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(株)やさしい手

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

丁寧な登録時説明、キャリアアップの支援、目標管理・情報登録の賃金への反映

1.労働条件の明示、説明
2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
8.職場のコミュニケーション等
9.その他
所在地 東京都 業種 訪問介護
従業員数 約4,900名 パート労働者数 約4,000名
ポイント
  • 登録時や初回派遣時には、時間をかけて丁寧な説明・フォローを実施。
  • サ責、指導者的ヘルパー、一般ヘルパーの3つのキャリア方向を提示、教育面で支援。
  • 契約期間に合わせて目標設定、期間終了後に達成度を評価し一時金を支給。
  • モバイルを使いケース共有化のための情報を募集し、協力した場合に手当を支給。

(1)企業概要・人員構造

直営で約50の事業所を展開し、4,000名近くのヘルパー登録者を抱える訪問介護事業者である。

事業所ごとに2つ又は3つのチームに分かれ、各チームには3~4名のサービス提供責任者(以下、「サ責」という。)と数十名のヘルパーがいる。サ責の1人がチームリーダーとなり、さらにチームリーダーの1人が事業所の管理者となっている。標準的には、こうした体制により、事業所全体では100~150名のヘルパーで250~300名の利用者に対応している。

サ責は、正社員が基本である。家庭の事情等でフルタイム勤務できないため、週4日、1日7時間等で勤務する有期雇用のサ責も一部にいるが、事情に応じ正社員との柔軟な行き来を可能としている。

ヘルパーは、月の稼働時間が30~35時間程度の人が多く、雇用保険が適用される週20時間超の人は2割程度である。

(2)取組の背景

ヘルパーの多くは、自分のライフスタイルに合わせて働くことを望んでいる。会社としてもダイバーシティを重視し、訪問介護はそれを可能にする働き方であると考え、働く人の希望に合った雇用管理に努めている。

一方で、経営的には、利用者満足のためにサービスの質を維持向上させるとともに、事業拡大にとって必要な労働量を確保する必要がある。

介護報酬という人件費上の制約条件のもとで、働く側・雇う側双方のニーズの調整を図る中で、現行の各種施策が取り入れられてきた。

(3)取組の内容

事前研修・説明の充実

面接等の所定の手続を経て登録されたヘルパーに対しては、利用者のもとに派遣する前に、基本的な事前研修を行っている。

研修時間は6時間ほどで、介護の考え方・方法論を、机上及び実技指導の形で学んでもらっている。他社で十分な経験年数のある人に対しても、自社の仕事のルール(報・連・相のやり方など)を身につけさせる必要があるため、同様に実施している。

また、この機会を利用して、労働条件の詳細のほか、経費精算の方法、休暇の申請方法等、働いていく上で必要なさまざまな事項を、就業規則のポイントの抜粋や各種資料を配布して説明している。研修時間に対しては、介護サービスとは異なる低い単価ではあるものの、時間数分の賃金を支給している。

雇用契約は、本人の希望やスキルを踏まえ、特定の利用者への派遣を前提として締結することになる。初回の派遣前には、利用者の特徴、現状に至った背景や今後の見通しを理解させ、ヘルパーとしてどんな役割を果たすべきかを、サ責からよく説明している。また、本人のスキルや利用者の特性に応じ、サ責が何回かの同行訪問を行うようにしている。

3つのキャリア方向の確認と正社員転換

自分の都合に合わせ、ヘルパー業務を続けたいとするヘルパーがほとんどではあるが、経済事情や家族状況の変化により、キャリアアップを図りたいと考える層もいる。

そこで、会社としてはヘルパーに対し、①そのままヘルパーを続ける選択肢のほか、②他者の指導的ヘルパーになる、③サ責になって正社員になる、という選択肢を用意しており、契約更新のつど本人の意向を確認している。

他者の指導的ヘルパーになることを希望する人には、ケースの共有化を図ったり、ミーティングでファシリテータや経験を伝える役割を担ったりしてもらっている。特に、リーダー等の役割・呼称を明確にはしていないが、経験・スキルを積んでいくことで、結果的に時給も上がっていく。

サ責・正社員になることを希望する者に対しては、講習等の情報提供、受講料補助(自己負担はテキスト代程度)、勤務と通学とが両立できるような時間面の配慮といった支援を行っている。実際の正社員転換は、土日を含めてシフト勤務ができること、事業所間異動ができることを応募条件として、書類審査、面接、メンタル面でのチェックを経て決定する。ただし、いきなり土日や遠方事業所に勤務するのが難しい場合、最初の1~2年間は本人の事情に合わせ柔軟に対応している。

退職補充の必要があるとき、事業規模拡大のために必要があるときに転換希望者を募集するが、結果としては、ほとんど通年募集しているに等しい状況である。この募集案内は、すべてのヘルパーに対して、給与明細とともに配布している。

契約期間ごとの目標管理に基づく一時金支給

月の稼動時間が80時間以上のヘルパーには、契約期間(6か月)中のスキル向上やサービス向上などに関する目標を立てさせ、契約更新時にその達成度を評価し、結果次第で一時金を支給している(文末図表)。

目標は、本人のキャリア上の課題(経験すべき業務、獲得すべきスキル等)と事業所運営上の課題(利用者満足の向上、サービス品質の向上等)を踏まえて設定する。会社としても一定の目標設定例を提示しており、それも参考に本人とサ責とが相談しながら決めている。

目標の達成度は、優れていた場合のAから、不十分又は取り組む機会がなかった場合のDまでの4段階で評価する。契約更新面接と併せて評価し、B評価で1万円強、A評価ならB評価の5割増し、C評価・D評価ならB評価の7~8割程度を、翌々月の給与と併せて支給している。ただし、契約更新せずに退職した時は、支給しない。

モバイルによる情報登録に対する手当の支給

利用者宅で作成し確認印をもらうサービス提供記録とは別に、実際の業務を通じて気付いた点、他のヘルパーとも共有化することが必要と思われる点については、モバイルで情報(プロセスレコード)を登録することを推奨している。

登録を義務とはしていないが、他のヘルパーやサ責にとってきわめて重要な情報となることから、なるべく多くの登録を促すため、1登録につき100円の「記録手当」を支給している。この金額は、一般的に登録に要する時間を考慮して決められたものである。

モバイルに不慣れな年配のヘルパーは必ずしも積極的でないものの、若手では月に100件以上登録し、1万円以上の手当を得ている場合もある。

(4)成果と課題

事前研修・説明は、自社のやり方を徹底するとともに利用者本位のサービスを提供するために重要と考えている。また、労働基準法やパートタイム労働法の規定する労働条件の明示・説明としても必要であるため、引き続き丁寧に実施していく意向である。

正社員転換については、毎年20名程度の実績がある。今後とも優秀なサ責・正社員の確保ルートとして、また、ヘルパーにとってはキャリアアップの1つの道筋として、重視していく予定である。

ライフスタイル上、フルタイムの勤務を望まない圧倒的大多数のヘルパーには、もう1つのキャリアアップ方向として、指導的ヘルパーを目指してほしいと考えている。その役割や待遇上の取り扱いが現時点では明示的でないのは課題と認識しているが、ヘルパー間に上下関係が意識されることによる弊害も想定されるため、慎重な検討が必要と考えている。

目標管理による一時金は、時給に換算すると20~30円程度であるが、それを半年ごとにまとまった金額として支給することで、時給に上乗せするより大きな動機づけ効果があると実感している。介護報酬の制約がある中で、時給を小さくアップさせるよりも、目に見える形での動機づけ効果のある賃金の支払い方を、他の面でも検討していきたいとしている。

記録手当が支給される情報登録については、世代により取組にバラツキがみられるものの、的確なサービス提供にとって重要な施策であり、継続していく予定である。手当の原資の半分が処遇改善加算に依っているため、いずれ単価が半分になってしまうが、その点はあらかじめ説明してあり、また、若手を中心に登録することがかなり根付いているので、特に心配していない。

図表 訪問介護員向け目標設定達成支援プログラム

図表 訪問介護員向け目標設定達成支援プログラム

各プログラム項目 各プログラムの概要・基本的な考え方
教育指導者
志向プログラム
  • 訪問介護員自身の経験を活かして、新人や経験の浅い訪問介護員に対してアドバイス・指導を担い、サービス提供責任者による人材育成を補完・フォローする。
  • 訪問介護員の横の連携をつなぎ、多くの仲間のネットワークを構築する。
  • 知り合いの訪問介護員(希望者)を紹介して、訪問介護員の増員に貢献する。
スキル熟達
志向プログラム
  • 疾病や ADL の状況を理解し、リスク予見の提案ができるようになる。
  • ご利用者の自己決定・自立支援が促され高まる働きかけができるようになる。
  • ボディメカニクス等の力学的サービスを応用し、ご利用者や訪問介護員自身の安全・安楽なサービスを継続できるようになる。
サービスマネジメント
志向プログラム
  • サービスマネジメントの推進に訪問介護員が積極的に関わり、ご利用者の目標達成やサービス改善、ケアマネジャーへの情報発信・提案に貢献する。
  • 訪問介護員自身がサービスの PDCA サイクルを意識し継続的改善につなげる。
  • チームケアの中での役割意識を持ち、モチベーションアップ・一体感を得る。
他職種・資格志向
プログラム
  • 介護福祉士、ケアマネジャー、などの資格取得に向けて学習する。
  • 訪問介護でのキャリアアップはもちろんのこと、他サービスセグメントへの職種転換に向けて学習の機会を積極的に積んでいく。

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