要件を準社員就業規則(図表1)に明示している。賃金については、職務等級ごとに賃金(時間給)レンジ(図表2)が定められており、職務等級が上位になるほど時間給を高く設定している。また図表1の各職務等級に記載されている要件レベルを満たした場合に昇格する仕組みとなっている。さらに、エキスパートになると正社員登用の対象者となる。このように同社の職務等級制度は登録ヘルパー等準社員に対する賃金等の処遇や正社員登用制度と連動するシステムになっている。

図表1 準社員職務等級制度

職務等級 要件レベル
エキスパート ①社員登用対象レベル
②他の準社員の指導ができるレベル
【介護職】(追加要件)
高度なリスクマネジメントの能力を持ち、常にご利用者様等の事故予防に努める。
ミドル ①通常業務について自分で判断して実行するが、問題発生の際は確認しながら解決するレベル
②課全体の業務内容は知っている
【介護職】
介護職として高度な知識と技術を持ち、質の高い顧客サービスが実施でき、多くの利用者から顧客満足を得ている。
ジュニア ①担当レベルについては問題なく実行しているレベル
②担当業務の説明はできるが、課全体の業務については知らない部分がある
【介護職】
介護職としての知識と技術を持ち利用者に接し、円滑なコミュニケーションを図れる。

図表2 標準賃金(時給)

  ジュニア ミドル エキスパート
生活援助基本時給 1,100円~ 1,140円~ 1,240円~
身体介護基本時給 1,500円~ 1,540円~ 1,640円~

正社員とほぼ同じ人事考課

人事評価において従業員の能力や資質等を評価する基本的なポイントは正社員もそれ以外の社員も基本的には変わらないと考え、準社員と正社員の人事管理を連動して捉えているので、登録ヘルパーを含む準社員に対しても正社員と同一の評価シートを使用して人事考課を行っている。人事考課は「プロセス評価」を主としており、職務遂行能力と業務取組姿勢の評価を行っている。評価結果は準社員の時給アップに反映される。その結果、上位の職務等級になることができる標準賃金水準を超えれば昇級する。そして、職務等級がエキスパートになると正社員登用の候補者となることができる。このように評価⇒賃金決定⇒職務等級決定⇒正社員登用候補のプロセスが仕組み化されており、評価がパート人事制度の根幹となっている。

正社員登用の仕組み

前述したとおり、同社はエキスパート準社員が正社員登用候補者になることを就業規則で規定している。エキスパート準社員が正社員になることを希望した場合には、会社は本人と面談等をして登用の可否を決めることになる。また、本人からの希望がない場合においても、会社から候補者に正社員にならないかとの働きかけを行うこともある。

訪問介護キャンセル時のきめ細かな対応

訪問介護業務では、しばしば利用者から訪問予定当日にキャンセルがなされることがある。このような事態が生じた場合、キャンセル時点が利用者宅の訪問前か訪問後か、また、ヘルパーの当日実働業務による賃金が 60%未満か 60%以上かの区分に分けて、キャンセルに関わる賃金額を決定している。この取扱いについて、同社は準社員就業規則(図表3)に明示している。

図表3 当日キャンセルに対する対応の明示(準社員就業規則)

  1日当たりの平均賃金
60%未満の場合 60%以上の場合
利用者宅 訪問前 別の仕事としての賃金(※1) なし
訪問後 当該ヘルプ料金の金額 拘束時間手当(※2)

(※1)別の仕事
 ①他のヘルプサービス
  身体介護又は生活援助であり、内容に応じて賃金を支給する。
 ②支援以外の仕事
当初予定していた支援時間で事務作業の補佐等をし、各人の平均賃金を支給する(予定支援時間×平均賃金)
   *個人の判断で行うものとして、行わない場合には支給しない。

(※2)拘束時間
  拘束時間とは、利用者宅で事務所と連絡を取り、指示待ちの時間を指す。
   *支援と支援の間で発生する拘束時間とは異なる。
   *手当の額/10分の場合:125円、15分の場合:187.5円

業績評価のうえ賞与支給

ヘルパーの賞与は年2回(7月と12月)支給されている。賞与は評価期間中の必要最低労働時間を充足した者に対して、お客様満足度等の定性評価を行い、ヘルパー所属組織評価を加えて支給金額を決定する仕組みになっている。人事考課が「プロセス評価」であるのに対して、賞与は「業績評価」の位置付けとなっている。

(4)成果と課題

ヘルパーに対してジュニア・ミドル・エキスパートの3区分の職務等級を設け各等級の要件を開示したことにより、ヘルパーは自分の目標とそこに至るまでの道のりを確認できるようになった。ヘルパーは自分に不足している要件が分かるので、どうすれば昇級できるかを知ることができるようになった。ヘルパーが従来と比べて明らかに、仕事に対する向上心・自律心を持つようになって きたという。

訪問介護においては、訪問日当日に利用者からキャンセルされることもしばしば起こる。従来は、こうした事態が起きた時に賃金支給額をどうすれば良いかは、明確ではなかった。そこで、訪問介護に従事する者を中心として議論に議論を重ねた。休業補償の平均賃金の 60%支給を原則として、ヘルパーが納得できる方法は何かと検討し、4区分による賃金額算定方式を考え出し準社員就業規 則に規定することとなった。ヘルパーからも合理的できめ細かいルールとして評価されている。

介護事業においてパートは貴重な人材である。優秀なパートタイム労働者(エキスパート準社員)の常勤化としての正社員登用は、会社にとってもパートタイム労働者にとっても有益なものと考え正社員登用制度が規定された。今までに以前はパートタイム労働者であった登録ヘルパー4名が常勤化して正社員(サービス提供責任者)となり、ジュニアやミドルの登録ヘルパーへの教育・指導的な役割を担っている。

同社は取組により、「ヘルパーが働きやすく働きがいのある会社にしていく。」という会社目標に一歩一歩近づいて来てはいるが、まだ道半ばと考えている。

訪問介護業務において必要不可欠な人材はヘルパーであり、今後とも、ヘルパーが働きやすく働きがいのある会社作りを行っていきたいと考えている。

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