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B法人

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(訪問介護業)より

採用時の丁寧な説明、教育訓練、自己申告書の作成、福利厚生の充実等により定着率の向上を図る

1.労働条件の明示、説明
2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
所在地 徳島県 業種 訪問介護
従業員数 55名 パート労働者数 28名
ポイント
  • 採用時に注意事項の詳細を書面で交付、作業のフォロー。
  • 施設全体で実施している月1回の勉強会(有給)に参加させることにより、教育面で支援。
  • 自己申告書により目標設定、半期毎の面接による上司評価、自己評価を一時金に反映、内在している向上心の把握支援。
  • 正職員転換への積極的声掛け。
  • 正職員と同等の慶弔見舞金制度、親睦会への参加。
  • 正職員と同等の健康診断の実施、腰痛対策の実施。

(1)企業概要・人員構造

同法人は1993年に設立され、入所施設4か所、通所施設2か所、ヘルパーステーション1か所において介護サービス事業を展開している。

ヘルパーステーションにおいては、正規職員のホームヘルパー(以下、「正規ヘルパー」という。)3名(うちサービス提供責任者1名)とパートタイム労働者のホームヘルパー(以下、「パートヘルパー」という。)4名の体制で運営している。利用者は約50名で一人暮らしの方が多く、要支援者が多く、要介護者は少ない。

正規ヘルパーは無期契約で、8時30分から17時30分の勤務で、土・日は交替勤務で対応している。パートヘルパーは有期契約で、1年毎の契約更新、時間登録型でサービスの時間帯に出勤する。パートヘルパーは雇用保険の適用要件を満たす稼働時間数(月約80時間から110時間程度)の者が3名、雇用保険の適用要件を満たさない稼働時間数(月約30時間程度)の者が1名である。

パートヘルパーは、自分のライフスタイルに合わせて働くことを希望し、施設としても個々の希望を優先した形で雇用契約を結んでいる。結果として、施設が望む時間帯の人材確保が難しく、パートヘルパーが希望しない時間帯、土曜日、日曜日、祝日は正規ヘルパーで業務を行っている。また、特に対応の難しい利用者は正規ヘルパーが担当するなど、責任の重さが違う。

(2)取組の背景

同法人のある地域は、三世帯同居が多く、女性は家庭の家事、育児、介護等を担うことが多いため、時間拘束が長い正規ヘルパーとして働くことを望まず、仕事と家庭を両立しやすいパートヘルパーを選択する職員が多い。

しかし、近年は、同地域においても、一人暮らし高齢者が増加し、訪問介護のニーズが増大していることから、同法人においても、パートヘルパーの人材確保、定着率向上のため、パートタイム労働者の雇用管理の改善に取り組んでいる。

(3)取組の内容

採用時の丁寧な説明

採用されたパートヘルパーに対しては、「雇用契約書」を交付し、労働条件等の詳細を説明する。更に、採用時の細かな注意事項を書面にして配布し、併せて口頭で入社する際の細かな注意事項を丁寧に説明している。また、採用時は1か月間正規ヘルパーが同行訪問をし、訪問介護の際の手順、心得、当施設のルール等を指導している。

パートヘルパーの処遇

パートヘルパー4名の資格取得状況は、介護福祉士3名、ヘルパー2級1名である。

雇用保険の適用要件を満たす者(3名)の勤務状況は、訪問件数は1日2件~3件、勤務日数は月17~22日、勤務時間は80時間から110時間である。雇用保険の適用要件を満たさない者(1名)の勤務状況は、訪問件数は1日1件、勤務日数は月11~15日、勤務時間は25時間~30時間である。勤務時間、勤務日は本人の希望を尊重し、シフトは2週間単位で組んでいる。

賃金は、訪問介護の初任時給930円で、以後毎年30円アップする。事務時給は750円である。早出、休日等の勤務の場合、180円が時給に加算される。自宅から事業所まではマイカー通勤で、交通費は通勤距離に応じて支給される。事業所から利用者宅へは公用車で訪問し、直行直帰はない。キャンセル対応は、当日キャンセルは通常の給与支給で、前日までのキャンセルは給与支払いはない。賞与(一時金)があり、勤続3年以上で年2回(夏期・冬期)、それぞれ2万円から5万円程度支給している。

教育訓練の充実

月1回定期的に同法人の全介護職員を対象とした勉強会を実施しており、パートヘルパーも参加している。時間帯は夕方から夜にかけて1時間から4時間程度で、介護に関する専門的な知識及び技術を講義又は実習形式で行っている。研修については事務時給として賃金を支払っている。

自己申告書の作成

全職員は自己申告書を半期ごとに作成する。記載内容は、家族状況、健康状況、仕事についての自己の目標(短期及び長期的な目標、また目標を達成するための具体策、前回の目標の達成度)、仕事の量・質、仕事への興味、他の部署への異動希望(その理由)、施設に対しての建設的な提案・改善策等を記載するようになっている。自己申告書を基に、半期ごとに上司と面接を行い、自己評価・上司評価を行い、年2回の一時金に反映している。

この自己申告書により、施設に対しての要望、不満等を把握することができ、結果として早期に問題解決を図ることができている。また、介護関係の各種資格取得の希望、正規ヘルパーへの転換希望等、内在している向上心を把握し、法人として支援につなげている。

正規職員への転換措置

新たにパートヘルパーを採用するときは、家庭環境、子育てが落ち着いた段階で正規ヘルパーへの転換が可能であることの説明を行っている。また、半年ごとの面接の際、正規ヘルパーへの転換希望の有無等を確認する。

家族状況をみて、正規職員として勤務できる環境が整っていると思われる場合は、積極的に随時、本人に声掛けを行っている。結果として、平成24年に1名がパートヘルパーから正規ヘルパーに転換した。

福利厚生の充実

職員の慶弔時の対応として、慶弔見舞金制度を設けており、この制度はパートヘルパーにも適用している。また、親睦会にも加入することとし、親睦会において、法人とは別に職員間の慶弔関係、レクリェーション、日帰り旅行等を行っている。

なお、正規職員を対象として永年勤続表彰制度を設けているが、パートヘルパーが正規ヘルパーに転換した場合は、パートヘルパー期間を通算することとしており、永年勤続表彰規定にも明記している。入社の際に口頭で説明している。

健康診断の充実、腰痛対策の実施

採用が決定後、入社の説明会時に、雇い入れ時の健康診断を実施し、また、年1回の定期健康診断、インフルエンザの予防注射も施設負担で行っている。

その他、腰痛対策として、介護の基本に立ち戻り「持ち上げない介護(ノーリフト)」に取り組んでいる。介護業務に携わる職員は年1回の定期健康診断時に腰椎のレントゲン撮影を行っている。腰椎のレントゲン撮影は受診を義務づけるものではないが、全員が利用している。

(4)成果と課題

同法人は、利用者に質の良いサービスを提供することを最重要課題と考え、パートヘルパーに、正規ヘルパーを目指してほしいという基本方針の下、入社時の説明、教育訓練、自己申告書の作成、福利厚生、安全衛生等の施策の充実を図っている。

しかし、フルタイムの勤務を望まないライフスタイルのパートヘルパーもいることから、個々の働く環境や希望を尊重しながら、介護技術のレベルアップを図りつつ、条件の整ったパートヘルパーには正規ヘルパーへの転換を働きかけている。

当地域でのヘルパーの採用、定着は厳しく、以前は法人全体で最高12名在職していたが、現在は7名にまで減少している。ヘルパーの高齢化による自然減と、若年者がヘルパーを希望しないことが原因であると思われる。訪問介護は、ヘルパーの員数でサービスを提供できる利用者の人数が決まることから、経営的視点からも今後、若年のヘルパーの確保が課題となっている。

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