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ロイヤルホールディングス(株)

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(飲食サービス業)より

モチベーションアップを目指すためのキャリアルートの明確な人事制度

3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 福岡県 業種 飲食店
従業員数 約26,400名
(11,000名)※()内はロ イヤルホスト
パート労働者数 約24,000名
(10,400名)
ポイント
  • 能力と経験、職務責任からの明確な階層区分と社員登用制度。
  • 精緻な昇格基準と時給との連動。
  • 意識の高揚策としての全国コンベンション。

(1)企業概要・人員構造

同社は、食とホスピタリティを追求する企業として昭和26年に創業し、外食事業、受託フードサービスのコントラクト事業、機内食事業、ホテル事業など多角化を図ってきた。中でも外食産業は、日本でも有数な飲食店チェーンを持っており、昭和46年創業のロイヤルホスト(ファミリーレストラン)を中心に、天丼てんや(てんぷら)、シズラ―(サラダバー&グリル)、シェーキーズ(ピザ)、カウボーイ家族(ファミリーダイニング)などブランドごとの店舗展開を図っている。

グループ全体の総店舗数は平成26年12月末現在で795店舗(うちフランチャイズは海外22店舗を含め48店舗となっている)、うちロイヤルホストは244店舗である。

正社員は、全国転勤が前提となるナショナル社員が約2,200名、地域限定のエリア社員が約130名、定年後の再雇用者であるシニア社員が約70名の構成である。一方、社内で「クルー」と呼ばれるパート・アルバイト(パートタイム労働者)は、全社では24,000名いる。クルーは学生と主婦が中心であるが、その他にいわゆるフリーターの人もおり、ブランドや地域特性に応じても構成が異なっている。以下は基幹ブランドであるロイヤルホストのクルーについてである。

ロイヤルホストの1店舗当たりの平均正社員数は2名弱で、それ以外はクルーである。クルーの平均年齢は30歳弱で、平均勤続年数は3年前後であるが、長い者では20年以上の者もいる。男女の比率はほぼ3:7、学生の比率は地域によるバラツキはあるが、平均的には45%弱である。平均月間労働時間は80時間弱、社会保険に加入するクルーの割合は10%強で、雇用保険と社会保険の加入の有無により区分別の雇用契約書を交わすようにしている。雇用契約は、最初は2か月契約、以降は半年の契約である(契約開始月は4月と10月にそろえている)。

給与は基本時給に全て含めて決定するという考え方のもと、加算して支給される手当は通勤手当程度であり、賞与、退職金はない。

(2)取組の背景

ロイヤルホストだけでみると、クルーの構成比率は95%になっており、まさに店の日々の運営がその双肩にかかっているといっても良い。そのために3年に1度くらいの割合で人事制度を見直し、そのときの経営環境に応じて動機付けとなるように取り組んできた。

具体的には、給与に連動する等級制度や教育研修、表彰、評価、社員登用をトータル人事システムの一環として導入してきた。また、時間帯責任者(シフトリーダー)をはじめ、店長に次ぐ副店長、及び料理長に次ぐキャプテンなどの要職にも積極的に任命している。

(3)取組の内容

キャリアアップが明確な等級制度

平成26年、クルー制度の見直しを行ったところである。クルーのうち約8割を占める旧制度における「Cクルー」階層のモチベーションの向上を図り、キャリアアップ意識を持たせるため、各階層の基準を明確にした。

クルーの区分

新階層(資格)区分 旧制度の呼称 構成比率 要件
シフトマネジャー Aクルー 1% 時間帯の責任者
トレーナー Bクルー 19% クルーを育てるスキルを身に付けたベテランクルー
スタークルー Cクルー 80% 基本作業から1つずつ身に付ける段階

それぞれの階層内はさらに細かく3段階の「ランク」に分かれており、これが時給のアップにも結び付くシステムとなっている。平均的にみると、勤務実績が120時間前後で、ランクが昇格することになる。

昇格査定は、店長が行う。昇格が認められるには、テーブルをいくつ担当できるか、付随するサービスや案内がどの程度できるかなどの具体的な基準を設定している。ランクによっては、ホスピタリティ重視の理念に基づき、実際の営業での接客を観察したり、実際に調理させてみたりなど、実技試験も併せて評価を行っている。トレーナーに昇格するとネームプレートが変わる等、クルーの動機付けを図っている。

なお、資格としてのシフトマネジャーはクルーの中の1%ほどで、時間帯ごとの責任者の役割を担っている。シフトマネジャーになると、地域限定のエリア社員(後述)登用の受験資格も発生する。このシフトマネジャーへの昇格は、事業部長の判断によることとなっている。

充実した教育訓練制度

クルーに対しても積極的に研修を行っている。

まず、採用時の初期研修では、2日間、計4時間を使い、店に慣れてもらうためのハウスルール、基本動作、就業規則の内容等について教育している。同社では日頃より「開かれた制度」であることを重視しており、この機会を使ってクルーのステップアップや福利厚生についても説明を行っている。

以降の研修は、ランクが上がるごとにレベルを変えて実施している。案内やオーダーの取り方、会計などの接客、調理技術等について、OJTを中心として節目にはOff-JTも取り入れた段階的な教育指導を行っている。

これらと併せて、飲食業としての特性から、食品の安全衛生面での教育にも力を入れている。同社では独自のハンドブックを作成しており、包丁などの持ち方などを分かりやすく図解している。また毎月開催する労働安全衛生委員会からの指摘や改善案を受けながら、食品衛生法や労働災害への対応についてのタイムリーな現場指導を行っている。

人事評価制度

クルーガイドシートというランクごとの自己申告チェック表を設けている。平成26年度、より精緻なものへと見直しを図った。これをもとに「マンツーマンでクルーがクルーを育てる」という方針の下、トレーナーが一次評価者として評価を行っている。また、適正に教育、指導しているかということは、トレーナーの評価基準にも取り入れられている。二次評価者は、地区長の承認の下に時給決定権限を持つ店長である。評価後には、店長から各クルーに対しフィードバックを実施している。

一定のレベルにあると評価されると、そのランクを卒業して上のランクに昇格する仕組みとなっている。

エリア社員からナショナル社員への登用制度

能力や意識の高いクルーを地域限定社員(エリア社員)として登用、処遇する制度が設けられている。エリア社員は、全員がパート・アルバイト経験者であり、ここからロイヤルグループ全体の人事制度の対象となる。エリア社員への登用に当たっては、新卒採用の正社員との整合性を十分に考慮した上で、適応する人材のみを厳格に選抜している。エリア社員になると店長や料理長へのキャリアアップが期待され、さらにはナショナル社員として幹部職への道も開けてくる。

エリア社員への受験資格は、フルタイム勤務が可能なシフトマネジャーであって、自ら希望し、将来は店長・料理長を担える能力があると事業部長(営業部長)又は地区長が推薦した者である。試験は、役員面接のほか、課題レポートの提出も義務付けられる。最近のレポートのテーマは「エリア社員になりたい理由」であった。

なお、エリア社員からナショナル社員への登用制度も設けられており、SPI検査とともに役員と人事部長が面接を行って決定する。今年は4名がナショナル社員に昇格となった。毎年数名から10名近くの者が試験に合格するが、意思を最終確認する際に、転勤のことを考慮して辞退する者もおり、同社としては残念に思っている。

全国イベントとしての技能コンテスト

同社では、クルーコンベンションと称する独自の表彰制度を実施している。約300名が一同に会し、2日間かけて実施する大がかりなコンテストである。これは、以下の3つに分かれる。

①ロイヤルオペレーションクラッシック(ROC)

各地域の予選から勝ち抜いてきた店舗ごとの優秀なクルー(店舗ごとのトレーナーとスタークルーのペア)40名が東京の桜新町店でその接客スキルを披露した。単に仕事がベテランの域にあるというだけでなく、いかに店舗に貢献するかが評価される。実際のお客様を前に実技を行い、審査員である社員が評価する。実施店舗の入口には案内を出して、お客様のご理解をお願いした上で実施している。表彰式は都内のホテルを借りて行い、全員にオリジナルのネームプレートが授与されるとともに、優秀者には表彰状と盾が授与されることとなっている。

②OURSTANDARD101カ条甲子園

優秀店舗を表彰するものであり、審査員が実際に対象店舗を訪問して評価を行う。全国大会では「お店自慢」をプレゼンテーションする。優秀店舗には、店頭に掲示できる銘板が授与される。

③ホスピタリティ功労賞

ROCには出場できないが、店舗の運営に大きく貢献している人材を表彰するものである。他のクルーの手本となり、いつも元気で信頼され、店舗にとって欠かせない人材が選ばれ、表彰状が授与される。

福利厚生

ロイヤルホストや天丼てんや、シズラーのチェーン店及び一部の専門店で活用できる家族割引券(20%オフ)が配布される制度があり、積極的にグループの店舗を知ってもらう機会としている。

また、勤務時において食事補助制度があり、個人負担は原価分のみとなっている。顧客用と同じ商品を食べ、自店の料理を自ら覚えるというねらいもある。

さらに、パート・アルバイトを対象とした弔慰金制度も設けている。

経営情報の共有化

決算説明会はパート・アルバイトにも参加の門戸を広げており、経営情報を共有することにも心がけている。また、メニュー変更の際などはDVDを各店に送り、全員が見ることとしている。新メニューの紹介はもとより、例えばなぜイタリアフェアを実施するのか、その主旨をビジュアルで伝え、関心を持たせるようにしている。

さらに、社内報としての「ホスピタリティ通信」を月に2回各店に配送して休憩室等に掲示している。この通信を通じて、仕事の意義を改めて考えてもらうとともに、主体的に参画しているという自覚を高めるようにしている。

(4)成果と課題

現行制度より1つ前のA~Cの3段階クルー制度も4年前に導入したばかりであるが、ES(従業員満足)を重視しより良い制度を追求するという方針の下、見直しを行ったものである。パート・アルバイトへの施策を重視してきた結果、毎月の離職率が改善されてきており、定着率も高くなってきている。最近は採用が難しくなってきていることもあって、人材が安定していることが経営上も大きなメリットになっている。パートの定着率の向上と正社員の定着率の向上が相互に作用しているとも感じている。また、評価制度と一体化した、クル―がクルーを育てるというマンツーマン型の教育訓練への取組が効果をあげてきたものとみている。併せてクルーコンベンションによる求心力の高まりも効果をあげてきている。

今後については、顧客の食に対する要望がますます高まっていく中で、会社の方向性に沿って諸種の制度を統合するとともに、パート・アルバイトにとって先々が見えやりがいのある仕事となるよう、担当する範囲と責任を明確にしていくことを課題と考えている。

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