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(有)マルミツフーズ

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(製造業)より

標準作業時間の設定と作業管理で優良作業を見える化、今後は働きに応じた報酬配分によりパート社員のさらなるモチベーション向上を目指す

2.賃金・労働時間
4.人事評価
8.職場のコミュニケーション等
所在地 広島県 業種 食料品製造業
従業員数 約75名 パート労働者数 約35名
ポイント
  • 社長自ら全パート社員への個人面談を定期的に実施。
  • 標準作業時間の設定と作業管理で、優良作業を見える化。
  • パート社員の働き方を最大限考慮する勤務体制づくり。
  • 評価制度を導入し、賃金改定に反映。

(1)企業概要・人員構造

同社は、平成2年に果実・野菜その他農産物の生産・加工・販売を手掛ける有限会社出来商店(現:株式会社出来商店)の広島工場として広島市内に設立し、主にサラダ類の製造を行ってきた。翌年、有限会社マルミツフーズとして分社化した。その後、平成15年より東広島市に移転し、現在に至っている。主にカット野菜・サラダ類等の惣菜製造を業務内容としている。

パート社員は、子育てから完全に手の離れた50代の女性が中心となっている。また、法定雇用率を超える障害者を雇用しているとともに、高齢者雇用への取組が優れているとして、平成25年度高年齢者雇用開発コンテスト1において70歳現役奨励賞を受賞している。

惣菜製造を担う工場における作業は大きく分けて、(1)下処理、(2)野菜加工、(3)盛り付け、(4)出荷に分類され、パート社員は主に(1)、(2)及び(3)に配置される。(4)出荷作業は誤出荷リスクが伴うため正社員のみで構成される(図表1)。正社員はパート社員と同じ作業を行いつつ、管理・段取り的な業務も担い、作業は正社員の管理・指示の下で遂行される。

図表1 工場内作業の概要

工程 構成比(正社員:パート) 主な作業内容
(1)下処理 パート社員のみ 皮むき、種取り等の次工程の前準備
(2)野菜加工 (1:1) 機械を使ったカット等の加工処理
(3)盛り付け (1:3) 盛り付け、袋詰め等
(4)出荷 正社員のみ ピッキング、出荷段取り
  1. 独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構が実施し、企業における高年齢者の雇用開発のための改善事例を募集し、優れた事例について表彰を行っている。

(2)取組の背景

以前は、工程管理や作業効率化の不十分さから、配置した人員の作業待ち時間が多く発生したり、仕上がり具合の不均衡等といった問題点が散見された。また、画一的な時間賃金となっており、優良なパート社員のモチベーションの低下が危惧された。このため、作業効率の高い優秀なパート社員の処遇に対する納得性を高めることが重要と考えた。

健全な経営を維持するには徹底的な作業効率と労働生産性の向上が必要であり、そのためには社員一人ひとりが問題意識を持ち、現状改善に取り組む高いモチベーションが求められる。特に、製造工程において実作業の多くを担っているパート社員の意識改善への取組が不可欠であり、その取組を後押しするため各自の意識の高さや働きに応じた報酬を配分できる評価システムの構築が望まれた。

(3)取組の内容

社長自ら全パート社員への個人面談を定期的に実施

3年前より社長によるパート社員も含めた全社員の個人面談を定期的に実施している。社員から常日頃感じている不満や悩み、あるいは業務改善に向けた改善提案意見等の聴取、社員への業務遂行に関するアドバイスや会社の求める社員像についての説明等、社長と社員が直接コミュニケーションをとる機会として位置づけている。現在は製造部門のトップである工場長も面談に同席している。

標準作業時間の設定と作業管理で優良作業を見える化

作業工程ごとに作業マニュアルを作成の上、各作業の所要標準時間を設定することで、社員がマニュアルに沿って標準作業時間を目標に作業を行えるようにした。また、微生物検査結果や仕上がり度の良し悪しを点検する工程途上のポイントにて、前工程の作業者の作業品質を判断できるようにした。

これらは、正確かつ丁寧であることはもちろん、効率的な作業を目指し努力・工夫する社員の作業を「優良作業」として見える化することを目的としたものである。

優良作業に対し、明確で絶対的な判断基準を付与することで、社員は作業上の目標を持ち、モチベーションを向上させることができた。また、業務効率化と作業品質向上にも寄与している。

パート社員の働き方を最大限考慮する勤務体制づくり

パート社員の勤務シフトは、各自の受け持ち業務における標準作業時間を月稼働時間の目安とし、あらかじめ聴取している各自の都合を最大限考慮している。所得税法上の扶養範囲内での勤務を希望する者に対しては、目安とした月稼働時間を基に大まかな年間勤務計画を立てることで、年末や繁忙期に調整休を取得せざるを得ないことによる人手不足の防止と計画的な勤務体制づくりの工夫をしている。

また、高齢者には体力的に負担が生じる長時間作業や連続勤務を避ける、障害者には安全な機械装置を使用しての複雑でない作業を割り振るなど、本人の事情と要望に応じた勤務体制づくりに取り組んでいる。

パート社員の評価制度を導入し賃金改定に反映

平成25年度よりパート社員の賃金決定には評価制度を導入し、評価結果により時給の見直しが行われる形態とした。厚生労働省が公開しているジョブカード制度のモデル評価シートを参考に、コミュニケーション能力やチャレンジ意欲など職務遂行のための基本的能力について10項目の評価項目を設定(図表2)、それぞれ3段階評価により、自己評価→一次評価(主任)→二次評価(工場長)→企業評価(社長)を行う。

評価結果は、前述の社長等による個人面談にてパート社員にフィードバックされる。また、評価結果の合計点数は、あらかじめ設定しておいた対応表に当てはめ、時間給の昇給又は減給に反映している。

図表2 現行の評価項目(一部抜粋)

能力ユニット 評価 項目
コミュニケーション
(適切な自己表現・双方向の意思疎通を図る能力)
  上司・先輩などの上位者に対し、正確にホウレンソウ(報告・連絡・相談)をしている。
  自分の意見や主張を筋道立てて相手に説明している。
  相手の心情に配慮し、適切な態度や言葉遣い、姿勢で依頼や折衝をしている。
  職場の同僚等と本音で話し合える人間関係を構築している。
  ・・・
チャレンジ意欲
(行動力・実行力を発揮して職務を遂行する能力)
  仕事を効率的に進められるように、作業の工夫や改善に取り組んでいる。
  必要性に気づいたら、人に指摘される前に行動に移している。
  よいと思ったことはどんどん上位者に意見を述べている。
  未経験の仕事や難しい仕事でも「やらせてほしい」と自ら申し出ている。
  ・・・

(4)成果と課題

業務効率化と作業品質向上における取組により、各自が時間効率や作業品質を強く意識するようになり、取組の前に比べて月商が10%上昇し、月の総作業時間が150時間削減される結果となった。標準作業時間は社員の声も聴きながら、今後も見直しを重ねていく予定である。

パート社員とのコミュミケーションは今後も強化していきたいと考えており、個人面談には人事総務部門長も加わる予定である。

なお、現行のパート社員の評価制度の問題点として、評価項目が抽象的であるため実際の業務との関連性が低く、パート社員が具体的にどういった行動を成せばいいのか理解されていない点が挙げられる。このため、翌事業年度を目処に評価項目の再構築を行う予定である。

評価項目はできるだけ業務に直結したもので、会社が社員に求める「あるべき姿」を明示しつつ、働きに応じた報酬配分によりモチベーション向上に資するものとしたい。その際、現在は奨励的な取組である「優良作業の見える化(前述)」を今後は評価項目に加えることで、優良作業を行う社員に対して評価点が上がる仕組みとすることを予定している(例として「○○工程における作業が標準時間内に完了できる」「△△工程における微生物検出水準が合格基準である」等)。また、運用面の負担を考慮し、評価システムを過度に複雑化しすぎないよう工夫することが必要と考えている。

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