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C社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(製造業)より

期間の定めのない雇用契約の締結と教育訓練の機会均等により、企業発展と社員の幸せを目指す

3.教育訓練等の能力開発
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 福島県 業種 印刷・同関連業
従業員数 38名 パート労働者数 18名
ポイント
  • 仕事と生活との調和推進を重視し、年次有給休暇取得率ほぼ100%を達成。
  • 人事評価の実施と処遇への反映。
  • 正社員転換制度により活躍の場が広がった社員は基幹的人材に成長。
  • 経験豊富な社員の雇用確保と働きがいのある組織風土の醸成。

(1)企業概要・人員構造

一般商業印刷を中核とし、「企業発展と社員の幸せを目指す」を企業理念に掲げ、活字からデジタル化への印刷業界の変化の中で、創業から60年を迎える。ISO90013に基づく徹底した品質管理、医療品専用のメディカルフローによる各工程の検査体制を確立し、医薬品・医療機器添付文書で実績を重ねている。

県内次世代育成支援認証企業、内閣府「女性のチャレンジ賞」特別部門賞受賞(女性活躍企業リーダー)企業でもある。

社内部門は、総務部、営業部、生産部の3部門があり、工場生産に関わる生産部は制作課と印刷製本課に分かれる。正社員は営業部やデザインなどを担当する制作課に多く、パート社員は防塵服を着用して作業に従事する印刷製本課の検査部門で力を発揮している。

検査部門は、品質管理が重視される医薬品・医療機器添付文書作成業務の重要な位置づけにあり、特殊な技術と品質管理が求められる。受注案件ごとに異なる作業が発生し、代替が難しく、1人前になるには約1年を要する。

雇用区分と人事制度概要

雇用区分 正社員 パート社員
雇用期間 期間の定めなし 期間の定めなし
勤務時間 8:30~17:30 9:00~16:00
勤務日 月曜日~金曜日
年間カレンダーにより月平均2回の
土曜日出勤あり
月曜日~金曜日
休憩時間 昼60分、午前・午後に
10分ずつの計80分
昼60分、午前・午後に
10分ずつの計80分(有給)
所定
労働時間
7時間40分 5時間40分
賃金体系 月給制 時給制
適用保険 健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険 労災保険、雇用保険
その他保険 労災上乗せ補償 労災上乗せ補償
交通費 上限15,000円 上限15,000円

雇用契約書への明示では「昇給なし」としており、定期昇給はない。パート社員の中には、まとめ役となる熟練したリーダーがおり、リーダーの役割は昇給により評価している。昇給の際は、経営会議(部課長会議)にて、直属の上司だけでなく、他部門の部課長を含めた多面的な意見を反映させて、昇給を決定している。評価は、ISO9001の規定に沿った力量表4を活用している。

(2)取組の背景

特殊な技術を習得したパートの定着率向上を図る

パート社員の採用・活用は30年以上前から実施している。印刷機から排紙された印刷物の丁合作業5がすべて手作業だった時代から、熟練のパート社員が活躍している。特に、パート社員は印刷製本課には重要な存在であった。和文タイプの時代は障害者の受け入れや、総務部(経理担当)では70歳を超えた人材の受け入れを行っていた時期もあり、年齢、性別に関係なく能力のある人材を活用する基礎を積み重ねてきた。

(3)取組の内容

長期雇用を前提とした期間の定めのない雇用契約の締結

すべてのパート社員の雇用契約は、期間の定めのない契約6である。雇用の継続性、安定性を確保することで、パート社員の士気と定着率を高めることにつながっている。期間の定めのない契約を締結していたことで、短時間正社員への雇用管理区分変更7を円滑に行うことができた。

雇用の継続を支援する柔軟な働き方の提供

会社の成長とともに、中核を担える人材の確保に取り組んできた。正社員転換制度の措置が義務化される以前から、個々の事案に対して柔軟に対応してきた。多様な働き方を支援し、様々な事情を抱えながらも意欲と能力のある社員の雇用継続を第一に考え、雇用管理区分の行き来も可能にしてきた。現在は、部門長の推薦があることを条件に、正社員転換への応募が可能となっている。

事例1 本人の意欲と能力を活かすための支援
営業部のパート社員として入社。その後、デザイン等の制作に携わりたいという本人の希望により制作課に異動し、雇用形態を正社員に転換。
制作課の課長ポストの適任者を探していたところ、本人の意欲と能力が評価され、制作課課長へ就任。現在は、さらに能力を発揮し、生産部部長という責任ある立場で活躍している。

事例2 雇用継続を可能とする柔軟な支援
正社員として営業部に入社、前職のキャリアを生かし、主に広告企画を担当する営業職に従事。
出産を機に一度退職するが、パート社員として再入社。本人の意欲と能力を評価し、育児との両立を支援するために、正社員の雇用区分のまま就業時間を短縮した8短時間正社員としての勤務形態を可能とし、短時間正社員第1号となる。子どもの成長とともに、短時間勤務からフルタイムに完全復帰する。現在は、課長職として、営業部を率いている。

事例3 安定就業への支援
緊急雇用創出事業で雇用し、パート社員として業務に従事していた社員に対して、正社員としての雇用継続を支援。現在は、印刷製本課に配属され、正社員としての能力・知識を身に付けるための教育訓練とともに、専門的な技能の習得に取り組んでいる。

正社員に準じた教育訓練の実施

計画的に予算を確保し、展示会等の見学により最新の印刷関係の情報収集をパート社員も含め全社員に課している。成果物として、レポート(フォーマットあり)、写真、印刷物の収集物を提出する課題がある。常に新しい刺激を吸収、業務に活かすためである。また、IS090019に基づいた厳格な作業手順が確立されており、力量表による手順書やマニュアルは整備されているが、取扱品目が広範囲に及ぶため、受注時に仕事を覚えていくため毎日がOJTの連続である。

福利厚生・安全衛生について

休憩室はすべての社員が利用することができる。パート社員が活躍する印刷製本課の検査室等を含め、立ち仕事や目を酷使する作業も多い。昼休憩(60分)の他に午前、午後10分ずつの有給による休憩時間を設けている。防塵服を着用しての作業は身体に負担がかかることもあり、十分な休憩を取ることで、疲労やストレスの解消と労災事故の防止にもつながると認識している。

正社員、パート社員ともに同じ休憩室を利用するため、社内のコミュニケーションの活性化という副次効果にもつながっている。休憩時の快適性を高めるためにテレビや冷蔵庫などの設置も行っている。

また、正社員と同様に利用できる福利厚生制度には旅行補助と忌引き休暇がある。研修と親睦を深める目的で3年に1回行われる社員旅行のために、会社補助を実施している10。原則としてパート社員を含めた全社員を対象に実施される。行先も同行者も自由であり、家族で行く場合や正社員とパート社員のグループで旅行に行くこともある。忌引き休暇に関しては、特別休暇扱いで有給にしている。さらに、従来正社員のみに適用していた労災保険の上乗せ補償11は、パート社員含め全社員に適用している。

仕事と生活の両立を希望する社員ニーズに応えるための職場風土の醸成

育児・介護(看護)との両立を希望するパート社員が多く、小学校の授業参観等の行事にも積極的に参加できるように、年次有給休暇を取得しやすい風土の醸成に努めている。年次有給休暇は事前の届書提出により、業務全体のスケジュール調整の把握に活かしている。また、3世代同居が多いため、同居の両親の病院への付き添い等についても同様である。社員同士の互いの助け合い精神も根付いている。“子育てが一段落したので仕事をしたい”というパート社員のニーズを支援することにより、仕事と生活の実現が可能となり、パート社員の勤労意欲は総じて高い。

経営情報の還元、情報共有のための全体会議開催

パート社員は完全週休二日制だが、年2回全体会議を開催し、社長からの経営情報の還元、全社員での情報共有を行っている。新しい施策の導入などの周知もこの場を利用している。これにより業務改善、職場環境改善のための意思疎通を図っている。

(4)成果と課題

「企業発展と社員の幸せを目指す」を企業理念に掲げ、意欲と能力を活かした人材活用を進めた結果、パート社員の勤続年数は現在最長12年にまで伸びており、パート社員から正社員へ転換した人材も生まれている。しかし、扶養の範囲で働きたいという希望に対応するため、パート社員が就労調整を希望する現実もある。パート社員の持つ経験豊かなバックグラウンドをさらに活用するためにも、管理能力のあるパート社員の育成が必要であると認識している。仕事と生活の両立を望むパート社員の時間や年収等の制約をクリアできれば、今後基幹的な業務を担える「短時間正社員」が活躍できる職場環境づくりも検討していきたい12

パート社員の人事評価は、ISO9001の規定による力量表で行ってきたが、パート社員の入社時期が異なるため、評価時期が統一されていないことや、主観的な熟練度等の評価に委ねざるを得ないところがあった。今後は次年度からの実施を目標に「成長支援制度」を導入する予定である。正社員用の成長シート13をパート社員用に適するように整備し、客観的基準により、同時期に公正な評価ができる仕組みを検討している。透明性と納得感のある評価基準を整備することにより、パート社員自らが成長を実感でき、さらなる能力発揮につながることを期待している。今後も、働きがいのある職場づくりの実現と、長期雇用を前提としたパート社員の定着率向上及び能力開発に継続的に取り組むことが重要であると認識している。

  1. 平成25年9月1日現在。
  2. 配送業務担当の短時間労働者を含む。
  3. 顧客や社会などが求める品質を備えた製品やサービスを常に届けるための仕組みについて国際標準化機構(ISO)が定めた世界共通の規格のこと。
  4. ISO9001には、品質に関わる業務に携わる者に必要な能力(力量)を把握し、その現状を把握した上で、必要な教育を行うことが求められる。
  5. 印刷された折丁を一冊になるようにページ順に集める作業。手丁合と機械丁合がある。
  6. 労務管理の整備段階では、パート社員の契約期間について、有期雇用契約とすることも検討課題にあったが、有期雇用契約が反復更新されて期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合には、雇止めには解雇と同様に客観的な理由が必要とされ、そのような理由が認められなければ雇止めは違法となるとの専門家の助言もあったことから、期間の定めのない契約とした。
  7. 事例2 雇用継続を可能とする柔軟な支援」を参照のこと。
  8. 終業時間を17時とした短時間正社員。
  9. ISO認証後、更新審査を受け認証を継続していくためには計画的な教育訓練の実施が求められている。
  10. 直近の実績では一名につき4万円の補助を行っており、同時に本人積立も実施している。
  11. 民間保険を利用して上乗せ補償を実施している。
  12. 取組の内容事例2を参照のこと。
  13. 正社員用の評価シートのこと。タイトルは、「成長シート」という。社内での自らのキャリアが見える形で個人個人が成長するため、外部のロールモデルではなく、会社の中にいる優秀な人に近づくための成長項目が並ぶ。本人、上司の他、部門の部課長により1~5段階で人事評価(成長度合い)を行う。最高評価の5は、指導的能力が担保され、1人ひとりの力が会社の力になっていることが条件。成長の度合いを0評価はなくプラス評価で行う。人事評価の結果は賞与に反映する。

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