ここから本文です

D社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(製造業)より

正社員転換制度と時給に直結する評価制度により定着を図る

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 食料品製造業
従業員数 約3,000名 パート労働者数 約300名
(フルタイムは除く。)
ポイント
  • 一定の条件を満たすパートタイマーは、正社員(専任職)への転換制度を利用可能。
  • 人事評価制度が運用されており、当該評価に基づき次期の時給が決定。
  • 福利厚生制度についても正社員と同様に利用可能。

(1)企業概要・人員構造

同社は冷凍食品やレトルト食品、缶詰、包装氷等の製造・加工並びに販売を行っている設立約10年の企業である。全国6か所に工場を擁している。以下は、関東地方にあるC工場に関する情報である。

同社の正社員には総合職と専任職という2つの雇用区分がある。大きな違いは海外を含む転勤の有無と、福利厚生制度の適用範囲である。

C工場の全従業員数は約450名であり、雇用形態別の内訳は、正社員(嘱託社員を含む。)約160名、パートタイマー約290名である。パートタイマーの平均年齢は約45歳、男女比は1:1、女性はほぼ主婦である。

パートタイマーの8割がフルタイム勤務者、2割は短時間勤務者であり、短時間勤務者はフルタイム勤務者の昼食時間を中心とした時間帯(11:00~16:00)、又は夕方17時以降に1日当たり4.5~5.5時間就労している。なお、所定労働日数は基本的に週5日である。フルタイム勤務者も、短時間勤務者も職務内容、労働条件に違いはない。

正社員はラインの管理監督、組み立て、トラブル処理等を主に担当している。一方、パートタイマーは9割以上がラインの業務に、その他は検査部門等の業務に就いている。パートタイマーの職務内容には、判断業務及び管理業務は含まれず、正社員とパートタイマーが同様の職務を行うことは基本的にはない。

異動について、パートタイマーはライン間、もしくは他の部門への横の異動はあるが、縦の異動である昇格はなく役職に就くことはない。

賃金について、従事する内容により重さや寒さが負荷になる業務があり、それらの業務に就くパートタイマーには手当を1時間当たり100円~200円加算している。その他、早番や遅番を担当した場合も手当が支給される。

従業員数と雇用区分(人数はC工場のもの)

雇用区分 人数 特徴
正社員 160名
男 約120名
女 約40名
総合職…職務限定なし。全国・海外転勤あり。社宅制度が適用される等、福利厚生面で専任職より優遇されている。
専任職…職務は工場内の業務のみに限定(製造、購買、開発、総務等)される。
パートタイマー
〈フルタイム〉
約260名
男 約120名
女 約140名
初回の契約期間は入社日に関わらず翌月末日までとしている。更新する場合は契約期間満了日を一律3月末日までとし、以降一律1年契約とする。
定年65歳。
残業あり、昇給あり、賞与・退職金なし。
パートタイマー
〈短時間〉
約30名
男 0名
女 約30名
同上

(2)取組の背景

食品の製造・販売という事業において、製品の品質を維持・向上することが不可欠であり、それを実現するためには従業員のモチベーションの維持・向上を図る必要があった。

また、工場内での作業に寒さ(-10℃)や魚や玉ねぎ等の臭気が伴うこと、近隣に商業施設が新たに建設されパートタイマーの流出が懸念されることなどの事情があり、パートタイマーの定着率を向上させたいという意図もあった。その他、パートタイマーから正社員への転換制度は定年退職による欠員の補充も兼ねている。

同社ではパートタイマーのみを対象とした意識調査を行い、問題点の明確化や、取組事項の洗い出しを行うなど、重要な戦力であるパートタイマーの雇用管理に工夫を凝らしている。

(3)取組の内容

正社員(専任職)への転換制度

同社では、パートタイマーから正社員(専任職)への転換制度を設けている。毎年9月に1年以上の勤続がある者のうち、転換を希望する者が申請を行い、筆記試験(SPI試験に類似するもの)を受験し、今後の抱負や改善事項に関する作文及びプレゼンテーションの実施、及び工場長の面接による選考を経て正社員に転換することができる。正社員への転換時期は毎年4月である。

時給に直結する評価制度

毎年度末に、ライン長の意見を反映させて勤続15年以上、かつ役職者であるマネージャー及びグループリーダーが評価を行う。当該結果は部署による差を調整した上で、契約更新時の面談の際にフィードバックを行い、結果を時給に反映させている。昇給額は5円~20円程度である。

評価項目は熟練度、当日欠勤の少なさ、トレーナーとしての職務遂行力への期待度、マルチタスク能力等によって構成される。通常業務以外にも、5S活動や安全衛生プロジェクト等の委員になり貢献が認められる場合は、評価の対象としている。

教育訓練制度

まず入社時教育訓練として、経験を積んだパートタイマー1名が新入社員1名の教育担当になり、会社のルールや工場内での勤務ルール、安全衛生等について教育を行う。入社1か月後、内容の理解度を確認するためのテストを実施し、当該結果を踏まえ契約更新を決定している。また、工場で制服及びマスク着用した就労者が多い中、周囲が新入社員をフォローしやすい仕組みづくりとして、入社後1か月間は既存メンバーと異なる緑色の帽子を着用している。期間を終えると既存メンバーと同様に黄色の帽子を着用する。

次にライン研修として、正社員であるライン長が半年ごとにテーマを決定し、研修メニューを考案している。研修内容は、例えば金属検出器の特徴、取扱いや生産ライン停止となり得る機械のトラブル症状とその予兆発見方法などの業務の遂行に直結するものとなっている。

また、安全衛生教育として、毎朝の朝礼においてKY(危険予知)トレーニングやヒヤリハット運動を行い、怪我の未然防止に努めている。

パートタイマーの意見を活かした企業経営

「いいこと提案活動」という名称でカイゼン活動を実施している。業務プロセスなどに関して改善できる事項を投書することにより、採否に関わらず、投書1件につき100円が支給される。

正社員とパートタイマーのいずれもが対象となっており、提案に積極的に取り組む姿勢が見られる。提案の多いラインに対して、ライン単位で表彰することもある。

その他、外部機関を利用してパートタイマーのモチベーション調査を実施したり、目安箱を設置し正社員同様に、パートタイマーの意見も受け付け適宜問題を解決している。

正社員と同様に待遇される福利厚生制度

パートタイマーのモチベーションの維持向上の観点から3点の取組を行っている。

第1に、食堂の利用について、パートタイマーも正社員と同様に1食250円で利用することができる。

第2に、希望者については、年1回、日帰りもしくは1泊で実施する社員旅行に参加することができる。その他に、正社員、パートタイマーの区別なく納涼祭や忘年会に参加することができる。

第3に、産業医面談について、これまで法定要件に該当するパートタイマーがおらず行っていないが、希望があった場合は実施する準備を整えている。

(4)成果と課題

評価制度や福利厚生が充実しているため、パートタイム労働者のモチベーションが向上し、以前より活き活きと働く姿がうかがえる。また、目安箱はパートタイマーが抱える日々の疑問や不満を解消することに役立っている。

定着率の観点では、入社2か月を超えたパートタイマーの大半が継続更新を希望し、その後長期就業している。

カイゼン活動については、自ら業務に対する改善提案を行うことにより、組織に貢献している実感や従業員同士の一体感を得ることができ、生産性およびロイヤリティの向上に寄与している。

一覧へ戻る