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A社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

質の高いサービス提供を目指して、社員の定着率を高めるべく様々な工夫を実施

2.賃金・労働時間
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
9.その他
所在地 福岡県 業種 訪問介護事業等
従業員数 約1,140名 パート労働者数 約610名
ポイント
  • 定着率を高めるために、創意工夫をこらし、新しい施策を実施。
  • キャリアパスを制度化し、職位、居宅訪問時間数に応じて手当を加算。

(1)企業概要・人員構造

同社は、介護大手だったイ社からの同県内居宅系サービスの事業承継法人として選定されたロ社(同社の親会社)により、その受け皿として平成19年に設立された。設立7年目にして、県内(一部隣県)に80事業所(訪問介護事業所・障がい者自立支援事業所25か所、居宅介護支援事業所15か所、訪問看護事業所12か所、訪問入浴事業所10か所、通所介護事業所5か所、小規模多機能型居宅介護事業所3か所、認知症対応型共同生活介護1か所、福祉用具貸与事業所・特定福祉用具販売事業所2か所、訪問歯科支援事業所7か所)、社員数も1,100名超を擁している。

雇用形態については、正規社員が約450名、非正規社員のうち、フルタイム社員(毎年4月1日契約更新の有期雇用者)が約80名、パートタイム社員(毎年4月1日契約更新の有期雇用者)が約610名となっている。

(2)取組の背景

同社は、「介護サービスを提供するヒトこそが企業の財産である。ヒトの質と量を高めることがより良いサービス提供に繋がる」と考えている。社員に長年勤務をして経験を積んでもらい、質の向上を図りたいという意図があるが、入社1年以内の離職者が30%超と短期間での退職者が高い現状にある。

同社は140年を超える歴史を有する県内の有力企業グループの一員であり、正規社員からパートタイム社員に至るまで、会社の看板を背負っていると考えている。会社への帰属意識を高めることは、勤続年数の伸長に対しても効果が期待されている。

(3)取組の内容

(1)社員の定着率を高めるための施策

入社時に社長のメッセージ(手紙)を1人ひとりに手交

パートタイム社員を含む非正規社員に対して、宛名を「社員各位」ではなく、個人の名前入りで、歓迎の意とともに会社の事業方針・理念、社会的責任等を伝えている。

各社員の誕生日には、記念品を贈呈

平成26年1月から、非正規社員の所属事業所に社員の誕生日のデータを提供し、事業所単位で記念品を贈呈するための予算を計上している。

年度末に記念品を贈呈

非正規社員には賞与がないため、年度末に記念品を贈呈する為の予算を計上している。

深夜時間帯等は訪問手当を支給

深夜時間帯等一般的に労働を敬遠される時間帯については、正規社員・非正規社員を問わず深夜割増とは別に、体への負荷等を考慮し、1回の訪問につき100円を支給している。

10年、20年、30年の永年勤続表彰を実施

パートタイム社員も含め、10年、20年、30年の永年勤続表彰を行い、賞状と記念品を授与している。勤続年数は、同社の前身会社のイ社の時代も通算して、勤続意欲を高めている。表彰は、正社員・パートタイム社員のうちフルタイム勤務者については本社で、それ以外の非正規社員は事業所単位で表彰を行っている。

管理者のコミュニケーション研修を実施

非正規社員の退職事由をフォローしたところ、「職場の人間関係」、特に管理者(正規社員)との人間関係が少なくないので、管理者のコミュニケーション能力を向上させる研修を実施して、円満な人間関係の構築に努めている。

コミュニケーションを図るための取組

社員が移動の間に事業所に立ち寄ってお茶等を飲めるような雰囲気づくりを行い、社員同士のコミュニケーションを図っている。またコーヒーサーバーを設置したり、お菓子を置いたスペースの横に、介護情報誌を設置している。

育児休業期間の延長

女性が多い職場のため、子どもが3歳になるまで育児休業を取得できるよう制度化していて、「育児を理由に退職する必要がない」と好評である。社員の年齢構成から看護職の利用が多いが、非正規社員のヘルパーにも利用者がいる。平成22年度には、「はたらく母子家庭応援企業」として厚生労働省雇用均等・児童家庭局長賞を受賞している。

(2)企業理念の理解やコンプライアンス意識を高めるための施策

入社時研修で、会社の責任や方針、理念等を理解してもらうよう指導

入社時の研修では、各種規定の文言を確認しながら、企業理念や方針の意図や意味を理解できるように説明している。

企業目的、行動規範、行動基準を折りたたみ式で名刺大の冊子にして全社員に常時携行を義務付けている。

(3)パートタイム社員のキャリアパスについて

パートタイム社員のキャリアパスを制度化し、職位・居宅訪問時間数に応じて、手当を加算する

パートタイム社員の職位は、1級で入社し、3か月の試用期間を経ると自動的に2級に昇級する。その後の昇級は、各職位ごとに滞留年数、業務態度(無断欠席等の有無、会議への出席率、懲罰の有無、平均労働時間)の要件、上長推薦の要否、必要な資格等が定められており、条件をクリアした場合に昇級する。

パートタイム社員の基本給は、訪問内容(身体介護・生活支援)に応じて一律であるが、これとは別に、在籍級及び訪問時間に応じて居宅訪問手当を毎月支給している。詳細は以下の図表のとおり。

図表 パートタイム社員の基本給設定表

※単位:円、1 級は支給なし。

時間 2級 3級 4級 5級
0~10
10~20 600 750
20~30 500 1,000 1,250
30~40 750 1,400 1,750
40~50 1,050 1,800 2,250
50~60 1,100 1,350 3,300 3,850
60~70 1,300 2,750 3,900 4,550
70~80 1,500 3,250 4,500 5,250
80~90 3,400 3,750 6,800 7,650
90~100 3,800 6,650 7,600 8,550
100~110 4,200 7,350 8,400 9,450
110~120 4,600 8,050 9,200 10,350
120~130 5,000 8,750 10,000 11,250
130~140 10,800 14,850 16,200 17,550
140~150 11,600 15,950 17,400 18,850
150~160 12,400 17,050 18,600 20,150
160~170 13,200 18,150 19,800 21,450
170~180 14,000 19,250 21,000 22,750
180~190 14,800 20,350 22,200 24,050
190~200 15,600 21,450 23,400 25,350
200~ 18,000 25,000 27,000 29,000

正規社員への転換は、正規社員に不足がある場合、パートタイム社員の3級以上の者のうち、正規雇用への転換を希望し、①配置転換も可能、②上司の推薦がある者の中から上位等級の順に転換され、年間20名程度が利用している。

(4)成果と課題

社長からの手紙の配布は、平成25年4月からの実施であるが、上半期の退職者が減少したので、一定の効果があったのではないかと考えている。会社への帰属意識の向上については、日々の活動が重要であり、引き続き継続していく。

同社では、現在正規社員も含めて退職金制度がない。このことも定着率に影響があると思われるため、今後は安定的に運用できる退職金制度を構築することを検討している。

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