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(株)ココカラファインヘルスケア
グレード別の評価が、パートタイマーの意欲・能力の向上に効く
正社員転換推進措置
所在地 | 神奈川県 | 業種 | その他の小売業 |
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従業員数 | 約15,000名 | パート労働者数 | 約9,400名 |
ポイント |
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(1)企業概要・人員構造
ココカラファインヘルスケアはドラッグストア事業と調剤事業を中心として関連事業も幅広く展開している。近年関連会社を統合し、1,300以上の店舗と従業員総数約15,000人を擁す規模となっている。
パートタイム労働者は、以下に挙げた表の中でパートナーと称される、期間1年以内の期間を定めて雇い入れられた者で、1日又は1週間の所定労働時間が正社員より短く、会社が認めた者と定められている。それぞれの雇用区分ごとに就業規則が整備されている。
従業員数と雇用区分
雇用区分 | 人数 | 特徴 |
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正社員 | 5,160名 | 期間の定めなし。転勤あり。職務限定なし。 |
パートナー | 9,400名 | 期間1年以内。原則として転勤なし。職務限定。 |
嘱託社員等 | 440名 | 雇用契約による。 |
合計 | 約15,000名 | |
正社員は、職務を限定せずに異動をしながらキャリアを形成していくが、パートナーは基本的に店舗での販売活動を中心とした職務であり、各店舗で採用される。
店舗の標準的な人員構成は、店長―(副店長)―社員2人―複数のパートナー1となっている。
業種柄、生活に密着した商品を売る職場として人気があり、パートナーの定着率は高い。
(2)取組の背景
ドラッグストア事業と調剤事業という顧客と対面する業種柄、「顧客一人ひとりに満足を」という考えを重視している。そこで、店舗で顧客と直接対応するパートナーにも期待する働き方を明示し、能力育成・戦力化を図る必要性があり、人事評価の導入は当然の選択肢であった。
(3)取組の内容
公正性・透明性を高めるための人事評価の実施
パートナーには、初級・中級・上級のグレードを設けて格付けに基づき賃金を支給している。採用時の賃金と現在の賃金との差額が0~30円を初級、30~150円を中級とし、会社が特別に認めた中級以上の者を上級としている。また、パートナーの業務内容と発揮された行動を正当に評価するため、人事評価を年1回実施し、その結果を処遇に反映させている。
人事評価は、具体的には、以下のような評価項目により、本人評価→店長考課(一次考課)→統括店長2考課(二次考課)の順に行う。結果は評価記号(S、A、B、C)で示され、この結果と初級・中級・上級の区分により昇給額に差をつけている。さらに、人事考課結果のパートナーへのフィードバックを行い、目標をもって仕事に取り組むよう促している。
考課区分 | 項目 | |
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絶対項目 | 1.出勤率 | - |
2.定性項目 | (1)意識・姿勢 | |
(2)身だしなみ | ||
(3)接遇 | ||
(4)行動 | ||
考課管理 | 1.初級(募集時給との差額が30円未満の者) | (1)レジ業務 |
(2)接客 | ||
(3)クレンリネス | ||
(4)品だし | ||
(5)商品管理 | ||
(6)販促物管理 | ||
2.中級(募集時給との差額が30円以上150円未満の者) | (1)教育 | |
(2)発注 | ||
(3)売場管理 | ||
(4)クレーム初期対応 | ||
3.上級(会社が認めた中級以上の者) | (5)金銭管理 | |
(6)鍵管理 | ||
柔軟な賃金設定、資格による時給上乗せ
パートナーの採用時の賃金は、地域の状況等を踏まえ店舗ごとに決定しているが、優秀なパートナーを採用するため、統括店長決裁で3%を上限に変更ができることにしている。さらにそれ以上の変更も、エリア長決裁があれば可能となっている。ただし、採用後の昇給額には上限を設けている(店舗募集時の時給から最大200円)。
また、登録販売者資格、CA(社内資格であるチーフアドバイザー)の資格を持つ者には、基本給に時間当たり20円を加算している。
正社員転換制度の導入・実施
正社員へのステップアップの仕組みは、パートナー就業規則に以下のように規定し、周知されている。
(1)1日8時間、1週40時間で正社員と同等の勤務ができること
(2)所属長の推薦があること
(3)人事考課がA評価以上であること
(4)採用面接試験に合格したこと
また、資格保有者で、転換してほしいパートナーには、会社側から声をかけることもあり、毎年数十人が転換している。
法令順守への確実な取組
労働条件の明示・説明はパートナー用の雇用契約書を用いている。就業規則が整備されていることから、A4サイズ1枚にポイントをまとめたもので、その他は就業規則によるとしている。
定年は正社員と同じく60歳であり、60歳以降は、本人が希望した場合に65歳まで延長する。年次有給休暇は、法令どおりであるが、半日単位の取得も3日を限度に認めており、全体の取得率は7割前後である。
福利厚生ほか
教育訓練は、採用時に接遇研修を行っているほか、正社員とは研修内容が異なるものもあるがパートナーの職務内容、成果、能力、経験などに応じて必要な接遇研修等の教育訓練を実施している。
退職金制度はないが、勤続10年以上で退職した場合などには表彰制度を設けている。
その他、パートナーについても正社員と同様に社内割引販売がある。
(4)成果と課題
人事評価は手間がかかるが、フィードバックにより期待・要求する能力・業務レベルをパートナーに気づかせ、目標を持って仕事に取り組んでもらうために効果があると感じている。パートナーが自らを成長させ、その結果の集約が企業を強くすると認識している。また、正社員へ登用の途が公開・公平になっていることから、意欲と能力あるパートナーが、正社員転換試験に挑戦し、毎年約30人合格して定着している。
課題は、高齢化への対応である。働きやすい環境のため、定着率もよく、60歳代のパートナーも少なからずおり、今後、高齢化が進む正社員と併せ、どう処遇の均衡をとるか、検討しなければならないと認識している。
- 店舗規模により人数が異なる
- 近隣エリアの複数店舗をまとめて統括する店長