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(株)和興商会

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(製造業)より

パート社員の受け入れ態勢を確立し、トラブル防止と安定雇用を目指す

1.労働条件の明示、説明
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
所在地 神奈川県 業種 食料品製造業
従業員数 約56名 パート労働者数 約43名
ポイント
  • 長期雇用を前提とした期間の定めのない雇用契約の締結。
  • 労働条件の明示、詳細な説明によりパート社員の納得性を高める。
  • 定期的なパート社員研修の実施。
  • 簡素な人事評価を導入、会社が期待する働き方を明確化。

(1)企業概要・人員構造

食品加工卸業(乾海苔)を営む同社は、昭和50年代の創業当時から地域に根差した企業として事業展開を図ってきた。

従業員56名のうち正社員13名、パート社員43名であり、パート社員が活躍している企業である。社内部門は製造部門と事務部門である。両部門とも正社員は主に管理的業務を担い、生産ラインの段取り、作業指示、パート社員の配置を行う。パート社員は製造部門において、海苔の味付け、乾燥、切、詰めといった生産ラインの業務を担っている。生産ラインでは、技術とスピードを要するものが多く、熟練したパート社員はこうした技術の指導にも当たっている。

パート社員は、扶養の範囲内で働く主婦層が主体である。1日の労働時間は7時間を基本とし、シフトにより日数で調整している。また、比較的会社の近くから通う者が多く、各人のライフスタイルに合わせて働くことが出来る環境である。中には例年子どもの夏休み等は全期間休みとしている者もいる。

雇用区分と人事制度概要

雇用区分 正社員 パート社員
雇用期間 期間の定めなし 期間の定めなし
勤務時間 9:00~18:00 9:00~17:00
(又は16:00)
勤務日 月曜日~金曜日
年間カレンダーにより
月2回の土曜出勤あり
月曜日~金曜日
シフトにより月15日以内
週単位でシフト表を作成
休憩時間 昼60分 昼60分
所定労働時間 8時間 7時間(又は6時間)
賃金体系 月給制 時給制
定年 なし なし

(2)取組の背景

パート社員の活用は長く実施しており、定着率も良く、20年以上勤務する熟練パートも数名活躍している。かねてからパート社員を貴重な戦力として経営しており、継続的な勤労意欲を確保する工夫も行われてきた。

しかし、ここ数年、入社前に思っていた仕事と違うという理由や、シフトを組む際の就労希望日数の不一致による苦情等、入社後のトラブルが見られるようになってきたこと、また新入パート社員の早期離職が発生していることを大きな問題と捉えている。

これまで以上に生活形態が多様で、労働価値観も異なるパート社員の受け入れ態勢を確立し、更なる安定雇用につなげていきたいと考えた。

(3)取組の内容

長期雇用を前提とした期間の定めのない雇用契約の締結 

すべてのパート社員の雇用契約は、期間の定めのない契約である。パート社員の多くは子育て期で、扶養の範囲内で働くことを希望する者が多いことから、自由度のある勤務形態を可能にし、更に契約期間を定めず雇用の継続性、安定性を確保することで定着率を高めている。

これには、長期雇用を前提とした採用を行い、技術の高いパート社員を育成することで、企業の生産性向上につなげるねらいがある。

[新たな取組]

労働条件明示、詳細な説明によりパート社員の納得性を高める

新たに明示項目を追加したパート社員専用の雇用契約書を作成し、記名・捺印により労使各1部ずつ保管することとした。追加した項目は、機密保持に関する事項や就労日の特記事項であり、希望する就労形態を記載して現場担当者に情報提供することにしている。また、雇用契約時の手順として、各項目、処遇についての十分な説明、パート社員の納得性を高めることの重要性を管理職の共通認識として徹底した。

定期的なパート社員向け研修会の実施

パート社員を対象とした研修会を定期的に実施することにした。研修内容は連絡掲示板へ掲示した上で、希望者には詳細資料の配布を行う。

内容は業務に直接関係することに限らず、パート社員への有用な情報提供を含め関心が高いものとし、参加率の高い内容と事前準備を心がけた。

具体的には、扶養の範囲内で働くパート社員の最大の問題である、配偶者控除の仕組み(103万、130万円の壁)について分かりやすい資料を作成し、税務、住民税、社会保険制度を理解する研修会を実施した。各人が正しい理解を得た結果、配偶者と話し合いをして扶養から外れることを希望する者もおり、現在手続きを準備しているほか、就業調整が必要ないと分かった者、自分の上限が明確になった者等、満足度も高く大きな成果が得られた。結果として、年末近くなると扶養の関係上就業調整に入るといったパート社員が減り、例年苦労してきた年末のシフトが組みやすくなった。

人事評価を導入、会社が期待する働き方を明確化

能力遂行のための基準(12項目)について、自己評価、工場長評価、社長評価を行うことにした。評価項目は、会社が期待する仕事の基準をパート社員が理解しやすい表現で具体的に定義した。

今回の人事評価導入の目的は、賃金評価ではなく、まずは継続的な育成に重点を置くものとした。能力遂行上未熟な点を三者で発見し、改善していくことで、パート社員を育成することを最大の目的とした。

(4)成果と課題

パート社員の雇用契約書の見直し及び契約手順の見直しが、パート社員の納得性を高め、トラブル防止へ役立つことが確認できた。具体的には、パート社員の面接時における契約内容の正しい説明と相互での確認、雇用契約締結時の各項目の十分な説明、といったプロセスが入社後のトラブル防止の大前提になるとの考えが正社員である管理職に浸透した。今後のパートタイマーのマネジメントに役立ち、パート社員の長期安定雇用にもつながると考えている。

また、パート社員研修は、現場では伝えられない情報提供の場となり非常に好評であった。配偶者控除の仕組みについての研修では、パート社員とコミュニケーションをとることで、各人の時間的制約等が認識でき、パート社員を活用していく上でのシフト対策に役立った。こうした研修会の実施は、多様で異なる価値観を持つパート社員の意見や問題意識収集の場ともなり、業務改善につながることから、今後も定期的に開催する予定である。

人事評価の導入は、会社、パート社員の両者が改善点を確認することができ、指導育成に役立った。また、自己評価と工場長評価との差が大きい項目に対しては、パート社員の意識改革を含め、今後の教育重点項目として重要な材料となっている。さらに、パート社員へ事前に会社の求める仕事の基準を知らせることは、日常の目標となり、結果として能力向上につながった。今後は、賃金等の処遇と人事評価との連動を考えており、そのためには定期的、継続的な評価の実施及び管理職のマネジメント技術が重要な課題と捉えている。

他に今後取り組みたいと考えているのは、就業規則等の基本的な決め事をまとめたパート社員用のハンドブックを作成することである。ハンドブックは可能な限り、分かりやすくなるように工夫し、働く上でのルール、税務情報、補償制度等をまとめることを計画している。

会社のルールを明確にし、労務トラブルを未然に防ぐことで、パート社員が長く安心して働ける環境づくりを今後も目指していく。

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