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(株)エコス

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(小売業)より

全社共通ツールを活用した教育、評価、処遇の一体化により、パートタイム労働者のスキルアップを目指す

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
所在地 東京都 業種 飲食料品小売業
従業員数 4570名 パート労働者数 3680名
ポイント
  • OJT基準書の導入による、作業の効率化とパートタイム労働者のスキルアップ。
  • 教育と評価、処遇が一体となった仕組みの構築。
  • 正社員転換制度の整備。
  • 店舗実績を反映した賞与の支給。

(1)企業概要・人員構造

同社は、昭和9年に青果店として創業し、数回のM&Aを経ながら規模を拡大し、現在では関東地方一都六県でスーパーマーケット65店舗を運営している。

店舗の基本的な人員構成は、店長1名、副店長1名、チーフ6名(グロサリー、生鮮4部門、レジに各1名)、作業者70~80名となっている。店長、副店長は原則正社員だが、チーフについては全社で20名程度がパートタイム労働者から登用されている。

正社員は、店長又は副店長、チーフとして、主に管理的業務(数値管理、採用、勤務シフトの作成)を担い、発注、接客等の現場業務も行う。パートタイム労働者であるパートナーとアルバイトは、採用された店舗で品出し、接客、レジなどの業務を行う。パートナーは所定労働時間によって3つに区分され、週20時間以上30時間未満の「パートナー2」が1,500名超と一番人数が多くなっている。

従業員数と雇用区分

雇用区分 人数 定義
正社員 814名
男 681名
女 133名
無期契約、フルタイム(週40時間)、月給制、転居を伴う異動あり
契約社員 76名
男 63名
女 13名
1年契約、フルタイム、月給制パートナーの上位者と定年後再雇用者が混在
仕事内容は、ほぼ正社員と同じ

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パートナー3 329名
男 26名
女 303名
3か月契約、週30時間以上
パートナー2 1,547名
男 85名
女 1,462名
3か月契約、週20時間以上30時間未満
パートナー1 652名
男 29名
女 623名
3か月契約、週20時間未満
アルバイト 1,152名
男 527名
女 625名
3か月契約、週30時間未満
学生が対象

(2)取組の背景

収益構造の改革を戦略の一つに掲げ、ローコストオペレーションを推進する中で、パートナーの比率を高めてきた。全体の8割を占めるパートナーのさらなる戦略化と有効活用を図るため、2003年にパートナー制度の改訂を行い、パートナーを「マネジメント等級」と「技術等級」の2つの側面から評価し、初級や中級、上級といった等級区分に合わせて契約時間や給与を設定した。等級の判定方法は、「マネジメント等級」についてはマネジメント職務要件に基づいた筆記試験を、「技術等級」については実技試験を本社人事部が一元的に実施していた。

しかし、試験実施の負担や社内体制の変更等もあり、次第に制度の運用・維持が困難になっていった。現在では「技術等級」の新規認定は行っておらず、「マネジメント等級」は店長の裁量で決定している状況となっている。

また、「技術等級」は部門別に設定した技術要件(鮮魚部門の例:アジの三枚下ろしができる等)を満たしているかどうかで評価するが、魚を上手にさばけるだけでなく、より幅広い業務を数多くこなせる人を評価していくことの方が、店舗オペレーション上有効であると考え、現状の「マネジメント等級」、「技術等級」の2本立てで評価する制度から、マネジメント、技術、接客等の要素を総合的に盛り込んだ部門別のOJT基準書に基づいた達成度によって評価、処遇する方針に2014年半ばより転換することとなった。

(3)取組の内容

部門別OJT基準書の導入

人事部と商品部、店舗が共働して、OJT基準書を作成した。部門別に、覚えるべき業務の一覧、作業手順書(野菜のカットの仕方、魚のさばき方などを写真付で記載)のほか、売り場づくり、接客、マネジメント等の多様な業務を項目出しした業務チェックリスト(業務ごとに、適切な行動を取っているかをチェック)を作成し、チーフが新規採用者やメンバーのOJTの際に使うツールとして、各店舗に配布している。今後は、ファイルの他にeラーニングを活用し、作業手順書の各手順を一工程ずつ画面で見られるようにするなど、よりわかりやすいツールにしていく予定である。

この基準書に沿って教育や指導を行うことで、全店での作業の標準化、効率化を図ると同時に、パートナーのスキルアップを目指していく。

これまで、パートナーの教育では半日程度の集合研修を外部の研修施設を使って実施した後は、店舗それぞれのやり方に応じたOJTに任せている側面もあったが、今後は集合研修ではなく、基準書を用いたOJTに絞って現場で教育していく予定である。

青果部門作業手順書(例)

OJT基準書に基づいた評価と処遇の実施

OJT基準書に基づく評価の実施を前に、2013年5~7月に先行して、OJT基準書の手順書どおりに作業ができているか、売場づくりや接客、勤務態度等がOJT基準書の求めるレベルでできているかを各店舗でチーフが作業・項目ごとに審査を行い、「合格」か「要練習」かを判定した。

2014年の本格稼働後は、審査結果を記載した作業手順書と業務チェックリストをパートナー本人に渡し、判定結果の理由について、口頭で説明することを予定している。審査は年1回行い、1枚のシートに4回分の判定が記載できるため、パートナーの能力を経年で管理することができるようになる。また、所属部門のパートナー全員の結果が一目で分かる一覧表もあり、所属部門のレベルや強み、弱みを把握するためのツールとしても活用できる。

新制度導入後は、「合格」となった作業の合計数によって等級を決定し、等級に基づいた賃金制度に変更していく予定である。現場での教育と評価、処遇が一体となった仕組みであり、誰にでも分かりやすく、パートナーのモチベーションアップにも繋がる。

正社員転換の制度化

正社員登用試験が年1回行われ、契約社員を経ずにパートナーから直接社員に転換することができる。登用試験に応募したパートナーの中から将来のチーフ候補となる人材を店長が推薦し、その後筆記試験、人事部面接が行われる。毎年10~15名が受験し、2013年は5名が合格した。

正社員登用を始めて5年が経過し、正社員転換者は31名となっている。

店舗業績を反映した賞与の支給

週30時間以上勤務のパートナー3には、賞与が支給されている。基本支給月数をベースに、店長による個人評価、所属店舗の実績に応じて加算が行われる。店舗の実績を加味することで、チームワークの向上や店舗全体の目標達成に向けた意欲の醸成を目指している。

年間支給月数 所属店舗実績 個人評価
夏0.2か月
冬0.2か月
年0.4か月
半期売上100%以上     +0.1か月
半期粗利100%以上     +0.1か月
半期1人当り売上100%以上 +0.1か月
A 115%
B 100%
C 70%

表彰制度の導入

今後、売場でのパートナーの創意工夫を評価する仕組みとして、好事例を発表する場を設けて表彰を行う表彰制度を導入する予定である。好事例の共有化と併せ、パートナーのモチベーションアップに繋げていきたい。

(4)成果と課題

過去5年間でパートナーから31名が正社員に転換、チーフにはパートナーから20名が登用されているなど、パートナーの戦力化とともに、スキルや貢献に応じた処遇を推進してきた。 新しい評価・処遇制度の導入に向けて、OJT基準書については、2012年12月から店舗に配布しているが、実際に基準書を活用したOJTが行われている事例はまだ少ない。店長、副店長、チーフの指導力を高め、OJTを円滑に運用してもらうためにも、今後は基準書の活用法などを含めた研修等を実施していく予定である。

現状の課題として、パートナーの役職への登用の少なさがあげられる。今後、より効率的に店舗を運営していくためには、社員の仕事をパートナーにシフトしていく必要がある。OJT基準書による評価の実施によって、各パートナーのスキルレベルが明確になると、スキルの高いパートナーには役職を担ってもらい、社員の仕事を任せることができるようになる。パートナーのスキルアップと同時に、社員の仕事のレベルアップも図っていきたいと考えている。

OJT基準書に基づいた評価と処遇については、2014年から実施予定である。学び、育てる風土の醸成と公正な評価、処遇の実現により、パートナーのモチベーションを高め、組織の活性化に繋げていきたい。

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