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(株)八木橋

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(小売業)より

人事評価・昇給制度の整備、老舗の伝統と理念を伝える丁寧な入社時教育

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
所在地 埼玉県 業種 各種商品小売業
従業員数 約370名 パート労働者数 約160名
ポイント
  • 人事評価制度の整備。
  • 人事評価制度に連動した昇給制度の整備。
  • 一人ずつ行う丁寧な入社時教育。

(1)企業概要・人員構造

同社は、明治30年に前身である呉服店を創業し、昨年創業115周年を迎えた老舗の百貨店である。店内はモダンな雰囲気と最先端のファッションが共存し、従業員の挨拶と笑顔が徹底されており、多くの来店客でにぎわっている。店内には旧中山道が通り、全国でも珍しい光景に街歩きファンの間でも注目を集めている。

また、同社は、ファミリー・フレンドリー企業としても知られており、平成13年度に埼玉労働局長賞を受賞。平成15年には埼玉県知事から女性の両立支援、活用が評価され女性が働きやすい事業所として評価され受賞するなど、柔軟な働き方が選択できる取組を行っている。

人員構成は、正社員、契約社員、メイト、シニア、パート社員A、パート社員Bである。正社員は、職務を限定せずに、キャリアを形成していくこととされている。店舗では、主に管理的業務(現場教育、数値管理、発注、勤務シフトの編成等)を担う。一方、パート社員は、品出し、レジ業務等を行う。

従業員数と雇用区分1

雇用区分 人数 特徴
正社員 177名
男 75名
女 102名
職務不限定。組合員。
メイト 29名
女 29名
化粧品販売員等で構成。専門的知識が必要。
フルタイム勤務。1年契約。組合員。
シニア 7名
男 6名
女 1名
60歳定年後の再雇用継続者。1年契約。
パート社員 A 116名
男 20名
女 96名
半年契約。
時給制、賃金改訂あり、勤務年数に応じて賞与あり。
社会保険加入。共済加入。週所定労働時間30時間以上。組合員(任意)。
パート社員 B 41名
男 4名
女 37名
半年契約。
時給制、賃金改訂あり、賞与なし。
週所定労働時間30時間未満。組合員(任意)。扶養の範囲内で働く主婦層が中心。

1 雇用区分は主要なものだけをとりあげている。

(2)取組の背景

(3)取組の内容

パート社員用の人事考課制度と考課に基づく昇給制度の整備

パート社員用の人事考課表として事務職用と販売職用の2種類を新たに整備した。それぞれに4分野・20項目が設定され、項目ごとに点数をつけていき、全項目の合計点で最終評価を決める。一次考課は現場の係長、二次考課は現場の課長が行い、両者で協議決定する。これをもとに、契約更新時には管理本部が一人ずつ面接を行い、フィードバックする。考課表には、現場の課長の立場からフィードバック時に本人に伝えてほしいことを記入する欄も用意されており、単なる点数の通知にとどまらない指導や動機づけに活用されている。

考課分類と項目

事務職 販売職
「意欲」、「接客・事務処理」、「知識の活用」、「報告」、「マナー・その他」の5分類20項目 「意欲」、「接客・事務処理」、「知識の活用」、「報告」、「マナー・その他」の5分類20項目

考課項目の例

事務職「接客・事務処理」 販売職「接客・事務処理」
お客様・社員・訪問客・電話に対して丁寧で、感じよい応対・説明・案内をしている。 常にお客様の動きに目を向け、呼ばれる前に声をかけ、積極的にアプローチしている。

最終評価の付け方

A 100~86点 模範的な存在であり、同僚や後輩へ適切な指示・指導ができる。
a 85~71点 各評価項目への意識が高く、大変印象が良い。
B 70~61点 指示がなくとも自ら仕事に取り組んでおり、標準的である。
b 60~41点 多少の指導が必要であり、やや努力が欲しい。
C 20~40点 指導による改善は難しく、次回契約の更新はしない。

考課の結果は、合計点から導き出された5段階評価を賃金テーブルに当てはめ、毎年4月の賃金改訂(降給もあり)に反映される。従来は賃金表もなく、20円刻みでほぼ全員が横並びに、採用時時給プラス100円の範囲で昇給していた。今般の改正により、時給の幅を200円に拡大し5円刻みにした賃金表を新たに定め、考課結果と現時給の位置に応じて号数が変わる仕組みを整備した。賃金表は3つのゾーンに区分され、ゾーンが上がるにつれ求められる能力が高くなるため、同じ能力のまま仕事をしていると昇給が鈍化する。反対に、求められる能力より低い評価となれば、降給の可能性もある。なお、こうした昇給の考え方は、正社員と同じである。

個別の入社時教育

パート社員の採用は必要のつどであるため、同時期にはほとんど一人しか入社しない。その一人のために、専門のトレーナーが半日かけてオリエンテーションを行っている。非効率のようであるが、「当社を愛してくれるお客様よりも早く当社のことを知ってもらい、同じ心を持ってお客様に接して欲しいから」(同社担当者)との考えに基づくものである。なお、このオリエンテーションは、同社の歴史と引き継がれている経営理念を学びに来る外部の市役所の新人、中堅職員の研修の受け入れの際にも、同様に行われている。そこには、「地域奉仕」の経営理念も色濃く反映されている。オリエンテーションでは、会社の歴史と経営理念についてのレジュメと、会社が紹介されているいくつかの新聞記事を配布している。記事には明治時代のお店の写真や創業者から伝わる想いが記載されており、長く地域から愛されているお店であることがよく分かる。

その他

パート社員Aには、勤務年数に応じ3~7万円程度の賞与を支給している。これには査定はなく、決められた額がそのまま支給されている。福利厚生面では、とくにパート社員就業規則に定められていないものについては、正社員に準じた取り扱いをすることが慣行となっている。例えば、最近に発生した竜巻被害の折には、パート社員に対しても正社員とまったく同等の見舞金を支払った。定期健康診断も、法定義務のない(勤務時間の短い)パート社員Bにも受けさせている。勤務年数に関係なく、現場の上司の推薦があれば正社員に転換できる制度もある。この制度の存在及び内容は社内に周知されており、最近では年に数名程度が転換している。

(4)成果と課題

パート社員の人事評価制度及びそれに基づく昇給制度はスタートしたばかりだが、社内に発表した際にはおおむね好評であった。今後は、この制度を定着させ、能力を評価されたパート社員のモチベーションが上がり、さらに貢献してくれることを期待している。一方で、現代社会において、働き方が多様化し、従業員の愛社精神やモチベーションが希薄化しているなか、「創業の精神をきちっと守りながら、時代に対応して進化していく」(同社担当者)ためには教育や福利厚生面は重要と考えており、今後も従来のやり方を維持していく考えである。

入社時オリエンテーションで使われている同社紹介記事

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