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司ゴム電材(株)

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(製造業)より

長期的な能力開発を見据えた新人事考課制度やQC活動への参加を通じ、パートの戦力化を図る

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 埼玉県 業種 金属製品製造業
従業員数 約160名 パート労働者数 約45名
ポイント
  • 独自のチェックリストによるOJTの実施。
  • 長期的な能力開発を見据えた新人事考課制度の導入。
  • 自主性を尊重した正社員転換制度の規定化。
  • 正社員とパートが同等の福利厚生。
  • QC活動への参加。

(1)企業概要・人員構造

同社は、金属加工製品の設計開発・製造・販売、ゴム・樹脂製品の販売を行っており、本社は埼玉県に、工場・営業所は岩手県及び静岡県に、営業所は大阪府及び千葉県に、開発室は千葉県に所在している。

従業員は約160名(うち正社員1約60名、準社員2約50名、嘱託約5名、パート約45名)であり、パートはおおよそ本社に10名、岩手県の工場に20名、静岡県の工場に15名が在籍している。

パートの活用理由としては、繁閑への対応とともに、もともと定型的業務が多いことが挙げられる。また、責任の重さは異なるものの、正社員とパートが同じ仕事を担当している業務もある。具体的には、静岡工場における部材受け入れ業務、組み立て業務、営業補助業務などである。

なお、パートのうち数名はフルタイムで勤務する者もいるが、社内での雇用区分はフルタイムもパートタイムも変わらない。パートは原則として残業がない。

(2)取組の背景

企業力の向上のためには、パートの仕事に対する意識を高めて戦力化を図り、効率的に業務をマネジメントすることや、定着率を向上させることが不可欠であるため、パートに対する雇用管理の取組の推進を図っている。

(3)取組の内容

賞与の支給

パートに対しても賞与を支給している。2~10万円程度の寸志ではあるが、勤続年数や働きぶり等を考慮して上乗せをしている。実際、正社員並みの貢献度があったパートに対して20万円を支給したケースもある。

独自のチェックリストによるOJT

教育訓練は、職場でのOJTが中心である。例えば入社後は工場現場に配置することが多いが、そこでは独自のチェックリスト等を用いて安全管理などについて具体的な指導を行っている。

今後はパートのさらなる戦力化に向けて、OJTとOff-JTを連動させた計画的な教育訓練を進める予定である。

長期的な能力開発を見据えた新人事考課制度

これまでは、課長や事業所長がパートに対して直接評価を行ってきた。しかしながら、簡易なものであり、運用面も含めて十分なものとは言えなかった。このため、2013年度の正社員用人事考課制度の見直しに合わせ、パート用人事考課制度も見直すこととなった。

新人事考課制度は、その結果を賃金に反映させるというよりも、長期的な能力開発を念頭に置いて設計した。パートが仕事に対する意識を高めるとともに、上司が考課内容を参照しながら日々の指導・育成を行うことで、結果として業務改善に結びつけることを目的としており、2013年度下期から運用を開始している。

考課項目は大きく、「I.今期の成果」、「II.仕事に取り組む姿勢」、「III.仕事で必要な能力」の要素に3分類し、それぞれに考課要素と考課内容を設定している(図表1)。これらはA4・1枚に収めるなど、可能な限りシンプルになるよう配慮している。

人事考課は年に2回、現場の長である係長(グループリーダー)が実施する3。具体的には、各考課内容ごとに「S、A、B、C、D」の5段階評価を、I~IIIごとに要素別総合評価として「S、A、B+、B、B-、C、D」の7段階評価を行う。

考課結果は次期の能力開発指針として活用できるよう、面接にてフィードバックする。

なお、これとは別に、業務で課題が生じた際には都度面接を実施しており、現場での密なコミュニケーションを常に心がけている。

図表1 新人事考課制度の考課表

I 今期の成果

考課要素 考課内容(着眼点)
仕事の質の面 仕事の内容は求められる基準を満たしていたか
仕事でのミスは少なかったか
クレーム・トラブル発生の際の対応は適正だったか
整理・整頓は日々きちんと行われていたか
仕事の量の面 当期でこなした量は多かったか
仕事の早さはどうであったか
スケジュールは余裕をもって進め、自己の責任で業務遅滞を招かなかったか

II 仕事に取り組む姿勢

規律順守 挨拶を欠かさず、言葉づかいは適切であったか
清潔な身だしなみに気を配っていたか
勤務時間中の私語や私的な行動が目立たなかったか
上司やリーダーの指示にしたがったか
会社の規則・規定や職場ルールを正しく守っていたか
コミュニケーション 上司、関係者との報告、連絡、相談はタイムリーに的確に行ったか
チームワーク順守 チームワークに心がけ、仲良く仕事できるように気を配ったか
有効活用 手の空いた時間をほかの作業にあてるなど勤務時間を有効に使おうとしていたか
改善 担当業務の効率向上に向けての意欲は見られたか
責任感 担当の仕事を責任をもって最後まで確実にやりとげようとしたか
勤怠状況 無断で欠勤や遅刻して業務が混乱することはなかったか
勤怠内容 欠勤〔  〕日・遅刻〔  〕回
早退〔  〕回 その他〔     〕

III 仕事で必要な能力

知識・技能 担当業務の作業マニュアルは習得しているか
必要な知識・技能は身につけているか
理解・判断 指示された内容を正確に理解できるか
作業結果の正誤の判断ができるか
創意工夫 仕事の改善提案をよくしているかか
提案内容は具体的であるか

自主性を尊重した正社員転換制度の規定化

パートから正社員への転換制度を規定化している。転換に当たって満たすべき項目として8項目を設定しており、具体的には「パートとしての勤続年数が2年以上」、「本人の転換希望がある」、「一定の人事考課結果を満たしており、課長及び事業所長の推薦を得ている」等である。なお、転換者にはフルタイム勤務が求められる。

転換希望者は、随時その希望を係長に申し出ることとなっており、人事考課時のフィードバック面接にて意思が再度確認される。

直近2年では、本社2名、岩手工場2名、静岡工場1名の転換実績がある。

正社員とパートが同等の福利厚生

福利厚生は原則として正社員とパートを同等に扱っている。例えば、財形貯蓄制度の積立額に対して1%の利子補助はパートも対象としている。

その他、正社員と同様の制服を貸与するとともに、毎日の朝礼や忘年会などの懇親会についても従業員全員参加としており、パートも組織の一員であるという意識を高めるように配慮している。

QC活動への参加

同社は以前より、小集団活動としてのQC活動を積極的に進めてきた(図表2)。これは、従業員の経営への参画意識を高めるとともに、業務の改善に向けたアイデアを広く募ることを目的としている。

QC活動において正社員とパートの区分は一切なく、パートもほとんどの活動に参画している。

また、年に1回発表会を開催し、優秀なサークルを表彰している。表彰サークルのメンバーには、毎年のようにパートも含まれている。

図表2 QC活動の具体例

サークル名 部署名
リミットスイッチの作業改善 岩手工場組立グループ
製品の移動運搬の効率化 岩手工場板金グループ
リードタイムの短縮、業務改善 千葉・大阪合同チーム
塗装工程作業効率アップ 静岡工場
倉庫(製品棚)の見える化 埼玉Dチーム

(4)成果と課題

新人事考課制度を円滑に運用していくためには、パートに対して人事考課への理解を深めてもらうための丁寧な説明を行っていかなければならないと考えている。また、同制度は長期的な能力開発を見据えていることから、今後のパートの戦力化において人事考課は大きな鍵になると捉えている。

なお、正社員とパートの職務内容や責任の程度等を明確化するため、現在、パートが担当する業務の洗い出しによる職務要件やスキルの文書化を図っている。文書化により、職務要件・スキルと考課要素・考課内容との関係性が分かりやすくなり、パートの人事考課や能力開発に対する理解が深まるものと期待している。

正社員転換制度の認知度は年々高まっており、現在はパートの約3分の1が転換を希望している。これまでの転換者をみると、仕事への責任感が強まり、パートの時よりも働きぶりが良くなっていることから、今後も条件が合えば転換者を増やしたいと考えている。

一方で、優秀なパートであっても家族の事情や自分の趣味に生きがいを持ち続けたいなどの理由により、扶養範囲内での勤務を希望する者も少なくない。

今後はこのような優秀なパートに焦点を当て、「無期雇用や賞与支給といった処遇面でのメリットを強調する」ほか「有給休暇の計画取得も含め、残業不可能日や土曜出勤不可能日などについて可能な限り配慮する」こと等を説明しながら、正社員転換を進めていきたいと考えている。

  1. 事務職及び営業職の幹部候補者のこと。
  2. フルタイムの無期雇用であり、工場の生産や商品管理などの現場業務職及び事務補助職のこと。全社員一丸となって企業力を高めることを目指し、2014年度より正社員と一本化を図る予定。
  3. これまでは課長や事業所長が考課を行っていたが、課長以上の負担を少なくするとともに係長のマネジメントレベルを向上させることをねらいとし、考課者を変更した。

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