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小太郎漢方製薬株式会社

平成29年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成29年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用環境・均等局長奨励賞)

能力、勤務態度、成果等に関する評価を行い、その結果を処遇に反映させる評価制度を導入するとともに、登用嘱託社員・正社員への転換等のキャリアアップを支援、パートタイム社員の定着や能力向上に努める。

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 大阪府 業種 製造業
従業員数 336名 パート労働者数 61名
事業概要 医薬品の製造販売(漢方製剤等)、化粧品・健康食品の製造販売
ポイント
  • 半期に一度、基礎考課表を使った人事考課を全パートタイム社員に実施。職務、勤務態度、能力について評価を行い、その結果を昇給や賞与へ反映。
  • パートタイム社員→登用嘱託社員→正社員というキャリアアップ制度を導入し、本人の能力や実績に応じたキャリアアップをサポート。
  • 「全従業員をよく見る、いいことは評価する」という考えから、パートタイム社員を含む全従業員が対象となる表彰制度を導入。

審査委員はここを評価

正社員登用までのルートを明確にし、正社員と分け隔てなく計画的に教育していることが、パートタイム労働者の平均勤続年数10年超え、正社員登用後係長にまで昇進、といった成果につながっています。

1. 企業概要・人員構造

同社は1952年に設立され、1957年、漢方薬をもっと簡便に利用できないかとの思いから、業界で初めて漢方エキス製剤の製造販売を開始、以来、「漢方をよりよく、より多くの人に」を社是として漢方エキス製剤の販売と普及に努め、現在は本社及び物流拠点を大阪府に、製造工場と研究所を石川県に有し、全国へ販売ネットワークを展開している。

同社の従業員は、契約期間の定めのない月給制の正社員、有期雇用契約でフルタイム勤務・月給制の嘱託社員及び登用嘱託社員、有期雇用契約で時給制のパートタイム社員から構成される。正社員は基幹的な職務に従事する一方、嘱託社員・登用嘱託社員は補助的な職務を担当する。ただし、嘱託社員は特定の業務に必要な知識等を有し、秤量作業や機器の組立て(工場)、上司の指示を受けてのルーチン試験業務(研究所)等、入社時点から専門的な知識・技術を要する職務を担当するのに対し、登用嘱託社員は所定の基準を満たしたパートタイム社員が転換した雇用区分であり、パートタイム社員であった時に従事していた必要な専門知識が比較的少ない職務に付け加えて、パートタイム社員への指示、機器の洗浄やデータ入力等を担当する。また、正社員には異動があるが、嘱託社員・登用嘱託社員・パートタイム社員には異動がない。

パートタイム社員は、原則として1日6時間、週5日勤務であり、そのほとんどが主婦である。パートタイム社員の半数以上が生産ラインに勤務し、主に正社員の補助的な役割を担っている。

雇用区分表

区分正社員嘱託社員登用嘱託社員パートタイム社員
正社員として採用
嘱託・登用嘱託から転換
嘱託社員として採用パートタイム社員から転換パートタイム社員として採用
在籍人数男性211名
女性32名
男性14名
女性10名
男性0名
女性6名
男性4名
女性57名
雇用期間無期有期(原則1年更新)有期(原則1年更新)有期(原則1年更新)
労働時間フルタイムフルタイムフルタイムパートタイム
転勤・異動ありなしなしなし
職務内容(工場の例) 生産計画立案・調整
機器類の操作・調整
・メンテナンス
原材料、添加剤等秤量作業
機器類の切替、機器の組立
機器類の洗浄、乾燥作業
書類のデータ入力
正社員の指示による機器操作
生産機器への資材の補充
洗浄、清掃作業

2. 取組の背景とねらい

2000年から2005年にかけて工場・研究所の統廃合を行った。この期間は会社の経営状況や様々な制度整備の過渡期だったため、雇用区分間の職務内容の違いが不透明となっており、職務と賃金体系を改めて整理する必要が生じた。そこで、雇用区分の見直しと賃金制度の体系化を行い、2005年から新制度の運用を始めた。その後、パートタイム社員から登用嘱託社員への転換制度、勤続年数に応じて支給する熟練手当やスキルに応じて支給するスキル手当等の制度を導入し、パートタイム社員の定着率向上に努めている。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

基礎考課表を用いた年2回の人事考課を実施

年2回、10月(4月~9月分)と4月(10月~3月分)に「基礎考課表」を用いて全パートタイム社員の人事考課を実施している。①職務、②執務態度、③能力の3つの考課区分で計10項目を、それぞれS、A、B、C、Dの5段階で評価している。考課表では評価の中央値であるBの考課基準が示されていて、B以外の評価を行う場合はその理由を明記する仕組みとなっている。この評価は、現場管理職が行う一次評価と上長が行う二次評価の2段階で行われ、評価項目ごとに定められた得点(S:14、A:12、B:10、C:8、D:6)を合計して最終的な評定ランクが決められる。半期単位の人事考課の結果は、夏季賞与・冬季賞与に、年間の人事考課の結果は昇給に反映される。

基礎考課表

基礎考課表

高いスキルをもつパートタイム社員に手当を支給

パートタイム社員が、経験を積みながら一定レベルのスキルに到達したと判断した場合、「スキル手当」を支給している。このスキル手当は、のちに述べる、フルタイムとなる登用嘱託社員への転換を希望しないパートタイム社員の高いスキルに報いることを目的として、2010年に導入された。スキル手当制度は毎年見直しが行われ、現在は6段階のランクごとに月額2,500円から15,000円の範囲で支給されている。スキル手当支給の可否の判断は、「特定回数連続してA評価以上」を獲得しているパートタイム社員の基礎考課表の「評定者特記事項」欄に、上長がその旨を記載することから始まる。この記載を基に経営幹部会で協議され、支給の可否や金額が決定される。現在、16名のパートタイム社員に対してスキル手当が支給されている。

また、長期勤続者に対しては「熟練手当」を支給している。工場のライン部門に勤務する勤続5年以上のパートタイム社員に対し、時給に10円を加算する形で支給され、勤続10年以上では加算額は20円に増額される。

全従業員を対象とした表彰制度

「全従業員をよく見る、良いことは評価する」という姿勢を明確にするため、全従業員を対象とした表彰制度を2009年に導入した。表彰は、「部門長表彰」と「全社一般表彰」の2段階になっており、部門長表彰案件のうち特に優れた案件を賞罰委員会で審議し、「業務成績が著しく他の社員に比べすぐれている」、「業務上の有益な発明・工夫又は企画改善をした」等の表彰事由を満たす場合、全社一般表彰の対象案件に決定する。

全社一般表彰は、賞詞・賞状・賞金が渡される他、全従業員に配布される社内報「コタロー」に表彰内容が掲載される。2010年から2016年の7年間で15名のパートタイム社員が全社一般表彰を受賞している。

表彰制度の他、安全衛生標語の応募も全従業員が対象となっている。安全衛生標語は入選すると社内報に掲載される。過去に、パートタイム社員の標語がたびたび入選して、社内報に掲載されている。

被表彰者・表彰内容が掲載された社内報

被表彰者・表彰内容が掲載された社内報 被表彰者・表彰内容が掲載された社内報

登用嘱託社員・正社員への転換制度

パートタイム社員は、①パートタイム社員から登用嘱託社員、②登用嘱託社員から正社員へと、転換制度によりキャリアアップすることができる。

基礎考課表


パートタイム社員のうち、登用嘱託社員への転換を希望し、かつ就業規則に明示している以下の4つの条件を満たした者は登用嘱託社員に転換することができる。

①パートタイム社員として原則3年以上勤務していること

②所属長の推薦があること

③フルタイム勤務(1日7.5時間、週37.5時間)が可能であること

④筆記試験・面接試験に合格すること

パートタイム社員の中で、労働契約更改等の面談時にキャリアアップの意向が確認でき、転換に必要な条件を満たす者がいれば、所属長の推薦により、筆記試験・面接試験を受験する。筆記試験は一般常識及び作文から構成され、作文では「登用嘱託社員としての意気込み」等をテーマとしている。就業規則に転換制度を明示した2010年以降で、2017年までに7名のパートタイム社員が登用嘱託社員に転換した(2009年以前も含めると14名)。

さらに、登用嘱託社員から正社員への転換については、①登用嘱託社員として1年以上の勤務、②所属長の推薦、③筆記試験(一般常識、業務関連知識等)と面接試験に合格すること、という3つの条件をすべて満たす必要がある。登用嘱託社員や正社員への転換後の処遇は、等級制度のどこに位置付けるといった明確な基準はなく、本人の年齢や経験年数を勘案して個別に決定されている。

現在までに6名が、パートタイム社員から登用嘱託社員を経て正社員に転換している。さらに、この6名のうち1名は係長、2名は主任まで昇進している。このようにキャリアアップしているパートタイム社員の事例は、入社時研修等で紹介し、キャリアアップを目指す多くのパートタイム社員のロールモデルにしている。

全従業員共通の教育研修制度

年1回、パートタイム社員も含めた全従業員が対象となる「社員教育スケジュール表」を、教育研修委員会が作成する。本スケジュール表に沿って、パートタイム社員にも同じ部署に所属する正社員と同様の教育訓練を行っている。

社員教育スケジュール表

社員教育スケジュール表

担当役員や管理職によって構成される教育研修委員会は、四半期に1回開催され、社員教育スケジュールの進捗を確認するとともに、講義は分かりやすかったか、受講者の理解度はどうであったかなどを確認テストでチェックしている。社員教育は職務別に行われており、担当職務に関するものは、雇用区分にかかわらず全員が必ず受講しなければならない。

また同社ではGMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)に基づき漢方薬の製造を行っているため、工場・研究所勤務者にはそれに係る教育を行うことが義務付けられている。具体的には「品質管理において、微生物混入防止に当たり注意すべき点」等について、毎月1回の朝礼内で10分間の時間をとり、その作業を行う部署の全従業員に対して集合教育を実施している。出席状況は必ずチェックしており、時差出勤や家庭の事情等で、リアルタイムで受講できない者には、当該集合教育を録画したビデオにより振替受講することを義務付けている。

その他、倫理やマナーに関する研修を実施している。工場・研究所勤務の全従業員に対しては半年に1回、盆や正月の長期休暇の前日に開催する納会の時に実施し、対象者全員が参加できるように工夫している。本社勤務の全従業員に対しては、製品教育と一緒に年に4回実施し、欠席者にはレポート提出を課している。4回目の教育実施後は「振り返りテスト」を課し、1年間の教育内容の復習の機会としている。

上記の社員教育は、雇用区分にかかわらず全員が受講しなければならない。ただし、例えば製品の副作用情報に関する研修等、複数部署が横断的に関係するものについては、パートタイム社員であっても希望すれば受講することができる。

くらしの相談窓口の設置

全従業員が利用できる福利厚生の1つとして、2015年より「くらしの相談窓口」を設置している。ハラスメントの相談窓口は2009年より設置されているが、相談窓口は複数あった方が相談しやすいとの考えから、新たにより幅広い内容を相談できる本窓口を設定した。仕事に関することのみならず、家族の問題等、プライベートのことも相談できる窓口があることで、従業員が安心して職務に専念することができるとしている。

厚生年金基金及び法定外労災への加入

パートタイム社員を含む全従業員を対象として、法定外労災保険に加入している。保険料は全額会社負担である。また、厚生年金基金にも全従業員が加入している。労働災害や将来に対する不安を軽減し、安心して働ける制度を充実させている。

全従業員を対象に大入袋を支給

賞与とは別に、全従業員対象の大入袋を支給している。毎年4月から翌年3月までの各月において、その当該月の過去最高月商を更新した場合(レコード更新達成)や単月の月商の過去最高額を更新した場合に支給される。支給要件や金額、毎月の実績は社内に掲示されているため、全従業員が確認することができる。雇用区分で支給額に差はなく、社内のモチベーションアップやチームワーク向上につながっている。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

制度は一度作れば完成というわけではなく、常に見直しながら、試行錯誤を繰り返す必要がある。例えば、パートタイム社員のスキル手当は、導入当時は5段階であったが、運用を進めていく中で、現場からの意見等を踏まえて6段階へ変更し、金額も見直している。社内の状況、社会の情勢を注視しながら、諸制度を運用していくことに注力している。

5. 取組の効果と今後の見通し

正社員とパートタイム社員の業務分担を明確にし、透明性の高い賃金制度、充実した教育訓練や福利厚生制度を整備したことで、働きやすく働き甲斐のある職場となり、パートタイム社員の平均勤続年数は10年2か月まで伸びている。

登用嘱託社員や正社員への転換といったキャリアアップを明確に制度化したことの効果も現れている。2008年以降、6名がパートタイム社員から登用嘱託社員を経て、正社員に転換した。中には正社員転換後に、係長や主任に昇進するなど継続してキャリアアップしている者もおり、本社管理部・工場管理部としても、入社時研修等で紹介し、他のパートタイム社員のロールモデルとしている。今後も日々の業務の中でスキルアップに励みながら登用嘱託社員への転換制度を利用するパートタイム社員が増えることが見込まれる。

パートタイム社員にとって働きやすい職場であることは、口コミ等により地域で評判となっており、採用難と言われる近年でも、石川県の美川事業所(工場・研究所)では求人広告を出すと予想以上の問合せや応募がある。パートタイム社員が働きやすい職場をつくってきたことが、採用コストを抑えて優秀な人材を確保できる状況をつくりだしている。

同社は、パートタイム社員を含む全従業員が、健康を願う人々のために、創意あふれる気風と積極的行動で、地道な努力を重ねて、さらなるサービス向上を目指している。

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