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株式会社サッポロドラッグストアー

平成29年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成29年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用環境・均等局長奨励賞)

職務遂行能力に応じたパートナー社員等級制度の実施により、パートナー社員の意欲を喚起、定着率の向上に寄与。教育研修機会の充実により資格取得者が増加し、安定した店舗運営を実現。

3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
8.職場のコミュニケーション等
所在地 北海道 業種 小売業
従業員数 3,034名 パート労働者数 1,687名
事業概要 ドラッグストア、調剤薬局の運営
ポイント
  • パートナー社員等級制度により、個人の職務遂行能力に応じて5つのランクに区分。年2回の勤務評価と年1回のパートナー社員等級評価により処遇に反映。
  • 登用試験制度を体系的に整備、透明性を高めたことで、契約社員、社員への登用試験受験者・合格者ともに増加、店舗の活性化に寄与。
  • 独自教育ツール「サツドラウェイブック」により確実な作業習得を図り、業務の目的、基本的な考え方を共有し、作業の標準化・効率化を実現。

審査委員はここを評価

働き方改革について検討する際に、パートタイム労働者の大部分を占めるパートナー社員の処遇改善を含めて議論し、資格等級制度の導入、評価制度の透明化等総合的な取組を行ったことにより、パートナー社員の働く意欲が向上し組織貢献度が高まったことが評価できます。

1. 企業概要・人員構造

同社は、北海道内を中心に、医薬品、化粧品、日用品、食品を扱うドラッグストアを約190店舗展開している。

従業員は、期間の定めのない月給制の社員やエリア社員、有期労働契約で月給制の契約社員や有期労働契約で月給制かつ60歳以上の嘱託社員、さらに有期労働契約で時給制のパートナー社員や時給制で働く学生のアルバイト社員に分かれている。契約社員、嘱託社員、パートナー社員やアルバイト社員の有期労働契約社員の中にはパートタイム労働者がおり、有期労働契約社員約2,300名のうち約1,800名はパートナー社員、そのうちの1,687名がパートタイム労働者である。

パートナー社員の契約期間は6か月、標準的な労働時間は1日3時間~5時間で週5日勤務であるが、個々の事情に配慮し、個別に労働契約を締結している。原則として勤続1年以上のパートナー社員は賞与支給の対象となるが、退職金の支給はない。パートナー社員の主な職務は、ドラッグストア店舗における接客や販売、レジや品出し、商品補充業務である。

雇用形態

雇用区分勤務地・労働時間等給与形態契約期間
社員 勤務地、勤務時間帯等に制約がない者
1日の所定労働時間8時間
月給制期間の定めなし
エリア社員転居を伴う異動はなし。1日の所定労働時間8時間
※社員として入社したが、転居を伴う異動ができないために離職を余儀なくされる者に対する措置として2015年に創設
契約社員勤務地や公休日、勤務時間等を限定する60歳未満の者
1日の労働時間は7時間以上
1年契約
嘱託社員勤務地や公休日、勤務時間等を限定する60歳以上の者
1日の労働時間は6時間以上
パートナー社員労働時間は個別契約による時給制6か月契約
アルバイト社員学生
労働時間は個別契約による

2. 取組の背景とねらい

同社では、2年以内に離職するパートタイム労働者の割合が高いという課題を抱えていた。そこで、2010年以降、働き方改革について検討するハタラキカタカエル委員会や教育評価委員会を設置し、パートタイム労働者の大部分を占めるパートナー社員の処遇について話し合いを重ねてきた。全従業員のうち約6割を占めるパートナー社員が、「楽しく働き続けられる職場環境の整備」と「活躍し続ける人材育成」を目指し、人事制度の改正と教育体制の整備を進めてきた。本稿ではパートタイム労働者のうち大部分を占めるパートナー社員を対象とした取組内容を紹介する。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

職務遂行能力と処遇が連動した人事制度

パートタイム労働者に関する人事評価制度は従来から存在していたが、パートタイム労働者からは「どのような勤務態度で臨めば評価につながり、賃金が上がるのかわかりにくい」、「勤続年数が伸びても、最低賃金が上がったことで新人とさほど時給が変わらない」等の声が寄せられていた。そこで、店舗の最前線で共同して仕事をする仲間であるパートタイム労働者の活躍こそが、企業の発展につながるとの考えに基づき、2012年度から、呼称をパート社員からパートナー社員へ変更するとともに、パートナー社員等級制度を導入した。

パートナー社員等級制度は、個人の能力に応じた5段階の等級区分(ランク)を設定し、評価と処遇の関係を明確にすることを目的とした制度である。制度の対象者は、原則として全パートナー社員であるが、所得税の扶養範囲内(年収103万円以内)の者や、早朝時間帯の品出し専門の者、化粧品の販売業務に特化した者(ビューティパートナー社員)は制度対象から除外しており、現在、パートタイム労働者の51.0%が適用されている。除外対象を設けた理由は、年収額を103万円以内にとどめたいパートタイム労働者に店舗運営に支障のない範囲で勤務してもらうことや、業務の特質上、独立した制度を適用した方がふさわしい者に対応するためである。

等級区分(ランク)は5段階で、入門レベルのP-Ⅰ、標準レベルのP-Ⅱa、標準レベルの勤務ができ、かつ店舗運営に欠かせない登録販売者資格取得者(薬の販売が可能となる)のP-Ⅱb、医薬品、食品、化粧品、雑貨の各部門責任者または店舗の指導業務等ができるレベルのP-Ⅲ、副店長レベルのP-Ⅳに分かれている。P-Ⅲ以上は、原則7時間以上(8時間未満)の勤務を必要としており、これは、P-Ⅳは店長代行業務(店舗全体のマネジメント)を行うため、一定の勤務時間が必要であるという考え方によるものである。P-ⅠからP-Ⅱaへは、標準的には1年程度で昇格している。P-Ⅲ、P-Ⅳと社員との賃金水準を比較した場合、社員に設定されている5段階等級(S1~S5)のうち、入社3年以内程度の社員が該当するS1、S2と同等水準である。エリア限定等雇用形態の違いがあるため一概には比較できないが、時給ベースで130円~300円程度の差となっている。


入社後の成長によるキャリアモデル例

入社後の成長によるキャリアモデル例

 

等級区分(ランク)は、パートナー社員等級評価表に基づき決定される。パートナー社員等級評価表は等級別に決められており、「情意」、「能力」のそれぞれについて、①求められているスキル(能力・技能)を習得するために、②必要なツール(道具やシステム)は何か、そして評価基準となる③具体的な判断項目が示されている。例えば、P-Ⅱの評価項目は情意17項目と能力24項目の合計41項目で構成されており、能力のうち求められているスキルが「作業の習得」である場合、習得に必要なツールには「作業マニュアル(レジ打ち)」、判断項目には「レジの基本操作ができる」といった項目が示されている(下表参照)。

パートナー社員等級評価表のイメージ

 求められる
スキル
習得に必要なツール判断項目該当項目判断
○を入力1~5を入力
能力作業の習得作業マニュアル
(施錠・セキュリティーセット)
店舗の施錠・開錠、
セキュリティ操作ができる
5
作業マニュアル
(現金実査)
現金実査ができる
(レジ・金庫)
5
作業マニュアル
(レジ打ち)
レジの基本操作ができる5

 

「情意」については、評価項目のうち実施できているものについて「判断」欄に「○」を記入する。該当項目数に占める、「判断」欄に記入された「○」の割合が80%以上の場合、情意判定を「可」とする。また、「能力」については、各判断項目の「判断」欄に「1~5」を記入し、「該当項目数×5」の値に占める「判断」欄の数値の計が80%以上の場合、能力判定を「可」とする。情意、能力ともに80%を達成して「可」の評価を受けた場合、総合判定も「可」となり、昇格対象者となる。

等級の決定については、年1回(下期)、直属の店長が一次評価を行い、1人当たり約15店舗を統括するブロックマネジャーが二次評価を行った上で、ブロックマネジャーの二次評価に偏りがないかといった総合的な確認をエリアマネジャーが行う。なお、同社は全国の店舗を17のブロックに分けた上で、さらに2つのエリアに分類している。2人のエリアマネジャーが、それぞれ担当するエリアのブロックマネジャーを統括している。

また、等級区分の昇格を判断するに当たっては、現等級より1つ上の等級を対象としたパートナー社員等級評価表を用いて、一次評価者である店長が評価を行い、総合判定「可」となった者を昇格対象者とする。次に二次評価者であるブロックマネジャーが、昇格に要する予算や各店長の評価傾向等を加味して、昇格者を決定し、最後にゼネラルマネジャーが承認する。現等級より1つ上の等級を対象としたパートナー社員等級評価表を用いることで、「何ができれば」、「何を目指して頑張れば」評価につながるのかが明確になる。なお、すべての等級のパートナー社員等級評価表は、社内のイントラサイトで公開し、すべてのパートナー社員が閲覧できる。

2017年3月31日時点における等級区分ごとの内訳は、P-Ⅰが336名、P-Ⅱaが146名、P-Ⅱbが328名、P-Ⅲが49名、P-Ⅳが5名となっており、パートナー社員の中には部門責任者や副店長レベルで活躍している者もいる。

さらに、所得税の扶養範囲内の者等を除くパートナー社員に対しては、年2回(上期・下期)、パートナー社員評価表に基づき、5段階の勤務評価を実施している。

次に、所得税の扶養範囲内(年収103万円以内)の者や、早朝時間帯の品出し専門の者等の等級制度適用除外者(ビューティパートナー社員を除く)については、等級制度がないため、年2回(上期・下期)、パートナー社員評価表に基づく人事考課のみが行われ、評価結果は時給や賞与に反映される。ビューティパートナー社員については、売上実績等を評価する独立した評価制度を運用しており、等級制度はないが、評価結果は賞与に反映される。

評価の公平性を担保する仕組みとして、外部講師によるケーススタディやフィードバック等を通じて、実践に近い形で評価者研修を実施している。新任店長は評価者研修受講が必須とされている。

明確な基準に基づき人事考課結果を処遇に反映

パートナー社員の昇給については、HからLの5段階で評価するパートナー社員評価表の評価結果をもとに、労働組合との団体交渉による平均昇給額が加味されて最終的に決定する。2017年度の労働組合との妥結平均昇給額はHが15円、中央の評価であるMB(普通)が10円、Lは0円の昇給なしであった。

士気を高める表彰制度の実施

同社の表彰制度には店舗表彰と個人表彰があり、個人表彰については、全従業員を対象としたコンクールを実施している。コンクールの実施内容は毎回異なり、応募者数も異なるが、平均的には200件~300件程度の応募があり、その中で10名程度を表彰、上位入賞者を写真付きで社内報に掲載している。2016年度は、6月の「化粧品の販売コンクール」で2名、6月の「医薬品・健康食品の販売コンクール」で7名、7月の「医薬品・健康食品の販売コンクール」で9名、12月の「医薬品・健康食品・化粧品の販売コンクール」で4名のパートナー社員が表彰された。コンクールの実施や表彰制度を通じて、互いに褒め合う組織風土の醸成に取り組んでいる。

また、2017年10月からは、社内表彰制度「サツドラアワード」を創設した。これは、社員の部とパートナー社員の部に分け、「1年間であなたが推薦したい人」を従業員が相互に推薦する制度である。第1回の応募件数は約800件、そのうちパートナー社員の応募は約300件であった。社長を含む選抜委員会委員7名で最終選考が行われ、パートナー社員の部では最優秀賞1名、優秀賞2名、入賞2名が表彰された。

サツドラウェイブック及び教育プログラムによる教育体制

教育部が教育プログラムを作成し、その教育ツールの1つとして、2015年より同社独自の「サツドラウェイブック」を活用している。パートナー社員の場合、「サツドラウェイブック」の中で、入社2か月で習得する基本的な項目が週単位で定められているスタートプログラムが示されており、このスタートプログラムに沿い教育を実施する。実施スケジュールは店舗に委ねているものの、2か月以内に終了させ、店長または店長代行者が習得状況を確認し、店長がスタートプログラムチェックリストを記入して教育部へ提出することになっている。

「サツドラウェイブック」は、店舗業務を通じて顧客へ経営理念を届けるために店舗が行うべき業務の目的や基準を示した基準書であり、他社の成功事例を研究した上で、同社の実情に合ったマニュアルの構成や書式等を検討し、作成したものである。イラストや図解で説明し、誰でも理解できるように工夫し、入社した全従業員に対し、各業務の基準や目的を理解させ、「楽しく、ムダなく働き、成果を出そう」という考え方を周知させるために活用している。また、このように業務を標準化することにより、全店舗が共通の方法で業務を進められ、誰が教えても業務の質が保たれている。本冊子については、意見や要望、アイデア等を入力できるWEBシステム上の「カイゼンシート」を通じて全従業員から改善案を募集しており、その集約・分析・検証等を本部で行った上で、「サツドラウェイブック」の更新や内容の追加も行っている。

さらに、教育プログラムには、パートナー社員から契約社員や社員に転換された際の研修フローも構築されており、それぞれの転換時に研修を実施している。

また、社内ルールをまとめた接遇ハンドブックを、入社時に1人1冊配付し説明を行っており、パートナー社員自身も研修の前後で内容を確認、振り返りをすることができるようにしている。

高い技術と知識を習得しスキルアップを目指す研修制度

化粧品販売を担当する社員を対象として、基本接客について学ぶ初級のベーシック研修は従来から存在していたが、さらなるステップアップを目的に、2016年度からサツドラビューティカレッジとして、「候補者、ベーシック研修」、「ステップアップ研修」、「スペシャリスト研修」と「エキスパート研修」を設け、計画的かつ体系的に研修を実施している。教育体系は社内で構築し、講師は、研修内容に応じて社内のビューティトレーナー(教育部社員)や化粧品メーカーからの派遣スタッフからなる。化粧品販売を担当している従業員であればビューティパートナー社員に限らず受講することができる。

「ステップアップ研修」については、研修プログラムは全4コースあり、1年間で4コースを開催している。1泊2日で1コースが実施され、各コース2日目に筆記試験を実施しており、不合格者には各地で教育部トレーナーが筆記試験の追試合格までフォローを行い、全員合格を目指している。全コースを修了する最終日の午後には実技試験を実施し、実技試験の不合格者に対しても追試が行われている。受講者は、各コースとも40名の定員に達し、ビューティパートナー社員も多く受講している。2017年5月に実施した研修受講者アンケートでは、「講座内容は明日からの店頭活動に活かせそうか」との質問に対して、全受講者のうち97%が「活かせる」と回答した。その理由として、ロールプレイングを通じた接客の所作や商品の特徴の習得が役に立った、他の地区の担当者と情報交換ができたなどの意見が寄せられている。2016年度は、全4コースのステップアップ研修を修了した17名のうち10名はビューティパートナー社員であり、全員が最終の実技試験に合格した。また、ステップアップ研修を受講したビューティパートナー社員には、研修を活かして営業成績を上げ、賞与が増えた者もいた。

ステップアップ研修の内容

・全コース(1年間で4コース開催 受講順序は変更可能)

コース内容研修内容
Aタッチアップコース①アイテム別(眉・目もと)ポイント実習
Bタッチアップコース②アイテム別(口もと・ほお)ポイント実習
Cタッチアップコース③肌悩み別ベースづくり実習
Dカウンセリングコース肌悩み別お手入れ提案

登録販売者資格取得に向けた勉強会の実施

登録販売者資格は店舗運営に欠かせない資格である。登録販売者資格の取得に向けた勉強会は、4年~5年前から教育部トレーナーが店舗に出向き、休憩室等を利用して勤務時間外に実施している。勤務時間外に実施する理由は、資格は個人所有のものという考えに基づいている。3月から8月まで毎月1回の集合研修を実施している。1回の勉強会の開催時間は3時間~4時間程度である。既存のテキストに加え、出題ポイントを教育部が整理した資料により解説している。

なお、合格者に対してはテキスト代の半額程度の補助を実施しており、資格取得者に対しては、資格相当分として時給に一律30円が加算される。2016年度に道内で実施した登録販売者資格試験では、パートナー社員(フルタイム勤務者を除く)の受験者162名のうち合格者は100名、合格率は61.7%であり、道内全体の合格率54.2%より7.5ポイント上回っており、勉強会の成果が合格につながっている。

スキルアップを目的とした社内勉強会の実施

雇用形態にかかわらず担当業務に応じて参加できる医薬品定例勉強会及び化粧品定例勉強会を、それぞれ月1回実施している。医薬品や化粧品の商品知識や接客レベルを高めることを主な目的としている。両勉強会ともに運営は社内で行っているが、化粧品定例勉強会では、研修内容により講師は社内のビューティトレーナー(教育部社員)や商品メーカーに依頼する。化粧品定例勉強会は、専門的研修との位置付けで、1回につき店舗から代表者1名が参加する。悩み別の商品紹介等現場に即した学習カリキュラムを盛り込み、店舗での対応に活かせる実践的な内容となっており、参加者は、その内容を所属店舗の他の従業員に伝達する役割を担っている。

さらに、定例勉強会に参加しない者のための自主勉強会を地区ごとに月1回開催している(社内で医薬品有志勉強会、化粧品有志勉強会と呼称)。誰でも参加可能であり、会場までの交通費は会社が負担している。医薬品有志勉強会、化粧品有志勉強会の参加者を合計すると毎月約500名超が参加しており、参加者の約7割がパートナー社員である。

勉強会への参加は、店舗間異動のないパートナー社員にとっては他店舗の従業員とかかわることのできる貴重な機会となっている。パートナー社員は、互いにコミュニケーションを図るとともに情報交換を行うことで、新たな刺激を受け、モチベーションを向上させている。

公平性と透明性を高めた社員登用制度の実施

パートナー社員が契約社員を経て社員へステップアップできる転換制度を設けている。従来から内規により正社員転換推進措置は存在したが、全パートナー社員が申請から転換基準までを詳細に確認できるように、2015年度に転換制度全体の整備を行った。登用制度取扱細則規定を設けるとともに、申請用紙や判断基準等を社内のイントラサイトに掲載し、いつでも誰でも閲覧可能とする環境整備を行った。転換試験は年1回実施し、その際には、社内のイントラサイトで募集要項の案内を行っている。

契約社員への登用申請書には、①登用申請理由、②現在の業務内容とその課題、③課題に対する自身の行動目標、④自己PRについてを記述式で具体的に本人が記載するが、社員への登用申請書には、登用申請理由や自己PRの他、社員転換後の本人の今後の見通しとして、転換から1年後、5年後、10年後ごとに会社への貢献やスキルアップの計画を記載する。社員になることについて責任と自覚を持ち、転換後も活躍の場を広げてほしいとの考えに基づいている。

パートナー社員から社員への転換は、契約社員を経ることを原則としているが、過去に社員としての勤務経験がある者や、外国籍で語学堪能な優秀な人材を、契約社員を経ずに社員へ転換した例がある。契約社員を経て社員への転換を行う理由は、パートナー社員の担当業務(レジ、担当部門の品出し、接客販売等)より広範囲な契約社員の担当業務(部門を越えた業務や店舗運営上の事務処理等)の遂行の可否を正社員転換前に確認するとともに、社員は勤務地、勤務時間帯等の制約のない勤務を行うことが求められるため、転勤ができないなど社員の労働条件を満たせない優秀なパートナー社員に、パートナー社員より担当業務の範囲が広い契約社員になって活躍の場を広げてもらうためである。

契約社員への主な転換資格は、①ドラッグストア勤務において申請日における資格等級がP-Ⅲ以上、②同社での実務経験期間(休職期間を除く)が3年以上あること、③登録販売者または薬剤師の資格を有していること、④1日8時間勤務等会社が定める所定労働時間の勤務が可能なこと、⑤転居を伴わない人事異動等が可能なこと、⑥直近の人事評価が一次評価・二次評価ともにMB(普通)以上、⑦本人が契約社員への転換を希望し、上長の推薦があること等である。実態としては、優秀なパートナー社員の活躍を後押しするため、P-Ⅱb以上の者や、7時間勤務以上の所定労働時間の勤務が可能な者についても転換資格を認めたことがある。上長の推薦が応募要件となっており、上長はパートナー社員の日々の勤務態度の積み重ねを評価して推薦するため、応募者はほぼ全員転換している。直近3年間の転換実績は、パートナー社員から契約社員への転換者数は80名、パートナー社員から社員への転換者数は4名、契約社員から社員への転換者数は86名である。そのうち、2016年度の転換者数(年2回実施の実績)は、パートナー社員から契約社員への転換者数は46名、パートナー社員から社員への転換者数は2名、契約社員から社員への転換者数43名である。

契約社員から社員へ転換した際の等級区分(ランク)は、S1~S5の5段階ある社員等級のうち、入社3年以内程度の社員が分布するS1またはS2ランク相当に格付けられることが標準である。

職場環境・従業員意識把握のためのアンケートを実施

働きやすい職場環境を整備するため、年1回全従業員対象に無記名アンケートを外部に委託して実施している。従業員はパソコン等から専用URLにアクセスして回答することとしており、アンケートの実施に当たっては、個人が特定されることはないことや回答内容が評価に用いられることはないことを周知し、本音で回答できる環境づくりに配慮している。2016年10月29日から11月19日にかけて実施したアンケートでは、約3,200名の従業員のうち729名が回答し、うち約400名はパートナー社員であった。アンケート結果で、「上司が社員に関心を向けてくれない」という項目に課題があると分析結果が出た際は、店長を対象として、従業員とのコミュニケーションの取り方について研修を実施し、改善に取り組んだ。また、必要に応じて労働組合との協議を行い、従業員同士の挨拶運動の実施によりパートナー社員の働きやすい職場環境づくりに取り組むなど改善に努めている。

コミュニケーションを深めるための交流会の実施

地域や店舗単位で、夏祭りとして、慰安や激励の意を込めた交流会を実施している。交流会は夜間に実施するが、勤務日や勤務時間帯の異なるパートナー社員の出席を可能にするため、数回に分けて実施している。雇用形態の異なる従業員や他店舗の従業員と交流する機会となっており、従業員同士の親睦が深まり、店舗の活性化につながっている。

また、年度初めに経営方針説明会を実施した後、社長や経営陣も参加する親睦会を開催し、パートナー社員を含む従業員と経営陣が直接意見を交換する機会を提供している。親睦会の実施方法等については、開催の都度、労使で協議を行っている。

社内報による情報の共有化と映像によるトップメッセージの配信

月1回、社内報を発行し全従業員で情報共有を行っている。社内報には、毎月の会社の取組やイベント情報、CSR報告、各部署からの通信等を掲載しており、社員には配付し、パートナー社員には自由に閲覧できるように店舗に配置している。従業員のモチベーションの向上や店舗の一体感の醸成に寄与している。

また、会社の方針や月度の取組、情報の伝達等を目的として、社長自らがメッセージを発信する動画を作成し、社内のイントラサイトを通じて店舗へ配信する「社長チャンネル」という取組を実施している。社長のメッセージを動画で配信することにより、「メッセージの趣旨や意図がより理解できるようになった」、「社長の顔や表情が見えることで、より身近に感じられるようになった」というパートナー社員の意見が寄せられている。全従業員にトップメッセージを直接伝えることにより、会社方針の共有に効果が出ている。

朝礼の実施による情報共有とチームワークの醸成

店舗及び職場単位で、毎日、全員参加で朝礼を実施し、勤務当日の目標や連絡事項等の情報共有を行うとともに、チームワークの醸成や業務への意欲を高めている。パートナー社員を含め従業員の多くがシフト勤務のため、朝礼は、1日に時間差で2回~3回程度行い、全従業員が情報を共有できる体制を整えている。

安心して働き続けるための福利厚生制度の拡充

社員に準じて、パートナー社員を対象とする慶弔規定を整備しており、種類は社員と同様に結婚祝金、傷病見舞金、災害見舞金、香典制度がある。ただし、結婚祝金及び香典制度の支給要件及び金額は異なる。

また、2017年8月からは、パートナー社員を対象とする休職制度を導入した。休職期間は、契約期間満了日までの15日以上31日以内である。これまでパートナー社員を対象とする休職制度はなく、やむを得ず勤務が困難となった場合には、年次有給休暇を消化すると退職せざるを得ないケースがあったが、休職制度の導入により、パートナー社員に働き続けられる安心感を与えることができた。2017年11月までの間に6名が利用している。

永年勤続表彰制度は、社員と同一の表彰基準でパートナー社員にも実施しており、勤続10年、20年、30年の節目に表彰し、記念品を贈呈するとともに、社内報に表彰者を掲載している。2017年度の表彰者数は、10年表彰者100名のうちパートナー社員は48名、20年表彰者10名のうちパートナー社員は2名、30年表彰者の1名はパートナー社員であった。

法を上回る制度により仕事と育児の両立を支援

雇用区分にかかわらず、妊娠期や育児期の従業員が働きやすい環境整備を行っている。

従業員が妊娠した場合の必要手続等については社内のイントラサイトでFAQを掲載している。また、妊娠した従業員に対して店長や職場が配慮すべき事項についても、社内のイントラサイトを通じて確認できるようにするとともに、店長に対しては労務管理研修の中でも周知している。

育児短時間勤務は、子が小学校3年生まで利用可能としている。勤務時間の短縮については、規定では、パートナー社員は1日2時間を限度に、30分単位で短縮が可能としている。実態は、労使合意の下、労働契約の変更により運用しているケースもある。パートナー社員に対しては、日曜日や祝日等の保育所休所日に公休日を当てるよう努めることや、シフト勤務者の夜間勤務の軽減等の配慮を行うなどにより、仕事と育児の両立を支援している。

年齢にかかわらない活躍の場の提供

店舗に従事するほぼすべての従業員が行う品出し(バックヤードから店内への商品移動またはバックヤード内の整理)について一定時間内に作業を終えることを求めているため、従業員の体力面を考慮して定年制を整備している。しかし、パートナー社員が希望する場合は、定年前と同一の処遇で定年後も継続勤務できる制度を導入している。定年前後で異なる点は、昇給がないことである。2017年4月現在、60歳以上のパートナー社員は56名、うち70歳以上は8名おり、最高年齢は73歳である。健康で働ける間は働いてほしいという考えに基づき就業を支援している。職務内容は原則として定年前後で同一であるが、個々の健康状態により、個別に対応を行っている。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

同社の経営理念の1つに、「一人ひとりの可能性を引き出す経営」がある。従業員一人ひとりの個性を尊重しながら、変化への柔軟な対応力を身につけ活躍し続けられる人材の育成に努め、誰もが活躍の場を持つことのできる多様性のある組織づくりを目指している。パートナー社員等級制度の導入は、経営理念の実現、そしてより良い会社づくりに向けての改革であった。従来はセルフチェック方式による評価方法であったが、個人の職務遂行能力に応じた等級別評価方法へ改定した意図や目的を、店長やパートナー社員全員に浸透させるため、地域や店舗ごとに説明会を実施し、周知した。パートナー社員等級制度のスタートまでは、説明会開催後も、パートナー社員の等級の決定や店長への等級制度の説明、雇用契約書の締結・交付等様々な手続きを丁寧に進めた。

5. 取組の効果と今後の見通し

パートナー社員等級制度の導入以降、パートナー社員の早期離職者が減少し、パートナー社員の勤続年数が伸長した。具体的な離職率や平均勤続年数について、フルタイム勤務のパートナー社員や期間限定の短期的な雇用者を含む数字ではあるが、2014年度は離職率24.3%、平均勤続年数3年9か月だったのに対し、2016年度は離職率16.5%、平均勤続年数4年1か月となった。また、働きぶりが評価され、処遇に反映する仕組みは、パートナー社員の働きがいにつながっている。実際に2016年10月29日から11月19日の間に全従業員を対象に行ったアンケートでは、同社で働きがいがある理由について、「自分が頑張った分評価してもらえる所」、「給料の基準が明快なので平等感がある」等の意見が寄せられている。

さらに、社員登用制度を整備し、転換の仕組みが明確になったことで、契約社員や社員への転換者数が増加し、従業員1人当たりの担当職域の拡大や作業の効率化ができた。

これらの取組を通じて、パートナー社員の処遇が改善されるとともに、パートナー社員のモチベーションが向上した。この結果、従業員に余裕が生まれ、店舗全体の雰囲気が良くなったり、顧客満足度や店舗売上が向上したりするなど、様々なプラスの効果が生まれているとしている。

パートナー社員に対する教育訓練については、登録販売者資格取得勉強会を強化したことにより、合格率が向上した。2014年度のパートナー社員の合格率は58.9%であったが、2016年度は61.4%に向上した。登録販売者資格取得者が増えたことにより、勤務シフトの作成が容易になり、円滑な店舗運営につながっている。

今後の取組について、雇用区分や登用制度のさらなる整備を進めている。エリア社員と契約社員の処遇の差の解消に向けて雇用区分の整理を進め、契約社員を経ずにパートナー社員から社員へ直接エントリーできる制度を2017年11月から開始する。これに伴い、社員やエリア社員の呼称をそれぞれ「総合職正社員」、「専任職正社員」に変更し(同時にエリア社員制度は廃止)、パートナー社員は全国転勤が可能な総合職正社員か、勤務地を限定する専任職正社員を選択することになる。契約社員は原則として、総合職正社員と同じ労働時間だが、公休日や勤務時間が固定されるなど労働条件の異なる社員と位置付ける。

店舗数が増え、パートナー社員の働く目的や意識、置かれている状況等が異なる中で、新たな人事制度ときめ細かい運用により、パートナー社員が「働きがい」を感じながら、安心して仕事に臨める環境整備に努めていきたいと考えているとしている。

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