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C社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(小売業)より

等級・号俸制の整備による労働条件決定の合理化

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
6.福利厚生・安全衛生
所在地 北海道 業種 飲食料品小売業
従業員数 約3,000名 パート労働者数 約2,500名
ポイント
  • 職務と習熟度に基づく等級制度と、等級別号俸をベースとした時給設定。
  • 通信教育受講料の100%負担や慶弔見舞金制度の整備。

(1)企業概要・人員構造

同社は、道内数十店舗を運営するスーパーマーケットである。

正社員は本社採用で、将来の店長・バイヤー候補者として、入社後1年間に管理的業務(帳票、データを把握する数値的管理等)まで習得させる。これに対し、パートナー社員(パートタイム労働者)は店長裁量による店舗採用で、もっぱら店舗における販売、加工等の業務に従事している。パートナー社員には、扶養の範囲内で就労する主婦層と学生が多い。

店舗は大型店と小型店に二分され、次のような人員配置となっている。

店舗区分別人員配置表

総社員数 正社員数 正社員数
大型店舗 130名前後 20名〜25名 110名〜115名
小型店舗 60名前後 3名 57名前後

パートナー社員は、後述のとおりP1等級からP4等級までに区分され、さらに所定労働時間によって呼称が区別されている。

パートナー社員の雇用区分

等級 P1等級 P2等級 P3等級 P4等級
職務基準 単純定型作業、入社1〜2年目
レベル
複雑定型作業、単純判断業務 単純判断作業、複雑定型作業 複雑判断作業(チーフ代行作業)、管理業務
基本給 時給
時間帯加算
時給
時間帯加算
時給
時間帯加算
時給
時間帯加算
手当 通勤手当 通勤手当 通勤手当 通勤手当、
リーダー手当(月5,000円)
賞与
呼称 M:ミドル
S:ショート
M:ミドル L:ロング
M:ミドル
リーダー
週所定労働時間 M:20〜28時間
S:20時間未満
M:20〜28時間 L:30〜36時間
M:20〜28時間
L:30〜36時間
契約期間 6か月 6か月 6か月 1年
教育 初級研修への選抜、導入研修・基礎研修 中級研修への
選抜
上級研修への
選抜
チーフ級
研修への選抜

(2)取組の背景

現場第一線の重要な戦力として、パートナー社員の教育訓練には以前から力を入れてきた。しかし、その雇用管理については、明確な基準がないまま「自然発生的」な制度で対応していた。

パートタイム労働法が改正されたことに伴い、特に第13条(待遇決定に当たって考慮した事項の説明義務)に対応して、より合理的な人事・賃金管理を行う必要性が強く意識されるようになった。

(3)取組の内容

職務と習熟度に基づく等級制度

パートナー社員は次のような項目で評価され、職務と習熟度に応じP1からP4まで4段階の等級に格付けされる。評価内容は、部門別に異なる。

パートナー社員職務基準表(青果部門の例)

区分 職務内容
基本項目
身だしなみ 常に基準に合った身だしなみ
クリンリネス 担当部署の整理・整頓・清掃
規則・ルールの遵守 会社・店舗・部門の決め事の遵守
協調性(チームワーク) 店・部門内での協力
契約の遵守 欠席・遅刻・早退
お客様への対応 売場案内・問い合わせに対する応対
基本的接客 笑顔、明るさ、さわやかな挨拶
(従業員同士を含む)
定物定位置 商品・備品の定位置管理
安全・衛生 安全・衛生を意識した行動
職務・習熟度
評価
P1等級
(単純定型作業、入社1〜2年目レベル)
詰込み・パック 包丁を使用しない商品化作業
品出し 朝の品出し、中間補充
葉物・その他
商品化
軟弱野菜の蘇生・結束、その他商品化作業
カットフルーツ カットフルーツ全般の商品化
値付 指定されている場所への正しい値付
鮮度維持 目利きによる商品の鮮度チェック
P2等級
(複雑定型作業、単純判断業務)
籠盛り 見栄えと設定価格のバランスが取れた商品化
包材発注 包材発注
定番発注 定番発注
検品・伝票管理 入荷商品と伝票チェック、内部伝票の起票
登録・売価変更 ストコン(マスターレジ)での登録と売価変更操作
値引き 値引き作業とロス金額の起票
販促関係 pop作成と正しい取り付け
P3等級
(単純判断作業、複雑定型作業)
棚卸・在庫管理 棚卸の実施、在庫の管理
予約発注 計画に基づく発注
特売・中目発注 計画に基づく発注
P4等級
(複雑判断作業(チーフ代行作業)、管理業務)
リーダーP3等級までの評価B以上、本人の立候補かつ所属長推薦 チーフ1名体制の店舗におけるチーフ不在時の代行作業(販売、指導、作業、報告、提案、管理)。ただし、責任はチーフが負う。

等級基準に基づく評価制度

この等級基準に基づき、パートナー社員ごとに「個人評価シート」を作成し、人事評価を行っている。評価内容は全パートナーに対して公開されている。このうち、「基本項目」の評価は、各項目について次のとおり○×で行う。全て○の場合は100%であるが、1項目が×になると-2%とカウントされる減点方式である。

「基本項目」の評価方法

たまに注意されるが、ほとんどできている。
× よく注意されている。改善がない。

もう一方の「職務・習熟度評価」は、現状携わっている職務の項目ごとに習熟度を評価する。その評価方法は、次の5段階による。

「職務・習熟度評価」の評価方法

S 全てにおいて全社に誇れるレベル。
A 自らの職務を他者に教えられる。スピードは平均よりもかなり速い。職務の出来栄えは大変良い。
B ほとんどの職務を手際よく一人でできる。スピード・出来栄えは平均的かそれ以上。ミスは無い。
C 部分的にフォローが必要。スピードは平均以下。職務の出来栄えはあまりよくない。ミスはよくある。
D 全ての職務において指導をうける。スピードは遅い。一人ではほとんどできない。

等級別号俸をベースとした時給設定

P1〜P4の等級別に賃金表があり、これに基づき時給を管理している。例えば青果部門についてみると、P1等級は35号俸まで、P2等級は70号俸まで、P3・P4等級は100号俸までと、号俸は細かく分割されている。下位等級の高い号俸(時給)と上位等級の低い号俸(時給)は重なりをもたせた設計である。

賃金表は5円単位であるが、複数の号俸で時給が同一になっているところがある。このため、小さな号数アップでは昇給しないケースもあるが、各人の等級内での位置づけは明確になっている。

各人の具体的な時給は、勤務部門、等級、号俸による時給をベースに、基本項目評価結果(基本項目率)を乗じ、さらに店長裁量により貢献度加算、地域労働市場の状況等を加味した調整を行った上で決定する。したがって、賃金表は5円単位であっても、各人の時給は1円単位となっている。

時給の決定方法

時給=賃金表による時給×基本項目率+貢献度加算±調整金額

なお、これ以外の賃金として、17時以降勤務の場合は、時給金額に10円を加算している。また、P4等級該当者に対しては「リーダー手当」として、月額5,000円を支給している。

その他

パートナー社員が会社の推奨する通信教育を受講・修了した場合には、会社が受講料を100%負担する制度がある。推奨講座としては、「販売士」、「カラーコーディネーター」及び「陳列技術、食品栄養内容、表示関係等スーパーマーケット業界に特化したスキルアップ講座」等がある。正社員との職務内容の違いから推奨講座は限定的ではあるが、会社負担内容は同じである。毎年14名〜15名程度が、この制度を利用している。また、パートナー社員に対しても、正社員に準じた慶弔見舞金制度を適用する、年2回の契約更新時に個人面談を行う等、モチベーションアップ・定着率向上に配慮している。

(4)成果と課題

上記のような賃金決定方式を導入した結果、パートナー社員の賃金決定を、職務、習熟度、勤務態度、貢献度等に応じて合理的に実施できるようになった。また、キャリアアップの道筋が明確になり、更新時の年2回の面談の場での指導助言のツールにもなっている。しかしながら、最低賃金の上昇により賃金予算原資が逼迫しており、「調整金額」でプラス調整ができなくなってきていることへの対応に悩んでいる。また、人材確保が困難な時間帯等に応じたきめ細かい賃金体系の整備、非金銭的報酬も含めたモチベーション・定着率向上を図ることも課題である。

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