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A社
厳密な職務等級に基づく人事評価でパート社員のスキルに即した給与体系
所在地 | 神奈川県 | 業種 | 繊維工業 |
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従業員数 |
450名 (グループ全体約2,500名) |
パート労働者数 |
105名 (グループ全体約2,200名) |
ポイント |
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(1)企業概要・人員構造
同社はパンティストッキング、ソックス、インナーウェアを製造販売する会社で、レッグ事業、インナー事業、介護用品事業を展開している。
本社には正社員231名、パート社員が105名、再雇用者を除く契約社員が50名在籍している。グループ全体としては、正社員が約300名、パートタイム労働者が約2200名在籍している。パート社員には主婦が多く、主に工場に勤務している。
同社ではパート社員にも職務評価を実施しており、質量ともにその仕事に何が要求されるか、全従業員の役割を明確化している。
従業員数と雇用区分
雇用区分 | 人数(グループ全体の人数) | 特徴 |
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正社員 | 231名 (約300名) |
「職務等級(後述)」3等級以上の仕事を担当。勤務時間は一律7時間45分。 |
契約社員 | 50名 | 主にデザイナーなどの専門職に従事。 |
パート 社員 |
105名 (約2,200名) |
1年契約。勤続は長い人で20年以上。時給制、昇給・報奨金あり、退職金なし。 勤務時間は7時間45分、6時間30分、5時間30分から選択。勤務日数は部署による。主婦が多く、主に工場に勤務。 |
(2)取組の背景
平成14年ごろ、同社の製品の売り上げ動向が変化し、様々なデザイン・種類の商品が売れるようになった。そこで同社の工場では、少ない品種を大量に生産する体制から、多くの品種を少量生産する体制に転換する必要が生じた。工場の機械は、多品種少ロットに対応して1台ごとに異なる製品を製造するようになり、その結果として業務の難易度や方法が変化することとなった。
工場の主力であるパート社員については、それまで能率(単位時間当たりの生産量)のみで評価を行っていたが、この変化を通じ、能率のみでの評価は実態に合わなくなったため、新たな評価方法を導入することになった。
また、この新たな評価方法でも能率は重要な評価項目の一つであるが、すべてのパート社員が能率を追求していると、新しく入社したパート社員の指導を行う人がいなくなってしまうため、技術レベルが高いパート社員を「チーフ」に登用し、入社間もない者の指導に当たらせることにした。
(3)取組の内容
詳細な「職務分析システム」に基づく人事評価と給与体系
正社員・パート社員に関わらず、すべての職務について職務分析を行っており、業務難易度とそれに対応する職務等級を設けている。等級は全部で8段階あるが、パートは1~2等級の仕事を担い、正社員は3等級以上の仕事を担当するよう区分けしている。
パートの評価では、仕事内容が異なるため、評価項目は正社員とは全く異なるものを設定している。評価項目は、「1.能率(単位時間あたりの生産量)」、「2.対応力(アクシデントや納期遅れへの対応)」、「3.歩留まり(期待される生産量に対して実際に得られる良品比率)」、「4.出勤率」、「5.意欲・態度」、「6.積極性・協調性」、「7.規律性・責任性」の7項目。
評価は3か月に1度行われ、結果は給与票に明記される。評価後は管理者である正社員の主任等の面談があり、フィードバックを行っている。
評価に基づく報奨金制度
上記の評価に基づいて、年に2回報奨金が支払われる。また同社のパート社員に対する賃金は「基本給」+「能率給」(+「チーフ手当」)という構成であり、能率と「能率給」をリンクさせることによって、各パート社員がモチベーションを保ち、高い能率を維持している。
「チーフ」職の設定
パートの中に、「チーフ」職を設定している。「チーフ」には、新しく入社したパート社員の指導を行う「作業指導チーフ」や、ラインの指導・マネジメントを行う「ラインチーフ」がある。
チーフになることができるのは、1日6.5時間以上勤務しているパート社員の中で、技術レベルが高く、他者への指導能力や人格面も優れている者、他のパート社員の模範となる者である。
登用試験はないが、直属の上長が本社に申請し、申請が受理されると「チーフ」に登用される。「チーフ」になると、一時間当たり100円の手当がつく。
工場での教育訓練
工場では習熟度基準に基づいた計画的なOJTを入社から約4か月間行っている。
(4)成果と課題
評価制度を整備していることにより、パート社員同士で切磋琢磨し、生産性が上がっている。また納得性・透明性の高い評価制度であるため、個々人が自分の仕事と処遇に納得した上で、長く勤めている。
勤続年数が20年を超えるベテランのパート社員がいる一方で、求人を出すと、子育てが一段落した人からの応募も多くある。今後も技能・スキルを持った優秀な人材を活用していきたい。
また、優秀な人材を「チーフ」に登用することで、能率を追求しつつ入社間もないパート社員のフォローも充実させている。「チーフ」は他のパート社員の模範となっており、高い技術が受け継がれている。