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E社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(製造業)より

人事考課制度の導入によりパートタイマーのモチベーションを高め、キャリアアップを支援する

1.労働条件の明示、説明
2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 兵庫県 業種 プラスチック製品製造業
従業員数 101名 パート労働者数 35名
ポイント
  • パートタイマー人事考課の結果を昇給額・賞与額に反映。
  • パートタイマー全員に年2回の賞与を支給。
  • 正社員に準じた福利厚生を適用。
  • 職場環境の改善に向けた工夫を実施。

(1)企業概要・人員構造

同社は大正7年に我が国のボタン製造の草分け的な工場として創業した。その後、プラスチック成型事業で成長しつつ、現在ではゴムとプラスチックの複合材の開発にも成功し、バッグやオフィス家具、時計バンドなど様々な工業製品に用途を広げている。

現在、本社を兵庫県に置き、東京都に東京営業所を設けるとともに、タイに海外現地法人を設立して、海外生産体制も確立している。

パートタイマーは主に生産検査ラインに配置され、製造ライン作業、検査作業等の工場内作業を担当している。生産検査ラインには正社員も配置されているが、正社員は定型業務だけでなく管理業務にも従事している。

製造ラインは4グループの交替勤務(深夜勤務を含む。)であり、始業・終業時刻等には5つのパターンがある。ひとつのラインは、正社員(主任)1名、パートリーダー(正社員からの指示を確認の上、他のパートタイマーへ展開する役割や、進捗状況の確認等を担う。)1名と、パートタイマーと外国人技能実習生数名で構成されている。

労働時間は、正社員は8時間、パートタイマーは一律7時間としている。一律である理由として、以前、パートタイマーの労働時間を個別設定していたときに、職場のコミュニケーションの悪化や業務効率の低下が生じたことが挙げられる。

なお、入社後1か月は試用期間とし、その後1か月毎の更新を経て、半年経過後には3か月契約となる。さらに3年経過後は半年契約となる。給与は時給制であり、昇給・賞与はあるが、退職金はない。

(2)取組の背景

プラスチック製品の開発及び製造事業において競争力を発揮し続けるには、顧客のニーズに迅速に対応し、他社を圧倒する品質で安定した供給を実現することが不可欠である。そのためには、生産ラインにおいて、確実な作業だけでなく厳しい要求に対しても柔軟に対応できる能力が求められる。これを支えているのがパートタイマーを中心とした生産ラインに配置された従業員である。

このため、同社では経営層が「パートタイマーは大切な戦力」という考え方を持つことで、正社員と職務内容は異なるものの、パートタイマーという立場で軽視されることなく、正社員と協力しあって業務を遂行できる風土を形成するための各種取組を実施している。

(3)取組の内容

 
  

入社時教育

 

入社時教育

入社時には、就業規則や各種規程について説明するとともに、後述の人事考課制度についてもその趣旨と目的から説明し、理解を促すことで制度の実効性を高めている。

また、2週間程度かけてOJTを行うことで業務への理解度を高め、職場への定着を図っている。OJTはパートリーダーが作業マニュアルに基づき、直接実践指導をしている。

人事考課制度による考課結果の処遇への反映

パートタイマーに対しても、人事考課制度を適用している。

具体的には、上期・下期1回ずつ、主任・所属長・役員が評価者となり、人事考課表に基づいた考課を行う(図表参照)。考課項目は、態度考課30%、能力考課30%、成果考課40%の配分となる。また、自己申告書に基づき、所属長と本人の面談の機会も設けており、この際に考課結果はフィードバックされる。

考課結果は昇給及び賞与に反映するとともに、パートリーダーへの昇格や正社員への登用に当たっての判断基準としても用いている。

具体的には、評価点が80点以上の場合に時給額が20円アップとなる。80点未満は現状維持であり、降給はない。賞与は、毎年の経営状況に応じて役員会で決定したベースに基づいて支給された正社員の賞与を基準に、上記考課結果に基づいて、年2回支給(1回7万円から8万円)している。

パートタイマーの人事考課

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パートリーダー及び正社員へのステップアップの仕組み

上記考課結果を参考に、仕事の実績を考慮した上で、所属長の推薦に基づくパートリーダーへの昇格及び正社員への登用も行っている。パートリーダーには、10年程度の経験者で、リーダーシップを発揮している者が選ばれる傾向がある。パートリーダーに対しては、年2回の考課結果に基づき月額3千円、6千円、1万円の手当を支給している。

最近5年間のパートリーダー昇格者は5名、正社員登用者は1名である。ここには、パートタイマーが育児休業取得後に復帰してパートリーダーとなった実績や、パートタイマーからパート リーダーを経て正社員へ転換した実績も含まれる。

正社員に準じた福利厚生、利益配分、作業環境整備

パートタイマーとして5年勤務した場合には、「互助会システム」に加入することができる。この制度を利用すると、例えば休職した場合、傷病手当金6割に対して残りの4割の賃金補償を受けることができる。

また、直接的なインセンティブとして、3年前に通常の賞与とは別に会社の業績に応じて利益を還元する制度(利益配分制度)を導入し、パートタイマーに対しても適用している。

さらに、作業環境の改善として、製造・検査ラインにおける単調な作業に伴う精神的なストレスを和らげるとともに作業意欲を高めるため、就業時間中に軽快なリズムの音楽を流すなどの工夫も行っている。

その他、パートタイマーが1年間の育児休業を取得した実績もあり、仕事と家庭の両立もしやすい職場環境の整備に取り組んでいる。

(4)成果と課題

パートタイマーに対する各種取組の結果として、パートタイマーのモチベーションの向上、コミュニケーションの活性化がもたらされ、社内の雰囲気が明るくなった。これが定着率を高めるとともに、生産性の向上にもつながっている。実際、パートタイマーの平均勤続年数は約6年、最長は16年に及んでいる。

また、年次有給休暇取得率も上昇し、平均60%~70%となっている。中には取得率がほぼ100%の者もいる。時間外労働も月平均5時間程度に収まっている。

今後は、担当作業に求められる知識やスキルを具体的に設定し、それを習得するための研修制度を確立するとともに、人事考課における評価基準とすることで、評価に対する納得性を高め、パートタイマーのキャリアアップをさらに効果的に進めていくことを予定している。

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